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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:15:32.59:+Cm/UVW/0
まど「・・・ほむらちゃん?」
ほむ「なに、まどか」
まど「あの・・・そのサングラスどうしたの?」
ほむ「昨日何となく買ったのよ。ちょっと違和感があるかしら」
まど「えっと、その・・・どうしてそんな変な・・・耳からぶら下げるようなサングラスのかけかたをしてるの?」
ほむ「あら、まどか、今はこのかけかたが流行なのよ。キュウべぇが言っていたわ」
まど「そう、なんだ・・・すごく似合ってると思う、かな」
ほむ「・・・ありがとう?」
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7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:23:36.86:+Cm/UVW/0
マミ「あら、暁美さん。おはよっ、ぶ!?」
ほむ「おはよう、巴マミ」ブラーン
マミ「えっと、暁美さん・・・何か気の迷いでも起こしたの?」
ほむ「何のことかしら。むしろあなたの方を心配してしまうわ、朝からすごい汗よ?」
マミ「・・・いえ、あの。そのサングラスのことなんだけど」
ほむ「あぁ、そうね。これに言及するのは当たり前よね」
マミ「え、えぇ。でも、それについて聞くのはむしろ勇気が要ることだと思うけれど」
ほむ「そういえば、さっきこのサングラスのことをまどかが褒めてくれたのよ」
マミ「それは良かったわね・・・髪型とか服装の変化に気づいてもらえるのは嬉しいものね・・・」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:30:42.99:+Cm/UVW/0
早乙「おはようございますっ。では、早速朝のホームルームを始めま・・・?」
ほむ「どうかしましたか、先生。私のことを凝視して」
早乙「えっと・・・暁美さん。学校では派手な装飾品を外してもらえるかしら?」
ほむ「あ、いえ、お構いなく。続けてください」
早乙「お構いしないわけにはいかないのだけれど・・・」
まど「<ほ、ほむらちゃんっ、流石に学校では外した方が良いと思う・・・>」
ほむ「<・・・そうね。まどかがそう言うなら>」
QB「(僕は純真な少女に何てことを吹き込んでしまったんだろう)」
仁美「・・・excellent」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:38:03.56:+Cm/UVW/0
さや「て、転校生、どうしたのよ。それ」
ほむ「まどかも巴マミも美樹さやかも・・・誰もが私に同じような目を向けるのね」
さや「いや、そりゃ向けるでしょ。黒髪無口系転校生が唐突にグラサンかけ始めたら」
ほむ「そう。それこそが私がこのサングラスをかけ始めた理由でもあるの」
黒髪無口系転校生という、その固定されたイメージから自分を脱却させたいのよっ」
さや「は、はぁ・・」
ほむ「そこで手始めに外見に刺激を加えてみようと試みてみたの」
さや「それでどうして真っ先にサングラスを選択したのさ」
ほむ「いえ、最近人気の音楽デュオの片割れがこういったサングラスのかけかたをしていて、」
さや「ああ、うん。私も見たことあるわー」
ほむ「それに、宇宙をまたにかけるインキュベーターからの有力なアドバイスもあって、」
さや「なんて罪なことを・・・」
ほむ「幼馴染に現をぬかている貴女にも分かりやすく総括すると、
ほむ「私は今日から、アケミストリーよ!」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:40:17.03:Tgr434/K0
さや「まどか、あたしにこの状況を分かりやすく且つ納得できる形で説明して。」
まど「えっ、わ、私?」
ほむ「意気込んで説明してあげたのに貴女はそれをあっさりと無碍にするのね、美樹さやか」
マミ「・・・私たちの理解が追いつかないのか、それとも暁美さんが人類の叡智が到底追いつくことのできない領域に着地してしまったのかしら」
ほむ「そんな大層な話ではないわ。私の行動のすべてはまどかを守ることに直結するのよ」
さや「まどかを守るってのは良いけど、色んな過程をすっ飛ばしている気がするのはあたしだけ?」
ほむ「まどかを守るからには、私は屈強な戦士でなければならないの」
さや「あたしたちは屈強な戦士じゃなくて魔法少女でしょ」
ほむ「だから、私はまず外見から鍛えることにしたの」
まど「・・・?」
ほむ「美樹さやか。このサングラスを持ってごらんなさい」
さや「んぇ?」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:50:45.26:+Cm/UVW/0
さや「うわっ、何これ、すっごい重い!」
ほむ「・・・お分かりいただけたかしら」
まど「?」
マミ「なるほど、貴女はこの超重量級のサングラスをかけることで耳の筋肉を鍛えていたのね・・・!」
まど「耳の、筋肉・・・?」
ほむ「ご名答。それにほら、サングラスって何だかSPっぽくてサマになるでしょう?」
さや「かけかたを間違えさえしなければね・・・」
ほむ「しかし、アケミストリー結成に関して、問題点がひとつあるわ」
まど「問題点?」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:56:05.70:+Cm/UVW/0
ほむ「例の音楽デュオはお分かりの通り、二人組なの」
マミ「デュオですものね」
ほむ「彼らに擬えるにはもうひとりだけ、メンバーが必要になるの、」
さや「な、ん・・」
ほむ「・・・私とともにサングラスを耳にかけて戦ってくれる友が、ね」
マミ「ですって・・」
まど「べ、別に私はほむらちゃん一人が守ってくれるだけでも嬉しいし、
