中国艦艇、日本の領海に侵入

中国海軍情報収集艦 日本領海に一時侵入 6月15日 NHK NEWS WEB
防衛省によりますと、15日午前3時半ごろ、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島の西で日本の領海に侵入したのを、海上自衛隊のP3C哨戒機が上空から確認しました。

警戒監視に当たっていた海上自衛隊のP3C哨戒機は情報収集艦に対し、無線で「日本の領海を航行している」と伝えるとともに動向を監視していました。


海自の対応に違和感を感じた方も少なからずおられるはず。
P3Cが発見してP3Cが無線で警告。
有人島の近傍を外国艦艇が航行しているというのに、護衛艦が対応した形跡が全くない。

普通、敵性国家の艦艇が領海に近接するとき、海軍を保有する主権国家ならば必ず自国の艦艇でこれを監視します。平成16年の漢級潜水艦領海侵犯事件に対応したのは護衛艦「くらま」と「ゆうだち」でした。
外国艦艇による不当な行為を確認した場合、航空機から無線で警告するだけでは確実性に乏しい一方、艦艇ならば無線以外にも発光信号や国際信号旗、拡声器など、あらゆる手段で確実に警告を伝えることができるためです。
それ以上に、軍艦旗を見せるべき時に見せることができないというのは、主権国家としては2流と言わざるを得ません。
固定武装の無い情報収集艦と見くびったのであれば3流です。

さて、世論の反応ですが、中国の挑発行為に対する批判は当然の事として、
『普通の海軍なら当たり前にできること、今までの海自ならばできたことに、今回何故海自は失敗したのか?』
誰もここに突っ込まない。メディアも政治も大衆も軍事的な常識感覚を全く喪失してしまっているのでは?
現代日本人の病巣の根深さを感じた次第。

5分後の世界

だいぶ前なのですが、とある自衛隊の式典に行ってきました。別に呼ばれて行ったわけではないのですが、たまたま暇だったので。
さて、式典には付きものの来賓紹介

司会の若いWACさん曰く、
「来賓の方々を紹介します。」

感動しました。
紹介させていただきます。とかいう意味不明の日本語に慣れていた耳に、このような普通の日本語が極めて新鮮に聞こえたので。

実は20年以上前にこのことを村上龍が『五分後の世界
』で書いていて、

言わせていただくとか説明させていただくとかいったい誰が使い始めたんだ、そういう妙な日本語は禁止せよ。貴様は誰かに依頼されて話しているのか?自分の意思と責任で話しているのだろう?言います、説明します、で充分ではないか、


この台詞の主は日本国•地下司令部の国民ゲリラ士官。
なぜ日本にゲリラがいるのか?それは「5分後の世界」だからなのですが、詳細は小説を読んで確かめて頂きたい。村上氏自身が最高の作品とするほどの傑作です。

成る程、戦場に必要な言語は正確性と迅速性であり、武力組織たる自衛隊が使わないのは当たり前なのかもしれません。
あるいは村上龍は実際に自衛隊員との会話の中でこの部分のヒントを得たのではなかろうか。
そんなことを取り留めもなく考えていました。

まもなく帰国!海賊対処行動水上部隊 第22次隊

12月18日(金)、派遣海賊対処行動水上部隊第22次隊が約半年間の任務を終えて帰国する予定です。
22次隊の陣容は第5護衛隊司令部、「あきづき」、「さわぎり」の約430名。
第22次隊はあきづき型護衛艦の初参加となり、女性隊員が初めて参加したことで話題となりました。
彼ら・彼女らの、熱鉄身を焼く遠方の地での功労を称えましょう。
20150825_02.jpg
海上自衛隊ホームページより

さて、気づいた方も多いと思いますが、
「あきづき」には海賊対処部隊のトレードマーク、「艦橋の防弾鋼板」が見当たりません。
これまで派遣された、きり型、あめ型、なみ型護衛艦では、海賊が所持しているAK-47等の小火器弾に耐えられないため、防弾鋼板を艦橋に貼り付けていました。

予算不足のためか、この防弾鋼板は使い回しが前提だったようで、取り外しが容易にできる設計になっていました。
鋼板を取り外されて架台のみとなった無残な姿がいくつか目撃され、軍事オタクの涙を誘いました。
最近では全艦に行き渡ったのか、装着したままのようです。

軍艦の材質は建造国によって様々ですが、艦橋等の重要構造物は、弾片防御のために防弾用の高張力鋼で作られるのが普通です。
これを通常の鋼材で作ろうものなら、CIWS等が至近距離でミサイルの迎撃に成功した際、飛散した破片で穴だらけになり、機能麻痺に陥ってしまいます。

