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8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 13:46:22.65:iQ0DVHiI0
京子「結衣さんや」
結衣「なに?」
京子「学園祭の劇は大好評でしたな」
結衣「ああ、オペラ座の怪人?」
京子「そうそう」
結衣「楽しかったよね」
京子「ということで…今度はキャッツ、やりましょうや」
結衣「キャッツ?」
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11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 13:50:09.67:iQ0DVHiI0
京子「あれ?結衣、キャッツ知らない?」
結衣「いや、なんとなーく聞いたことはあるけど…ミュージカルだろ?」
京子「そうそう。元は有名な詩集なんだけどね」
結衣「キャッツをやるのか?」
京子「そう!」
結衣「お前な、ここは演劇部じゃないんだぞ!」
京子「いいじゃん!楽しければ何でも」
結衣「んー…」
結衣「でも私、キャッツのこと知らないし」
京子「そんな貴方に劇団四季さんのステージガイド!」
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/
結衣「ちょっと読んでくる」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 13:56:30.66:iQ0DVHiI0
京子「おっ、読み終わった?」
結衣「うん。でも、ステージガイドを読んで一つ思ったことがあるんだ」
京子「なに?」
結衣「これ、娯楽部だけじゃできないよな」
京子「うん」
結衣「キャスト四人じゃどう見積もっても足りないよな」
京子「うん」
結衣「どうやって人数を集めるんだ?」
京子「生徒k」
結衣「だよね」
京子「いいでしょ?」
結衣「生徒会の人たちが迷惑じゃなければね…」
京子「じゃあ、早いトコ生徒会室行こう!」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:00:25.35:iQ0DVHiI0
綾乃「今度はキャッツ!?」
京子「そうだよ♪」
千歳「歳納さん、劇にハマったみたいやなあ」
綾乃「しし、仕方が無いわね!今回も手伝ってあげる!」
京子「やったー!」
千歳「キャッツてあの有名なミュージカルやろ?」
京子「うん」
千歳「ウチ、あんまり詳しくないんやけど…」
京子「大丈夫だよ!ミュージカルキャッツの大元になった詩集を買ってきたんだ!」
京子「これを見れば、キャッツのことも色々わかると思う!」
千歳「ほな、吉川さんと赤座さんも呼んで、みんなで呼んでみよ」
結衣「私、あかりとちなつちゃん呼んでくるね」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:08:20.64:iQ0DVHiI0
リーダー猫(マンカストラップ)赤座あかり
あまのじゃく猫(ラム・タム・タガー)歳納京子
娼婦猫(グリザベラ)杉浦綾乃
泥棒猫コンビ(マンゴジェリー&ランペルティーザ)古谷向日葵&大室櫻子
犯罪王猫(マキャヴィティ)池田千歳
魔法使い猫(ミストフェリーズ)松本りせ
年老いた役者猫(海賊猫グロウルタイガー)船見結衣
役者猫の付き添い猫(悪女猫グリドルボーン)吉川ちなつ
長老猫(オールドデュトロノミー)西垣先生
ナレーション 赤座あかね
照明・音響 西垣先生・松本りせ
(舞台をご覧になる前に、それぞれがどういう猫なのかステージガイドのネーミング・オブ・キャッツを見てぜひご確認ください)
(その方が、舞台をさらにお楽しみいただけると思います!) 舞台監督 歳納京子より
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:15:12.50:iQ0DVHiI0
七森中学 キャッツ 演目 目次
1 猫たちの舞踏会
2 猫に名前をつけるのは
3 あまのじゃく猫、ラム・タム・タガー
4 娼婦猫の思い出
5 泥棒猫コンビは今日もゆく
6 あいつは犯罪王!
7 素敵な魔法使い猫
8 役者猫はかく語りき
9 グロウルタイガー最後の戦い
10 長老猫のごあいさつ
11 ただ一匹だけのねこ
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:21:47.60:iQ0DVHiI0
西垣「来場いただいた生徒の諸君、どうもありがとう」
西垣「それではこれより、キャッツの上演を開始する」
西垣「周りを良く見回してみたまえ。君たちは、もう既に猫の世界にいるんだ…」
1 猫たちの舞踏会
あかり「ジェリクルキャッツを知ってる?」(リーダー猫)
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:25:23.46:iQ0DVHiI0
あかり「ジェリクルキャッツは、人間と馴れ合うことを拒んで、猫らしく、猫の人生を送る猫たち」
あかり「あかりも、そのジェリクルキャッツなんだ。それも、ジェリクルキャッツたちのリーダーなんだよ!」
あかり「でも、ジェリクルキャッツの中で一番尊敬されるのは…リーダーじゃないんだよね…」
あかり「ジェリクルキャッツの中で、誰よりも長く生きてきた長老猫さんこそ、全てのジェリクルキャッツから尊敬される猫さんなんだよ」
あかり「今日は、その長老猫さんが年に一度だけ姿を見せる、ジェリクル舞踏会の日!」
あかり「ほら見て!青くて綺麗なジェリクルキャッツのための満月がもうお空に出てる!」
あかり「もうすぐ、沢山のジェリクルキャッツたちが集まってくる!」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:33:52.07:iQ0DVHiI0
京子「やあ!魔法使いの猫君じゃないか!」(あまのじゃく猫)
りせ「……」(魔法使い猫)
京子「君は本当にシャイだね」
向日葵「それで、今日の獲物は何ですの?」(泥棒猫)
櫻子「今日は年に一度の舞踏会だからね!おいしい食べ物をたんまり盗もう!」(泥棒猫)
向日葵「いいですわね。櫻子がヘマをやらかさなければ随分簡単ですわ」
櫻子「向日葵がヘマをやらかさなきゃ、随分簡単な獲物だね」
結衣「こんなに年老いた私でも、この日限りは昔の若さを取り戻したようになれるよ」(年老いた役者猫)
ちなつ「あなたは今でも昔のように素敵なままですよ」(役者猫の付き添い猫)
結衣「ありがとう。嬉しいよ」
ちなつ「えへへ ///」
綾乃「……みんな、輝かしき日の私のことなんてきっと忘れてしまったわよね…」(娼婦猫)
綾乃「昔は、名の知れた娼婦で…誰からも美しいと言われたけれど…」
綾乃「そのことも、今は私の思い出の中にしか無いわ…」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:41:00.95:iQ0DVHiI0
京子「うわっ…娼婦猫の綾乃だ…酷い格好だな」
あかり「きょっ、京子ちゃんもっと小さい声で…」
櫻子「あっ、綾乃さん…」
向日葵「しっ!気味が悪いですわ…あまり近づかないようにしましょう」
櫻子「う、うん」
結衣「綾乃だ……」
ちなつ「穢れた娼婦猫じゃないですか…なんで、今更舞踏会に…」
綾乃「やっぱり、今の私は何処へ行ってものけ者ね…」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:50:43.39:iQ0DVHiI0
あかり「今日は、リーダー猫としてしっかりしないと!」
あかり「そういえば、どうして長老猫が舞踏会の日にみんなの前に姿を現すのか、知ってる?」
あかり「それはね、天上の世界へのぼる、ただ一匹のジェリクルキャッツを選ぶためなんだ!」
あかり「天上の世界へ行けば、また新しいジェリクルキャッツとして、この世界に生まれ変われるんだ!」
