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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:34:47.72:oa0tUzD20
姉「もう学校に行く時間だよ」
俺「あ・・・・・・あ・・・・・・」
姉「ほら、起きて。朝ご飯も
俺「よ、予測変換に打った覚えのない単語がたくさん入ってる!これはサキュレクトによる地球規模のネグレクトだよ」
俺「外に出るのは危険過ぎる・・・今日は休もう」
姉「・・・・・・」
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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:35:51.88:+il7ITa+0
姉「じゃあおねーちゃんは仕事行くからね。2時間目からちゃんと行くんだよ」
俺「弁当買うからお小遣いちょうだい」
姉「う、うん。500円で足りる?」
俺「足りるわけねーだろ!!!!!!!!」ドスッ
姉「うぐっ」
姉「ご、ごめんね。じゃあ千円置いとくね」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:37:16.80:Mye+JnF30
姉「じゃあいってきます」ガチャ
俺「・・・・・・よし行ったか」
俺「もしもしピザタイム?
カマンベールピザのMサイズ大至急持ってきて」
ピザタイム「生地はレギュラーとライトが
俺「うるせえなどっちでもいいから早く持ってこいよ!」
俺「心が折れちゃうよ」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:41:23.03:oa0tUzD20
妹「お兄ちゃん、またお姉ちゃん殴ったの?」
俺「あ、いもーと」
妹「やめなよーそーいうの。
お姉ちゃんきっとまた車の中で泣いてるよ」
俺「いいんだよあんなふしだらな女。
あいつの生活習慣はサキュレクトいわくブロウジョブに近いものがあるらしいからな。
哲学的とは到底言えないだろう」
妹「よくわかんないけど。
じゃあお兄ちゃんはお姉ちゃんを殴ったことはなんとも思ってないの?」
俺「あ、ああ。
しつけみたいなもんだと思ってるよ」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:45:12.45:oa0tUzD20
妹「それは嘘だよ」
妹「だって、私が出てきたってことはお兄ちゃんが動揺してるってことだもんね?」
俺「サンクチュアリ・・・紫陽花・・・メロン記念日・・・」
妹「実在しもしない妹に慰めてもらわないと自分を保てなくなったのはいつから?」
俺「エイメン・・・スカル・・・松野木・・・ふは、ふはっははははははは」ドスッ
妹「だーかーら、無駄だって。
私はお兄ちゃんなんだし、こうやって攻められるのもお兄ちゃん自身が望んでるってことがわからないの?」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:48:15.47:oa0tUzD20
妹「きっといつも見たいに
よしよーし。お兄ちゃんは悪くないよ」
妹「って言ってるだけの妹じゃ統合性もないし現実味もないってことに気づいちゃったんだね。
お兄ちゃんって変なところにこだわるから」
俺「・・・・・・jwympjdxraur」
妹「でも私はお兄ちゃんの味方だよ。
私はお兄ちゃんの妄想だからお兄ちゃんには逆らえないし、何より
ピンポーン
ピザタイム「すいませーんピザタイムでーす」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:51:29.66:oa0tUzD20
妹「お兄ちゃんピザきたよ」
俺「・・・・・・」
俺「妹とってきて」
妹「あはははは無理だよ。私はお兄ちゃんの妄想だもん。
もしかして電話でデカい態度取ったから顔合わせられないのかな?」
俺「そんなわけないだろこのペストリーが。
俺はただ、本当は奴がピザタイムを装った押し込み強盗かもしれないから用心を重ねているだけだ」
妹「はいはい。
身体貸してくれたら取りに行ってあげるけど」
俺「べつにいいよ」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:54:28.26:oa0tUzD20
俺「はいはーい。お待たせっと」
ピザタイム「あ、どうも。1000円になります」
俺「もーっ。お兄ちゃん、お姉ちゃんのお金でまた無駄遣いして」
ピザタイム「・・・?」
俺「あ、ごめんなさい。
千円ですよね?はい」
ピザタイム「・・・どーも、あざしたー」
俺「きゃっ。爽やかですねっ。
お兄ちゃんとは大違い。お疲れさまです」
ピザタイム「???????」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:57:41.92:oa0tUzD20
「はい。ピザ受け取ってきたよ」
俺「あ、おお。サンキューな」
妹「ううん。お兄ちゃんまた太った?
この前身体借りたときより重くなってる」
俺「そうか?」
妹「そうか?じゃないよ。
お兄ちゃんの妄想の私が「重くなった?」って言ってるってことはお兄ちゃん本人もそう思ってるってことだよ?
むしろ、妄想の妹に指摘されるっていうコミカルな方法をとって冗談にしようとしてるけど実際は自分でもまずいって思ってるんでしょ?」
俺「×8×47290(728々5\+×|=*××××々×」
妹「お兄ちゃんは逃げてばっかりだね」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:02:42.29:oa0tUzD20
俺「分かってるんだよ。
学校に行かなきゃいけないってこともアルバイト始めて自立しなきゃいけないってこともでもそれができたら苦労しねーんだよ行けたら行くに決まってんだろ」
妹「嘘だね。
お兄ちゃんは既に学校に行こうと思えば行ける段階だよ。
私がそう思ってるってことはお兄ちゃんもそう思ってるってことだよ?
お兄ちゃんはただ何もしたくない、というよりする勇気がないだけだよ。
それをもっともらしく、やれるならやってるよなんて恥ずかしいと思わないのかな?」
俺「・・・・・・」
妹「こうやって妄想の私に説教させることで自己否定の声に耳を傾けてるつもりになってるならそれは大間違いだからね?
これも含めてお兄ちゃんは自己肯定しかしてないよ。
だって本当に自己否定の声に耳を傾けていたらこんな狭い部屋に閉じこもってないで学校なりバイトなりしてるはずだもんね?」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:07:07.17:oa0tUzD20
俺「やめろ」
妹「やめるのは簡単だよ。
自分でこの妄想をやめたらいい。
でも私が出現してるってことはお兄ちゃんはこうして自分を柔らかく否定されることによって心の安定を図ってるからなんだよね」
妹「ほんとはもっとガチガチに否定することはできる。
学校もこれだけ行ってなかったら留年は決定だし、お姉ちゃんが汗水垂らして働いたお金で入った学校なのにきっともう二度と行けない。
その先は?就職?無理無理。
同年代は既に花の学園生活を送ったり就職したりして、立派に暮らしているのに自分は
俺「うんああいあおぬむなはりltgmg・3々|28jfぬゆやまはらむそらたほわゆさるはjmp+○なかむめやんのよゆすそやはゆゆかまものそくぬむこののりほこほのねひののほむにやんのよゆすそやはゆゆかまものそくぬむこののりほ」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:10:59.98:oa0tUzD20
俺「ッハァ。ハァ。ハァ」
妹「誤解しないでね?
私が口にしてる言葉すべてはお兄ちゃんが考えてることだから。
だって私はお兄ちゃんの妄想。
いわばお兄ちゃんの思考を代弁するマシンだから」
俺「そんなんわかってる・・・わかつわてるから」
妹「ある意味、お兄ちゃんは賢いと思うよ。
まあこれもお兄ちゃんがそう思ってるだけなんだけど。
なまじ賢いしプライドも高いからこの状況を受け入れられない。
バカだったら何もしていない自分に危機感も問題意識もきっともたないからね」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:13:07.98:oa0tUzD20
俺「うんうんうん・・・」
妹「ふふふふふふ。
ところで、漏れてるよお兄ちゃん」
俺「あ、え、あ」
妹「しかたないよ。もう夜だもん。
お兄ちゃん、私と会話してると時間が経つのを忘れるね」
妹「きっともう、現実での会話のテンポも所要時間も忘れちゃってるんだろうね」
姉「ただいまー」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:16:52.24:oa0tUzD20
姉「弟くん。今日は学校行った?」
俺「ああぁ」
姉「あ、また漏らしてる・・・はあ」
俺「あへ」
姉「タオル置いとくね・・・」
俺「拭けよ。どうせお前職場で老人の下の世話してんだろ?
介護なんて底辺職恥ずかしくねえのかよ」
姉「そ、そんな言い方
俺「ほら、優しく拭けよ?
それとも何か。じじいの糞は拭けるのに可愛い弟の糞は拭けないの?」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:19:43.65:oa0tUzD20
姉「・・・・・・」
俺「光栄だろ?俺のケツ拭けるなんてさ。
姉ちゃん淫乱だもんね。
じじいのケツが見たくて介護やってんでしょ?」
姉「・・・・・・」
俺「ほら、早くしてよ寒いよ」
姉「」フキフキ
俺「あ、やべえまだうんこでそう」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:21:43.30:oa0tUzD20
俺「おい。今からうんこするから絶対顔背けないでね」
姉「え、ちょっとまって弟くん!
だったらトイレに
ブボボボボボボボボボ
俺「あ(´;ω;`) 」
姉「・・・・・・」
姉「うっ、うう・・・」
姉「もう嫌だよ・・・こんなの」
姉「お父さん、お母さん・・・」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:25:44.95:oa0tUzD20
俺「・・・・・・」
妹「お兄ちゃんはさ。
ほんとはお姉ちゃんのこと大好きなんだよね」
妹「お姉ちゃんにひどいことをするたびに私が出てくるんだもん」
俺「うん・・・」
妹「でもお兄ちゃん、気づいた?
って私が気づいてるんだから気づいてるか。
最近私が出現してる時間、すごい長いよね?」
俺「・・・うん」
妹「それって現実(そっち)と妄想(こっち)の境界がすごーく曖昧になってるってことだよね」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:28:50.30:oa0tUzD20
妹「そうなってくると本格的に頭の病院に行かないといけなくなっちゃうから」
妹「妄想はなるべく控えて。
その根本となる、お姉ちゃんへの嫌がらせは絶対にやめなきゃね」
俺「・・・うん」
俺「・・・・・・・・・」
俺「ゆまてや×$×××××××××$××××$×××××××××××〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒」
俺「ウギャピ!!!!!!!」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:31:04.34:oa0tUzD20
姉「うぅ・・・お父さん、お母さん・・・」
姉「もう寝よう・・・」
姉「ぐすっ」
姉「おやすみなさい」
姉「・・・・・・」すぅー
ガチャ
俺「・・・・・・」
俺「ハァ、ハァ、ハァ」
姉「・・・?」
姉「弟・・・くん?」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:32:59.69:oa0tUzD20
俺「うわああああああああああああえおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ね!?ね!?ね!?ね!?」
姉「えっ!?えっ?」
俺「声出すんじゃねえよ!
俺が逮捕されたらお前仕事クビになっちまうからな!
