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2012年仏大統領候補、社会党オランド氏の2012年1月22日の演説 (9) ~フランスの夢~

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連載中の、『2012年仏大統領候補、社会党オランド氏の2012年1月22日の演説 (8) ~フランスの魂、「平等」~』の続き、そして、演説の最後の結びの部分です。

フランスの大統領になろうという政治家がどのような言葉を発してフランス国民に向かい合っているか、一つの陣営からその一つの例を見ていただいていますが、この言葉がフランス共和国とフランス人にどのような力を与え、どのような変化をもたらすか、ぜひ注目したいと思います。

このような言葉を政治家の口から聞くことのできる国はまだ、歴史の進歩に向かう明るい未来を切り開けると、この演説を紹介する一連の記事を作りながら、私は心から思いました。日本の政治の現状はおかしいと悲しんでいる方は、この演説から多くの教訓と勇気を引き出せるのではないかとも思います。

前回の部分でオランド氏は、「平等」という「フランスの魂」をかかげました。今回紹介する演説の最後の部分では、労働の現場を通じた世代間の連帯のための政策アイディアを語った後、「フランスの夢」を高く掲げて演説を結びます。一人でも多くの方にお読みいただければ本当にうれしいです。

演説の全編はこちらから見ることができます。

●Vidéo Dailymotion
■Discours de François Hollande au Bourget 1e partie
2012年1月22日 ル・ブールジェでのフランソワ・オランドの演説 第一部
http://www.dailymotion.com/video/xnwrm4_discours-de-francois-hollande-au-bourget-1e-partie_news

■Discours de François Hollande au Bourget 2e partie
2012年1月22日 ル・ブールジェでのフランソワ・オランドの演説 第二部
http://www.dailymotion.com/video/xnwrru_discours-de-francois-hollande-au-bourget-2e-partie_news



今回は、第二部の14分25秒すぎのところから最後までです。

■フランソワ・オランド 2012年1月22日 演説 (パリ北方)ル・ブールジェにて

最後に、私はみなさんに私たちの未来のことをお話しいたします。共和国の思想とは、一つの約束です。世代がすすむにつれて暮らしが良くなるという、美しい約束です。共和国の約束とは、どの世代も前の世代より良い暮らしができるようになるということです。しかし、今日、この約束は破られてしまいました。私たちの若者世代は犠牲にされ、見捨てられ、流刑にされているかのようです。失業。非正規雇用による不安定な生活。学歴の価値低下。絶望。自立できない生活。住居を見つける困難。私たちが若者世代に残すことを数え上げることはいたしません。悪化した環境。(若者が引退の年齢に達した時の)財源のなくなった定年後の年金生活。莫大な赤字。しかし、それでも、若者世代は私たちの幸運、希望なのです。この幸運が「負担」になる事態を受け入れることなどできはしません。

私はずいぶん考えました。何ヶ月もの間、考えました。この危機を超えて、達成すべき立て直しを超えて、実現すべき正義を超えて、この大統領選に賭けるべき課題になりうることは何かと。

そして、私はこのシンプルな結論に達しました。私たちの国の若者世代のために私はフランスを治めたいのだと。私は、若者世代に信頼を再び与えたいのだと。

だから、私は教育を国家的なレベルの大義にしたいのです。私は、教育分野に6万の追加雇用を創出することを提案いたしました。教員だけではありません。生徒監督、看護士、社会福祉士といった、若者の受け入れと援助と成功に貢献するあらゆる人々です。「(人数が)多すぎる」と私に言う人々もいます。いいえ、私はむしろ、「ひょっとしたらこれでも十分ではないかもしれない」と答えます。毎年15万人もの犠牲者、学歴の免状や資格を持たずに卒業する15万人の犠牲者を出す学業の失敗との闘いはたいへんなことなのです。優先すべきなのは、幼稚園と小学校です。なぜなら、そこでこそ多くのことが行なわれるからであり、最初の学業遅滞が出てくるからです。同等の課程がヨーロッパに全くない学校制度の学年構成を見直します。中学校と高校では、もっとも学業困難な生徒たちには個別指導を提供します。それによって、私の大統領任期の終わりには学校制度から能力習得なく卒業する若者の数を半減させるためです。私の大統領としての5年の任期の最後にそうなることを目標にすることを明言いたします。

16歳から18歳までの若者は、一人たりとも解決策も学習も職業も公的サービスもなしに放置されることはありません。多くの町や家庭で退学ということがどんなことなのかを私は知っております。誰もそのように放置されて見捨てられて忘れられることはなくなります。私たちの若者のためにこそ私たちは雇用問題を優先させて、若者向けの15万人の未来の雇用を徐々に創出しなければなりません。特に、治安の良くない地域出身の若者を対象とします。