あかり「つまり、新しい猫生を手に入れられるってこと」
あかり「みんな気になってるよ。誰が天上へのぼるのか」
あかり「あっ!みんなが集まってきた!もうすぐ、ジェリクル舞踏会の始まるんだ!」
あかり「でも、一体誰が天上へのぼれるんだろう?」
あかり「もしかしたら、あかりかも?」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 14:55:40.83:iQ0DVHiI0
2 猫に名前をつけるのは
あかり「猫に名前をつけるのは、とても難しいことなんだ」
京子「その通りだね。ゲームのキャラクターの名前を決めるように猫に名前をつけちゃうとか、なにかの片手間に猫の名前を考えるなんてバカげてる」
あかり「信じられないかもしれないけど、猫には三つの名前が必要だよ」
向日葵「例えば、あなたたち人間が呼ぶような名前」
向日葵「クロ、ヴィクター、ピーターとか、トム、ジェームス、ジョージ…」
向日葵「ちょっとゴージャスにしてみると、プラトー、アドメーデス、エレクトラ…」
櫻子「まあ、どれもありふれた名前。でも、もっと素敵な名前が猫には必要だよね」
櫻子「もっと個性的で、威厳のある名前がね。どうしてそんな名前が必要なのかって?」
結衣「そういう名前でなきゃ、シッポをピンと立てて、気取って歩くこともできないだろ」
ちなつ「ヒゲを四方にしっかり伸ばして誇りを保つのもできないです」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:02:02.57:iQ0DVHiI0
かり「例えば、こんな名前が必要だよ」
あかり「マンカストラップ、ランペルティーザ、ボンバルリーナに、ジェリーロラム…」
あかり「そういえば、まだ三つ目の名前が残ってたね」
あかり「その三つ目の名前は…人間では名づけることのできない、不思議な名前」
京子「でも、猫はちゃんと、その三つ目の自分の名前を知っている」
向日葵「ほら、猫ってよく、物思いにふけってますでしょう?その理由は皆同じですわ」
櫻子「みんな、自分の三つ目の名前について考えてるんだ」
あかり「深い神秘に満ちた、たったひとつのその名前について…」
あかり「そんな名前を持った、いろいろな生き方の猫をお目にかけましょう!」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:09:29.50:iQ0DVHiI0
3 あまのじゃく猫、ラム・タム・タガー
京子「舞踏会のはじまりは、私のステージからだー!」(あまのじゃく猫)
向日葵「みんなが口をそろえて、あの猫をあまのじゃくだと言いますわ。それほど、あまのじゃくな猫なんですのよ!」
あかり「京子ちゃん、おいしそうな雀のムニエルがあるけど…」
京子「雀なら雉が食べたい!」
櫻子「ほら!ほんと、あのあまのじゃくにはいつも困っちゃうよ!」
京子「はっはっは!どやしつけても無駄なことだよーん!これが私の生き方なんだから!」
あかり「もうっ!」
あかり「これじゃあ、どうにもお手上げだよ…」
京子「へへん!」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:12:37.60:iQ0DVHiI0
京子「家に居るときは外に出たい!」
京子「アパートなら一軒家がいいね。一軒家ならアパートがいいや」
あかり「まったくあきれちゃうよ…」
京子「引き出しの仲で昼寝をしたら出られなくって大騒ぎだよ!」
京子「抵抗するのがクセなんだ!」
結衣「用意されたご飯は食べないし…」
京子「用意されて無いものが食べたいのさ!」
向日葵「彼女って、本当に変わってますわ」
京子「ウサギを捕まえたらネズミが食べたくなるね」
あかり「京子ちゃんは人に触られるのが大ッ嫌いなんだ。それなのに、人がベンチで編み物をしてたり、新聞を読んだりしてると…」
京子「膝の上に飛び乗って驚かせるのが楽しみなんだ!」
あかり「本当に、すごいあまのじゃく…」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:23:07.95:iQ0DVHiI0
京子「今夜限りの大ステージ!私の歌を聴けええええ!」
あかり「そのうえお調子者なんだから…。でも、やっぱり楽しいな!」
櫻子「あれ?舞台にもう一匹猫が…」
京子「ちょっ…綾乃!!」
綾乃「何よ……私が舞踏会に来ちゃ、ダメだったかしら…?」(娼婦猫)
4 娼婦猫の思い出
綾乃「笑いたければ笑いなさい。避けたければ避けなさいよ…」
綾乃「コートのすそはほつれて…シミだらけ」
綾乃「安い気休めを求めて…裏路地を裏ついたり、空き地をふらふら歩いたり…」
綾乃「わたしが歩いていると、誰かがこっちを見てクスクス笑ったりしてるの…」
綾乃「笑っていなくても、何か汚いものを見るような目で見てきたり、目をそらしたり」
綾乃「昔は、マザーキャットなんて呼ばれて、誰よりも美しいなんていわれるのもしょっちゅうだったのに…」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:31:59.89:iQ0DVHiI0
綾乃「歳をとって醜くなった途端、身売りの娼婦だ、とか醜い女だ、なんて言って私をさげすんで…」
綾乃「思い出を辿って…過去を思い出すと、今がとても辛くなるわ」
綾乃「それでも、私が美しかった頃の、幸せだった日々を思い出す」
綾乃「あの頃は、どんどん過ぎ去って行く…」
綾乃「今はもう、ただ醜いだけの娼婦になってしまったわ…」
結衣(私がまだ若い、現役の役者だった頃、彼女はとても美しい娘だった)
結衣(姿だけじゃなく、心の優しい娘で、だらからも好かれていたんだ)
結衣(月日がこうも、猫を変えてしまうとは…)
結衣(いや、私も…その月日に変えられてしまった猫の一匹か)
結衣(昔の私は、本当に凄かったのに。今はただの老いぼれだ)
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:36:11.90:iQ0DVHiI0
あかり「…綾乃さん……」
京子(……あの美しかった猫は綾乃だったんだ…変わりすぎてて全然わからなかった…)
櫻子(ねぇ、みんなあの娼婦の話に聞き入ってるよ)
向日葵(ええ、獲物を盗るなら今がチャンスですわね)
5 泥棒猫コンビは今日もゆく
向日葵(櫻子、行きますわよ)
櫻子(わかった。まずはあのテーブルの北京ダックから…)
あかり「コラー!!」
京子「なんだ、また向日葵と櫻子か」
櫻子「ああっ!向日葵のせいで見つかっちゃったじゃないか!」
向日葵「なっ、なんで私のせなんですの!?櫻子が考え無しに獲物に飛びつくから…」
京子「こいつらは…」
櫻子「こいつらとはなんだ!私たちは名の知れた泥棒コンビなんだぞ!」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:43:47.22:iQ0DVHiI0
あかり「向日葵と櫻子、悪名の高い泥棒コンビだよね」
向日葵「その通りですわ。獲物の前を、ちょっと通り過ぎるだけで盗めるんですのよ」
櫻子「クローゼットが開けられて、中の服が一枚なくなってたら…」
向日葵「みんな、すぐさまこう言うんですのよ。『また向日葵と櫻子の仕業だ!」ってね」
櫻子「私たちの好きな遊びはお巡りさんのご飯をふんだくること!」
向日葵「今日はからあげ。昨日はハンバーグでしたわね」
あかり「そういえば、昨日猫の一級レストランに行ったら…」
あかり「肉がオーブンから消えたって大騒ぎしてたような…」
櫻子「それも私たち!」
結衣「あきれたカップルだ…」
櫻子「カップルじゃ」
向日葵「ありませんわ!!」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:49:39.08:iQ0DVHiI0
あかり「でも彼女らはまだ可愛いほうだよね。犯罪王に比べたら…」
???「ハッハッハッハッハッハッハ!」
京子「なっ!!?だ、誰!?」
あかり「…犯罪王だ!」
6 あいつは犯罪王!