終わるまで黙ってろよマグロでいいから
姉「い、いやあああああああああああああ!」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:36:03.84:oa0tUzD20
・・・・・・
姉「・・・・・・」
俺「・・・・・・」
姉「でてって・・・」
俺「・・・・・・」ガチャ
俺「妹!妹!」
俺「もう妹もでてこねえ」
俺「・・・・・・」
俺「俺は」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:38:49.11:oa0tUzD20
俺「もう現実を見よう」
妹「それはやめた方がいいと思うよ」
妹「多分今のお兄ちゃんじゃ耐えられない」
俺「もう決めたんだそうでもしないと俺は」
俺「姉ちゃんがさ。囁くんだよ」
俺「頭の中で」
俺「現実見ろってさ」
妹「そっかあ。そこまできたんだ」
俺「うん」
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:40:14.57:oa0tUzD20
俺「姉ちゃんに謝ってくる」
妹「お兄ちゃんが決めたことは私が決めたことでもあるから。
行っておいで」
俺「うん」
俺「姉ちゃん」
姉「・・・・・・なに?」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:42:09.55:oa0tUzD20
俺「ごめん。
俺本当は姉ちゃんのこと大好きで。
でも姉ちゃんがどっか行っちゃいそうで怖くて姉ちゃんを困らせたら姉ちゃんは俺の面倒を見てくれるからどこにも行かないって思ってた」
俺「だから、俺姉ちゃんにひどいことばっかり
姉「いいの。だって」
姉「これは私が望んだことだから」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:46:52.40:oa0tUzD20
俺「え」
姉「私を困らせる困った弟も私の身体に欲情する男という弟も介護が底辺だとなじる弟も。それでも本当は私のことが大好きな弟も。全部全部私の思ってたこと」
俺「・・・・・・」
姉「わかるでしょう?」
俺「なんだ」
姉「ごめんね。
学校に行けないなんてひどい設定にして」
俺「怒ると思う?
俺は姉ちゃんそのものなんだから」
姉「・・・・・・」
姉「私の家は一人っ子」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:49:18.05:oa0tUzD20
姉「勝手に作り出して勝手に消してごめんね」
俺「いいよ。俺は姉ちゃんだからどう扱おうと姉ちゃんの自由だよ」
姉「・・・・・・その都合の良さも含めて私なのね」
俺「そうだよ。それじゃあね」
姉「うん」
おわり
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:54:37.26:6yowiqt60
マキ
俺「スラムダンクおもすれー」
マキ「そう?持ってっていーよ」
俺「マジ?」
マキ「でも一度に5巻までね」
俺「え、なんで?」
マキ「そしたら何回も借りに来てくれるでしょ?」
俺「ばっ、ばかじゃねーの。
家となりなんだから漫画なんかなくても何回も来てやるっつーの」
マキ「ほんとに?約束ね」
俺「寂しがりやだなーお前は」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:58:03.12:oa0tUzD20
俺「なあマキ。ちょっと出かけないか?」
マキ「え?こんな時間に?」
俺「うん。ちょっと見せたいものがあるんだ」
マキ「・・・?」
俺「そんな遠くないから。行こうぜ」
マキ「え、ちょっと手//////」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:00:45.65:oa0tUzD20
俺「ついたー!」
マキ「階段長いよー」
俺「ほら、見てみ。夜景綺麗だろ?」
マキ「すごい・・・・・・」
俺「ここ、秘密の場所なんだ。
たまたま見つけたから、俺とマキしか知らないと思う」
マキ「素敵・・・・・・」
俺「な、なあマキ。俺、マキのことが
マキ「知ってるよ」
俺「え?」
マキ「だって私も君のこと・・・」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:04:35.29:oa0tUzD20
マキ「にしても素敵な夜景だったね」
俺「あんなところでよかったら何回でも連れてってやるよ」
マキ「ほんと?嬉しい。
でも、君の彼女になれたことのほうが嬉しいよ」
俺「バカ。恥ずかしいわ」
マキ「あは。もう着いちゃったね」
俺「あ、ほんとだ。じゃ、またな」
マキ「・・・・・・離れたくないね」
俺「またすぐに会えるよ」
マキ「うん。ねえ、大好き」
俺「俺もだよ。ほら、家の中入れよ。
遅くなっちゃったし、道路でしゃべってるの恥ずかしいから」
マキ「う、うん。じゃまたね」
俺「おう!」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:06:41.16:oa0tUzD20
俺「ふう」
俺「マキが俺の彼女・・・」
俺「はははははは」
マキ「おーい!」
俺「あ、マキ。どうしたんだ」
マキ「スラムダンク忘れてるよ。また借りにき
ぐっしゃあああああああああああああああ
俺「え?」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:09:10.57:oa0tUzD20
俺「マ、マキ?」
マキ「」
俺「マキが、バラバラに」
運転手「う、うわあ。居眠りしちまっ
俺「どけろ!早くマキの上から車どけろよ!」
運転手「あっ、うわっああ!」
俺「待てよおい!」
俺「ちくしょう、車の運転なんてしたことねーよ・・・こうか?」
ぐしゃっ
俺「ち、ちがった」
ぐしゃっ ぐしゃっ
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:11:42.21:oa0tUzD20
マキ「で、結局こうなったと」
俺「すまん。最善は尽くしたんだが」
マキ「ううん。嬉しい。
でもやっぱり、両足両手がないのは不便だね・・・」
俺「お、俺がマキの手足になるから
マキ「・・・・・・ありがとう」
マキ「・・・・・・」
マキ「ちょ、ちょっと後ろ向いててくれるかな」
俺「・・・・・・」
マキ「ふぇ・・・ぐすっ、ぐす」
俺「・・・・・・」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:14:51.69:oa0tUzD20
俺「ただいまー」
運転手「・・・・・・」
俺「おい」
運転手「ふがっ、ふが」
俺「今日マキの見舞いに行ってきたんだけどよお」
俺「あいつ、手足なくなってダルマになっちまったよ」
運転手「ふがっふがあ」
俺「お前もダルマにしてやろーか!」
運転手「ふがっふがががががが!」
俺「あー?何言ってるかわかんねーよ」バッ
運転手「す、すいませんでしま!!!」
俺「すいませんじゃすまねーよ。
お前手足ちぎられてもすいませんで許すのかコラ」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:18:43.04:oa0tUzD20
俺「てめえの手足は千切る」
運転手「そっ、それだけは勘弁してください」
俺「いーやだめだ」
運転手「でも僕の手足を千切ってもマキさんの手足は戻りませんよ」
俺「・・・・・・」
運転手「人体オークションってご存知ですか?」
俺「あ?」
運転手「ですから、人体オークションですよ。
僕、実は医者をやってまして」
俺「嘘つけ」
運転手「ほんとですよ。
カバンの中見てください。医師免許も病院の駐車許可証もありますから」
俺「ほんとだ・・・」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:22:59.50:oa0tUzD20
運転手「こういった事故で手足を失った人たちのために行われる闇オークションですよ」
俺「・・・・・・・」
運転手「そこでなら手足や身体の接合に関しては一流の医師も配備されてますし、何よりマキさんの身体に合ったパーツが手に入りますよ」
俺「ほんとだな?
じゃあそこにつれてけ。勿論金は出してもらうからな」
運転手「ええもちろん・・・金?」
俺「オークションっていうからには金が必要なんだろ?」
運転手「いえ、人体オークションでの通貨は身体のパーツです」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:25:06.55:oa0tUzD20
俺「ほんとにこんな居酒屋で人体オークションが?」
運転手「ええ。
あー、すいません。コーラの焼酎割り2つを」
店員「はい。割合はどうしましょ」
運転手「えーとコーラと焼酎1:9で」
店員「・・・・・・」
店員「こちらへどうぞー」
俺「・・・・・・」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:30:44.46:oa0tUzD20
俺「トイレに隠し扉が」
運転手「さ、行きましょう」ギィィィ
運転手「始まってますね」
俺「う、うるせえなここ」
「では10代少年の右腕肘下!
レートは右眼球1つからスタートです」
「右眼球+左手小指薬指中指!」
「右眼球+右手小指薬指!」
「右眼球+右手小指薬指以上ありませんかー?」
「はい落札決定!」
俺「なんで今のは右手のヤツが落札したんだ?
左手のほうが小指薬指中指で多いはずだろ」
運転手「そりゃこの日本には右利きの人の方が多いですからね。
右手は価値が高いんですよ」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:39:10.45:oa0tUzD20
俺「なるほど」
「次は10代少女の両脚(付け根まで)!
レートは両目以上!」
運転手「お、出ましたね」
俺「よし、落札だ」
運転手「・・・・・・」
「両目+左手小指!」
俺「おい入札しろよ」
運転手「え、だってレート両目以上ですよ?
僕盲目になっちゃうじゃないですか」
運転手「やっぱり膝したまでは安いけど足付け根までは高いんだよなー」
俺「今すぐ目をえぐられて盲目になるのよりましだろ早くしろ」
運転手「両目+左足(膝下)!」
ざわざわざわざわ
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:45:24.34:oa0tUzD20
「両目+左足(付け根)!」
俺「うおー、あのオヤジやるなあ」
運転手「チッ。どーせ娘のためでしょーよ。しかたない、交渉しましょう」
運転手「交渉」
「今から5分間の交渉タイムに入ります。
10代少女両脚(付け根)希望者は壇上へ」
オヤジ「頼む譲ってくれないか。
娘は先天性の障害で歩けないんだ」
運転手「いやーこっちも入り用でしてね」
オヤジ「むむむむむ」
運転手「しかしこのままお互いレートをあげつづけても仕方ありません。
ここは一つじゃんけんで」
オヤジ「しかたない。10代少女ってだけでも貴重なうえに両脚(付け根)だからな」
運転手「じゃんけーんポン!」
オヤジ「や、やった!勝った!」
運転手「あれ?負けた方が競り落とすって言ってませんでしたっけ?」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:47:57.11:oa0tUzD20
オヤジ「なっ」
運転手「交渉終わりました。
私が両目+左脚(付け根)+左手小指でまとまりました」
「はい決定ー!」
オヤジ「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
運転手「なんですか?