正直なところ、そのサングラスもかけなくても・・・、
ほむ「駄目よ、このアイテムは耳筋鍛錬+士気向上にも繋がるのよ」
さや「あはは、マミさんどうぞ。ああいうの好きじゃないですか~」
マミ「私があんなことをするのはおこがましいわ、美樹さんこそどうぞ?」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:02:02.32:+Cm/UVW/0
まど「あ、えっと。それなら私がサングラスかけても・・・、」
ほむ「何を言っているの、まどか!」
まど「ぁ、うっ!」
ほむ「守られる側の貴女がそんな勇ましい風貌になってしまっては本末転倒だわっ」
まど「・・・ぇ、えっと」
ほむ「まどかは保護欲をそそられるような存在でなければならないの、サングラスなんてかけてしまっては駄目っ」
まど「ご、ごめんなさい・・・」
ほむ「それで、どうするの。美樹さやか、あるいは巴マミ」
さや「・・・こ、ここは公平にじゃんけんで決めませんか?」
マミ「そうね。それならフェアだと思うわ」
さや「じゃあ、じゃんけんで負けた方が、」
ほむ「まどかを守る役目を罰ゲーム扱いするのかしら、美樹さやか」
さや「・・・勝った方が、アケミストリー加入ということで」
ほむ「えぇ、余は満足よ」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:04:41.79:+Cm/UVW/0
さや「最初はぐーっ」
マミ「じゃーんけーん、」
ぽんっ
さや「・・・」
マミ「・・・」
さや「・・・」
マミ「・・・」
さや「・・・あ、私。そろそろ恭介のとこに行かなきゃ♪」
ほむ「待ちなさい、勝利者」
さや「ある意味、敗残者なんだけど」
マミ「ホッ」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:06:54.75:jP6rnKhQ0
さや「や、やだやだっ、サンクラスなんて絶対しないんだからっ!」
ほむ「じゃんけんの勝利者がアケミストリーのメンバーになる、そう決めたのは貴女でしょう?」
マミ「その通り、言いだしっぺが痛い目に遭うとはよく言ったものよね」
さや「にこやかに紅茶飲んでないで助けてくださいよっ、マミさん!」
マミ「御免なさい。一度終幕した舞台に再度上がるような無粋な真似はしたくないの」
さや「オブラートに包んでますけど、かなり突き放した発言ですねそれ」
ほむ「記念すべきアケミストリー結成の瞬間に立ち会えたことに欣喜雀躍すると良いわ、巴マミ」
マミ「そうねっ」
まど「(肩の荷が下りて、マミさんが本当に清々しい表情をしてる・・)
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:17:28.91:+Cm/UVW/0
ほむ「メンバーが二人必要ということを見越して、サングラスを余分に買ってきてあるの」
さや「それはそれは大変用意周到なコトだね・・・」
まど「で、でも、案外似合うんじゃないかなっ」
さや「あんなサングラスのかけかたが案外似合うなんてことないっつーの!」
ほむ「心配しないで。ビギナーな貴女のために、まずは重さ1キロから始めるから」
さや「そんな気配りは要らない・・・」
まど「ほ、ほらっ、もしかしたら上条くんが褒めてくれるかもしれないよっ」
さや「仮に褒められる確率が5%あったとしても、幻滅される可能性が200%な気がするのは私だけ?」
マミ「貴女だけじゃないわね」
さや「ぬ゛あーっ!!」
ほむ「さあ、大人しく観念しなさい、美樹さやか」
まど「やだ、今のほむらちゃんまじイケメンっ」
さや「やだやだやだぁーっ、お嫁に行けなくなるーっ!!」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:28:40.02:+Cm/UVW/0
ほむ「それなら時間停止で無理やりにでも・・・」
マミ「魔力の無駄遣いにも程があるわね」
さや「ハッ・・ちょ、ちょっと待って、転校生っ」
ほむ「何かしら、辞世の句でも浮かんだの?」
さや「あんたは例の音楽デュオに擬えてアケミストリーを結成したがってる・・・そうだよね?」
ほむ「何を今更・・・それがどうかしたのかしら」
さや「あの音楽デュオのグラサンをかけた方があんただとすれば、あたしはもう片方のイケメンな方よね」
ほむ「まあ、そうなるわね。つまり、立ち位置は私が右で貴女は左ということになるわ」
まど「(どっちもサンクラスをかけるつもりならどっちもモデルの人は同じになるような・・・)」
さや「あんた知ってる?そのイケメンな方はね、結成前は農業をやっていたり、色んな職を転々としていたのよ」
ほむ「あら、そうなの。それで、それがどうかしたのかしら」
さや「私たちの身近に、自給自足の生活及び学校に通わないでバイト生活に明け暮れてる知り合いがひとりだけ居るとは思わない?」
ほむ「ま、さか、あのデュオの片方と同じ境遇に置かれていた人材・・・!」
さや「私よりもサマになると思うのよね、『アイツ』なら・・・」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:41:55.79:+Cm/UVW/0
杏子「あー、疲れた・・・さすがに深夜バイト明けは辛いぜ。
でも、ちゃんと働いて金稼がないとさやかの奴に怒られるからなぁ・・・」
ほむ「お邪魔するわ」
杏子「あん、何だよ。珍しいな・・・っぶ!?」
ほむ「・・・貴女に折り入って相談があるの」ブラーン
杏子「お、おう・・何だよ、改まって。らしくないじゃんか・・・」
ほむ「貴女にこの・・サングラスをかけてほしいの」
杏子「は?」
ほむ「ああ。もちろん、今私がかけているコレではなくて、もう一個・・これよ」
杏子「よく分かんねーけど、これかけるだけで良いのかよ・・ほら」
ほむ「・・・」
杏子「な、何だよ」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:43:38.27:+Cm/UVW/0