京子「犯罪王…?」
あかり「ワルの中のワルだよ。盗みも殺しもやってる…」
あかり「まさか、舞踏会の日に現れるなんて…!」
向日葵「これは困ったことになりましたわね…犯罪王は猫の皮をかぶった悪魔ですわ」
向日葵「今日は一体何をやらかすやら…」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 15:58:11.83:iQ0DVHiI0
千歳「久しぶりやなあ、赤座さん」(犯罪王猫)
千歳「今日は、長老を盗もう思ってな」
あかり「長老猫を!?」
千歳「せや。周りをよう見てみ!」
京子「おーい!あかり、大変だ!長老猫が見当たらない!!」
あかり「そんな…!」
千歳「ほな、目的は達成したさかい、さよならや!」
あかり「待てー!」
千歳「なんや離しい!」
あかね「リーダー猫は咄嗟に、犯罪王猫のしっぽを掴んだ!」(ナレーション)
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:01:52.84:iQ0DVHiI0
あかり「長老猫をどこにやったの!?」
千歳「教えるはず無いやろ!」
あかり「教えてくれるまで絶対離さないからね!!」
千歳「やめや!」
あかり「きゃっ!!」
あかね「犯罪王はリーダー猫の手を踏みつける!」ブチブチブチ
あかり「痛ッ…痛い…」
京子「やめろおおおおっ!」
あかね「あまのじゃく猫が犯罪王猫を蹴飛ばす!犯罪王猫は吹っ飛ぶ!」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:11:17.54:iQ0DVHiI0
千歳「うわっ!!」
千歳「でも、これで手は離してもらえたわ。おおきに。ほな、本当にさよならや!」
あかり「あっ……!!」
あかね「犯罪王猫は消えてしまった…」
あかり「どうしよう…!長老猫が誘拐されちゃったよ……」
京子「そうだ!魔法使い猫なら、長老猫を見つけられるかもしれない!」
京子「あの猫のマジックは凄いからね!まるで、本物の魔法みたいに」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:18:51.91:iQ0DVHiI0
向日葵「そんな、犯罪王猫に敵うはず…」
京子「いいか、よく聞け!」
向日葵「!」ビクッ
京子「全ての物は、彼女の杖の先で消える。あんな天才猫はめったにいない」
京子「大掛かりなイリュージョンと、奇抜なマジックをやってのける」
京子「物静かで、可愛い小さいマジシャン猫」
7 素敵な魔法使い猫
りせ「……」(魔法使い猫)
京子「ねぇ、長老猫を見つけられる?」
りせ「…」
りせ「…」
りせ「…」コクッ
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:23:41.20:iQ0DVHiI0
りせ「……」
京子「大きな布を用意して欲しいって?」
櫻子「それなら、私たちに任せてよ!」
向日葵「すぐに、人間からシーツでも毛布でも盗んできますわ」
りせ「…」(ありがとう)
櫻子「よし、行こう向日葵!」
向日葵「えぇ、言われなくても!」
櫻子「それにしても…まさか私たちの盗みが他猫の役に立つなんて…」
向日葵「私たち、同じワルでも犯罪王猫よりはまだマシなんですのね」
櫻子「だね」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:30:38.24:iQ0DVHiI0
あかね「十分もしないうちに、毛布を咥えた二匹の猫が戻ってきた」
向日葵「これを使ってくださいまし!」
京子「ありがとう!」
京子「それじゃあ、お願い」
りせ「…」コクッ
あかり「布を、どうするんだろう…?」
京子「あの猫は魔法使い猫だよ?それも、マジックが得意なね」
あかり「?」
京子「マジックで、長老猫を助けるんだよ」
あかり「ああ!」
りせ「…」パサッ
あかね「魔法使い猫が毛布を地面に置くと、次第に毛布がもこもこと盛り上がってきた」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:36:24.93:iQ0DVHiI0
あかり「すごい…!!」
りせ「……」プルプル
京子「緊張してるのかな?腕が震えてる…」
りせ「…!」サッ
あかね「毛布を取ると、そこには…」
京子「やった!」
あかり「すごい!」
京子「流石!流石だよ!やっぱり彼女は天才猫だ!」
あかね「そこには、長老猫の姿があった…!」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:43:25.14:iQ0DVHiI0
西垣「すまない、心配をかけてしまったね…」(長老猫)
櫻子「スッゲー!どうやったの!!?」
りせ「……」(それはひみつ)
櫻子「えっ?」
西垣「秘密だそうだ」
櫻子「えーー…でも、そっちの方が面白いか」
りせ「…」コクッ
あかり「お帰りなさい、長老猫さん…よおくお帰りになられました…!」ポロポロ
西垣「っ!!な、泣くのもしかたないな…リーダーのお前が責任を一番感じていたんだろう…」
あかり「ご無事で何よりです…!」ボロボロ
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:49:46.58:iQ0DVHiI0
西垣「りせも、ありがとう」
りせ「……」(わたしも長老に帰ってきて欲しかったから)
西垣「嬉しいよ…」
結衣「すごかった…まるで、一つの劇を見ているようだった」
ちなつ「本当ですね」
結衣「人々を驚かせ、感動させることは…そう簡単な事じゃないんだ」
結衣「昔は…、何十、何百もの拍手をもらうことは、当たり前だった…」
結衣「劇を演じられないほど老いてから、人を感動させることの重大さに気付くなんて…」
8 役者猫はかく語りき
ちなつ「彼女は、落ちぶれてしまった役者猫」
ちなつ「いつも、劇場の入り口に座ってる」
ちなつ「毛並みは荒れているし、もう随分な年寄り」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 16:57:08.94:iQ0DVHiI0
ちなつ「昔は随分な二枚目だったらしいけれど、その面影はもう残っていない」
ちなつ「微笑みながら、目を細めて…いつも『昔は良かった』なんて言ってる」
ちなつ「たまに、若い役者猫と呑みに行くと、寄った勢いで昔の武勇伝を語りだす」
結衣「大統領も、私の演技を見に来たんだ!」
結衣「台詞も一目台本を見ただけで覚えらた!」
結衣「みんな、私の演技に見入ってたんだ」
結衣「私の芝居は、どれもすごい名演技だった」
ちなつ「シェークスピアの劇で、『猫の手も借りたい』という台詞を聞いて、舞台に立ったこともあったみたい」
結衣「近頃の役者はなってない。芸も技も中途半端だ」
結衣「ロクに稽古もしないくせにスター気取りだ。役者として許せないね…」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:03:46.95:iQ0DVHiI0
結衣「最近は劇場も随分たるんでる。今の芝居は、全く面白くない…」
結衣「私の時代は段違いだった!」
結衣「ほんとうに、昔は良かった…」
ちなつ「彼女はいつも語るばかり。私が劇に出ると、声がかかるとか…」
ちなつ「昔は大スターとも競演したとか…」
結衣「即興台詞でギャグを言うのも得意だった」
結衣「この背中や、美しいシッポ。みんな、私に見とれてた」
結衣「とにかく、凄い評判だった。子供たちにもモテモテで…」
結衣「特に、私のグロウルタイガー役なんて、歴史に残る名演技さ!」
結衣「喝采浴びた、当たり役を…この世の名残に見せてあげよう…」
結衣「血の凍るような、名演技を!」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:10:14.04:iQ0DVHiI0
9 グロウルタイガー最後の戦い
海賊猫グロウルタイガー 船見結衣
悪女猫グリドルボーン 吉川ちなつ
海賊猫シャムネコ 歳納京子
シャムネコの手下猫たち 大室櫻子 赤座あかり