経験を積んだ高齢の労働者が職場で若い労働者の指導者役になる場合に、雇用期間を定めない雇用契約(CDI、日本でいうと常勤正規雇用)によって若者を雇うことを可能にするための「世代間の雇用契約」というこの素晴らしいアイデアを私がかかげたのは、若年労働者のためだけではなくて、シニア層の労働者のためでもあります。その場合のシニア労働者も定年で退職するまでは雇用が確保されるようにするのです。これはさまざまな年齢層の間の和解であり、さまざまな世代間の連帯でもあります。

私が行く工場ではどこでも、二種類の人たちが私に言いに来ます。最年長者は私に一つのことしか尋ねません。「私たち、いつ引退して年金生活に入れる?」一方、最も若い人たちは私に一つのことしか尋ねません。「私たち、いつ働き始めることができますか?」そういう時、私は彼らに言います。「ねえ、シニアのみなさん、もしあなた方が若者たちを支えて彼らにあなたたちのノウハウや経験や能力を授けることができれば、結局、それが定年退職を待つ間にあなたたちが受けることのできる最もすばらしい使命にはなりませんか?そして、若者のみなさん、もしあなたたちがやっと雇用期間を定めない雇用契約を得て職業生活を始めることができたら、あなたたちがこんなにも長い間待ち望んでいた自立をすることができるのではないでしょうか。」

私は、慎ましい暮らしの家庭出身の、まだ学生の若者たちのことも考えます。彼らにも、自立生活ができるようにするために、予算があるという条件で、学生手当を受けることができるようになるでしょう。

これが私の計画です。若年層が成功できるようにあらゆる手段をとること。それは、若年層自身のためではなく、若年層が一つのカテゴリーだからでもなく、彼らにおべんちゃらを言いたいからでもありません。両親、祖父母である人々にも未来の中の希望、成功の中の誇りを再び取り戻してもらって、「いったい、私たちはこれからの世代に何を残すことができるだろう?私たちの子どもたちや孫たちにどのような社会を引き継ぎたいと私たちは望んでいるのだろう?」と問うてもらうことができるからなのです。これからの世代に残したいのは、失業の社会、不安定な非正規雇用の社会、不安の社会、崩壊の社会でしょうか。それとも、逆に、チャンスが与えられ、成功の条件が示されて、「私はもうすぐ定年退職する。あるいは、もうすぐ人生最後の大きな旅立ちをするかもしれない。しかし、少なくとも結局、私自身は得られなかった成功が可能だと次の世代のために伝えることができた。」と思える社会でしょうか。

そして、みなさんの前にいる私は大統領選の候補者として、もしこの国の次の大統領任期を任せていただけるなら、私のことはただ一つの目標によって判断してほしいと望みます。それは、フランスのみなさんが望んで私に与えられた大統領任期の最後の2017年に、若者たちの暮らしが今の2012年よりも良くなっているかどうか、という基準です。私のことはこのただ一つの行動によって、この唯一の真実によって、この唯一の約束によって評価していただきたいと思います。若者たちの生活を変えることは私にとっての誇りとしては最も大きいものです。私がしているのはお気軽な約束ではありません。この課題について国全体を動かすためなのです。

親愛なるみなさん。私はフランスの夢についてお話ししました。そう、美しい夢、フランス革命以来の何世紀もの長きにわたって市民が愛で、かかげてきた夢です。より良い暮らしができるようにというこの夢、より良い世界を後の世代に残したいという夢、進歩の夢、一つ一つ人類のステップを超えていけるという夢。この夢は私たち固有のものではありませんが、私たちフランスが共和国を作りだしたとわかります。ある社会が正しく組織されていて、必要な手段を与えて、平等と自由と友愛をその生活様式にしたならば、その社会は一人一人にとっての解放となれるというこの理想をかかげてきたのは私たちなのです。

この夢にこそ、私は改めて魔法を託したいのです。すると、すぐさま、右派は公然と嘲笑しました。彼らによれば、この時期に夢など語ることができるわけがない、というわけです。確かにそうです。これは、今私たちが現実に生きている夢ではありません。経済危機があらゆる大志の足かせになっているこの時期に夢など語ってはいられない、そんなのは幻想だ、と言う人もいるでしょう。しかし、私は、みなさんの頭をお星様でキラキラにしようと呼びかけているのではありません。そうではなくて、私は、共和国の物語を再発見しようと呼びかけているのです。何十年もの間私たちを進歩させてきた共和国の物語、フランス革命の物語、目の前に開ける未だ知られざる物語の中を進もうとした人間たち、いえ、男たちと女たちの物語です。それは人間の平等の歴史だったのです。