先天性っていわば親であるあなたの責任ですよね。
今更取り返そうったって娘さんの人生は変わりませんよ」
オヤジ「・・・・・・」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 17:53:26.39:oa0tUzD20
運転手「はい、これ予約券です。
一週間以内にマキさんをここに連れて来れば手術してもらえますよ」
俺「よくやった」
運転手「しかし問題が。
10代少女の両腕は高いですよ。恐らく右腕左腕(小指なし)右脚を全部かけても無理でしょう」
俺「なっ」
運転手「腕のセットで付け根までって恐らく一番貴重だとおもいます。
そのうえ10代少女ともなるとやはり・・・」
俺「とりあえずお前にはダルマになってもらうとして」
運転手「マジですか勘弁してください。
盲目の上にダルマってひどすぎます」
俺「いやだめだ」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:07:16.64:RP2PKD5a0
運転手「結局盲目な上にダルマになっちまいましたよ」
運転手「おまけに最後は縺れこんで鼻までなくしてしまったし」
俺「まあまあ。お前もまたここにきて取り戻せばいいじゃないか。
そろそろでよう」
運転手「ああ。
これ出る時に取られるんですよ」
俺「へえそうなのか。
じゃ、俺は先にマキを迎えに行くから」
運転手「そうですか。予約券2枚渡しましたよね?」
俺「ああ。
10代少女の両脚と両腕って書いてある」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:09:30.88:RP2PKD5a0
運転手「その下にはなんて書いてありますか?」
俺「ん?えっと、
両眼球+両腕(肩)+両脚(付け根)+鼻 と交換」
運転手「大丈夫そうですね。
じゃ、私は支払いがありますのでこれを持って外へ」
俺「あ、ああ。
その前にマキに電話しよう」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:12:29.48:RP2PKD5a0
マキ「もしもし?」
俺「マキ!俺だ。
お前の手足治るよ。俺、手に入れてきたんだ」
マキ「え・・・?」
俺「闇オークションで、落札してきたんだよ!今からそっち迎えに行くから、こっそり支度して待っててくれ」
マキ「ほんと?」
俺「ああ!よかったなマキ!」
マキ「・・・私、普通の女の子に戻れるの!?」
俺「ああ。金も心配しなくていい!
親切な人が払ってくれたんだ」
マキ「よかった・・・よかった・・・」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:14:27.94:RP2PKD5a0
運転手「お話はつきましたか?予約券は持ちましたか?」
俺「ああ。やたら確認するなそれ」
運転手「予約券は大事なものですからね。
ならこっちの出口から出てください。
僕は支払いがあるからあっちですけど」
俺「ん。俺はみんなと出口が違うのか?」
運転手「ああそうですね。
落札者専用通路と言いますか」
俺「ふーん。じゃあ支払いよろしく」
運転手「はーい」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:16:47.21:RP2PKD5a0
俺「ふー。しかしやけに長いなこの通路」
医者「あ、君は落札者かね?」
俺「そうです。両脚両腕は彼女につけてほしいんですけど、彼女がまだここにいないんです」
医者「なるほど」
俺「まあとりあえずはそういうことでよろしくお願いします」
医者「うむ。じゃあさっそく始めよう」
俺「え?」
医者「麻酔用意」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:18:30.64:RP2PKD5a0
俺「ちょっと待
医者「うん。予約券もしっかりあるしな。
2人組だったからもう一人が彼女とやらを連れてくるんだろう」
看護婦「そうですね。とりあえず手術室に運びます」
医者「よろしく頼むよ」
俺「・・・・・・・・・」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:21:01.16:RP2PKD5a0
俺「ここは・・・」
俺「真っ暗だ!誰か電気をつけてくれ」
医者「手術は無事完了したよ。
両腕両脚両眼球鼻は全部執刀して取り除かせてもらった」
俺「そんな嘘だ」
医者「しかし、彼女とやらも迎えの人も来ないな。
君もその身体では帰れないだろ」
俺「うわああああああああああああああ!」
俺「俺の手が!足が!目が!鼻が!」
・・・・・・・
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:22:46.23:RP2PKD5a0
マキ「私、普通の女の子に戻れるんだ」
マキ「ふふふ。嬉しい」
マキ「まだかなあ」
マキ「遅いなあ」
おわり
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:35:34.13:N8wdE/vb0
ありがとう。
僕のクラスの隣の席に、上野という苗字の女子がいる。
授業中、彼女はよく眠る。睡眠不足なのか、授業が退屈なのか。
なんの前触れもなく、ぱたんと机に突っ伏すと、そのまま授業終了のチャイムがなるまですーすーと気持ち良さそうに寝息を立てるのであった。
始めてその光景を見た時は、体調でも悪いのかな、と思ったけれど、穏やかな寝息が聞こえたので、安眠を邪魔するのも悪いし放っておくことに決めた。
僕と彼女の席は列の一番後ろの窓側で、彼女のひそやかな息抜きに教師が気づくことはまずないけれど、それでも時々、名指しで回答を求められるときがある。
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:48:14.66:RP2PKD5a0
そういうときは、僕が彼女をシャーペンか何かでつついて起こして正答を小声で教えるのだった。
びくり、と身体を震わせたのち、寝ぼけ眼をこすりながら答えを口にする彼女は、突然の悪夢で目覚めた子供のようだった。
そうして難を逃れる度、休み時間に彼女は笑いながら手を合わせるのだ。
「いつもごめんね、昨日たくさん寝たのになあ」
おおよそ女子らしからぬ言い訳をしながら腰まである長い髪の毛を揺らして笑うその時は、少し可愛いと思う。
なんで眠いのか、とか授業分かるのか、とかいろいろ聞きたいことはあるけれど、僕は たいてい「いいよ」とぶっきらぼうに返すだけだった。
これが僕にできる精一杯の返答だったのだ。
一日のうちで僕らの間で会話が交わされるのはその時だけだったし、その時以外にお互いを意識することはなく、席替えをしてから一週間が経った。
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:49:05.35:RP2PKD5a0
上野に彼氏がいるらしい。
昼休みにそう言ったのは僕の友人である伊豆であった。
伊豆は、整った外見をした僕のクラスメイトである。
引っ込み思案の僕にとって、クラスで気軽に話せる唯一の友人でもある。
伊豆はその整った外見からか、僕と違い、女子に好感を持たれやすいらしい。
しかし、それに甘んじて軽薄な行動ばかりとった結果、男子から嫉妬と恨みの入り混じった目で見られ、同性からは随分と敬遠されるようになってしまったらしい。
彼氏、とか彼女、とかそういう桃色事情に疎い僕の耳に入るくらいだから、それはそれはすごい遊びっぷりだったのだろう。
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:50:05.25:RP2PKD5a0
「彼氏?」
僕は思わず聞き返した。
伊豆はニヒルな笑みを浮かべながら、
「落ち着けよ」
とだけ言った。
伊豆はわざとらしい緩慢な動作で、持参した弁当を僕の机の上に広げ始めた。
そのかわいらしい赤いチェック模様のランチョンマットを見ていたらなんだかお腹が空いてきたので、僕も自分の弁当を広げた。
「で、彼氏って?」
何をそんなに焦っているのか自分でもわからなかったけれど、僕は伊豆に詰め寄った。
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:51:47.45:RP2PKD5a0
伊豆は涼しげな口調で言う。
「上野って昼休みいつも教室にいないだろ?」
そういえば、彼女が教室で昼食を取る姿は見たことがなかった。てっきり食堂にでも行っているのだと思って深く考えていなかった。
「なんかうちのクラスの男子と密会してるらしーぜ」
それを聞いて思わず隣の席に目をやると、4限目の教科書と、かわいらしいピンクの筆箱が出しっ放しになっていた。
4時間目が終わってすぐ、教室から飛び出して行く上野の姿が目に浮かぶようだった。
僕の想像のなかの上野の長い髪は、いつもより楽しげに揺れていて、なんだか胸が苦しくなった。
あの上野が彼氏とどこかで密会している。
机の上に放り出された筆箱のピンクがやけに艶かしく見えてしまう。
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:52:45.00:RP2PKD5a0
そんな僕にお構いなしに、伊豆は自分の弁当箱の中の赤いプチトマトを箸でつかんだ。
「あ、プチトマト入ってる。
嫌いっつったのに」
伊豆はぶつぶつとそのようなことを言うと、弁当箱にプチトマトを戻した。
「上野、彼氏いるんだ」
なんとかそう答えるも、僕は衝撃を受けていた。
男子、密会、彼氏。
その3つの単語が頭のなかでぐるぐると回っていた。
「ってことは、今クラスにいない男子が上野の彼氏なわけだな」
伊豆は名探偵も真っ青の推理を披露すると、弁当を食べる作業に戻った。
僕は鼻で笑った。
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:53:30.05:RP2PKD5a0
たとえそれが本当だったとしても、うちのクラスの男子の約半分くらいが中庭や食堂など、教室じゃないところで昼食を取るのだ。
特定のしようがない。
「でもなんでそれを僕にいうのさ」
自分でも白々しいと思いながらも、 僕はできるだけ平静を装った声でレタスをかじりながら言った。
伊豆にはもちろん、他のクラスメイトにだって、上野を起こしていることは言っていない。
「いや、なんとなく」
伊豆は悪意100%の笑顔を見せながら続けた。
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:54:00.67:RP2PKD5a0
全てを見透かしているような伊豆の視線に耐え切れずうつむいていると伊豆が軽い口調で言った。
「何?上野のこと意識しちゃってるわけ?」
どこか楽しそうなその発言に僕は妙に背中が汗ばんできたのを感じた。
「いや意識っつーかべつにただちょっとかわいいなって」
なぜか完全に否定することもできずにもごもごと呟く僕に業を煮やしたのか、伊豆は言った。
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:54:52.18:RP2PKD5a0
「世の中ダーティーに行かなきゃ損しかしねえぞ、な?」
伊豆はそう言って、まったく関係のない前の席の男子の頭を小突いた。
メガネをかけたその男子はいかにも迷惑そうに一度振り向いてから、顔をしかめてまた前を向いた。
僕が何も言えないでいると、伊豆は神妙な顔つきになって言った。
「俺、こういうことばっかしてるから男子の友達少ないのかな」
僕はおおいに頷いた。
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:55:38.88:RP2PKD5a0
「とりあえず、話しかけてみようかなあ」
僕がそう言うと伊豆は笑った。
「ははは、何事も行動しないと始まらないからな。
お、俺今いいこと言った」
なんだか伊豆が言うと説得力があった。
実際話しかけれるかどうかは別として、話題の一つや二つくらい考えておくのもいいかもしれない。
僕が無難な話題を考えていると、珍しく暗い声で伊豆が呟いた。
「まあ付き合うってあんまりいいもんじゃねーけどな」
伊豆らしくないその声の重さに驚いて聞き返す。
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:56:25.88:RP2PKD5a0
「ん?なんで?いいじゃん彼女って」