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:17:31.14:iQ0DVHiI0
櫻子「グロウルタイガーは暴れ者で、随分乱暴な奴だ!」(手下猫)
あかり「でも、それに張り会おうとするシャムネコの親分も大概だよね…」(手下猫)
結衣「私はこの世界で一番強い、グロウルタイガー様だ!」(海賊猫)
結衣「ハリネズミも踏み潰すし、鳴かないカナリアを殺すのもしょっちゅうだ」
結衣「ただ、そんな私にも随分と小ざかしい敵が居る」
結衣「あの外国生まれのシャムネコの野郎だ!」
結衣「あいつ、俺の方耳をちぎりやがって……!良い男が台無しだ」
ちなつ「あら、またシャムネコのことを考えてるの?」(悪女猫)
結衣「グリドルボーン!ああ、君は何時見ても美しいね!!」
ちなつ「シャムネコのことなんか忘れて、私とお話しましょう?」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:24:15.08:iQ0DVHiI0
ちなつ「海が綺麗…」
結衣「そうだね。こんな景色を見ていると、私もセンチメンタルな気分になるよ…」
結衣「私の気性の荒い部下たちも今日ばかりはパブでおとなしく酒を飲んでるらしい」
ちなつ「じゃあ、今は…」
結衣「そう、二人っきりさ」
・・・・・・・・・
京子「バカなタイガーめ…女に現を抜かすなんて」
京子「彼女は、私が雇っている女だとも知らないで…」
京子「あかり!」
あかり「はい!」
京子「今夜、作戦を決行する。他の船員を集めて、グロウルタイガーの船に行こう」
あかり「わかりました!」
京子「くれぐれも、見つからないようにコッソリ行け。いいな」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:30:17.35:iQ0DVHiI0
結衣「この月の輝きや、波の音は全て二人だけのものだよ」
ちなつ「素敵…」
結衣「なぁ、君は歌が得意だったろ?聞かせてくれよ」
ちなつ「喜んで」
ちなつ(グロウルタイガーは私に心を奪われている…)
ちなつ(全ては予定通り)
・・・・・・・・・
あかね「そのとき、二人の側にはシャムネコ海賊団が迫ってきていた」
京子「今、自分がどんな状況に居るかも知らずに…いい気なものだなあ」
京子「総員、突撃!」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:36:29.05:iQ0DVHiI0
結衣「素晴らしい…!なんて素晴らしい歌声なんだ!」
ちなつ「ありがとうございます…」
京子「グロウルタイガー!命はもらったぞ!」
結衣「シャムネコ!?」
京子「逃げられはしないぞ!既に船の中には私の手下が手配してある」
京子「その女も、私の雇った女だ!!」
結衣「そ、そんなはずは…おい、グリドルボーン!」
京子「あの女なら、もう逃げたよ」
結衣「そんな……!!」
京子「年貢の納め時だな」
結衣「畜生ッ!!」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:41:38.48:iQ0DVHiI0
結衣「畜生おおおおおおおおおおおおお!」
あかね「グロウルタイガーは遂に、自ら海へ身を投げた…」
あかね「しかし、彼が死んで悲しむ物はいなかった」
あかね「横暴な海賊が死んで、誰もが喜んだ」
あかね「グロウルタイガーの死んだ日は、記念日となった…」
・・・・
・・・
・・・
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 17:56:01.36:iQ0DVHiI0
・・・
結衣「今の芝居もいいけれど…比べ物には、ならないね……」
結衣「猫、人間のみんな、ご清聴ありがとう」
結衣「もう今生にやりのこしたことはない…」
結衣「私はいつまでも役者猫さ」
あかね「劇とともに、夜は更け…ついに、朝日が見え始めた」
西垣「猫の諸君、とても楽しい舞踏会だった」
西垣「ただ、君たちも一つ気になっていることがあるだろう」
西垣「天上へのぼる猫は誰か。そろそろ、その猫を発表しようと思う」
10 長老猫のごあいさつ
西垣「今まで、何匹かの猫をお目にかけたが…彼らは沢山居る猫の中の、ほんの一つまみにすぎない」
西垣「世の中には、色々な猫が居る。あなたがもし、その猫たちとお友達になりたいと思ったら、気を付けるべきことは二つだけ」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:02:09.41:iQ0DVHiI0
西垣「一つは、馴れ馴れしくし過ぎないこと」
西垣「彼らは、馴れ馴れしくされると憤慨したり、逃げたりするから」
西垣「一定の距離を置いて、目線の高さを合わせてお話しするといい」
西垣「それともう一つは、『猫は犬に非ず』というのを心に留めておくこと」
西垣「ただこの二つだけを気に留めておいて欲しい」
西垣「そうすれば、あなたもいつか『やあ猫君!』と、晴れて猫に話しかけることができるだろう」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:06:08.58:iQ0DVHiI0
西垣「猫が、あなたのことを信用の置ける友達として認めてくれるまでは、ツナの缶詰とか」
西垣「一皿のミルクだとか、敬愛のしるしを奉げなければ」
西垣「サーモンのペーストや、クラッカーとかをね」
西垣「たまには、我々に美味しいものをご馳走してくれると嬉しい」
西垣「猫たるもの、人間から敬意を表されるのは当たり前のこと」
西垣「当然のことのはずさ」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:13:03.38:iQ0DVHiI0
11 ただ一匹だけのねこ
あかね「ゴミ捨て場を、異様な静けさが包み込む…」
あかね「ナイフで切ってしまえそうな静寂を遮り、長老猫は宣言する」
西垣「この舞踏会において、天上へのぼることを許された、ただ一匹の猫は――」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:18:50.77:iQ0DVHiI0
綾乃(舞踏会に来ても、何の意味も無かった…)
綾乃(ただ、周りの猫たちに好奇の目でみられただけで…)
綾乃(私の猫生を変えることはできなかった…)
綾乃(また、思い出ばかりを見つめる日々に戻るんだ…)
綾乃(もう、嫌……っ!)
あかり「綾乃さん、綾乃さん…」
綾乃「何…何の用…?」
あかり「あなたが、天上へのぼるただ一匹の猫なんです」
綾乃「なっ……!」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:30:22.26:iQ0DVHiI0
綾乃「私がっ!!?」
あかり「は、はい…」
綾乃「じゃあ私、生まれ変われるのね!」
西垣「そう。天上へのぼり、新しいジェリクルキャッツとして生まれ変われる」
綾乃「やった…!やったあ!!」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:32:58.79:iQ0DVHiI0
西垣「でも、忘れちゃいけない」
綾乃「何を、ですか?」
西垣「今のあなたがこの世界で生きていたことと、新しい命もまた、老いるということを」
西垣「諸君も良く覚えておくことだ!君たちはこの娼婦を好奇の目で見ていたようだが」
西垣「君達が老いれば、今のような栄光はなくなるんだ…」
西垣「さあ行け、天上へ!」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:38:46.95:iQ0DVHiI0
・・・・・・・・・
あかり「あの日、天上へのぼった猫は、どんな猫に生まれ変わったのだろう?」
あかり「そんなことが気になっていたけれど、最近新しい子猫が生まれたという話を聞きました」
あかり「その猫は、シラバブという名前をもらたそうです」
あかり「前までの疑問は、あの猫はシラバブに生まれ変わったんだと思い、私の仲では解決されました」