そうです。様々な共和制とともに続いてきたのがこの共和国の物語です。第三共和政から始まり、そしてまた、フランスの解放、レジスタンス全国評議会もありました。この夢、この共和国の物語を、1968年の五月革命もまた、ある意味で再び現れさせたのです。そして、1981年5月(のフランソワ・ミッテラン社会党政権樹立)があり、それ以外にも多くのステップがありました。共和国の歴史とは、これらすべてを指しています。共和国の歴史は、左派にだけ属しているのではありません。何十年もこの国のトップを引き継いできた者たちみんながこの共和国の歴史をかかげてきました。私たちの先祖が彼らに向けてきた非難がどのようなものであったとしても、いつもフランスを前進させようとすることは結局、彼らの望みでもありました。ですから、その夢をかかげ続けようではありませんか!

ここでシェークスピアから引用させていただきます。彼は、この普遍的な法を私たちに思い起こさせました。「彼らは失敗した。なぜなら、彼らは夢を思い起こすことから始めなかったからだ。」と。それなら、私たちは成功するはずです。なぜなら、私たちは夢を思い起こすことから始めるからです。フランスの夢、それは、民主主義への信頼、市場よりも強い民主主義、カネよりも強い民主主義、信仰よりも強い民主主義、宗教よりも強い民主主義なのです。フランスの夢とは、学校、政教分離、人間の尊厳、全体の利益の周りに築かれた共和国の約束を完成させることなのです。

フランスの夢とは、あらゆる肌の色の人々が権利と義務において平等になるようにする坩堝(るつぼ)です。フランスの夢とは、国境と国家を超えて広がる普遍的な価値を明確にすることです。それは限られた空間の中ではなくて、世界の前ですべての人に向けて宣言されています。フランスの夢とは、私たちの歴史であり、私たちの計画です。フランスの夢とは、一つの力です。私がみなさんに提唱している計画です。なぜなら、フランスの夢は私たちに似ており、私たちを結びつけるからです。

私は、明日のフランスに向けて、私たちみんなでともに進みたいのです。

労働のフランス、功績のフランス、努力のフランス、先取のフランス、起業のフランス。そこでは、一人一人の権利が全員の平等に支えられるでしょう。

正義のフランス。そこでは、カネは本来あるべき場所、つまり、主人ではなくて下僕の地位に戻されるでしょう。

連帯のフランス。そこでは、国の子どもたちの誰一人として放置されることはありません。

公民精神のフランス。そこでは、共和国がしてくれることではなくて、共和国のためにできることを一人一人が求めるでしょう。

多様性のフランス。そこでは、一人一人が互いの違いを持ち寄りますが、共和国という統一体の中で行われます。そこでは、海外県が世界のすべての地平を私たちに開いてくれ、移民の子どもたちはフランス人として、フランス人であることを誇りに、誇りに思うはずです。なぜなら、それは世界市民に与えることのできる最も美しい名前だからです。

模範のフランス。そこでは、国は自らが育てたものの中に、国をまとめ上げるものの中に、国を超えるものの中に、自らの姿を見るのです。

信頼のフランス。そこでは、フランスを構成しているすべての力が未来のために動員されるのです。

フランス、フランスが問題なのではありません。フランスこそが解決策なのです。

親愛なるみなさん。これが選択肢です。これがみなさんを待っている選択肢です。いつも同じです。民主主義が存在して以来、恐怖と希望の間で、忍従と飛躍の間で、騒動と変革の間でなされる選択です。それならば、変革、変革を今こそ!立て直しを今こそ!正義を今こそ!希望を今こそ!共和国を今こそ!

動きましょう。集結しましょう。そして、三か月後、三か月後には左派を勝利させ、フランスを前進させましょう。そして、変革を成功させるのです!私は今すぐ、変革に向けて進めます!

共和国万歳!そして、フランス万歳!