「あ、いやいや、今付き合ってる女がしつこ
いつもの声に戻った伊豆がそこまで言ったところで、伊豆の携帯が鳴った。
今流行りのJ-pop。曲名まではわからないが、何度かテレビで聞いたことがある。
「あ、エミちゃんから電話きた、悪りい」
そう言い残すと、伊豆はそそくさと携帯を片手に教室を出て行った。
おそらくそのエミちゃんとやらも、伊豆の“女友達”の一人なのだろう。
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:57:06.53:RP2PKD5a0
結局僕は一人で弁当を食べることにした。
世の中は不公平である。
金にしろ、女にしろ、なんにしろ、分配の仕方が公平じゃない。
持っているヤツがいくつも持っていて、持ってないヤツは一つも持ってない。
そして所詮僕は、持たざる者なのだ。
がつがつとお弁当を食べた。
上野は今頃、誰と弁当食べてるんだろうな、と思うと胸の中がむしゃくしゃして、味がよくわからなかった。
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:58:03.05:RP2PKD5a0
*
それから3週間が経った。
上野は相変わらず、授業中はぐうぐうと惰眠を貪ることに余念がなかったし、昼休みになると弁当を持って教室を飛び出して行った。
伊豆も伊豆で例の彼女がいながら、エミちゃんとやらと遊びまわっているようだ。
僕も相変わらずで、この3週間で上野に話しかけることはおろか、目すら合わせられなかった。
そして、今日こそ上野に話しかけるぞ、と半ばやけくそになっている決意を胸に僕は学校へと続く道を歩いていた。
今朝はなんだか早く目が覚めてしまい、そのまま朝ご飯も食べずに登校してしまった。
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:58:58.86:RP2PKD5a0
勢いだけの行動に、胃袋がぎゅぎゅると抗議の声をあげていた。
昔誰かが、恋をすると人生が楽しくなるとかそのようなことを言っていた。
そのときの僕はその発言を一笑に付したけれどあながちそれも間違いではないのかもしれない。
これだけ早いとさすがに通学路には学生の姿もなく、軽装の老人たちが散歩しているだけだった。
なんだか、今日は上野に話しかけれる気がした。
話題はなんだっていい。
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:59:39.92:RP2PKD5a0
何よりも大事なのは行動すること。
もし、上野も朝早く来ていて、教室に2人きりだったら。
上野が普段何時ごろ登校しているのかは知らないけれど、僕よりは先に教室にいるはずだ。
いや。それはない。
授業中に惰眠を貪る上野の姿を思い出して、 僕はすぐその考えを打ち消した。
きっとまだ暖かい布団の中だろう。
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:00:24.26:RP2PKD5a0
*
結局、誰にも会わないまま靴箱に着いてしまった。
始業まではまだ1時間近くあり、朝練がある運動部の連中もまだ来ていないようだった。
靴を脱いで下駄箱に入れようとしたそのとき。
聞き覚えのある声が聞こえて来て僕は手を止めた。
「だからいいつってんだろ」
静かな怒気を孕んだその声は。
伊豆のものだった。
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:00:51.60:RP2PKD5a0
思わず忍び足になり、下駄箱の隅から顔を出す。
僕の教室の前に向かい合う2つの人影が見えた。
こちら側を向いている、背の高い人影はやはり伊豆だった。
もう一人のほうは、僕に背を向けているので誰かはわからなかったが、制服で女子だとわかった。
どうやら二人とも僕には気づいていないらしい。
嫌なものを見てしまった、と思うと同時に伊豆の意外な一面に驚いた。
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:03:24.28:RP2PKD5a0
「で、でも伊豆くんお弁当ないって」
戸惑うその声をあげたもう一つの人影は、よく見ると、腰まである長い髪の毛をしている。
「そういうのもういいって。朝早く来るのもだりいんだよ」
心底気だるそうな伊豆。
「じゃ、じゃあお昼休みに渡すよ」
「はあ?だからいらねーって言ってんのわかんない?
だいたい弁当2つ持ってきて授業受けてたらおかしいだろ」
事情は知らないけれど、その言い方はあまりにも一方的なように思えた。
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:03:55.00:RP2PKD5a0
僕は何時の間にか拳をきつく握りしめていた。
好きな人に話しかける勇気なんていらなかった。
こういうときに飛び出して行ける勇気が、ほしかった。
でも僕はどちらも持っていなかった。
「ご、ごめんね。じゃあ明日からは作らないからね」
絞り出すような震えた声。
そのとき、僕はやっと気づいた。
揺れるその長い髪。
ああ。
あの子は。
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:07:16.12:RP2PKD5a0
「一回寝たくらいで彼女面すんなっつーの」
下駄箱の陰で硬直する僕には気づかず、 耳を疑うようなセリフを吐くと、伊豆はそのまま踵を返し歩き去っていった。
伊豆の姿が見えなくなるなり、上野はそのまま床にぺたんと座り込んだ。
そして肩を震わせて泣いていた。
しゃくりあげるような嗚咽は僕の耳に突き刺さる。
勿論、好きな人のそのひそやかな涙を拭うことさえ僕にはできやしない。
僕は足音を忍ばせて、こっそりと自宅に帰った。
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:10:51.77:RP2PKD5a0
*
翌朝。
「おーす。昨日どしたん。
一人で弁当食うハメになったじゃねーかよお」
教室に入るなり伊豆が話しかけてきた。
その明るく無邪気な声は昨日の怒気を孕んだ声とは正反対だったけれど、よっぽどこっちのほうが堪えた。
「ああ、ちょっと風邪で」
僕はそう言いながら席に着いた。
伊豆は大袈裟に驚きながら、
「うお、この時期に風邪かよー。
そういえば俺もなんか体調悪いわ」
と自分の腹に手を当てた。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言うなり伊豆は教室を出て行った。
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:16:01.23:RP2PKD5a0
こっそり横を見ると、上野は机の上に教科書を広げていたが心ここにあらずといった感じで視線が定まっていない。
今こそ、勇気を出すときだった。
「う、上野・・・さん」
薄汚いかすれた声が出る。
上野はワンテンポ送れて顔をこちらに向けた。
「なに、かな?」
僕は、昨晩自宅で書いてきた一枚のメモを渡した。
「これ読んで」
白くて小さな手に紙を握らせる。
上野は不思議そうな顔をして手の中の紙を見つめた。
「早くしまって」
僕がそういうと得心のいった顔をして、メモを突き返してきた。
「ご、ごめんなさい、あたし好きな人が」
「ラブレターじゃないから」
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:19:28.18:RP2PKD5a0
そういいながらもやはり心はダメージを受けていた。
あんなにひどい仕打ちをされたというのに上野はまだ伊豆のことが好きなのか。
目の前の事実に打ちのめされそうになったがかろうじて踏み止まる。
「伊豆戻ってくるから」
僕がそう囁くと、上野は慌ててポケットに紙をしまった。
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:31:40.65:RP2PKD5a0
放課後。僕は屋上で上野を待っていた。
あのメモには伊豆とのことを知っている、放課後に屋上にきてくれ、と書いてあるのだけれど、上野があれを開いて見て、さらに屋上に来てくれる可能性は極めて低かった。
僕は祈るような気持ちで時が過ぎるのを待った。
屋上に来てから30分ほどが経過したとき。ぎぃぃ、と錆びた蝶番の軋む音と共がして扉の開く音がした。
「伊豆く・・・伊豆さんとのこと、なんで知ってるの?」
雑談を交わす間もなく、上野は顔をしかめながら僕に詰め寄った。
「いいよ伊豆くんって呼べば。
僕、知ってるからさ」
上野は顔を赤くして僕の両肩を掴んだ。
「だ、誰にも言わないで!」
上野は涙を両目に浮かべながら言った。
それはそうだろう。
もしこのことがクラスに広まれば女子はおろか、男子からも敬遠されてしまうことは間違いない。そう、伊豆のように。
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:33:24.07:RP2PKD5a0
だからこそ僕は、ここで告白することにした。
「心配しなくてもいい」
息を吸い込む。
今までに拒絶された思い出たちが胸に蘇る。
だからこそ、僕は伊豆を敬遠しなかった。
それは、自分で初めて見つけた仲間が伊豆だったからだ。
「僕も、君たちの仲間だから」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:35:39.34:RP2PKD5a0
「え」
上野が呆気にとられた顔をする。
だから僕はもう一度、言ってやる。
「僕も、レズビアンなんだよ」
123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:36:42.75:KEl+wYJYO
「そんな、嘘」
「嘘じゃない。
もっとも伊豆の性同一性障害とは違うけどね」
上野は唇をきつく噛み締めてから、言った。
「私、正直あなたのこと嫌いだった」
「私や伊豆くんみたいに本気で悩んでる人の前でも「僕」って言うし、巫山戯てるのかと思ってた」
僕は両肩を落として落ち込むふりをする。
「やれやれ。でも僕が君をここに呼んだのはこのことをカミングアウトするためじゃないよ」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:45:23.33:RP2PKD5a0
「伊豆のこと、許せなくない?」
僕は昨日何度も練習した言葉を発した。
カミングアウトよりも、ある意味これを言うのが一番緊張した。
上野は今にも泣き出しそうな顔をして、かぶりをふった。
「そんなわけ、ないよ。
伊豆くんのこと、今でも好きだから」
ああ。
分かってはいたけど。
やはり、目の前の女の子はどうやっても僕には手に入らないらしい。
それだったらせめて伊豆との仲をぶち壊してやろうと思ったけど。
「うまくいかないもんだな」
僕は空を見上げた。
上野は困ったような顔をして俯いた。
僕は、こんな顔をさせるために呼び出したんじゃない。
「てっきり気づいてたものかと」
上野はやっと、いつもの笑顔を浮かべてくれた。
「君って気弱そうだから、男子に頼まれてあのメモを渡したのかなって思ってたの」
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:49:37.80:RP2PKD5a0
「男子?」
「だから、ほら、代わりにラブレター渡して、みたいなのかな、て」
僕は思わず苦笑する。
意外に上野は自身過剰なところがあるのかもしれない。
「うん、ラブレターっていうのはあながち間違いじゃないかも」
今度は、僕が上野に詰め寄る。
「え?」
上野の白くて綺麗な肌が、長い睫毛が、目の前に。
でも、きっとまだこれは、この娘は、伊豆のものだ。
僕は上野を抱き寄せたい衝動を必死に堪えた。
「僕、上野のこと好きだし」
「あー、ごめんなさい」
上野はぺこりと頭を下げた。
「早っ」
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:52:48.98:RP2PKD5a0
「うん。ほら、私レズビアンだけど
君とはちょっと違うっていうか」
上野は両手をせわしなく動かして弁解する。
「私は身体は純粋な女の子がいいんだけど、できれば中身は男の子がいいっていうか」
ああ。僕はため息をついてしゃがみこむ。
それって伊豆のことじゃないか。
「ご、ごめんね!