見た目は近代的なあめ型・なみ型ですが、残念ながら艦橋の材質は一般商船のそれと変わらないようです。”失われた10年”に計画された艦だけに、当たり前といえば当たり前ですが。
最新のあきづき型に防弾鋼板が見当たらないということは、艦橋自体が防弾用の高張力鋼で作られていると見てよいでしょう。
艦橋の材質に限らず、これまでの汎用護衛艦は船体構造に妥協箇所が多く、どうしても見劣りしていましたが、あきづき型の登場でようやくイージス艦と同等の、本物の軍艦としての構造になったと言えます。

30DX登場! Pacific 2015 Maritime Exposition

オーストラリアで、海上防衛のエキスポ、Pacific 2015 Maritime Expositionが開かれました。




三菱重工の出展した30DXと呼ばれる小型艦艇の模型が話題となっています。
今年中旬に発表していたCGの模型版です。
30DEX、30FF、30DXとメディアによって名称がバラバラでしたが、恐らく海自―三菱間で30DXに決定したのでしょう。

この模型が実際の30DXそのもののと判断するのは早計に過ぎますが
しかしながら、実現性が全くない、ただの空想上の軍艦の模型を展示してもしょうがないわけで、現在の技術開発をある程度反映していると考えるのが自然でしょう。

注目すべきはRCS低減を意識した統合型マストです。
過去に防衛省から30DXのCGが発表された際、FCレーダーなどは見る影もなく、砲管制は光学式の簡易FCSのみだろうと言われ、物議を醸しておりました。

恐らく、艦載版潜望鏡探知レーダーへの砲管制能力の付加が進んでいるととらえて良いと思います。
「レーダー捜索を継続しつつ、攻撃目標と自分の砲弾の両方を追尾し、ミスディスタンスを計算する。」
SPYやFCS-3Aでは当たり前な機能ですが、そこは艦載FCSの開発経験がない東芝のこと。その出来は蓋を開けてみるまでわかりません。
砲管制機能の無い26DD向けの捜索レーダーは、試験艦「あすか」に搭載して順調に試験を重ねているようなので、このまま30FF用に進化を続けて欲しいものです。

艦砲に注目するとやはり127mm級で、対地・対艦射撃を意識しているようです。気になるのは搭載弾数ですが、世界的に見ると、76mm砲で800~1000発程度、127mmで500~600発程度が普通です。船体規模を考えれば、それ以下になるのは間違いないでしょう。ロケット推進弾を採用するなら更に少なくなるはずです。対空用の砲弾は即応弾のみになるかもしれませんね。

30DXは廉価・小型艦ではあるものの、曲がりなりにも海軍艦艇。
東郷氏が懸念していた、「非対象戦用の簡易FCS」はとりあえず脱出できそうで何よりです。

観艦式ラッシュ!自衛隊観艦式とインド国際観艦式

平成27年度自衛隊観艦式が10月18日に実施されます。
10月12日に観艦式予行が実施され、ネット上には参加者による写真が沢山アップロードされています。羨ましい限り。

観艦式関連でもう一つ旬な話題が。
本日10月14日、インド海軍が開催する国際観艦式が正式にプレスリリースされました。開催時期は来年2月6日とのこと。
インドが国際観艦式を主催するのは、2001年の建国50周年記念国際観艦式以来、15年ぶりです。ちなみに、前回は海上自衛隊から「あまぎり」が参加しました。今回の参加艦艇はまだ発表されていません。
プレスリリースされたのは今日ですが、招待国の去就はこれまで度々報道されており、特に中国の動静が話題となっていました。2001年の観艦式には参加しなかった中国ですが、今回は参加するようです。
と言っても両国が友好ムードにあるわけではなく、インド洋においては中国海軍の活動が活発化しており、特に中国潜水艦のインド洋進出にインド海軍は神経を尖らせています。

ところで、中国海軍は2014年に創設65周年記念国際観艦式を企画しました。海上自衛隊は招待されず、米海軍が艦艇派遣を見送る一方で、韓国は中韓共闘を演出するために「2隻」の派遣を計画するという一幕がありました。
結局「行方不明のマレーシア航空機捜索のため」という不思議な理由で急遽中止となりましたが、もし実行されていれば、今年の9月3日に北京で行われた抗日戦争勝利記念?の軍事パレードと同じ流れが見られたことでしょう。

国際親善を目的とした国際観艦式ですが、親善とはよく言ったもので、実際には海洋におけるパワーバランスと友好関係を国内外に示すための一大ステージというのが裏の顔。
微妙な緊張を孕んだまま、日米中がインドの地で一堂に会するのは見ものです。

人口で言えば、インドは「世界最大の民主主義国家」であり、日本にとって重要なパートナーであることは明白です。なにせ「世界最大の独裁国家」と敵対しているわけですからね。

Vikrant建造が進むインド海軍の空母Vikrant (Image from Wikipedia)
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