(翻訳引用ここまで)


フランスという国が本来持っているはずの理想を取り戻そうという訴え、世代間の連帯の訴え、民主主義への信頼を取り戻そうという訴えは、政治の基本中の基本だと改めて思わされました。

さらに踏み込んで、今の世界を席巻する強欲資本主義(新自由主義)への抵抗として「市場よりも強い民主主義、カネよりも強い民主主義」と明言したところでは、思わず立ち上がって拍手してしまいました。日本でこのようなことを言える政治家は皆無に等しいでしょうから。

こういう格調の高い宣言を、オランド氏は当選したら実行するだけですが、そのための力を持ち続けさせるためには、民衆からの後押しと激励が必要でしょう。「どうせ失敗する」と冷笑的に見ることは簡単ですし、公約を100パーセント実現することも実際の政治の世界では難しいのかもしれません。さらには、「強欲資本主義」の力は強く、オランド氏は国内外によほど協力者をつのって粘り強くやらないといけませんから、この演説だけで満足していてはいけません。あっ、それにそもそも、オランド氏にはもう少し脱原発の方向に転換してもらわなければいけませんし。笑

しかし、派手さのない実直が基調の政治家が理想を掲げて民主主義の原則と歴史の進歩に忠実にやる気を見せているときには、ぜひ成功してほしいと私は心から思います。

本当に、「フランスの夢」が成功することを祈るような気持ちで願います。私にできることは協力したいです。

イギリスの作家、シェークスピアの言葉が引用されていますが、「日本は失敗した。なぜなら、日本は夢を思い起こすことから始めなかったからだ。」とつい読み替えてしまいます...。

何度も言いますが、私は日本の主流政治家からも、このオランド氏が言っていることと同じことを聞きたいと心から願っているのです。そして、日本の主流政治家の演説が嘘っぽく聞こえないような政治が達成されることも心から願っているのです。

まだこの演説について書きたいことはありますが、それはまた別の記事に譲って、今回はここまで。


これは、「2012年フランス大統領選」の記事の一つです。

全文を通して読みたい方は、『フランス大統領選 : 社会党フランソワ・オランド候補、2012年1月22日の選挙戦開始演説全文訳』をどうぞ。


追記。ここで引用されているシェークスピアは有名な劇作家の方のウィリアム・シェークスピアではなくて、ニコラス・シェークスピアという人だそうです。こちら参照。

●blog.lemonde.fr
OUPS – Hollande cite Shakespeare… Mais pas le bon !
http://bigbrowser.blog.lemonde.fr/2012/01/26/oups-hollande-cite-shakespeare-mais-pas-le-bon/
26 janvier 2012

Devant des milliers de personnes, dimanche 22 janvier lors de son meeting au Bourget, François Hollande, a voulu restaurer un idéal égalitaire effrité par le quinquennat de Nicolas Sarkozy. "Et je me permettrai de citer Shakespeare, qui rappelait cette loi pourtant universelle : 'Ils ont échoué parce qu’ils n’ont pas commencé par le rêve'" , a déclaré le candidat socialiste.

Une phrase que les journalistes français et britanniques n'ont pas réussi à retrouver dans les ouvrages du célèbre poète et dramaturge anglais. Rien de très étonnant, révèle aujourd'hui The Telegraph, dans la mesure où le Shakespeare en question n'est pas le célèbre William mais un certain Nicholas Shakespeare qui n'est autre que le chef de la rubrique littéraire du quotidien britannique ! A la décharge de M. Hollande, les deux Shakespeare sont de la même famille… Nicolas est un descendant direct du grand-père de William.

"Je n'en ai pas cru mes oreilles, quand j'ai entendu le présidentiable français me citer", s'amuse ce dernier. La phrase est tirée de son roman La Vision d'Elena Silves, sorti en 1989 et traduit en français deux ans plus tard. Il n'est pas certain que cela rassure François Hollande d'apprendre que sa "loi universelle" a été prononcé par le héros du livre, Gabriel, un révolutionnaire maoïste qui rejoint les terroristes péruviens du Sentier lumineux. "[Le personnage] affirme que la dernière révolution marxiste des années 1960 a échoué, mais que la sienne va réussir. C'est dans ce contexte-là qu'il déclare qu'ils ont échoué parce qu'ils n'avaient pas de rêve", résume Nicholas Shakespeare.

Pour l'auteur, la citation reste d'actualité et sa reprise par le favori des sondages n'a rien de choquant : "Vous n'avez pas besoin d'être marxistes pour rêver d'une meilleure société." Le Lab précise également que M. Hollande n'est pas le seul socialiste à s'être trompé. Elle a auparavant été entendue dans un discours d'Arnaud Montebourg, en 2010 (Slate.fr), et elle a servi de sous-titre à la motion du courant Utopia au congrès socialiste de Reims en 2008 (Rue89).