でもお友達としてならこれから仲良くしてってほしいっていうか・・・」
ごにょごにょとそんなようなことを言って、上野は僕のスカートの埃を払ってくれた。
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:55:43.98:RP2PKD5a0
「そっか・・・」
刈り上げでもしようかな、と思ったけれどそれこそ問題になるだろう。
でも僕は上野を諦めきれない。
「じゃ、じゃあさ。
伊豆の代わりに僕にお弁当作ってくれないかな?
あいつには秘密にするから」
僕は。
勇気を振り絞ってやっと作った上野との接点を失いたくなかった。
上野は少し考える素振りを見せると、頷いた。
「それなら、いいよ。
でもお友達としてだよ?」
「うん」
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 20:00:19.65:RP2PKD5a0
それから、上野は早起きしてお弁当を渡してくれるようになった。
誰もいない教室で少し雑談して、人が来る前に僕は教室を出て行き屋上で、始業前まで時間を潰す。
それでも進歩したほうだ。
*
授業中、肘に尖った何かが当たった。
横を見ると上野が僕の耳に口を近づけてきた。
「明日のお弁当何がいい?」
その上野の悪戯っぽい笑顔を見て僕は微笑んだ。
いつか。
僕のものにしてやる。
おわり
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 20:02:12.19:RP2PKD5a0
お、おう…
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:36:45.74:oa0tUzD20姉「じゃあおねーちゃんは仕事行くからね。2時間目からちゃんと行くんだよ」
俺「弁当買うからお小遣いちょうだい」
姉「う、うん。500円で足りる?」
俺「足りるわけねーだろ!!!!!!!!」ドスッ
姉「うぐっ」
姉「ご、ごめんね。じゃあ千円置いとくね」
え…
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 15:38:57.15:oa0tUzD20姉「じゃあいってきます」ガチャ
俺「・・・・・・よし行ったか」
俺「もしもしピザタイム?
カマンベールピザのMサイズ大至急持ってきて」
ピザタイム「生地はレギュラーとライトが
俺「うるせえなどっちでもいいから早く持ってこいよ!」
俺「心が折れちゃうよ」
妹「お兄ちゃん、またお姉ちゃん殴ったの?」
俺「あ、いもーと」
妹「やめなよーそーいうの。
お姉ちゃんきっとまた車の中で泣いてるよ」
俺「いいんだよあんなふしだらな女。
あいつの生活習慣はサキュレクトいわくブロウジョブに近いものがあるらしいからな。
哲学的とは到底言えないだろう」
妹「よくわかんないけど。
じゃあお兄ちゃんはお姉ちゃんを殴ったことはなんとも思ってないの?」
俺「あ、ああ。
しつけみたいなもんだと思ってるよ」
妹「それは嘘だよ」
妹「だって、私が出てきたってことはお兄ちゃんが動揺してるってことだもんね?」
俺「サンクチュアリ・・・紫陽花・・・メロン記念日・・・」
妹「実在しもしない妹に慰めてもらわないと自分を保てなくなったのはいつから?」
俺「エイメン・・・スカル・・・松野木・・・ふは、ふはっははははははは」ドスッ
妹「だーかーら、無駄だって。
私はお兄ちゃんなんだし、こうやって攻められるのもお兄ちゃん自身が望んでるってことがわからないの?」
妹「きっといつも見たいに
よしよーし。お兄ちゃんは悪くないよ」
妹「って言ってるだけの妹じゃ統合性もないし現実味もないってことに気づいちゃったんだね。
お兄ちゃんって変なところにこだわるから」
俺「・・・・・・jwympjdxraur」
妹「でも私はお兄ちゃんの味方だよ。
私はお兄ちゃんの妄想だからお兄ちゃんには逆らえないし、何より
ピンポーン
ピザタイム「すいませーんピザタイムでーす」
妹「お兄ちゃんピザきたよ」
俺「・・・・・・」
俺「妹とってきて」
妹「あはははは無理だよ。私はお兄ちゃんの妄想だもん。
もしかして電話でデカい態度取ったから顔合わせられないのかな?」
俺「そんなわけないだろこのペストリーが。
俺はただ、本当は奴がピザタイムを装った押し込み強盗かもしれないから用心を重ねているだけだ」
妹「はいはい。
身体貸してくれたら取りに行ってあげるけど」
俺「べつにいいよ」
俺「はいはーい。お待たせっと」
ピザタイム「あ、どうも。1000円になります」
俺「もーっ。お兄ちゃん、お姉ちゃんのお金でまた無駄遣いして」
ピザタイム「・・・?」
俺「あ、ごめんなさい。
千円ですよね?はい」
ピザタイム「・・・どーも、あざしたー」
俺「きゃっ。爽やかですねっ。
お兄ちゃんとは大違い。お疲れさまです」
ピザタイム「???????」
「はい。ピザ受け取ってきたよ」
俺「あ、おお。サンキューな」
妹「ううん。お兄ちゃんまた太った?
この前身体借りたときより重くなってる」
俺「そうか?」
妹「そうか?じゃないよ。
お兄ちゃんの妄想の私が「重くなった?」って言ってるってことはお兄ちゃん本人もそう思ってるってことだよ?
むしろ、妄想の妹に指摘されるっていうコミカルな方法をとって冗談にしようとしてるけど実際は自分でもまずいって思ってるんでしょ?」
俺「×8×47290(728々5\+×|=*××××々×」
妹「お兄ちゃんは逃げてばっかりだね」
俺「分かってるんだよ。
学校に行かなきゃいけないってこともアルバイト始めて自立しなきゃいけないってこともでもそれができたら苦労しねーんだよ行けたら行くに決まってんだろ」
妹「嘘だね。
お兄ちゃんは既に学校に行こうと思えば行ける段階だよ。
私がそう思ってるってことはお兄ちゃんもそう思ってるってことだよ?
お兄ちゃんはただ何もしたくない、というよりする勇気がないだけだよ。
それをもっともらしく、やれるならやってるよなんて恥ずかしいと思わないのかな?」
俺「・・・・・・」
妹「こうやって妄想の私に説教させることで自己否定の声に耳を傾けてるつもりになってるならそれは大間違いだからね?
これも含めてお兄ちゃんは自己肯定しかしてないよ。
だって本当に自己否定の声に耳を傾けていたらこんな狭い部屋に閉じこもってないで学校なりバイトなりしてるはずだもんね?」
俺「やめろ」
妹「やめるのは簡単だよ。
自分でこの妄想をやめたらいい。
でも私が出現してるってことはお兄ちゃんはこうして自分を柔らかく否定されることによって心の安定を図ってるからなんだよね」
妹「ほんとはもっとガチガチに否定することはできる。
学校もこれだけ行ってなかったら留年は決定だし、お姉ちゃんが汗水垂らして働いたお金で入った学校なのにきっともう二度と行けない。
その先は?就職?無理無理。
同年代は既に花の学園生活を送ったり就職したりして、立派に暮らしているのに自分は
俺「うんああいあおぬむなはりltgmg・3々|28jfぬゆやまはらむそらたほわゆさるはjmp+○なかむめやんのよゆすそやはゆゆかまものそくぬむこののりほこほのねひののほむにやんのよゆすそやはゆゆかまものそくぬむこののりほ」
俺「ッハァ。ハァ。ハァ」
妹「誤解しないでね?
私が口にしてる言葉すべてはお兄ちゃんが考えてることだから。
だって私はお兄ちゃんの妄想。
いわばお兄ちゃんの思考を代弁するマシンだから」
俺「そんなんわかってる・・・わかつわてるから」
妹「ある意味、お兄ちゃんは賢いと思うよ。
まあこれもお兄ちゃんがそう思ってるだけなんだけど。
なまじ賢いしプライドも高いからこの状況を受け入れられない。
バカだったら何もしていない自分に危機感も問題意識もきっともたないからね」
俺「うんうんうん・・・」
妹「ふふふふふふ。
ところで、漏れてるよお兄ちゃん」
俺「あ、え、あ」
妹「しかたないよ。もう夜だもん。
お兄ちゃん、私と会話してると時間が経つのを忘れるね」
妹「きっともう、現実での会話のテンポも所要時間も忘れちゃってるんだろうね」
姉「ただいまー」
姉「弟くん。今日は学校行った?」
俺「ああぁ」
姉「あ、また漏らしてる・・・はあ」
俺「あへ」
姉「タオル置いとくね・・・」
俺「拭けよ。どうせお前職場で老人の下の世話してんだろ?
介護なんて底辺職恥ずかしくねえのかよ」
姉「そ、そんな言い方
俺「ほら、優しく拭けよ?
それとも何か。じじいの糞は拭けるのに可愛い弟の糞は拭けないの?」
姉「・・・・・・」
俺「光栄だろ?俺のケツ拭けるなんてさ。
姉ちゃん淫乱だもんね。
じじいのケツが見たくて介護やってんでしょ?」
姉「・・・・・・」
俺「ほら、早くしてよ寒いよ」
姉「」フキフキ
俺「あ、やべえまだうんこでそう」
俺「おい。今からうんこするから絶対顔背けないでね」
姉「え、ちょっとまって弟くん!
だったらトイレに
ブボボボボボボボボボ
俺「あ(´;ω;`) 」
姉「・・・・・・」
姉「うっ、うう・・・」
姉「もう嫌だよ・・・こんなの」
姉「お父さん、お母さん・・・」
俺「・・・・・・」
妹「お兄ちゃんはさ。
ほんとはお姉ちゃんのこと大好きなんだよね」
妹「お姉ちゃんにひどいことをするたびに私が出てくるんだもん」
俺「うん・・・」
妹「でもお兄ちゃん、気づいた?
って私が気づいてるんだから気づいてるか。
最近私が出現してる時間、すごい長いよね?」
俺「・・・うん」
妹「それって現実(そっち)と妄想(こっち)の境界がすごーく曖昧になってるってことだよね」
妹「そうなってくると本格的に頭の病院に行かないといけなくなっちゃうから」
妹「妄想はなるべく控えて。
その根本となる、お姉ちゃんへの嫌がらせは絶対にやめなきゃね」
俺「・・・うん」
俺「・・・・・・・・・」
俺「ゆまてや×$×××××××××$××××$×××××××××××〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒」
俺「ウギャピ!!!!!!!」
姉「うぅ・・・お父さん、お母さん・・・」
姉「もう寝よう・・・」
姉「ぐすっ」
姉「おやすみなさい」
姉「・・・・・・」すぅー
ガチャ
俺「・・・・・・」
俺「ハァ、ハァ、ハァ」
姉「・・・?」
姉「弟・・・くん?」
俺「うわああああああああああああえおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ね!?ね!?ね!?ね!?」
姉「えっ!?えっ?」
俺「声出すんじゃねえよ!