あかり「でも、今度は二つも、疑問ができてしまいました」
あかり「一つは、シラバブの三つの目の名前はどんな名前なんだろう?という疑問です」
あかり「そして、もう一つは、次に天上にのぼる猫は、誰なんだろう、という疑問です」
あかり「私はこれからも、リーダー猫として頑張って生きたいと思います」
閉幕
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:43:29.78:ra9JXFoO0
楽屋裏
綾乃「どうして私は毎回悲劇的な役なのよ!!」
京子「悲劇のヒロイン役は、綾乃にピッタリだよ!」
綾乃「どこがよっ!」
千歳「さりげに、一番扱いが酷かったのウチやない…?」
りせ「……」
西垣「松本は満足か!奇遇だな、私も自分の配役には満足している」
櫻子「なんで私と向日葵が毎回ペアなの!?信じらんないっ!」
向日葵「私だって櫻子とのペアなんて御免ですわ!」
櫻子「なんだとっ!」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:48:08.09:iQ0DVHiI0
千歳(悲劇のヒロインが綾乃ちゃんにピッタリなんは多分…)
千歳(リアルに綾乃ちゃんが悲劇のヒロインやからやろうな)
千歳(綾乃ちゃんには歳納さんと幸せになってもらいたいけど…)
千歳(歳納さんにはもう、船見さんがおるもんなぁ…)
千歳(ウチも、そんなこと認めたくはあらへんけど…)
ちなつ「結衣先輩と劇の中でお付き合いさせていただけるなんて…感激です!」
結衣「ありがとうちなつちゃん」
京子「グロウルタイガー、なかなかハマリ役だったぞ!」
結衣「そ、そう…?」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:51:29.30:iQ0DVHiI0
京子「そうだ、みんなで打ち上げパーティーやんない?」
千歳「ええなぁ~でも、場所はどうするん?」
京子「結衣ん家でいいでしょ」
結衣「おいコラ」
京子「ダメなの?」
結衣「い、いや別にいいけどさ…」
京子「さすが結衣様!」
結衣「はぁ……」
あかり「じゃあ、あかりたち買いだしに行くよ!」
向日葵「私も行きますわ」
京子「じゃあ、一年生は買いだしよろしく!」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:56:40.73:iQ0DVHiI0
あかり「結衣ちゃん、京子ちゃん、また明日ね~!」
ちなつ「それじゃあ、私たちは失礼します」
結衣「うん。今日はお疲れ様
京子「おつかれ!また明日ね!」
・・・・
・・・
・・
京子「結局二人だね」
結衣「しかたないよ。明日も学校だし」
京子「じゃあ今日はもう寝ようk
結衣「ねえ、京子…」
京子「何?」
結衣「今日さ……シない…?」
京子「えっ…?」
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:56:59.29:dW/PCnBz0
京子「な、なんで…?」
結衣「ほっ、ほらさ、劇の時ネコミミ着けてたでしょ?」
京子「う、うん」
結衣「すごく似合ってたからさ、着けてもらって…してみたいな、なんて…」
京子「なっ、なななな…!結衣の変態!」
結衣「へっ、変態とはなんだ!お前が可愛いのがいけないんだろ!!」
京子「結衣、劇の最中私のことそういう目で見てたの!?」
結衣「ず、ずっとじゃないけど…たまに……」
京子「変態!」
結衣「そんな、言いすぎだ!」
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 19:07:55.72:iQ0DVHiI0
京子「でも、今日は疲れたからダメ」
結衣「そうか…」
京子「今度、ね」
結衣「じゃあ、キス…だけ」
京子「う、うん…」
結衣「んっ……」
京子「んん…んっ……」
結衣「おやすみ」
京子「おやすみ」
おしまい
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 19:18:42.88:ra9JXFoO0
京子「あれ?結衣、キャッツ知らない?」
結衣「いや、なんとなーく聞いたことはあるけど…ミュージカルだろ?」
京子「そうそう。元は有名な詩集なんだけどね」
結衣「キャッツをやるのか?」
京子「そう!」
結衣「お前な、ここは演劇部じゃないんだぞ!」
京子「いいじゃん!楽しければ何でも」
結衣「んー…」
結衣「でも私、キャッツのこと知らないし」
京子「そんな貴方に劇団四季さんのステージガイド!」
http://www.shiki.gr.jp/applause/cats/
結衣「ちょっと読んでくる」
京子「おっ、読み終わった?」
結衣「うん。でも、ステージガイドを読んで一つ思ったことがあるんだ」
京子「なに?」
結衣「これ、娯楽部だけじゃできないよな」
京子「うん」
結衣「キャスト四人じゃどう見積もっても足りないよな」
京子「うん」
結衣「どうやって人数を集めるんだ?」
京子「生徒k」
結衣「だよね」
京子「いいでしょ?」
結衣「生徒会の人たちが迷惑じゃなければね…」
京子「じゃあ、早いトコ生徒会室行こう!」
綾乃「今度はキャッツ!?」
京子「そうだよ♪」
千歳「歳納さん、劇にハマったみたいやなあ」
綾乃「しし、仕方が無いわね!今回も手伝ってあげる!」
京子「やったー!」
千歳「キャッツてあの有名なミュージカルやろ?」
京子「うん」
千歳「ウチ、あんまり詳しくないんやけど…」
京子「大丈夫だよ!ミュージカルキャッツの大元になった詩集を買ってきたんだ!」
京子「これを見れば、キャッツのことも色々わかると思う!」
千歳「ほな、吉川さんと赤座さんも呼んで、みんなで呼んでみよ」
結衣「私、あかりとちなつちゃん呼んでくるね」
リーダー猫(マンカストラップ)赤座あかり
あまのじゃく猫(ラム・タム・タガー)歳納京子
娼婦猫(グリザベラ)杉浦綾乃
泥棒猫コンビ(マンゴジェリー&ランペルティーザ)古谷向日葵&大室櫻子
犯罪王猫(マキャヴィティ)池田千歳
魔法使い猫(ミストフェリーズ)松本りせ
年老いた役者猫(海賊猫グロウルタイガー)船見結衣
役者猫の付き添い猫(悪女猫グリドルボーン)吉川ちなつ
長老猫(オールドデュトロノミー)西垣先生
ナレーション 赤座あかね
照明・音響 西垣先生・松本りせ
(舞台をご覧になる前に、それぞれがどういう猫なのかステージガイドのネーミング・オブ・キャッツを見てぜひご確認ください)
(その方が、舞台をさらにお楽しみいただけると思います!) 舞台監督 歳納京子より
七森中学 キャッツ 演目 目次
1 猫たちの舞踏会
2 猫に名前をつけるのは
3 あまのじゃく猫、ラム・タム・タガー
4 娼婦猫の思い出
5 泥棒猫コンビは今日もゆく
6 あいつは犯罪王!
7 素敵な魔法使い猫
8 役者猫はかく語りき
9 グロウルタイガー最後の戦い
10 長老猫のごあいさつ
11 ただ一匹だけのねこ
西垣「来場いただいた生徒の諸君、どうもありがとう」
西垣「それではこれより、キャッツの上演を開始する」
西垣「周りを良く見回してみたまえ。君たちは、もう既に猫の世界にいるんだ…」
1 猫たちの舞踏会
あかり「ジェリクルキャッツを知ってる?」(リーダー猫)
あかり「ジェリクルキャッツは、人間と馴れ合うことを拒んで、猫らしく、猫の人生を送る猫たち」
あかり「あかりも、そのジェリクルキャッツなんだ。それも、ジェリクルキャッツたちのリーダーなんだよ!」
あかり「でも、ジェリクルキャッツの中で一番尊敬されるのは…リーダーじゃないんだよね…」
あかり「ジェリクルキャッツの中で、誰よりも長く生きてきた長老猫さんこそ、全てのジェリクルキャッツから尊敬される猫さんなんだよ」
あかり「今日は、その長老猫さんが年に一度だけ姿を見せる、ジェリクル舞踏会の日!」
あかり「ほら見て!青くて綺麗なジェリクルキャッツのための満月がもうお空に出てる!」
あかり「もうすぐ、沢山のジェリクルキャッツたちが集まってくる!」
京子「やあ!魔法使いの猫君じゃないか!」(あまのじゃく猫)
りせ「……」(魔法使い猫)
京子「君は本当にシャイだね」