ほむ「サングラスの奥に隠れた鋭くも優しさに満ちた釣り目、特別仕様の重量にも怯まない耳の強さ、
そして、元から漂っていた不良少女の雰囲気と相まって、素晴らしい化学反応を起こしている・・・完璧だわっ」
杏子「な、なあ、もう外して良、
ほむ「素晴らしいわっ、貴女こそアケミストリーのメンバーに相応しいっ!」
杏子「な、あ、アケ・・何だって?」
ほむ「ここにアケミストリーの結成及び本格始動を高らかに宣言するわっ!」
杏子「ちょ、いや、何の話だよ、説明しろよっ!」
さや「・・・計画通り」
マミ「美樹さん、恐ろしい子・・・」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:52:18.43:+Cm/UVW/0
こうして、暁美ほむらと佐倉杏子の二人は例の音楽デュオのパチモンとして音楽界に足を踏み入れた。
当初はモノマネ芸人と同等の扱いを受けており、アーティストとしての人気や知名度は微細なものであった。
しかし、彼女たちの確かな歌唱力と愛らしいルックスが次第に世間に広まっていき、
著名なプロデューサーや実力のある作詞家、作曲家の後押しも受け、
出すCDはすべてミリオン越え、着うたやカラオケで歌われるアーティストの1位記録を塗り替え、
ライブをすれば数万人規模、武道館やスーパーアリーナで満員御礼は当たり前、
今では押しも押されぬ、本家に引けをとらない、他の追随を許さない現役中学生デュオ(年齢的に考えて)へと成長したのである。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:58:49.77:+Cm/UVW/0
まど「全国ツアーお疲れ様っ、ほむらちゃん、杏子ちゃんっ」
ほむ「ありがとう、まどか。貴女が居なければ私たちはここまで来れなかったわ」
まど「わ、私・・何かしたっけ?」
ほむ「いいえ、貴女の存在が私の心の支えだった。ファンが何万人集まっても、貴女の想いの深さには届かないわ」
まど「えへへ、よくわからないけど、ほむらちゃんがすごく感謝してくれてるのは伝わるよ」
さや「全国20ヶ所のツアー最終日だったのに、あんたのパフォーマンスには少しの疲れも見えなかったわねー」
杏子「あぁ、ありがとな。体力はあたしの取り得のひとつだし、これくらいじゃヘコたれないさ」
さや「そうだね。今では恭介もバイオリンほったらかしであんたたちの曲ばかり聞いてるわよ」
杏子「へぇ、身近にファンが増えていくのはちょっと照れくさいモンだな」
マミ「・・うん。私や美樹さんがアケミストリーを組んでも、ここまで成功することはなかったと思うわ」
さや「私もそう思うよ。あんたが持つ不屈の雑草魂があんた自身をここまで押し上げたんだと思う」
杏子「ああ、ありがとよ・・」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:03:01.42:qkV6Qz520
まど「そういえば、まだ続けてるんだね。そのサングラスのかけかた」
ほむ「えぇ。これは原点を忘れないという自戒の思いが込められてもいるのよ」
まど「初心忘るるべからずって奴だね。ほむらちゃんらしいや」
ほむ「ありがとう。・・私が初めてサングラスをかけて登校したあの日、
まどかが『似合ってる』って言ってくれなかったら、きっと私はあの時点でこのサングラスを外していたと思うの」
まど「・・そ、そう言ってもらえると私も嬉しいなって」
ほむ「貴女にも感謝するわ、キュウべぇ。貴女のプロデュースがなければ、今の地位はなかったでしょうしね」
QB「そんなことはないよ。学業や魔女退治と並行して積み重ねていった、君たちの日々の努力の賜物さ。
僕はそんな君たちにほんの少しだけ調味料を加えたに過ぎないんだからね」
ほむ「そう・・銀河デビューの際はよろしくお願いしたいものね」
QB「こちらこそ。金のなる木の寿命は長いに越したことはないからね」
ほむ「フン、貴方達らしい建前だわ」
まど「あはは・・」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:14:48.56:+Cm/UVW/0
どんな道であれ、自分の進むと決めた道へ歩む彼女たちの背中を押した鹿目まどか。
最初はやや蔑んだ目で見ていたが、彼女たちの実力に惹かれ、
想い人共々すっかりファンになってしまった美樹さやか。
表舞台に立つ彼女たちを自分に見立てて日々妄想に耽る巴マミ。
事務所の斡旋や資金の後押しをしてくれた志筑仁美率いる志筑家。
アケミストリーの成功は周囲の人々の協力なくしては有り得なかった。
日本音楽界最高峰に位置したからこそ、彼女たちはそれを噛み締めていたのである。
だが、破局はあっけなく訪れるものだった。
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:27:36.39:+Cm/UVW/0
ほむ「どうして・・どうしてそんなことを言うの、杏子っ」
杏子「CDは出す度に全何種類形態だの、少し経てばベスト乱発だの、こんなの納得いかねぇよ・・」
ほむ「それでも、私たちを待ってくれているファンは大勢居る。こんなところで解散なんてすれば、
それこそ彼らの心を・・ここまで応援してくれたまどかやさやかたちの気持ちすら踏みにじることになるのよっ」
杏子「分かってる・・分かってるけど、私たちのやり方は間違ってるだろ・・!」
ほむ「杏子・・」
杏子「こんなの・・搾取の他、何物でもないじゃんか・・!」
彼女たちがぶつかった壁は、彼女たちの前に高く聳え立っていた。
純粋に自分たちのやりたい音楽を求め、発してきた彼女たちは間違いなく成功者だ。
だが、順風満帆だったからこそ、彼女たちは挫折という文字を知らないでここまで来てしまった。
挫折を知らない少女にとって、音楽界、芸能界の闇は余りにも衝撃的でしたたかなものに思えたのだ。
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:29:23.87:+Cm/UVW/0