(転載ここまで)




築地市場の豊洲移転に反対して食の安全を守りたい。
●Like a rolling bean (new) 出来事録
■2012-02-19
【追加募集:2月28日消印☆】「築地市場移転予定地の取得に関する監査請求」にご協力を!
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-11169418853.html


↑『がけっぷち社長』さん作。また、税制についての当秘書課の記事は、「カテゴリ : 税制、税金、財政」から。


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骨抜き派遣法案可決/審議抜き 民自公暴走/政権交代の原点投げ捨て

シリーズ「日本の悪夢」第1部/労働者派遣法/共産党談話

骨抜き派遣法案可決/審議抜き 民自公暴走/政権交代の原点投げ捨て
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-08/2012030804_05_1.html
2012年3月8日(木)
 民主、自民、公明3党は7日の衆院厚生労働委員会で、労働者派遣法改定の政府案を改悪修正したうえで、審議もせずに可決しました。労働者・国民に対する裏切りであり、“貧困ノー”の審判を受けた政権交代の原点を投げ捨てるものです。(佐藤高志)
 3党の改悪修正案は、製造業・登録型派遣の原則禁止を削除するなど抜け穴のある政府案をさらに骨抜きにするものです(別表)。直接雇用の「みなし」規定も3年後に先送りされており、これでは法改正の意味がどこにあるのかと言われても仕方ありません。
 労働者派遣法の改正が焦点となったのは2008年のリーマン・ショックで大量の「派遣切り」が大問題になったためです。民主党は労働者派遣法の改正を表明し、09年の総選挙で政権交代を果たしました。
 ところが、民主党政権が出した改定案は、製造業・登録型派遣について「原則禁止」としながら、「常時雇用」や「専門26業務」を除外するなど抜け穴だらけ。この政府案にも「アンチビジネス(反企業活動)」などと財界いいなりになって反対する自公両党に屈服し、「原則禁止」の看板さえ投げ捨ててしまったのです。
 3党は昨年12月に衆院厚労委で、わずか3時間の審議で可決を強行。しかし、世論に押されて衆院本会議で採決できず改悪修正案は廃案となりました。それに反省もなく、再び改悪修正を行って、審議すらせずに押し通すなど到底、許されません。
 3党は8日の衆院本会議でも可決する構えですが、参院での審議はこれからです。労働者と国民の願いを踏みにじる3党の暴走を許さないたたかいがいっそう求められます。
■「原則禁止」削除・現行「原則自由化」に逆戻り…
■ここが問題点
 7日の衆院厚生労働委員会で可決された派遣法改定案は、大穴のあいた政府案をさらに骨抜きにしました。
 政府案は、製造業への派遣を原則禁止としたものの、短期契約を繰り返す常用雇用は対象外にしていました。3党は、この原則禁止規定を削除し、現行法の原則自由化に逆戻りするものです。
 登録型派遣業務についても政府案は、原則禁止としながら26にのぼる専門業務を対象外としていました。3党はこの原則禁止規定を削除し、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ不安定な働き方を広げた現行法に逆戻りしてしまいます。
 日本共産党は製造業派遣は、いかなる形でも禁止すべきだと主張。登録型派遣については、業務を厳しく限定して原則禁止とするよう求めています。
 違法派遣があった場合、派遣先企業が派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす措置が、世論に押されて政府案に盛り込まれました。しかし、直接雇用と言っても、短期契約の場合はその期間しか雇用されず、正社員採用の保証はありませんでした。ところが3党は、施行期日をさらに3年も先送りにしてしまいました。
 日本共産党は期間の定めのない雇用契約を申し入れたとみなす規定に改めるよう求めています。
 また非人間的な働き方と批判されていた「日雇い派遣」についても、「日々または2カ月以内」の派遣を禁止するとしていたのを30日以内に改悪しました。日本共産党はただちに禁止するよう主張しています。

社民党OfficialWeb┃声明・談話┃2012年┃労働者派遣法改正案の衆議院通過に当たって(談話)

シリーズ「日本の悪夢」第2部/労働者派遣法/社民党談話

社民党OfficialWeb┃声明・談話┃2012年┃労働者派遣法改正案の衆議院通過に当たって(談話)
http://www5.sdp.or.jp/comment/2012/dannwa120308_02.htm
2012年3月8日
労働者派遣法改正案の衆議院通過に当たって(談話)
社会民主党幹事長
重野安正

1.本日の衆議院本会議で労働者派遣法改正案(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案)が、民自公3党による修正が行われた上、可決された。社民党は政府原案に賛成し、修正案(民主・自民・公明)に反対した。社民党は、労働者派遣法の抜本見直しについて、3党連立政権においても、また連立政権離脱後も、最重要課題の一つとして位置づけて取り組んできたが、今回の結果は、きわめて不本意であり、残念である。