向日葵「それで、今日の獲物は何ですの?」(泥棒猫)
櫻子「今日は年に一度の舞踏会だからね!おいしい食べ物をたんまり盗もう!」(泥棒猫)
向日葵「いいですわね。櫻子がヘマをやらかさなければ随分簡単ですわ」
櫻子「向日葵がヘマをやらかさなきゃ、随分簡単な獲物だね」
結衣「こんなに年老いた私でも、この日限りは昔の若さを取り戻したようになれるよ」(年老いた役者猫)
ちなつ「あなたは今でも昔のように素敵なままですよ」(役者猫の付き添い猫)
結衣「ありがとう。嬉しいよ」
ちなつ「えへへ ///」
綾乃「……みんな、輝かしき日の私のことなんてきっと忘れてしまったわよね…」(娼婦猫)
綾乃「昔は、名の知れた娼婦で…誰からも美しいと言われたけれど…」
綾乃「そのことも、今は私の思い出の中にしか無いわ…」
京子「うわっ…娼婦猫の綾乃だ…酷い格好だな」
あかり「きょっ、京子ちゃんもっと小さい声で…」
櫻子「あっ、綾乃さん…」
向日葵「しっ!気味が悪いですわ…あまり近づかないようにしましょう」
櫻子「う、うん」
結衣「綾乃だ……」
ちなつ「穢れた娼婦猫じゃないですか…なんで、今更舞踏会に…」
綾乃「やっぱり、今の私は何処へ行ってものけ者ね…」
あかり「今日は、リーダー猫としてしっかりしないと!」
あかり「そういえば、どうして長老猫が舞踏会の日にみんなの前に姿を現すのか、知ってる?」
あかり「それはね、天上の世界へのぼる、ただ一匹のジェリクルキャッツを選ぶためなんだ!」
あかり「天上の世界へ行けば、また新しいジェリクルキャッツとして、この世界に生まれ変われるんだ!」
あかり「つまり、新しい猫生を手に入れられるってこと」
あかり「みんな気になってるよ。誰が天上へのぼるのか」
あかり「あっ!みんなが集まってきた!もうすぐ、ジェリクル舞踏会の始まるんだ!」
あかり「でも、一体誰が天上へのぼれるんだろう?」
あかり「もしかしたら、あかりかも?」
2 猫に名前をつけるのは
あかり「猫に名前をつけるのは、とても難しいことなんだ」
京子「その通りだね。ゲームのキャラクターの名前を決めるように猫に名前をつけちゃうとか、なにかの片手間に猫の名前を考えるなんてバカげてる」
あかり「信じられないかもしれないけど、猫には三つの名前が必要だよ」
向日葵「例えば、あなたたち人間が呼ぶような名前」
向日葵「クロ、ヴィクター、ピーターとか、トム、ジェームス、ジョージ…」
向日葵「ちょっとゴージャスにしてみると、プラトー、アドメーデス、エレクトラ…」
櫻子「まあ、どれもありふれた名前。でも、もっと素敵な名前が猫には必要だよね」
櫻子「もっと個性的で、威厳のある名前がね。どうしてそんな名前が必要なのかって?」
結衣「そういう名前でなきゃ、シッポをピンと立てて、気取って歩くこともできないだろ」
ちなつ「ヒゲを四方にしっかり伸ばして誇りを保つのもできないです」
かり「例えば、こんな名前が必要だよ」
あかり「マンカストラップ、ランペルティーザ、ボンバルリーナに、ジェリーロラム…」
あかり「そういえば、まだ三つ目の名前が残ってたね」
あかり「その三つ目の名前は…人間では名づけることのできない、不思議な名前」
京子「でも、猫はちゃんと、その三つ目の自分の名前を知っている」
向日葵「ほら、猫ってよく、物思いにふけってますでしょう?その理由は皆同じですわ」
櫻子「みんな、自分の三つ目の名前について考えてるんだ」
あかり「深い神秘に満ちた、たったひとつのその名前について…」
あかり「そんな名前を持った、いろいろな生き方の猫をお目にかけましょう!」
3 あまのじゃく猫、ラム・タム・タガー
京子「舞踏会のはじまりは、私のステージからだー!」(あまのじゃく猫)
向日葵「みんなが口をそろえて、あの猫をあまのじゃくだと言いますわ。それほど、あまのじゃくな猫なんですのよ!」
あかり「京子ちゃん、おいしそうな雀のムニエルがあるけど…」
京子「雀なら雉が食べたい!」
櫻子「ほら!ほんと、あのあまのじゃくにはいつも困っちゃうよ!」
京子「はっはっは!どやしつけても無駄なことだよーん!これが私の生き方なんだから!」
あかり「もうっ!」
あかり「これじゃあ、どうにもお手上げだよ…」
京子「へへん!」
京子「家に居るときは外に出たい!」
京子「アパートなら一軒家がいいね。一軒家ならアパートがいいや」
あかり「まったくあきれちゃうよ…」
京子「引き出しの仲で昼寝をしたら出られなくって大騒ぎだよ!」
京子「抵抗するのがクセなんだ!」
結衣「用意されたご飯は食べないし…」
京子「用意されて無いものが食べたいのさ!」
向日葵「彼女って、本当に変わってますわ」
京子「ウサギを捕まえたらネズミが食べたくなるね」
あかり「京子ちゃんは人に触られるのが大ッ嫌いなんだ。それなのに、人がベンチで編み物をしてたり、新聞を読んだりしてると…」
京子「膝の上に飛び乗って驚かせるのが楽しみなんだ!」
あかり「本当に、すごいあまのじゃく…」
京子「今夜限りの大ステージ!私の歌を聴けええええ!」
あかり「そのうえお調子者なんだから…。でも、やっぱり楽しいな!」
櫻子「あれ?舞台にもう一匹猫が…」
京子「ちょっ…綾乃!!」
綾乃「何よ……私が舞踏会に来ちゃ、ダメだったかしら…?」(娼婦猫)
4 娼婦猫の思い出
綾乃「笑いたければ笑いなさい。避けたければ避けなさいよ…」
綾乃「コートのすそはほつれて…シミだらけ」
綾乃「安い気休めを求めて…裏路地を裏ついたり、空き地をふらふら歩いたり…」
綾乃「わたしが歩いていると、誰かがこっちを見てクスクス笑ったりしてるの…」
綾乃「笑っていなくても、何か汚いものを見るような目で見てきたり、目をそらしたり」
綾乃「昔は、マザーキャットなんて呼ばれて、誰よりも美しいなんていわれるのもしょっちゅうだったのに…」
綾乃「歳をとって醜くなった途端、身売りの娼婦だ、とか醜い女だ、なんて言って私をさげすんで…」
綾乃「思い出を辿って…過去を思い出すと、今がとても辛くなるわ」
綾乃「それでも、私が美しかった頃の、幸せだった日々を思い出す」
綾乃「あの頃は、どんどん過ぎ去って行く…」
綾乃「今はもう、ただ醜いだけの娼婦になってしまったわ…」
結衣(私がまだ若い、現役の役者だった頃、彼女はとても美しい娘だった)
結衣(姿だけじゃなく、心の優しい娘で、だらからも好かれていたんだ)
結衣(月日がこうも、猫を変えてしまうとは…)
結衣(いや、私も…その月日に変えられてしまった猫の一匹か)
結衣(昔の私は、本当に凄かったのに。今はただの老いぼれだ)
あかり「…綾乃さん……」
京子(……あの美しかった猫は綾乃だったんだ…変わりすぎてて全然わからなかった…)
櫻子(ねぇ、みんなあの娼婦の話に聞き入ってるよ)
向日葵(ええ、獲物を盗るなら今がチャンスですわね)
5 泥棒猫コンビは今日もゆく
向日葵(櫻子、行きますわよ)
櫻子(わかった。まずはあのテーブルの北京ダックから…)
あかり「コラー!!」
京子「なんだ、また向日葵と櫻子か」
櫻子「ああっ!向日葵のせいで見つかっちゃったじゃないか!」
向日葵「なっ、なんで私のせなんですの!?櫻子が考え無しに獲物に飛びつくから…」
京子「こいつらは…」
櫻子「こいつらとはなんだ!私たちは名の知れた泥棒コンビなんだぞ!」
あかり「向日葵と櫻子、悪名の高い泥棒コンビだよね」
向日葵「その通りですわ。獲物の前を、ちょっと通り過ぎるだけで盗めるんですのよ」
櫻子「クローゼットが開けられて、中の服が一枚なくなってたら…」
向日葵「みんな、すぐさまこう言うんですのよ。『また向日葵と櫻子の仕業だ!」ってね」
櫻子「私たちの好きな遊びはお巡りさんのご飯をふんだくること!」
向日葵「今日はからあげ。昨日はハンバーグでしたわね」
あかり「そういえば、昨日猫の一級レストランに行ったら…」
あかり「肉がオーブンから消えたって大騒ぎしてたような…」
櫻子「それも私たち!」
結衣「あきれたカップルだ…」
櫻子「カップルじゃ」
向日葵「ありませんわ!!」
あかり「でも彼女らはまだ可愛いほうだよね。犯罪王に比べたら…」
???「ハッハッハッハッハッハッハ!」
京子「なっ!!?だ、誰!?」
あかり「…犯罪王だ!」
6 あいつは犯罪王!