俺が逮捕されたらお前仕事クビになっちまうからな!
終わるまで黙ってろよマグロでいいから
姉「い、いやあああああああああああああ!」
・・・・・・
姉「・・・・・・」
俺「・・・・・・」
姉「でてって・・・」
俺「・・・・・・」ガチャ
俺「妹!妹!」
俺「もう妹もでてこねえ」
俺「・・・・・・」
俺「俺は」
俺「もう現実を見よう」
妹「それはやめた方がいいと思うよ」
妹「多分今のお兄ちゃんじゃ耐えられない」
俺「もう決めたんだそうでもしないと俺は」
俺「姉ちゃんがさ。囁くんだよ」
俺「頭の中で」
俺「現実見ろってさ」
妹「そっかあ。そこまできたんだ」
俺「うん」
俺「姉ちゃんに謝ってくる」
妹「お兄ちゃんが決めたことは私が決めたことでもあるから。
行っておいで」
俺「うん」
俺「姉ちゃん」
姉「・・・・・・なに?」
俺「ごめん。
俺本当は姉ちゃんのこと大好きで。
でも姉ちゃんがどっか行っちゃいそうで怖くて姉ちゃんを困らせたら姉ちゃんは俺の面倒を見てくれるからどこにも行かないって思ってた」
俺「だから、俺姉ちゃんにひどいことばっかり
姉「いいの。だって」
姉「これは私が望んだことだから」
俺「え」
姉「私を困らせる困った弟も私の身体に欲情する男という弟も介護が底辺だとなじる弟も。それでも本当は私のことが大好きな弟も。全部全部私の思ってたこと」
俺「・・・・・・」
姉「わかるでしょう?」
俺「なんだ」
姉「ごめんね。
学校に行けないなんてひどい設定にして」
俺「怒ると思う?
俺は姉ちゃんそのものなんだから」
姉「・・・・・・」
姉「私の家は一人っ子」
姉「勝手に作り出して勝手に消してごめんね」
俺「いいよ。俺は姉ちゃんだからどう扱おうと姉ちゃんの自由だよ」
姉「・・・・・・その都合の良さも含めて私なのね」
俺「そうだよ。それじゃあね」
姉「うん」
おわり
俺も妄想が良いわ
乙
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 16:55:24.50:oa0tUzD20乙
マキ
俺「スラムダンクおもすれー」
マキ「そう?持ってっていーよ」
俺「マジ?」
マキ「でも一度に5巻までね」
俺「え、なんで?」
マキ「そしたら何回も借りに来てくれるでしょ?」
俺「ばっ、ばかじゃねーの。
家となりなんだから漫画なんかなくても何回も来てやるっつーの」
マキ「ほんとに?約束ね」
俺「寂しがりやだなーお前は」
俺「なあマキ。ちょっと出かけないか?」
マキ「え?こんな時間に?」
俺「うん。ちょっと見せたいものがあるんだ」
マキ「・・・?」
俺「そんな遠くないから。行こうぜ」
マキ「え、ちょっと手//////」
俺「ついたー!」
マキ「階段長いよー」
俺「ほら、見てみ。夜景綺麗だろ?」
マキ「すごい・・・・・・」
俺「ここ、秘密の場所なんだ。
たまたま見つけたから、俺とマキしか知らないと思う」
マキ「素敵・・・・・・」
俺「な、なあマキ。俺、マキのことが
マキ「知ってるよ」
俺「え?」
マキ「だって私も君のこと・・・」
マキ「にしても素敵な夜景だったね」
俺「あんなところでよかったら何回でも連れてってやるよ」
マキ「ほんと?嬉しい。
でも、君の彼女になれたことのほうが嬉しいよ」
俺「バカ。恥ずかしいわ」
マキ「あは。もう着いちゃったね」
俺「あ、ほんとだ。じゃ、またな」
マキ「・・・・・・離れたくないね」
俺「またすぐに会えるよ」
マキ「うん。ねえ、大好き」
俺「俺もだよ。ほら、家の中入れよ。
遅くなっちゃったし、道路でしゃべってるの恥ずかしいから」
マキ「う、うん。じゃまたね」
俺「おう!」
俺「ふう」
俺「マキが俺の彼女・・・」
俺「はははははは」
マキ「おーい!」
俺「あ、マキ。どうしたんだ」
マキ「スラムダンク忘れてるよ。また借りにき
ぐっしゃあああああああああああああああ
俺「え?」
俺「マ、マキ?」
マキ「」
俺「マキが、バラバラに」
運転手「う、うわあ。居眠りしちまっ
俺「どけろ!早くマキの上から車どけろよ!」
運転手「あっ、うわっああ!」
俺「待てよおい!」
俺「ちくしょう、車の運転なんてしたことねーよ・・・こうか?」
ぐしゃっ
俺「ち、ちがった」
ぐしゃっ ぐしゃっ
マキ「で、結局こうなったと」
俺「すまん。最善は尽くしたんだが」
マキ「ううん。嬉しい。
でもやっぱり、両足両手がないのは不便だね・・・」
俺「お、俺がマキの手足になるから
マキ「・・・・・・ありがとう」
マキ「・・・・・・」
マキ「ちょ、ちょっと後ろ向いててくれるかな」
俺「・・・・・・」
マキ「ふぇ・・・ぐすっ、ぐす」
俺「・・・・・・」
俺「ただいまー」
運転手「・・・・・・」
俺「おい」
運転手「ふがっ、ふが」
俺「今日マキの見舞いに行ってきたんだけどよお」
俺「あいつ、手足なくなってダルマになっちまったよ」
運転手「ふがっふがあ」
俺「お前もダルマにしてやろーか!」
運転手「ふがっふがががががが!」
俺「あー?何言ってるかわかんねーよ」バッ
運転手「す、すいませんでしま!!!」
俺「すいませんじゃすまねーよ。
お前手足ちぎられてもすいませんで許すのかコラ」
俺「てめえの手足は千切る」
運転手「そっ、それだけは勘弁してください」
俺「いーやだめだ」
運転手「でも僕の手足を千切ってもマキさんの手足は戻りませんよ」
俺「・・・・・・」
運転手「人体オークションってご存知ですか?」
俺「あ?」
運転手「ですから、人体オークションですよ。
僕、実は医者をやってまして」
俺「嘘つけ」
運転手「ほんとですよ。
カバンの中見てください。医師免許も病院の駐車許可証もありますから」
俺「ほんとだ・・・」
運転手「こういった事故で手足を失った人たちのために行われる闇オークションですよ」
俺「・・・・・・・」
運転手「そこでなら手足や身体の接合に関しては一流の医師も配備されてますし、何よりマキさんの身体に合ったパーツが手に入りますよ」
俺「ほんとだな?
じゃあそこにつれてけ。勿論金は出してもらうからな」
運転手「ええもちろん・・・金?」
俺「オークションっていうからには金が必要なんだろ?」
運転手「いえ、人体オークションでの通貨は身体のパーツです」
俺「ほんとにこんな居酒屋で人体オークションが?」
運転手「ええ。
あー、すいません。コーラの焼酎割り2つを」
店員「はい。割合はどうしましょ」
運転手「えーとコーラと焼酎1:9で」
店員「・・・・・・」
店員「こちらへどうぞー」
俺「・・・・・・」
俺「トイレに隠し扉が」
運転手「さ、行きましょう」ギィィィ
運転手「始まってますね」
俺「う、うるせえなここ」
「では10代少年の右腕肘下!
レートは右眼球1つからスタートです」
「右眼球+左手小指薬指中指!」
「右眼球+右手小指薬指!」
「右眼球+右手小指薬指以上ありませんかー?」
「はい落札決定!」
俺「なんで今のは右手のヤツが落札したんだ?
左手のほうが小指薬指中指で多いはずだろ」
運転手「そりゃこの日本には右利きの人の方が多いですからね。
右手は価値が高いんですよ」
俺「なるほど」
「次は10代少女の両脚(付け根まで)!
レートは両目以上!」
運転手「お、出ましたね」
俺「よし、落札だ」
運転手「・・・・・・」
「両目+左手小指!」
俺「おい入札しろよ」
運転手「え、だってレート両目以上ですよ?
僕盲目になっちゃうじゃないですか」
運転手「やっぱり膝したまでは安いけど足付け根までは高いんだよなー」
俺「今すぐ目をえぐられて盲目になるのよりましだろ早くしろ」
運転手「両目+左足(膝下)!」
ざわざわざわざわ
「両目+左足(付け根)!」
俺「うおー、あのオヤジやるなあ」
運転手「チッ。どーせ娘のためでしょーよ。しかたない、交渉しましょう」
運転手「交渉」
「今から5分間の交渉タイムに入ります。
10代少女両脚(付け根)希望者は壇上へ」
オヤジ「頼む譲ってくれないか。
娘は先天性の障害で歩けないんだ」
運転手「いやーこっちも入り用でしてね」
オヤジ「むむむむむ」
運転手「しかしこのままお互いレートをあげつづけても仕方ありません。
ここは一つじゃんけんで」
オヤジ「しかたない。10代少女ってだけでも貴重なうえに両脚(付け根)だからな」
運転手「じゃんけーんポン!」
オヤジ「や、やった!勝った!」
運転手「あれ?負けた方が競り落とすって言ってませんでしたっけ?」
オヤジ「なっ」
運転手「交渉終わりました。
私が両目+左脚(付け根)+左手小指でまとまりました」
「はい決定ー!」
オヤジ「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
運転手「なんですか?