杏子「悪いな、ほむら。今までありがとよ」
ほむ「・・って」
杏子「このサングラスとも、今日でお別れだ」
ほむ「・・待って」
杏子「あたしは、普通の女の子に戻るよ」
ほむ「待って、杏子っ!」
皮肉にも、原点の象徴であったサングラスを置いて、佐倉杏子は元居た場所へと戻っていったのである。
『大人気音楽デュオ・アケミストリー、活動休止』
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:37:28.23:+Cm/UVW/0
いきなりの解散は衝撃的すぎるためか、事務所は活動休止との発表に至った。
もちろん、それは混乱や不利益を避けるための虚偽報告であり、活動再開には少しの見込みもないのだ。
だが、それでもアケミストリーの活動休止は各界に激震を走らせ、各紙が各地で号外をバラ撒くほどの事態になった。
彼女らと友好関係にあった著名なミュージシャンたちは口を揃えるように彼女たちの復活を願い、
多くのファンもまた、それに賛同していた。
一方で、杏子と同じように彼女たちの商法に疑問を抱く人間も僅かながら居り、
そういった彼女たちに否定的な声が大きくなっていったのも事実だ。
売り方に節操がない。まるで搾取だ。暁美と佐倉なのになぜ「アケミストリー」なのか、杏子ちゃんが可哀想じゃないか、など。
無論、それだけ大々的に報道していれば、彼女たちと親密な関係にある人間の耳にも活動休止の一報は届く。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:45:04.85:+Cm/UVW/0
ほむ「あの発表から三日・・未だに私たちの報道は数多い。
的を射た一般のファンの発言もあれば、お門違いなことばかり言うコメンテーター」
ほむ「・・でも、離れて見て実感する。私、いや私たちの影響力、か」
ほむ「杏子とは一切の連絡をとっていない・・それどころか音信不通」
ほむ「吐いて捨てるほど、有望な人材が多い音楽業界。
このまま、私たちは萎んでいって、最後には居なかったことにされるのかしら」
ほむ「もう、中古のCD屋には行けそうにないわね・・ふふ」
ピンポーン
ほむ「・・こんな夜遅くに誰かしら」
ほむ「御免なさい、今は人と会う気分じゃ・・」
ピンポーン
ほむ「・・もう、誰なの?」ガチャ
まど「ほむらちゃん・・」
ほむ「まど、か・・?」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:00:50.45:+Cm/UVW/0
ほむ「御免なさい・・今、貴女に合わせる顔は・・」ブラーン
まど「良いんだよ、もう。無理しないで、ほむらちゃん」
ほむ「・・もしかして、まどかは事の真相を知っているの?」
まど「うん。杏子ちゃんから聞いた。正確には杏子ちゃんの話を聞いたさやかちゃんから聞いたんだけどね」
ほむ「ふふ、無様なものよね。解散するときは音楽性の違いって発表しようかしら、常套句だもの」
まど「ほむらちゃん・・」
ほむ「音楽界を走り続けていく中で、私はまどかを守るっていう目的を疎かにしていたのかもしれないわ。
そんな誠実さの欠けた私に、杏子も愛想を尽かしたのかもしれないわね」
まど「でも、いま解散したら、ファンの人たちは悲しむはずだよ・・!」
ほむ「そう・・それでも、まどかだけが私を応援してれれば良い、私はそれだけで満足よ・・!」
杏子「そんなの、許されるわけねぇよ」
ほむ「杏子・・!」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:02:29.90:+Cm/UVW/0
杏子「あたしたちはもう、取り返しがつかないほどのファンを抱えちまった。
今更私事で幕を閉じられるほどの事態じゃないんだ。ファン、事務所、音楽界すべてに迷惑をかけかねないんだからな」
ほむ「・・・」
杏子「休止の発端であるあたしがこんなこと言うのもおこがましいんだけどさ・
ほむ「じゃあ、どうすれば良いのよっ、私は、私は・・!」
まど「私のこと、他の応援してくれた人たちのこと・・その二つを天秤にかけたところで答えは出ないよ、ほむらちゃん」
ほむ「・・まどか?」
まど「ほむらちゃんは優しいから、私を選んでくれたとしても、ファンの皆を裏切った罪悪感で今まで通りに振舞えるわけない・・」
ほむ「じゃあ、どうすれば・・!」
まど「うん・・だから、ね?」
まど「・・キュウべぇ、居る?」
QB「何だい、まどか?」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:06:54.08:+Cm/UVW/0
まど「私、契約するよ、ほむらちゃん」
ほむ「な、何をっ・・!」
杏子「悪いな、ほむら」
ほむ「がっぐ、は、離しなさい杏子っ」
杏子「まどかからの頼みなんだ、聞けねぇよ」
ほむ「そんなっ、こんなことが許されるはずが・・!」
まど「ごめんね、ほむらちゃん。・・キュウべぇ、
「ほむらちゃんと杏子ちゃんを普通の女の子に・・アケミストリー結成前の二人に戻してあげて」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:12:57.88:qkV6Qz520
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まど「どう、似合う?ほむらちゃん」
ほむ「もう、そのサングラスのかけかたはしないでって言ったじゃない・・でも、似合ってるわ」
まど「ティヒヒ、ありがと、ほむらちゃんっ」
ほむ「ねぇ、まどか」
まど「なぁに?」
ほむ「どうして・・どうして、あんな願い事をしたの?」
まど「・・・」
ほむ「・・まどか?」
まど「あのね、ほむらちゃんが大人気なのはとっても嬉しかったよ。
でも、それと同時にほむらちゃんも杏子ちゃんもどこか遠い存在になっちゃった気がしたの」
ほむ「まどか・・」
まど「勿論、ほむらちゃんはいつも私のことを気にかけてくれたし、私のことも守ってくれていた。