2.2008年秋、リーマン・ショックを引き金に、製造業などで、大量の派遣労働者や請負労働者など非正規労働者の雇い止めが起きた。失業と同時に住居も失わざるを得ないという深刻な問題は、「年越し派遣村」という形で社会に提起された。そして、2009年の政権交代は、野方図に拡大する雇用の劣化を食い止め、貧困や格差社会から脱却し、人間らしい生き方を実現させたいという国民の期待の高まりによって実現した。そして、民主党、社民党、国民新党は、「連立政権樹立に当たっての政策合意」に、「雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―」をしっかりと位置づけ、派遣労働者保護の立場から、派遣事業に対する規制強化とともに、「登録型派遣の原則禁止」、「製造業務派遣の原則禁止」を明記した政府案を作成し、国会に提出した。政府案は、派遣労働の規制強化を通じて、より安定的な働き方の実現を目指すためのものであり、なお不十分な点があったものの、それでも働く労働者をはじめ多くの国民に支持されたのは、野放図に拡大する雇用の劣化を食い止め、人間らしい働き方を実現することができる、という期待からであった。

3.しかし、民主、自民、公明党によって提案された修正案は、登録型派遣と製造業務派遣の原則禁止を削除すること、日雇い派遣の原則禁止を一部の例外を除き原則容認すること、みなし雇用制度の法施行を三年後に先送りすること等、政府案を骨抜きにする内容となってしまった。まさに、現在の不安定な雇用の現状を追認することになりかねず、社会保険もなく雇用も不安定な非正規労働者が増加しているという現状を、さらに悪化させる以外のなにものでもない。「「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。」としていた政策合意を踏みにじり、政権交代に託された国民の期待を裏切る内容であり、容認できるものではない。

4.しかも政府案は、2年前に国会へ提出され、国民に示されたものであるのにもかかわらず、長期間たなざらしにされてきた。その上、昨年秋の臨時国会の会期末に、民主・自民・公明の3党によって修正案が突然提出され、わずか3時間半という審議で採決された経過がある。修正案の決議は継続できないため、本日、再議決が行われ本会議に上程されたが、大幅な修正を行うのなら、当然きちんとした審議時間を確保すべきであり、いきなり委員会で採決されたのは、議会制民主主義を無視した暴挙と言わざるを得ない。

5.規制強化の法改正が延びるにつれて、鳴りを潜めていた製造業派遣の求人が再び急増してきた。東日本大震災で真っ先に解雇されたのは、派遣労働者を含む多くの非正規労働者である。さらに、国内の景気はなお低迷し、世界経済も欧州債務危機で、先行きは見えない状態にある。加えて東日本大震災と福島第1原発事故で、被災地は農業、水産業など主力の産業が打撃を受け、未だ再建されていない。経済・産業の再建とともに安定した雇用の確保が今ほど問われている時はない。復興が進む中で求職者は増加しているが、求人の大半は非正規雇用で、正社員でも低賃金というのが実態である。だからこそ、雇用や生活の安定を保障するにふさわしい労働者派遣法の改正を行うべきであった。キーワードは「働き方を変える」ことであり、働き方の質を向上させることが、日本社会の再生、東日本大震災からの復興への一歩である。社民党は、働く仲間の皆さんとの連帯を深め、労働法制の規制緩和の流れを変えていくよう、今後とも、あきらめずに粘り強く、奮闘していく。