先天性っていわば親であるあなたの責任ですよね。
今更取り返そうったって娘さんの人生は変わりませんよ」
オヤジ「・・・・・・」
運転手「はい、これ予約券です。
一週間以内にマキさんをここに連れて来れば手術してもらえますよ」
俺「よくやった」
運転手「しかし問題が。
10代少女の両腕は高いですよ。恐らく右腕左腕(小指なし)右脚を全部かけても無理でしょう」
俺「なっ」
運転手「腕のセットで付け根までって恐らく一番貴重だとおもいます。
そのうえ10代少女ともなるとやはり・・・」
俺「とりあえずお前にはダルマになってもらうとして」
運転手「マジですか勘弁してください。
盲目の上にダルマってひどすぎます」
俺「いやだめだ」
運転手「結局盲目な上にダルマになっちまいましたよ」
運転手「おまけに最後は縺れこんで鼻までなくしてしまったし」
俺「まあまあ。お前もまたここにきて取り戻せばいいじゃないか。
そろそろでよう」
運転手「ああ。
これ出る時に取られるんですよ」
俺「へえそうなのか。
じゃ、俺は先にマキを迎えに行くから」
運転手「そうですか。予約券2枚渡しましたよね?」
俺「ああ。
10代少女の両脚と両腕って書いてある」
運転手「その下にはなんて書いてありますか?」
俺「ん?えっと、
両眼球+両腕(肩)+両脚(付け根)+鼻 と交換」
運転手「大丈夫そうですね。
じゃ、私は支払いがありますのでこれを持って外へ」
俺「あ、ああ。
その前にマキに電話しよう」
マキ「もしもし?」
俺「マキ!俺だ。
お前の手足治るよ。俺、手に入れてきたんだ」
マキ「え・・・?」
俺「闇オークションで、落札してきたんだよ!今からそっち迎えに行くから、こっそり支度して待っててくれ」
マキ「ほんと?」
俺「ああ!よかったなマキ!」
マキ「・・・私、普通の女の子に戻れるの!?」
俺「ああ。金も心配しなくていい!
親切な人が払ってくれたんだ」
マキ「よかった・・・よかった・・・」
運転手「お話はつきましたか?予約券は持ちましたか?」
俺「ああ。やたら確認するなそれ」
運転手「予約券は大事なものですからね。
ならこっちの出口から出てください。
僕は支払いがあるからあっちですけど」
俺「ん。俺はみんなと出口が違うのか?」
運転手「ああそうですね。
落札者専用通路と言いますか」
俺「ふーん。じゃあ支払いよろしく」
運転手「はーい」
俺「ふー。しかしやけに長いなこの通路」
医者「あ、君は落札者かね?」
俺「そうです。両脚両腕は彼女につけてほしいんですけど、彼女がまだここにいないんです」
医者「なるほど」
俺「まあとりあえずはそういうことでよろしくお願いします」
医者「うむ。じゃあさっそく始めよう」
俺「え?」
医者「麻酔用意」
俺「ちょっと待
医者「うん。予約券もしっかりあるしな。
2人組だったからもう一人が彼女とやらを連れてくるんだろう」
看護婦「そうですね。とりあえず手術室に運びます」
医者「よろしく頼むよ」
俺「・・・・・・・・・」
俺「ここは・・・」
俺「真っ暗だ!誰か電気をつけてくれ」
医者「手術は無事完了したよ。
両腕両脚両眼球鼻は全部執刀して取り除かせてもらった」
俺「そんな嘘だ」
医者「しかし、彼女とやらも迎えの人も来ないな。
君もその身体では帰れないだろ」
俺「うわああああああああああああああ!」
俺「俺の手が!足が!目が!鼻が!」
・・・・・・・
マキ「私、普通の女の子に戻れるんだ」
マキ「ふふふ。嬉しい」
マキ「まだかなあ」
マキ「遅いなあ」
おわり
なんだよこれ・・・乙
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:41:41.34:RP2PKD5a0
あと一つ温めてあるネタがあるんだがSSじゃなくて地の文なんだ
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:42:06.16:pKoxCPj70
全然おk
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:45:24.53:N8wdE/vb0
いいよ読ませて
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 18:46:30.41:RP2PKD5a0ありがとう。
僕のクラスの隣の席に、上野という苗字の女子がいる。
授業中、彼女はよく眠る。睡眠不足なのか、授業が退屈なのか。
なんの前触れもなく、ぱたんと机に突っ伏すと、そのまま授業終了のチャイムがなるまですーすーと気持ち良さそうに寝息を立てるのであった。
始めてその光景を見た時は、体調でも悪いのかな、と思ったけれど、穏やかな寝息が聞こえたので、安眠を邪魔するのも悪いし放っておくことに決めた。
僕と彼女の席は列の一番後ろの窓側で、彼女のひそやかな息抜きに教師が気づくことはまずないけれど、それでも時々、名指しで回答を求められるときがある。
そういうときは、僕が彼女をシャーペンか何かでつついて起こして正答を小声で教えるのだった。
びくり、と身体を震わせたのち、寝ぼけ眼をこすりながら答えを口にする彼女は、突然の悪夢で目覚めた子供のようだった。
そうして難を逃れる度、休み時間に彼女は笑いながら手を合わせるのだ。
「いつもごめんね、昨日たくさん寝たのになあ」
おおよそ女子らしからぬ言い訳をしながら腰まである長い髪の毛を揺らして笑うその時は、少し可愛いと思う。
なんで眠いのか、とか授業分かるのか、とかいろいろ聞きたいことはあるけれど、僕は たいてい「いいよ」とぶっきらぼうに返すだけだった。
これが僕にできる精一杯の返答だったのだ。
一日のうちで僕らの間で会話が交わされるのはその時だけだったし、その時以外にお互いを意識することはなく、席替えをしてから一週間が経った。
上野に彼氏がいるらしい。
昼休みにそう言ったのは僕の友人である伊豆であった。
伊豆は、整った外見をした僕のクラスメイトである。
引っ込み思案の僕にとって、クラスで気軽に話せる唯一の友人でもある。
伊豆はその整った外見からか、僕と違い、女子に好感を持たれやすいらしい。
しかし、それに甘んじて軽薄な行動ばかりとった結果、男子から嫉妬と恨みの入り混じった目で見られ、同性からは随分と敬遠されるようになってしまったらしい。
彼氏、とか彼女、とかそういう桃色事情に疎い僕の耳に入るくらいだから、それはそれはすごい遊びっぷりだったのだろう。
「彼氏?」
僕は思わず聞き返した。
伊豆はニヒルな笑みを浮かべながら、
「落ち着けよ」
とだけ言った。
伊豆はわざとらしい緩慢な動作で、持参した弁当を僕の机の上に広げ始めた。
そのかわいらしい赤いチェック模様のランチョンマットを見ていたらなんだかお腹が空いてきたので、僕も自分の弁当を広げた。
「で、彼氏って?」
何をそんなに焦っているのか自分でもわからなかったけれど、僕は伊豆に詰め寄った。
伊豆は涼しげな口調で言う。
「上野って昼休みいつも教室にいないだろ?」
そういえば、彼女が教室で昼食を取る姿は見たことがなかった。てっきり食堂にでも行っているのだと思って深く考えていなかった。
「なんかうちのクラスの男子と密会してるらしーぜ」
それを聞いて思わず隣の席に目をやると、4限目の教科書と、かわいらしいピンクの筆箱が出しっ放しになっていた。
4時間目が終わってすぐ、教室から飛び出して行く上野の姿が目に浮かぶようだった。
僕の想像のなかの上野の長い髪は、いつもより楽しげに揺れていて、なんだか胸が苦しくなった。
あの上野が彼氏とどこかで密会している。
机の上に放り出された筆箱のピンクがやけに艶かしく見えてしまう。
そんな僕にお構いなしに、伊豆は自分の弁当箱の中の赤いプチトマトを箸でつかんだ。
「あ、プチトマト入ってる。
嫌いっつったのに」
伊豆はぶつぶつとそのようなことを言うと、弁当箱にプチトマトを戻した。
「上野、彼氏いるんだ」
なんとかそう答えるも、僕は衝撃を受けていた。
男子、密会、彼氏。
その3つの単語が頭のなかでぐるぐると回っていた。
「ってことは、今クラスにいない男子が上野の彼氏なわけだな」
伊豆は名探偵も真っ青の推理を披露すると、弁当を食べる作業に戻った。
僕は鼻で笑った。
たとえそれが本当だったとしても、うちのクラスの男子の約半分くらいが中庭や食堂など、教室じゃないところで昼食を取るのだ。
特定のしようがない。
「でもなんでそれを僕にいうのさ」
自分でも白々しいと思いながらも、 僕はできるだけ平静を装った声でレタスをかじりながら言った。
伊豆にはもちろん、他のクラスメイトにだって、上野を起こしていることは言っていない。
「いや、なんとなく」
伊豆は悪意100%の笑顔を見せながら続けた。
全てを見透かしているような伊豆の視線に耐え切れずうつむいていると伊豆が軽い口調で言った。
「何?上野のこと意識しちゃってるわけ?」
どこか楽しそうなその発言に僕は妙に背中が汗ばんできたのを感じた。
「いや意識っつーかべつにただちょっとかわいいなって」
なぜか完全に否定することもできずにもごもごと呟く僕に業を煮やしたのか、伊豆は言った。
「世の中ダーティーに行かなきゃ損しかしねえぞ、な?」
伊豆はそう言って、まったく関係のない前の席の男子の頭を小突いた。
メガネをかけたその男子はいかにも迷惑そうに一度振り向いてから、顔をしかめてまた前を向いた。
僕が何も言えないでいると、伊豆は神妙な顔つきになって言った。
「俺、こういうことばっかしてるから男子の友達少ないのかな」
僕はおおいに頷いた。
「とりあえず、話しかけてみようかなあ」
僕がそう言うと伊豆は笑った。
「ははは、何事も行動しないと始まらないからな。
お、俺今いいこと言った」
なんだか伊豆が言うと説得力があった。
実際話しかけれるかどうかは別として、話題の一つや二つくらい考えておくのもいいかもしれない。
僕が無難な話題を考えていると、珍しく暗い声で伊豆が呟いた。
「まあ付き合うってあんまりいいもんじゃねーけどな」
伊豆らしくないその声の重さに驚いて聞き返す。
「ん?なんで?いいじゃん彼女って」
「あ、いやいや、今付き合ってる女がしつこ
いつもの声に戻った伊豆がそこまで言ったところで、伊豆の携帯が鳴った。
今流行りのJ-pop。曲名まではわからないが、何度かテレビで聞いたことがある。
「あ、エミちゃんから電話きた、悪りい」
そう言い残すと、伊豆はそそくさと携帯を片手に教室を出て行った。
おそらくそのエミちゃんとやらも、伊豆の“女友達”の一人なのだろう。
結局僕は一人で弁当を食べることにした。
世の中は不公平である。
金にしろ、女にしろ、なんにしろ、分配の仕方が公平じゃない。
持っているヤツがいくつも持っていて、持ってないヤツは一つも持ってない。
そして所詮僕は、持たざる者なのだ。
がつがつとお弁当を食べた。
上野は今頃、誰と弁当食べてるんだろうな、と思うと胸の中がむしゃくしゃして、味がよくわからなかった。
*
それから3週間が経った。
上野は相変わらず、授業中はぐうぐうと惰眠を貪ることに余念がなかったし、昼休みになると弁当を持って教室を飛び出して行った。
伊豆も伊豆で例の彼女がいながら、エミちゃんとやらと遊びまわっているようだ。
僕も相変わらずで、この3週間で上野に話しかけることはおろか、目すら合わせられなかった。
そして、今日こそ上野に話しかけるぞ、と半ばやけくそになっている決意を胸に僕は学校へと続く道を歩いていた。
今朝はなんだか早く目が覚めてしまい、そのまま朝ご飯も食べずに登校してしまった。
勢いだけの行動に、胃袋がぎゅぎゅると抗議の声をあげていた。
昔誰かが、恋をすると人生が楽しくなるとかそのようなことを言っていた。
そのときの僕はその発言を一笑に付したけれどあながちそれも間違いではないのかもしれない。
これだけ早いとさすがに通学路には学生の姿もなく、軽装の老人たちが散歩しているだけだった。
なんだか、今日は上野に話しかけれる気がした。
話題はなんだっていい。
何よりも大事なのは行動すること。
もし、上野も朝早く来ていて、教室に2人きりだったら。
上野が普段何時ごろ登校しているのかは知らないけれど、僕よりは先に教室にいるはずだ。
いや。それはない。
授業中に惰眠を貪る上野の姿を思い出して、 僕はすぐその考えを打ち消した。
きっとまだ暖かい布団の中だろう。
*
結局、誰にも会わないまま靴箱に着いてしまった。
始業まではまだ1時間近くあり、朝練がある運動部の連中もまだ来ていないようだった。
靴を脱いで下駄箱に入れようとしたそのとき。
聞き覚えのある声が聞こえて来て僕は手を止めた。
「だからいいつってんだろ」
静かな怒気を孕んだその声は。
伊豆のものだった。
思わず忍び足になり、下駄箱の隅から顔を出す。
僕の教室の前に向かい合う2つの人影が見えた。
こちら側を向いている、背の高い人影はやはり伊豆だった。
もう一人のほうは、僕に背を向けているので誰かはわからなかったが、制服で女子だとわかった。
どうやら二人とも僕には気づいていないらしい。
嫌なものを見てしまった、と思うと同時に伊豆の意外な一面に驚いた。
「で、でも伊豆くんお弁当ないって」
戸惑うその声をあげたもう一つの人影は、よく見ると、腰まである長い髪の毛をしている。
「そういうのもういいって。朝早く来るのもだりいんだよ」
心底気だるそうな伊豆。
「じゃ、じゃあお昼休みに渡すよ」
「はあ?だからいらねーって言ってんのわかんない?