それでも、私の心は満たされなかった。ほむらちゃんは多忙な音楽活動や宣伝廻りで学校に来ることが減ったし、
直に会う機会だってどんどん減っていった。そんな日々が続いていくうちに、アケミストリー結成前の、あの学校での日常が恋しくなっていったの」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:24:48.71:+Cm/UVW/0
ほむ「・・・」
まど「こんな何気ない日常が恋しくなっていった・・だから、契約した。
あはは、だからね、私はほむらちゃんの為と言いつつ、自分のために契約したも同然なんだよ?」
ほむ「そんな、こと・・ないわ」
まど「泣かないで、ほむらちゃん。
何百万人も居たファンは居なかったことになっちゃったけれど・・私は永遠にほむらちゃんのファンだから」
ほむ「・・まどか」
まど「ほら、早くマミさんの家に行こっ。さやかちゃんとマミさんと杏子ちゃんと一緒に、
ほむらちゃんと杏子ちゃんのおかえりパーティするんだからっ」
ほむ「うん・・うんっ、行こう、まどか・・!」
どれだけのCDが売れたとしても、どれだけのファンが居たとしても、
この何気ない日常を取り戻した幸せに比べれば、それは些細なものだったのかもしれない。
でも、彼女が私に与えてくれたこの日常を二度と失いはしない。
だから、私は・・、「まどかを、この日常を守っていく」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:28:16.80:+Cm/UVW/0
まど「急がないと置いてくよ、ほむらちゃん」
ほむ「・・待って、まどかっ」
あの思い出のサングラスは、今もなお、棚の上にひっそりと飾ってある。
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:32:07.57:qkV6Qz520
マミ「あら、暁美さん。おはよっ、ぶ!?」
ほむ「おはよう、巴マミ」ブラーン
マミ「えっと、暁美さん・・・何か気の迷いでも起こしたの?」
ほむ「何のことかしら。むしろあなたの方を心配してしまうわ、朝からすごい汗よ?」
マミ「・・・いえ、あの。そのサングラスのことなんだけど」
ほむ「あぁ、そうね。これに言及するのは当たり前よね」
マミ「え、えぇ。でも、それについて聞くのはむしろ勇気が要ることだと思うけれど」
ほむ「そういえば、さっきこのサングラスのことをまどかが褒めてくれたのよ」
マミ「それは良かったわね・・・髪型とか服装の変化に気づいてもらえるのは嬉しいものね・・・」
早乙「おはようございますっ。では、早速朝のホームルームを始めま・・・?」
ほむ「どうかしましたか、先生。私のことを凝視して」
早乙「えっと・・・暁美さん。学校では派手な装飾品を外してもらえるかしら?」
ほむ「あ、いえ、お構いなく。続けてください」
早乙「お構いしないわけにはいかないのだけれど・・・」
まど「<ほ、ほむらちゃんっ、流石に学校では外した方が良いと思う・・・>」
ほむ「<・・・そうね。まどかがそう言うなら>」
QB「(僕は純真な少女に何てことを吹き込んでしまったんだろう)」
仁美「・・・excellent」
さや「て、転校生、どうしたのよ。それ」
ほむ「まどかも巴マミも美樹さやかも・・・誰もが私に同じような目を向けるのね」
さや「いや、そりゃ向けるでしょ。黒髪無口系転校生が唐突にグラサンかけ始めたら」
ほむ「そう。それこそが私がこのサングラスをかけ始めた理由でもあるの」
黒髪無口系転校生という、その固定されたイメージから自分を脱却させたいのよっ」
さや「は、はぁ・・」
ほむ「そこで手始めに外見に刺激を加えてみようと試みてみたの」
さや「それでどうして真っ先にサングラスを選択したのさ」
ほむ「いえ、最近人気の音楽デュオの片割れがこういったサングラスのかけかたをしていて、」
さや「ああ、うん。私も見たことあるわー」
ほむ「それに、宇宙をまたにかけるインキュベーターからの有力なアドバイスもあって、」
さや「なんて罪なことを・・・」
ほむ「幼馴染に現をぬかている貴女にも分かりやすく総括すると、
ほむ「私は今日から、アケミストリーよ!」
ほぅ
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 13:46:14.18:+Cm/UVW/0さや「まどか、あたしにこの状況を分かりやすく且つ納得できる形で説明して。」
まど「えっ、わ、私?」
ほむ「意気込んで説明してあげたのに貴女はそれをあっさりと無碍にするのね、美樹さやか」
マミ「・・・私たちの理解が追いつかないのか、それとも暁美さんが人類の叡智が到底追いつくことのできない領域に着地してしまったのかしら」
ほむ「そんな大層な話ではないわ。私の行動のすべてはまどかを守ることに直結するのよ」
さや「まどかを守るってのは良いけど、色んな過程をすっ飛ばしている気がするのはあたしだけ?」
ほむ「まどかを守るからには、私は屈強な戦士でなければならないの」
さや「あたしたちは屈強な戦士じゃなくて魔法少女でしょ」
ほむ「だから、私はまず外見から鍛えることにしたの」
まど「・・・?」
ほむ「美樹さやか。このサングラスを持ってごらんなさい」
さや「んぇ?」
さや「うわっ、何これ、すっごい重い!」
ほむ「・・・お分かりいただけたかしら」
まど「?」
マミ「なるほど、貴女はこの超重量級のサングラスをかけることで耳の筋肉を鍛えていたのね・・・!」
まど「耳の、筋肉・・・?」
ほむ「ご名答。それにほら、サングラスって何だかSPっぽくてサマになるでしょう?」
さや「かけかたを間違えさえしなければね・・・」
ほむ「しかし、アケミストリー結成に関して、問題点がひとつあるわ」
まど「問題点?」
ほむ「例の音楽デュオはお分かりの通り、二人組なの」
マミ「デュオですものね」
ほむ「彼らに擬えるにはもうひとりだけ、メンバーが必要になるの、」
さや「な、ん・・」