以上

全労連談話 : 労働者派遣法修正「改正」法案の衆院通過にあたって

シリーズ「日本の悪夢」第3部/労働者派遣法/全労連談話

全労連談話 : 労働者派遣法修正「改正」法案の衆院通過にあたって
http://www.labornetjp.org/news/2012/1331217708171staff01
談話:労働者派遣法修正「改正」法案の衆院通過にあたって
 本日8日、労働者派遣法「改正」法案が衆議院本会議で可決された。昨日の衆院厚生労働委員会に民主・自公3党による大幅修正案が提出されて、審議なしの可決が強行され、衆院通過が謀られたことに、全労連は強く抗議する。
 3党修正の内容は、製造業派遣・登録型派遣の「原則禁止」の削除、みなし雇用の3年先送りなど、今でさえ大穴が開いていると指摘してきた政府「改正」法案の目玉を取るものであり、事実上の「改正」の看板おろしと言うべき大幅修正である。民主党は派遣切り、「年越し派遣村」を「政治災害」と強く指摘してきたが、今回の3党修正は政権交代に託された労働者・国民の願いに背く、明白な公約違反である。しかも、それを自公と取り引きし、審議もおこなわず採決に伏したのであり、議会制民主主義のうえからも大問題、二重の裏切りと言わざるを得ない。
 舞台は参議院に移されることになるが、衆議院のわずかな審議のなかでは、震災後の雇用情勢の深刻さを理由に人材派遣会社などが雇用機会の拡大の場として有効に機能しているという論が展開された。しかし、雇用の実態は逆である。被災地では短期の低賃金労働が横行し、「これでは暮らせない。復興もできない」という声が強くあがっている。被災地以外でも、非正規雇用のひろがりが賃金破壊をより深刻化させ、内需も低迷する悪循環が進行している。震災後の今だからこそ、雇用の安定が強く求められており、労働者派遣法抜本改正の必要性はいっそう高まっている。
 参議院においては十分な審議時間を確保し、派遣労働者などの参考人招致はもとより、雇用の現場の実態に即した論議を深めることが必要である。そして、製造業派遣・登録型派遣の禁止をはじめ、労働者派遣を厳しく規制する再修正がはかられることを強く求める。
 その実現のため、全労連は派遣・非正規労働者や広範な労働組合、国民と力をあわせ、世論と運動をいっそう強化していく。
  2012年3月8日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

5日の有期労働契約に関する「労働政策審議会労働条件分科会」が急きょ中止

シリーズ「日本の悪夢」第4部/労働契約法/全労連談話

5日の有期労働契約に関する「労働政策審議会労働条件分科会」が急きょ中止
http://www.labornetjp.org/news/2012/1330684604740staff01
5日・月に開催予定だった、有期労働契約に関する「労働政策審議会労働条件分科会」が急きょ中止になったのことです。

 理由は明らかにされていませんが、29日の分科会論議などを受けて、「労働契約法一部改正法律案要綱」の修正で手間取っている可能性もあります。

 なにはともあれ、これで運動の時間が少し伸びました。
 入口規制をはじめ、有期労働契約を規制する実効ある改正を!、震災後の今だからこそ、安定した良質な雇用の実現を!の声をひろげにひろげてください。
 なお、全労連が本日2日に提出した意見書を今度は下に貼り付けました。

 雇用の大原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを明確にし、有期労働契約は「臨時・一時的な業務」に限定せよ!
 均等待遇原則の確立を!
 いつでも切れる安価な労働力としての常用代替なくす実効ある法規制を!


                         2012年 3月 2日
厚生労働大臣
  小 宮 山 洋 子 殿
労働政策審議会
  会  長  諏 訪 康 夫 殿
同 労働条件分科会
  分科会長  岩 村 正 彦 殿
                        全国労働組合総連合
                          議長 大黒 作治

     労働契約法の一部改正法律案要綱に対する意見

 2月29日、労働政策審議会に諮問された有期労働契約に関する「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について、以下のとおり、我が組合の意見を表明する。
 有期労働契約をめぐっては、08年秋のリーマン・ショックに端を発した派遣切り・非正規切りの嵐と同年末からの「年越し派遣村」が大きな社会問題となり、09年夏の政権交代の一つの原動力にもなった。「政治災害」という指摘が各方面から出されたが、いまも有期・非正規労働者はいつでも切れる安価な労働力とされ、脱法的な常用代替が常態化している。それがワーキング・プアの増大、貧困と格差拡大の大きな要因ともなっており、状況は08年当時と何ら変わっていない。「震災後の今だからこそ、安定した良質な雇用」の創出が求められており、それは復興と生活再建、日本経済の再生にとって不可欠の緊急課題である。
 我々の意見は、雇用の現場実態に基づく上記の基本認識からのものであるが、同種の見解が労働界や法曹界をはじめ広範な団体から表明されている。貴職らにおかれては、本意見を十分に尊重し、雇用契約の基本は「期間の定めのない直接雇用」との原則に立ちかえった改正法案の策定に尽力されるよう強く求める。

            記

1.労働契約の原則が「期間の定めのない直接契約」であることを明記し、「臨時・一時的な業務」に限定するなど、合理的な理由がない有期労働契約の締結を制限する仕組みを導入すべきである。