京子「犯罪王…?」
あかり「ワルの中のワルだよ。盗みも殺しもやってる…」
あかり「まさか、舞踏会の日に現れるなんて…!」
向日葵「これは困ったことになりましたわね…犯罪王は猫の皮をかぶった悪魔ですわ」
向日葵「今日は一体何をやらかすやら…」
千歳「久しぶりやなあ、赤座さん」(犯罪王猫)
千歳「今日は、長老を盗もう思ってな」
あかり「長老猫を!?」
千歳「せや。周りをよう見てみ!」
京子「おーい!あかり、大変だ!長老猫が見当たらない!!」
あかり「そんな…!」
千歳「ほな、目的は達成したさかい、さよならや!」
あかり「待てー!」
千歳「なんや離しい!」
あかね「リーダー猫は咄嗟に、犯罪王猫のしっぽを掴んだ!」(ナレーション)
あかり「長老猫をどこにやったの!?」
千歳「教えるはず無いやろ!」
あかり「教えてくれるまで絶対離さないからね!!」
千歳「やめや!」
あかり「きゃっ!!」
あかね「犯罪王はリーダー猫の手を踏みつける!」ブチブチブチ
あかり「痛ッ…痛い…」
京子「やめろおおおおっ!」
あかね「あまのじゃく猫が犯罪王猫を蹴飛ばす!犯罪王猫は吹っ飛ぶ!」
千歳「うわっ!!」
千歳「でも、これで手は離してもらえたわ。おおきに。ほな、本当にさよならや!」
あかり「あっ……!!」
あかね「犯罪王猫は消えてしまった…」
あかり「どうしよう…!長老猫が誘拐されちゃったよ……」
京子「そうだ!魔法使い猫なら、長老猫を見つけられるかもしれない!」
京子「あの猫のマジックは凄いからね!まるで、本物の魔法みたいに」
向日葵「そんな、犯罪王猫に敵うはず…」
京子「いいか、よく聞け!」
向日葵「!」ビクッ
京子「全ての物は、彼女の杖の先で消える。あんな天才猫はめったにいない」
京子「大掛かりなイリュージョンと、奇抜なマジックをやってのける」
京子「物静かで、可愛い小さいマジシャン猫」
7 素敵な魔法使い猫
りせ「……」(魔法使い猫)
京子「ねぇ、長老猫を見つけられる?」
りせ「…」
りせ「…」
りせ「…」コクッ
りせ「……」
京子「大きな布を用意して欲しいって?」
櫻子「それなら、私たちに任せてよ!」
向日葵「すぐに、人間からシーツでも毛布でも盗んできますわ」
りせ「…」(ありがとう)
櫻子「よし、行こう向日葵!」
向日葵「えぇ、言われなくても!」
櫻子「それにしても…まさか私たちの盗みが他猫の役に立つなんて…」
向日葵「私たち、同じワルでも犯罪王猫よりはまだマシなんですのね」
櫻子「だね」
あかね「十分もしないうちに、毛布を咥えた二匹の猫が戻ってきた」
向日葵「これを使ってくださいまし!」
京子「ありがとう!」
京子「それじゃあ、お願い」
りせ「…」コクッ
あかり「布を、どうするんだろう…?」
京子「あの猫は魔法使い猫だよ?それも、マジックが得意なね」
あかり「?」
京子「マジックで、長老猫を助けるんだよ」
あかり「ああ!」
りせ「…」パサッ
あかね「魔法使い猫が毛布を地面に置くと、次第に毛布がもこもこと盛り上がってきた」
あかり「すごい…!!」
りせ「……」プルプル
京子「緊張してるのかな?腕が震えてる…」
りせ「…!」サッ
あかね「毛布を取ると、そこには…」
京子「やった!」
あかり「すごい!」
京子「流石!流石だよ!やっぱり彼女は天才猫だ!」
あかね「そこには、長老猫の姿があった…!」
西垣「すまない、心配をかけてしまったね…」(長老猫)
櫻子「スッゲー!どうやったの!!?」
りせ「……」(それはひみつ)
櫻子「えっ?」
西垣「秘密だそうだ」
櫻子「えーー…でも、そっちの方が面白いか」
りせ「…」コクッ
あかり「お帰りなさい、長老猫さん…よおくお帰りになられました…!」ポロポロ
西垣「っ!!な、泣くのもしかたないな…リーダーのお前が責任を一番感じていたんだろう…」
あかり「ご無事で何よりです…!」ボロボロ
西垣「りせも、ありがとう」
りせ「……」(わたしも長老に帰ってきて欲しかったから)
西垣「嬉しいよ…」
結衣「すごかった…まるで、一つの劇を見ているようだった」
ちなつ「本当ですね」
結衣「人々を驚かせ、感動させることは…そう簡単な事じゃないんだ」
結衣「昔は…、何十、何百もの拍手をもらうことは、当たり前だった…」
結衣「劇を演じられないほど老いてから、人を感動させることの重大さに気付くなんて…」
8 役者猫はかく語りき
ちなつ「彼女は、落ちぶれてしまった役者猫」
ちなつ「いつも、劇場の入り口に座ってる」
ちなつ「毛並みは荒れているし、もう随分な年寄り」
ちなつ「昔は随分な二枚目だったらしいけれど、その面影はもう残っていない」
ちなつ「微笑みながら、目を細めて…いつも『昔は良かった』なんて言ってる」
ちなつ「たまに、若い役者猫と呑みに行くと、寄った勢いで昔の武勇伝を語りだす」
結衣「大統領も、私の演技を見に来たんだ!」
結衣「台詞も一目台本を見ただけで覚えらた!」
結衣「みんな、私の演技に見入ってたんだ」
結衣「私の芝居は、どれもすごい名演技だった」
ちなつ「シェークスピアの劇で、『猫の手も借りたい』という台詞を聞いて、舞台に立ったこともあったみたい」
結衣「近頃の役者はなってない。芸も技も中途半端だ」
結衣「ロクに稽古もしないくせにスター気取りだ。役者として許せないね…」
結衣「最近は劇場も随分たるんでる。今の芝居は、全く面白くない…」
結衣「私の時代は段違いだった!」
結衣「ほんとうに、昔は良かった…」
ちなつ「彼女はいつも語るばかり。私が劇に出ると、声がかかるとか…」
ちなつ「昔は大スターとも競演したとか…」
結衣「即興台詞でギャグを言うのも得意だった」
結衣「この背中や、美しいシッポ。みんな、私に見とれてた」
結衣「とにかく、凄い評判だった。子供たちにもモテモテで…」
結衣「特に、私のグロウルタイガー役なんて、歴史に残る名演技さ!」
結衣「喝采浴びた、当たり役を…この世の名残に見せてあげよう…」
結衣「血の凍るような、名演技を!」
9 グロウルタイガー最後の戦い
海賊猫グロウルタイガー 船見結衣
悪女猫グリドルボーン 吉川ちなつ
海賊猫シャムネコ 歳納京子
シャムネコの手下猫たち 大室櫻子 赤座あかり
櫻子「グロウルタイガーは暴れ者で、随分乱暴な奴だ!」(手下猫)
あかり「でも、それに張り会おうとするシャムネコの親分も大概だよね…」(手下猫)
結衣「私はこの世界で一番強い、グロウルタイガー様だ!」(海賊猫)
結衣「ハリネズミも踏み潰すし、鳴かないカナリアを殺すのもしょっちゅうだ」
結衣「ただ、そんな私にも随分と小ざかしい敵が居る」
結衣「あの外国生まれのシャムネコの野郎だ!」
結衣「あいつ、俺の方耳をちぎりやがって……!良い男が台無しだ」
ちなつ「あら、またシャムネコのことを考えてるの?」(悪女猫)
結衣「グリドルボーン!ああ、君は何時見ても美しいね!!」
ちなつ「シャムネコのことなんか忘れて、私とお話しましょう?」
ちなつ「海が綺麗…」
結衣「そうだね。こんな景色を見ていると、私もセンチメンタルな気分になるよ…」
結衣「私の気性の荒い部下たちも今日ばかりはパブでおとなしく酒を飲んでるらしい」
ちなつ「じゃあ、今は…」
結衣「そう、二人っきりさ」
・・・・・・・・・
京子「バカなタイガーめ…女に現を抜かすなんて」
京子「彼女は、私が雇っている女だとも知らないで…」
京子「あかり!」
あかり「はい!」
京子「今夜、作戦を決行する。他の船員を集めて、グロウルタイガーの船に行こう」
あかり「わかりました!」
京子「くれぐれも、見つからないようにコッソリ行け。いいな」
結衣「この月の輝きや、波の音は全て二人だけのものだよ」
ちなつ「素敵…」
結衣「なぁ、君は歌が得意だったろ?聞かせてくれよ」
ちなつ「喜んで」
ちなつ(グロウルタイガーは私に心を奪われている…)
ちなつ(全ては予定通り)
・・・・・・・・・