ほむ「・・・私とともにサングラスを耳にかけて戦ってくれる友が、ね」
マミ「ですって・・」
まど「べ、別に私はほむらちゃん一人が守ってくれるだけでも嬉しいし、
正直なところ、そのサングラスもかけなくても・・・、
ほむ「駄目よ、このアイテムは耳筋鍛錬+士気向上にも繋がるのよ」
さや「あはは、マミさんどうぞ。ああいうの好きじゃないですか~」
マミ「私があんなことをするのはおこがましいわ、美樹さんこそどうぞ?」
まど「あ、えっと。それなら私がサングラスかけても・・・、」
ほむ「何を言っているの、まどか!」
まど「ぁ、うっ!」
ほむ「守られる側の貴女がそんな勇ましい風貌になってしまっては本末転倒だわっ」
まど「・・・ぇ、えっと」
ほむ「まどかは保護欲をそそられるような存在でなければならないの、サングラスなんてかけてしまっては駄目っ」
まど「ご、ごめんなさい・・・」
ほむ「それで、どうするの。美樹さやか、あるいは巴マミ」
さや「・・・こ、ここは公平にじゃんけんで決めませんか?」
マミ「そうね。それならフェアだと思うわ」
さや「じゃあ、じゃんけんで負けた方が、」
ほむ「まどかを守る役目を罰ゲーム扱いするのかしら、美樹さやか」
さや「・・・勝った方が、アケミストリー加入ということで」
ほむ「えぇ、余は満足よ」
さや「最初はぐーっ」
マミ「じゃーんけーん、」
ぽんっ
さや「・・・」
マミ「・・・」
さや「・・・」
マミ「・・・」
さや「・・・あ、私。そろそろ恭介のとこに行かなきゃ♪」
ほむ「待ちなさい、勝利者」
さや「ある意味、敗残者なんだけど」
マミ「ホッ」
マミさんに勝ってほしかったような複雑な気持ち
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 14:10:49.69:+Cm/UVW/0さや「や、やだやだっ、サンクラスなんて絶対しないんだからっ!」
ほむ「じゃんけんの勝利者がアケミストリーのメンバーになる、そう決めたのは貴女でしょう?」
マミ「その通り、言いだしっぺが痛い目に遭うとはよく言ったものよね」
さや「にこやかに紅茶飲んでないで助けてくださいよっ、マミさん!」
マミ「御免なさい。一度終幕した舞台に再度上がるような無粋な真似はしたくないの」
さや「オブラートに包んでますけど、かなり突き放した発言ですねそれ」
ほむ「記念すべきアケミストリー結成の瞬間に立ち会えたことに欣喜雀躍すると良いわ、巴マミ」
マミ「そうねっ」
まど「(肩の荷が下りて、マミさんが本当に清々しい表情をしてる・・)
ほむ「メンバーが二人必要ということを見越して、サングラスを余分に買ってきてあるの」
さや「それはそれは大変用意周到なコトだね・・・」
まど「で、でも、案外似合うんじゃないかなっ」
さや「あんなサングラスのかけかたが案外似合うなんてことないっつーの!」
ほむ「心配しないで。ビギナーな貴女のために、まずは重さ1キロから始めるから」
さや「そんな気配りは要らない・・・」
まど「ほ、ほらっ、もしかしたら上条くんが褒めてくれるかもしれないよっ」
さや「仮に褒められる確率が5%あったとしても、幻滅される可能性が200%な気がするのは私だけ?」
マミ「貴女だけじゃないわね」
さや「ぬ゛あーっ!!」
ほむ「さあ、大人しく観念しなさい、美樹さやか」
まど「やだ、今のほむらちゃんまじイケメンっ」
さや「やだやだやだぁーっ、お嫁に行けなくなるーっ!!」
ほむ「それなら時間停止で無理やりにでも・・・」
マミ「魔力の無駄遣いにも程があるわね」
さや「ハッ・・ちょ、ちょっと待って、転校生っ」
ほむ「何かしら、辞世の句でも浮かんだの?」
さや「あんたは例の音楽デュオに擬えてアケミストリーを結成したがってる・・・そうだよね?」
ほむ「何を今更・・・それがどうかしたのかしら」
さや「あの音楽デュオのグラサンをかけた方があんただとすれば、あたしはもう片方のイケメンな方よね」
ほむ「まあ、そうなるわね。つまり、立ち位置は私が右で貴女は左ということになるわ」
まど「(どっちもサンクラスをかけるつもりならどっちもモデルの人は同じになるような・・・)」
さや「あんた知ってる?そのイケメンな方はね、結成前は農業をやっていたり、色んな職を転々としていたのよ」
ほむ「あら、そうなの。それで、それがどうかしたのかしら」
さや「私たちの身近に、自給自足の生活及び学校に通わないでバイト生活に明け暮れてる知り合いがひとりだけ居るとは思わない?」
ほむ「ま、さか、あのデュオの片方と同じ境遇に置かれていた人材・・・!」
さや「私よりもサマになると思うのよね、『アイツ』なら・・・」
杏子「あー、疲れた・・・さすがに深夜バイト明けは辛いぜ。
でも、ちゃんと働いて金稼がないとさやかの奴に怒られるからなぁ・・・」
ほむ「お邪魔するわ」
杏子「あん、何だよ。珍しいな・・・っぶ!?」
ほむ「・・・貴女に折り入って相談があるの」ブラーン
杏子「お、おう・・何だよ、改まって。らしくないじゃんか・・・」
ほむ「貴女にこの・・サングラスをかけてほしいの」
杏子「は?」
ほむ「ああ。もちろん、今私がかけているコレではなくて、もう一個・・これよ」
杏子「よく分かんねーけど、これかけるだけで良いのかよ・・ほら」
ほむ「・・・」
杏子「な、何だよ」
ほむ「サングラスの奥に隠れた鋭くも優しさに満ちた釣り目、特別仕様の重量にも怯まない耳の強さ、
そして、元から漂っていた不良少女の雰囲気と相まって、素晴らしい化学反応を起こしている・・・完璧だわっ」
杏子「な、なあ、もう外して良、
ほむ「素晴らしいわっ、貴女こそアケミストリーのメンバーに相応しいっ!」
杏子「な、あ、アケ・・何だって?」
ほむ「ここにアケミストリーの結成及び本格始動を高らかに宣言するわっ!」
杏子「ちょ、いや、何の話だよ、説明しろよっ!」
さや「・・・計画通り」
マミ「美樹さん、恐ろしい子・・・」
こうして、暁美ほむらと佐倉杏子の二人は例の音楽デュオのパチモンとして音楽界に足を踏み入れた。