 大震災後の雇用情勢を理由にして、有期労働契約が雇用にとって有益であるかのごとき論が強まっているが、これは完全な誤りである。被災地では月の手取りが10万円程度の短期・低賃金労働が横行しており、「これでは暮らせない。復興もできない」という声が強くあがっている。また、有期契約労働者から雇止めの不安が強く指摘されているが、これは「有期」という雇用形態そのものに内在する根源的な問題である。実際に、いつでも切れる安価な労働力として、雇止めの続発や身分差別とも言うべき賃金など劣悪な処遇格差が各地で問題となっており、有期労働契約はますます常用代替、人件費削減の使い捨て労働の性格を強めている。
 したがって、有期労働契約の締結事由に関する規制(いわゆる「入口規制」)がまずなされる必要があり、「入口規制」を見送った改正は容認できない。労働契約の原則が「期間の定めのない直接契約」であることを明記し、「臨時・一時的な業務」に限定するなど、合理的な理由がない有期労働契約の締結を制限する仕組みを導入することが不可欠である。

2.有期労働契約の反復・継続等に関する法律案要綱の具体については、以下の指摘を踏まえた見直しをおこない、実効ある規制とすべきである。

(1) 要綱「第一 一」(期間の定めのない労働契約への転換)について
 「通算契約期間」が「5年を超える労働者が……期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とされているが、これでは不十分である。
 第一に法律案要綱が「5年」という長期の設定、かつ、「業務」規制ではなく労働者個々への規制であるため、使用者は有期契約労働者を5年近くまで使い人を入れ替えさえすれば、有期労働契約を永続的に利用できる仕組みになっているからである。これでは、人件費抑制の常用代替を何ら規制できないばかりか、当事者からも強い批判があがっているように、5年近くでの雇止めが強く懸念される。短期の細切れ雇用の反復継続など有期労働契約の悪用を防ぐためには、入口規制とセットで「臨時・一時的な業務」に限定することが必要である。有期労働契約は同一業務について「1年・更新2回」程度に限定すべきである。
 第二に、労働者の「申込み」を要件とし、5年経過で「無期転換申込み権」が発生するだけに止めていることから、上限規制が十分に働かない可能性が高いからである。上限規制を実効ある規制として機能させるためには、利用可能期間の到来で「無期労働契約とみなす制度」とすべきである。

(2) 要綱「第一 一」の後段(無期転換後の労働条件)について
 無期転換後の労働条件は「現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件とする」(別段の定めがある部分を除く)ことがわざわざ明記されているが、これは大きな問題である。有期契約労働者からは「無期転換後も差別されるのか」という声があがっているように、均等待遇原則に明確に反して、過去に有期労働契約であったことを理由とする不合理な格差・差別が生じることが強く懸念される。厚労省は「別段の定めには就業規則等も含む」というような説明をしているようだが、だとすればなおさら、わざわざ「同一の労働条件」と書くことは混乱を招くだけであり、同様の業務に従事する労働者との均等待遇原則こそ明記すべきである。

(3) 要綱「第一 二」(いわゆるクーリング期間)について
 法律案要綱は、通算した契約期間が1年を超える場合は、空白期間として6か月(1年未満の場合は契約期間の2分の1)空ければ、通算期間がリセットされることを定めるのみである。つまり、個々の労働者についても、その期間さえおけば再び有期契約労働者として使い続けることができるのであり、これでは無期・正規雇用への転換がすすむとは思われない。「業務」規制としていないこととも相まって、弊害はより甚大であり、「空白期間」に関する本規定は削除すべきである。

(4) 要綱「第二」(雇止め法理の法定化)について
 いわゆる雇止め法理の法定化であるが、「使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」とされており、いくつかの疑問が浮かぶ。たとえば、前出「2(1)」で指摘したように、期間の定めのない契約への転換を通算契約期間5年超としたもとで、司法の判断が従来より緩和されないかとか、3年を超える長期契約も容認されるのではないか、などである。したがって、利用可能な期間とともに「回数」規制が必要であり、「2(1)」で指摘したように「1年・更新2回」程度の上限規制をおこなうことで雇止め法理が有用に機能するようにすべきである。

(5) 要綱「第三」(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)について
 法律案要綱は(期間の定めのない労働者との)「労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としているが、こうしたいくつもの条件をつけることで「不合理と認められる」範囲が限定されかねないことは、パート労働法の運用実態からも伺える。現におこなっている仕事が同じであれば同じ賃金とすることなど、「均等待遇」原則を明確にし、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件」を厳格に禁止すべきである。

                      以 上

……………………………………
全労連 事務局次長 井上 久
東京都文京区湯島2-4-4
全労連会館4階 〒113-8462
TEL5842-5611 FAX5842-5620
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……………………………………

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