マケイン候補の勝利のためにクリストル氏が助言
オバマ・バブルが続いている中で、ウィークリー・スタンダード誌の創刊者で編集者のウィリアム・クリストル氏がジョン・マケイン上院議員の勝利のために注目すべき投稿をしている(“How McCain Wins”; International Herald Tribune; September 29, 2008)。予想外のことだが、グローバル・アメリカン政論でクリストル氏の投稿を取り上げるのは初めてである。よく知られているように、クリストル氏はロバート・ケーガン氏と共に「新世紀アメリカのプロジェクト」を設立し、また両氏とも2000年の大統領選挙からジョン・マケイン氏を支持し続けている。
バラク・オバマ氏がマケイン氏に対して優位に立てているのは最近の金融危機のお陰である。こうした現状からクリストル氏はマケイン氏に慣例を破って対処するように提言している。与党の候補は現在の問題をできるだけ大きくしないようにするものだが、今回の金融危機は大変深刻なので一つの法案では解決できないとクリストル氏は言う。よってマケイン氏はアメリカにはこの緊急事態に困難な決断を下せる強い指導者が必要だと強調すべきだと主張している。またウィリアム・クリストル氏はマケイン氏がペイリン氏をブッシュ政権の影響から解放すべきだと主張する。
英国エコノミスト誌は8月末に同様に述べている。「共和党の大統領候補は熾烈な戦いを繰り広げているが、選挙に勝つためにはジョージ・ブッシュ氏との違いをもっと鮮明にする必要がある」と述べている(“Bring back the real McCain”; Economist; August 28, 2008)。
直前の記事で述べたように、世論調査の印象とは異なり個別の問題で勝利を収めたのはジョン・マケイン氏のほうである。そのことを指摘したのが左派色のあるBBCだということを忘れてはならない!バラク・オバマ氏には説得力のある代替案などはなく、ただ経済危機を非難して反ブッシュ感情を煽り立てるだけである。これは少しも不思議ではない。日本の元ジャーナリストである日高義樹氏は著書の「アメリカ狂乱」で民主党には国政を指導する準備などできていないと指摘する。
10月2日木曜日に行なわれたジョセフ・バイデン上院議員とのテレビ討論で、ペイリン知事は無事に務めを果たした。ワシントン・ポストはペイリン氏が討論会をこなしたのでマケイン氏が今後はオバマ氏との討論に集中できると述べている。もはや共和党副大統領候補の能力に対する疑問に気を取られる必要がないからである(“Attention -- and Scrutiny -- Shifts Back to McCain”; The Trail; October 3, 2008)。ニューヨーク・タイムズのコラムニストのデービッド・ブルックス氏は「緊張した時のペイリン氏はジョージ・W・ブッシュ演説学校の卒業生のように機械的な棒読みをしてしまうが、木曜日のペイリン氏は普通の人として話した。わずか15秒でペイリン氏は率直に語る普通のアメリカ人というキャラクターに徹し、子供のサッカーやホッケーを見守る母親、平凡な労働者、街の人々といった事柄に言及したばかりか、betcha(bet you=きっと)、darn right(~に違いない)という俗語まで駆使した。」と述べている(“The Palin rebound”; International Herald Tribune; October 3, 2008)。
バラク・オバマ氏は経済危機を絶好の機会にしようとするかも知れないが、本当にアメリカを指導できるのだろうか?オバマ氏が本当に世界を指導できるのだろうか?そうであれば、イラクのホシュヤール・ゼバリ外相が大統領選挙より前にアメリカと二国間の安全保障協定に調印したいとは言わないであろう。
サラ・ペイリン氏は役目を果たした!今度はマケイン氏の番である。今後の討論会と選挙運動でクリストル氏の助言がどれほど効いてくるか、事態を見守りたい。
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