当初はモノマネ芸人と同等の扱いを受けており、アーティストとしての人気や知名度は微細なものであった。
しかし、彼女たちの確かな歌唱力と愛らしいルックスが次第に世間に広まっていき、
著名なプロデューサーや実力のある作詞家、作曲家の後押しも受け、
出すCDはすべてミリオン越え、着うたやカラオケで歌われるアーティストの1位記録を塗り替え、
ライブをすれば数万人規模、武道館やスーパーアリーナで満員御礼は当たり前、
今では押しも押されぬ、本家に引けをとらない、他の追随を許さない現役中学生デュオ(年齢的に考えて)へと成長したのである。
まど「全国ツアーお疲れ様っ、ほむらちゃん、杏子ちゃんっ」
ほむ「ありがとう、まどか。貴女が居なければ私たちはここまで来れなかったわ」
まど「わ、私・・何かしたっけ?」
ほむ「いいえ、貴女の存在が私の心の支えだった。ファンが何万人集まっても、貴女の想いの深さには届かないわ」
まど「えへへ、よくわからないけど、ほむらちゃんがすごく感謝してくれてるのは伝わるよ」
さや「全国20ヶ所のツアー最終日だったのに、あんたのパフォーマンスには少しの疲れも見えなかったわねー」
杏子「あぁ、ありがとな。体力はあたしの取り得のひとつだし、これくらいじゃヘコたれないさ」
さや「そうだね。今では恭介もバイオリンほったらかしであんたたちの曲ばかり聞いてるわよ」
杏子「へぇ、身近にファンが増えていくのはちょっと照れくさいモンだな」
マミ「・・うん。私や美樹さんがアケミストリーを組んでも、ここまで成功することはなかったと思うわ」
さや「私もそう思うよ。あんたが持つ不屈の雑草魂があんた自身をここまで押し上げたんだと思う」
杏子「ああ、ありがとよ・・」
すこし目を離した隙になんてこと…
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:04:13.43:N0Dx6Utv0
アケミストリーはどこへ行こうとしてるのだろうか
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 15:07:51.38:+Cm/UVW/0まど「そういえば、まだ続けてるんだね。そのサングラスのかけかた」
ほむ「えぇ。これは原点を忘れないという自戒の思いが込められてもいるのよ」
まど「初心忘るるべからずって奴だね。ほむらちゃんらしいや」
ほむ「ありがとう。・・私が初めてサングラスをかけて登校したあの日、
まどかが『似合ってる』って言ってくれなかったら、きっと私はあの時点でこのサングラスを外していたと思うの」
まど「・・そ、そう言ってもらえると私も嬉しいなって」
ほむ「貴女にも感謝するわ、キュウべぇ。貴女のプロデュースがなければ、今の地位はなかったでしょうしね」
QB「そんなことはないよ。学業や魔女退治と並行して積み重ねていった、君たちの日々の努力の賜物さ。
僕はそんな君たちにほんの少しだけ調味料を加えたに過ぎないんだからね」
ほむ「そう・・銀河デビューの際はよろしくお願いしたいものね」
QB「こちらこそ。金のなる木の寿命は長いに越したことはないからね」
ほむ「フン、貴方達らしい建前だわ」
まど「あはは・・」
どんな道であれ、自分の進むと決めた道へ歩む彼女たちの背中を押した鹿目まどか。
最初はやや蔑んだ目で見ていたが、彼女たちの実力に惹かれ、
想い人共々すっかりファンになってしまった美樹さやか。
表舞台に立つ彼女たちを自分に見立てて日々妄想に耽る巴マミ。
事務所の斡旋や資金の後押しをしてくれた志筑仁美率いる志筑家。
アケミストリーの成功は周囲の人々の協力なくしては有り得なかった。
日本音楽界最高峰に位置したからこそ、彼女たちはそれを噛み締めていたのである。
だが、破局はあっけなく訪れるものだった。
ほむ「どうして・・どうしてそんなことを言うの、杏子っ」
杏子「CDは出す度に全何種類形態だの、少し経てばベスト乱発だの、こんなの納得いかねぇよ・・」
ほむ「それでも、私たちを待ってくれているファンは大勢居る。こんなところで解散なんてすれば、
それこそ彼らの心を・・ここまで応援してくれたまどかやさやかたちの気持ちすら踏みにじることになるのよっ」
杏子「分かってる・・分かってるけど、私たちのやり方は間違ってるだろ・・!」
ほむ「杏子・・」
杏子「こんなの・・搾取の他、何物でもないじゃんか・・!」
彼女たちがぶつかった壁は、彼女たちの前に高く聳え立っていた。
純粋に自分たちのやりたい音楽を求め、発してきた彼女たちは間違いなく成功者だ。
だが、順風満帆だったからこそ、彼女たちは挫折という文字を知らないでここまで来てしまった。
挫折を知らない少女にとって、音楽界、芸能界の闇は余りにも衝撃的でしたたかなものに思えたのだ。
杏子「悪いな、ほむら。今までありがとよ」
ほむ「・・って」
杏子「このサングラスとも、今日でお別れだ」
ほむ「・・待って」
杏子「あたしは、普通の女の子に戻るよ」
ほむ「待って、杏子っ!」
皮肉にも、原点の象徴であったサングラスを置いて、佐倉杏子は元居た場所へと戻っていったのである。
『大人気音楽デュオ・アケミストリー、活動休止』
いきなりの解散は衝撃的すぎるためか、事務所は活動休止との発表に至った。
もちろん、それは混乱や不利益を避けるための虚偽報告であり、活動再開には少しの見込みもないのだ。
だが、それでもアケミストリーの活動休止は各界に激震を走らせ、各紙が各地で号外をバラ撒くほどの事態になった。
彼女らと友好関係にあった著名なミュージシャンたちは口を揃えるように彼女たちの復活を願い、
多くのファンもまた、それに賛同していた。
一方で、杏子と同じように彼女たちの商法に疑問を抱く人間も僅かながら居り、
そういった彼女たちに否定的な声が大きくなっていったのも事実だ。
売り方に節操がない。まるで搾取だ。暁美と佐倉なのになぜ「アケミストリー」なのか、杏子ちゃんが可哀想じゃないか、など。
無論、それだけ大々的に報道していれば、彼女たちと親密な関係にある人間の耳にも活動休止の一報は届く。