あかね「そのとき、二人の側にはシャムネコ海賊団が迫ってきていた」
京子「今、自分がどんな状況に居るかも知らずに…いい気なものだなあ」
京子「総員、突撃!」
結衣「素晴らしい…!なんて素晴らしい歌声なんだ!」
ちなつ「ありがとうございます…」
京子「グロウルタイガー!命はもらったぞ!」
結衣「シャムネコ!?」
京子「逃げられはしないぞ!既に船の中には私の手下が手配してある」
京子「その女も、私の雇った女だ!!」
結衣「そ、そんなはずは…おい、グリドルボーン!」
京子「あの女なら、もう逃げたよ」
結衣「そんな……!!」
京子「年貢の納め時だな」
結衣「畜生ッ!!」
結衣「畜生おおおおおおおおおおおおお!」
あかね「グロウルタイガーは遂に、自ら海へ身を投げた…」
あかね「しかし、彼が死んで悲しむ物はいなかった」
あかね「横暴な海賊が死んで、誰もが喜んだ」
あかね「グロウルタイガーの死んだ日は、記念日となった…」
・・・・
・・・
・・・
・・・
結衣「今の芝居もいいけれど…比べ物には、ならないね……」
結衣「猫、人間のみんな、ご清聴ありがとう」
結衣「もう今生にやりのこしたことはない…」
結衣「私はいつまでも役者猫さ」
あかね「劇とともに、夜は更け…ついに、朝日が見え始めた」
西垣「猫の諸君、とても楽しい舞踏会だった」
西垣「ただ、君たちも一つ気になっていることがあるだろう」
西垣「天上へのぼる猫は誰か。そろそろ、その猫を発表しようと思う」
10 長老猫のごあいさつ
西垣「今まで、何匹かの猫をお目にかけたが…彼らは沢山居る猫の中の、ほんの一つまみにすぎない」
西垣「世の中には、色々な猫が居る。あなたがもし、その猫たちとお友達になりたいと思ったら、気を付けるべきことは二つだけ」
西垣「一つは、馴れ馴れしくし過ぎないこと」
西垣「彼らは、馴れ馴れしくされると憤慨したり、逃げたりするから」
西垣「一定の距離を置いて、目線の高さを合わせてお話しするといい」
西垣「それともう一つは、『猫は犬に非ず』というのを心に留めておくこと」
西垣「ただこの二つだけを気に留めておいて欲しい」
西垣「そうすれば、あなたもいつか『やあ猫君!』と、晴れて猫に話しかけることができるだろう」
西垣「猫が、あなたのことを信用の置ける友達として認めてくれるまでは、ツナの缶詰とか」
西垣「一皿のミルクだとか、敬愛のしるしを奉げなければ」
西垣「サーモンのペーストや、クラッカーとかをね」
西垣「たまには、我々に美味しいものをご馳走してくれると嬉しい」
西垣「猫たるもの、人間から敬意を表されるのは当たり前のこと」
西垣「当然のことのはずさ」
11 ただ一匹だけのねこ
あかね「ゴミ捨て場を、異様な静けさが包み込む…」
あかね「ナイフで切ってしまえそうな静寂を遮り、長老猫は宣言する」
西垣「この舞踏会において、天上へのぼることを許された、ただ一匹の猫は――」
綾乃(舞踏会に来ても、何の意味も無かった…)
綾乃(ただ、周りの猫たちに好奇の目でみられただけで…)
綾乃(私の猫生を変えることはできなかった…)
綾乃(また、思い出ばかりを見つめる日々に戻るんだ…)
綾乃(もう、嫌……っ!)
あかり「綾乃さん、綾乃さん…」
綾乃「何…何の用…?」
あかり「あなたが、天上へのぼるただ一匹の猫なんです」
綾乃「なっ……!」
綾乃「私がっ!!?」
あかり「は、はい…」
綾乃「じゃあ私、生まれ変われるのね!」
西垣「そう。天上へのぼり、新しいジェリクルキャッツとして生まれ変われる」
綾乃「やった…!やったあ!!」
西垣「でも、忘れちゃいけない」
綾乃「何を、ですか?」
西垣「今のあなたがこの世界で生きていたことと、新しい命もまた、老いるということを」
西垣「諸君も良く覚えておくことだ!君たちはこの娼婦を好奇の目で見ていたようだが」
西垣「君達が老いれば、今のような栄光はなくなるんだ…」
西垣「さあ行け、天上へ!」
・・・・・・・・・
あかり「あの日、天上へのぼった猫は、どんな猫に生まれ変わったのだろう?」
あかり「そんなことが気になっていたけれど、最近新しい子猫が生まれたという話を聞きました」
あかり「その猫は、シラバブという名前をもらたそうです」
あかり「前までの疑問は、あの猫はシラバブに生まれ変わったんだと思い、私の仲では解決されました」
あかり「でも、今度は二つも、疑問ができてしまいました」
あかり「一つは、シラバブの三つの目の名前はどんな名前なんだろう?という疑問です」
あかり「そして、もう一つは、次に天上にのぼる猫は、誰なんだろう、という疑問です」
あかり「私はこれからも、リーダー猫として頑張って生きたいと思います」
閉幕
パチパチパチパチパチパチパチパチ(拍手)
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 18:43:54.72:iQ0DVHiI0楽屋裏
綾乃「どうして私は毎回悲劇的な役なのよ!!」
京子「悲劇のヒロイン役は、綾乃にピッタリだよ!」
綾乃「どこがよっ!」
千歳「さりげに、一番扱いが酷かったのウチやない…?」
りせ「……」
西垣「松本は満足か!奇遇だな、私も自分の配役には満足している」
櫻子「なんで私と向日葵が毎回ペアなの!?信じらんないっ!」
向日葵「私だって櫻子とのペアなんて御免ですわ!」
櫻子「なんだとっ!」
千歳(悲劇のヒロインが綾乃ちゃんにピッタリなんは多分…)
千歳(リアルに綾乃ちゃんが悲劇のヒロインやからやろうな)
千歳(綾乃ちゃんには歳納さんと幸せになってもらいたいけど…)
千歳(歳納さんにはもう、船見さんがおるもんなぁ…)
千歳(ウチも、そんなこと認めたくはあらへんけど…)
ちなつ「結衣先輩と劇の中でお付き合いさせていただけるなんて…感激です!」
結衣「ありがとうちなつちゃん」
京子「グロウルタイガー、なかなかハマリ役だったぞ!」
結衣「そ、そう…?」
京子「そうだ、みんなで打ち上げパーティーやんない?」
千歳「ええなぁ~でも、場所はどうするん?」
京子「結衣ん家でいいでしょ」
結衣「おいコラ」
京子「ダメなの?」
結衣「い、いや別にいいけどさ…」
京子「さすが結衣様!」
結衣「はぁ……」
あかり「じゃあ、あかりたち買いだしに行くよ!」
向日葵「私も行きますわ」
京子「じゃあ、一年生は買いだしよろしく!」
あかり「結衣ちゃん、京子ちゃん、また明日ね~!」
ちなつ「それじゃあ、私たちは失礼します」
結衣「うん。今日はお疲れ様
京子「おつかれ!また明日ね!」
・・・・
・・・
・・
京子「結局二人だね」
結衣「しかたないよ。明日も学校だし」
京子「じゃあ今日はもう寝ようk
結衣「ねえ、京子…」
京子「何?」
結衣「今日さ……シない…?」
京子「えっ…?」
!?
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 19:01:49.17:iQ0DVHiI0京子「な、なんで…?」
結衣「ほっ、ほらさ、劇の時ネコミミ着けてたでしょ?」
京子「う、うん」
結衣「すごく似合ってたからさ、着けてもらって…してみたいな、なんて…」
京子「なっ、なななな…!結衣の変態!」
結衣「へっ、変態とはなんだ!お前が可愛いのがいけないんだろ!!」
京子「結衣、劇の最中私のことそういう目で見てたの!?」
結衣「ず、ずっとじゃないけど…たまに……」
京子「変態!」
結衣「そんな、言いすぎだ!」
京子「でも、今日は疲れたからダメ」
結衣「そうか…」
京子「今度、ね」
結衣「じゃあ、キス…だけ」
京子「う、うん…」
結衣「んっ……」
京子「んん…んっ……」
結衣「おやすみ」
京子「おやすみ」
おしまい
元ネタ全然知らないけど、それでも充分面白かった
執筆乙
執筆乙
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