ほむ「あの発表から三日・・未だに私たちの報道は数多い。
的を射た一般のファンの発言もあれば、お門違いなことばかり言うコメンテーター」
ほむ「・・でも、離れて見て実感する。私、いや私たちの影響力、か」
ほむ「杏子とは一切の連絡をとっていない・・それどころか音信不通」
ほむ「吐いて捨てるほど、有望な人材が多い音楽業界。
このまま、私たちは萎んでいって、最後には居なかったことにされるのかしら」
ほむ「もう、中古のCD屋には行けそうにないわね・・ふふ」
ピンポーン
ほむ「・・こんな夜遅くに誰かしら」
ほむ「御免なさい、今は人と会う気分じゃ・・」
ピンポーン
ほむ「・・もう、誰なの?」ガチャ
まど「ほむらちゃん・・」
ほむ「まど、か・・?」
ほむ「御免なさい・・今、貴女に合わせる顔は・・」ブラーン
まど「良いんだよ、もう。無理しないで、ほむらちゃん」
ほむ「・・もしかして、まどかは事の真相を知っているの?」
まど「うん。杏子ちゃんから聞いた。正確には杏子ちゃんの話を聞いたさやかちゃんから聞いたんだけどね」
ほむ「ふふ、無様なものよね。解散するときは音楽性の違いって発表しようかしら、常套句だもの」
まど「ほむらちゃん・・」
ほむ「音楽界を走り続けていく中で、私はまどかを守るっていう目的を疎かにしていたのかもしれないわ。
そんな誠実さの欠けた私に、杏子も愛想を尽かしたのかもしれないわね」
まど「でも、いま解散したら、ファンの人たちは悲しむはずだよ・・!」
ほむ「そう・・それでも、まどかだけが私を応援してれれば良い、私はそれだけで満足よ・・!」
杏子「そんなの、許されるわけねぇよ」
ほむ「杏子・・!」
杏子「あたしたちはもう、取り返しがつかないほどのファンを抱えちまった。
今更私事で幕を閉じられるほどの事態じゃないんだ。ファン、事務所、音楽界すべてに迷惑をかけかねないんだからな」
ほむ「・・・」
杏子「休止の発端であるあたしがこんなこと言うのもおこがましいんだけどさ・
ほむ「じゃあ、どうすれば良いのよっ、私は、私は・・!」
まど「私のこと、他の応援してくれた人たちのこと・・その二つを天秤にかけたところで答えは出ないよ、ほむらちゃん」
ほむ「・・まどか?」
まど「ほむらちゃんは優しいから、私を選んでくれたとしても、ファンの皆を裏切った罪悪感で今まで通りに振舞えるわけない・・」
ほむ「じゃあ、どうすれば・・!」
まど「うん・・だから、ね?」
まど「・・キュウべぇ、居る?」
QB「何だい、まどか?」
まど「私、契約するよ、ほむらちゃん」
ほむ「な、何をっ・・!」
杏子「悪いな、ほむら」
ほむ「がっぐ、は、離しなさい杏子っ」
杏子「まどかからの頼みなんだ、聞けねぇよ」
ほむ「そんなっ、こんなことが許されるはずが・・!」
まど「ごめんね、ほむらちゃん。・・キュウべぇ、
「ほむらちゃんと杏子ちゃんを普通の女の子に・・アケミストリー結成前の二人に戻してあげて」
ちょっと目を離した隙になんてこと…
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:15:03.00:+Cm/UVW/0-----
まど「どう、似合う?ほむらちゃん」
ほむ「もう、そのサングラスのかけかたはしないでって言ったじゃない・・でも、似合ってるわ」
まど「ティヒヒ、ありがと、ほむらちゃんっ」
ほむ「ねぇ、まどか」
まど「なぁに?」
ほむ「どうして・・どうして、あんな願い事をしたの?」
まど「・・・」
ほむ「・・まどか?」
まど「あのね、ほむらちゃんが大人気なのはとっても嬉しかったよ。
でも、それと同時にほむらちゃんも杏子ちゃんもどこか遠い存在になっちゃった気がしたの」
ほむ「まどか・・」
まど「勿論、ほむらちゃんはいつも私のことを気にかけてくれたし、私のことも守ってくれていた。
それでも、私の心は満たされなかった。ほむらちゃんは多忙な音楽活動や宣伝廻りで学校に来ることが減ったし、
直に会う機会だってどんどん減っていった。そんな日々が続いていくうちに、アケミストリー結成前の、あの学校での日常が恋しくなっていったの」
ほむ「・・・」
まど「こんな何気ない日常が恋しくなっていった・・だから、契約した。
あはは、だからね、私はほむらちゃんの為と言いつつ、自分のために契約したも同然なんだよ?」
ほむ「そんな、こと・・ないわ」
まど「泣かないで、ほむらちゃん。
何百万人も居たファンは居なかったことになっちゃったけれど・・私は永遠にほむらちゃんのファンだから」
ほむ「・・まどか」
まど「ほら、早くマミさんの家に行こっ。さやかちゃんとマミさんと杏子ちゃんと一緒に、
ほむらちゃんと杏子ちゃんのおかえりパーティするんだからっ」
ほむ「うん・・うんっ、行こう、まどか・・!」
どれだけのCDが売れたとしても、どれだけのファンが居たとしても、
この何気ない日常を取り戻した幸せに比べれば、それは些細なものだったのかもしれない。
でも、彼女が私に与えてくれたこの日常を二度と失いはしない。
だから、私は・・、「まどかを、この日常を守っていく」
まど「急がないと置いてくよ、ほむらちゃん」
ほむ「・・待って、まどかっ」
あの思い出のサングラスは、今もなお、棚の上にひっそりと飾ってある。
( ;∀^) イイハナシカナー
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 16:45:20.94:F7R886dA0
全然良くねーよwwwwww目的考えたらバッドエンドじゃねーかwwwwww
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/27(火) 17:02:49.79:TmnLIcuq0
あっるえー
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コメント一覧 (8)
……ナンチューコト スッゴイカワイソ
ほむら「今筋トレで忙しいから」
みたいなネタだと思ったら・・・
でもまどかが契約してる時点で大失敗だけどなwww