だいたい弁当2つ持ってきて授業受けてたらおかしいだろ」
事情は知らないけれど、その言い方はあまりにも一方的なように思えた。
僕は何時の間にか拳をきつく握りしめていた。
好きな人に話しかける勇気なんていらなかった。
こういうときに飛び出して行ける勇気が、ほしかった。
でも僕はどちらも持っていなかった。
「ご、ごめんね。じゃあ明日からは作らないからね」
絞り出すような震えた声。
そのとき、僕はやっと気づいた。
揺れるその長い髪。
ああ。
あの子は。
「一回寝たくらいで彼女面すんなっつーの」
下駄箱の陰で硬直する僕には気づかず、 耳を疑うようなセリフを吐くと、伊豆はそのまま踵を返し歩き去っていった。
伊豆の姿が見えなくなるなり、上野はそのまま床にぺたんと座り込んだ。
そして肩を震わせて泣いていた。
しゃくりあげるような嗚咽は僕の耳に突き刺さる。
勿論、好きな人のそのひそやかな涙を拭うことさえ僕にはできやしない。
僕は足音を忍ばせて、こっそりと自宅に帰った。
*
翌朝。
「おーす。昨日どしたん。
一人で弁当食うハメになったじゃねーかよお」
教室に入るなり伊豆が話しかけてきた。
その明るく無邪気な声は昨日の怒気を孕んだ声とは正反対だったけれど、よっぽどこっちのほうが堪えた。
「ああ、ちょっと風邪で」
僕はそう言いながら席に着いた。
伊豆は大袈裟に驚きながら、
「うお、この時期に風邪かよー。
そういえば俺もなんか体調悪いわ」
と自分の腹に手を当てた。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言うなり伊豆は教室を出て行った。
こっそり横を見ると、上野は机の上に教科書を広げていたが心ここにあらずといった感じで視線が定まっていない。
今こそ、勇気を出すときだった。
「う、上野・・・さん」
薄汚いかすれた声が出る。
上野はワンテンポ送れて顔をこちらに向けた。
「なに、かな?」
僕は、昨晩自宅で書いてきた一枚のメモを渡した。
「これ読んで」
白くて小さな手に紙を握らせる。
上野は不思議そうな顔をして手の中の紙を見つめた。
「早くしまって」
僕がそういうと得心のいった顔をして、メモを突き返してきた。
「ご、ごめんなさい、あたし好きな人が」
「ラブレターじゃないから」
そういいながらもやはり心はダメージを受けていた。
あんなにひどい仕打ちをされたというのに上野はまだ伊豆のことが好きなのか。
目の前の事実に打ちのめされそうになったがかろうじて踏み止まる。
「伊豆戻ってくるから」
僕がそう囁くと、上野は慌ててポケットに紙をしまった。
放課後。僕は屋上で上野を待っていた。
あのメモには伊豆とのことを知っている、放課後に屋上にきてくれ、と書いてあるのだけれど、上野があれを開いて見て、さらに屋上に来てくれる可能性は極めて低かった。
僕は祈るような気持ちで時が過ぎるのを待った。
屋上に来てから30分ほどが経過したとき。ぎぃぃ、と錆びた蝶番の軋む音と共がして扉の開く音がした。
「伊豆く・・・伊豆さんとのこと、なんで知ってるの?」
雑談を交わす間もなく、上野は顔をしかめながら僕に詰め寄った。
「いいよ伊豆くんって呼べば。
僕、知ってるからさ」
上野は顔を赤くして僕の両肩を掴んだ。
「だ、誰にも言わないで!」
上野は涙を両目に浮かべながら言った。
それはそうだろう。
もしこのことがクラスに広まれば女子はおろか、男子からも敬遠されてしまうことは間違いない。そう、伊豆のように。
だからこそ僕は、ここで告白することにした。
「心配しなくてもいい」
息を吸い込む。
今までに拒絶された思い出たちが胸に蘇る。
だからこそ、僕は伊豆を敬遠しなかった。
それは、自分で初めて見つけた仲間が伊豆だったからだ。
「僕も、君たちの仲間だから」
「え」
上野が呆気にとられた顔をする。
だから僕はもう一度、言ってやる。
「僕も、レズビアンなんだよ」
えええ
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:38:15.29:oYNScYs60
ボクっ娘キタコレ
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:39:25.34:RP2PKD5a0「そんな、嘘」
「嘘じゃない。
もっとも伊豆の性同一性障害とは違うけどね」
上野は唇をきつく噛み締めてから、言った。
「私、正直あなたのこと嫌いだった」
「私や伊豆くんみたいに本気で悩んでる人の前でも「僕」って言うし、巫山戯てるのかと思ってた」
僕は両肩を落として落ち込むふりをする。
「やれやれ。でも僕が君をここに呼んだのはこのことをカミングアウトするためじゃないよ」
「伊豆のこと、許せなくない?」
僕は昨日何度も練習した言葉を発した。
カミングアウトよりも、ある意味これを言うのが一番緊張した。
上野は今にも泣き出しそうな顔をして、かぶりをふった。
「そんなわけ、ないよ。
伊豆くんのこと、今でも好きだから」
ああ。
分かってはいたけど。
やはり、目の前の女の子はどうやっても僕には手に入らないらしい。
それだったらせめて伊豆との仲をぶち壊してやろうと思ったけど。
「うまくいかないもんだな」
僕は空を見上げた。
上野は困ったような顔をして俯いた。
僕は、こんな顔をさせるために呼び出したんじゃない。
「てっきり気づいてたものかと」
上野はやっと、いつもの笑顔を浮かべてくれた。
「君って気弱そうだから、男子に頼まれてあのメモを渡したのかなって思ってたの」
「男子?」
「だから、ほら、代わりにラブレター渡して、みたいなのかな、て」
僕は思わず苦笑する。
意外に上野は自身過剰なところがあるのかもしれない。
「うん、ラブレターっていうのはあながち間違いじゃないかも」
今度は、僕が上野に詰め寄る。
「え?」
上野の白くて綺麗な肌が、長い睫毛が、目の前に。
でも、きっとまだこれは、この娘は、伊豆のものだ。
僕は上野を抱き寄せたい衝動を必死に堪えた。
「僕、上野のこと好きだし」
「あー、ごめんなさい」
上野はぺこりと頭を下げた。
「早っ」
「うん。ほら、私レズビアンだけど
君とはちょっと違うっていうか」
上野は両手をせわしなく動かして弁解する。
「私は身体は純粋な女の子がいいんだけど、できれば中身は男の子がいいっていうか」
ああ。僕はため息をついてしゃがみこむ。
それって伊豆のことじゃないか。
「ご、ごめんね!
でもお友達としてならこれから仲良くしてってほしいっていうか・・・」
ごにょごにょとそんなようなことを言って、上野は僕のスカートの埃を払ってくれた。
「そっか・・・」
刈り上げでもしようかな、と思ったけれどそれこそ問題になるだろう。
でも僕は上野を諦めきれない。
「じゃ、じゃあさ。
伊豆の代わりに僕にお弁当作ってくれないかな?
あいつには秘密にするから」
僕は。
勇気を振り絞ってやっと作った上野との接点を失いたくなかった。
上野は少し考える素振りを見せると、頷いた。
「それなら、いいよ。
でもお友達としてだよ?」
「うん」
それから、上野は早起きしてお弁当を渡してくれるようになった。
誰もいない教室で少し雑談して、人が来る前に僕は教室を出て行き屋上で、始業前まで時間を潰す。
それでも進歩したほうだ。
*
授業中、肘に尖った何かが当たった。
横を見ると上野が僕の耳に口を近づけてきた。
「明日のお弁当何がいい?」
その上野の悪戯っぽい笑顔を見て僕は微笑んだ。
いつか。
僕のものにしてやる。
おわり
ありがとうございました。
百合っ娘は正義(`・ω・´)
またスレ建てたらその時はよろしくお願いしますさらば。
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 19:59:29.35:JPKfs96w0百合っ娘は正義(`・ω・´)
またスレ建てたらその時はよろしくお願いしますさらば。
>>90
よく見たら書いてんな
見逃してたわ
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 20:09:54.60:KEl+wYJYOよく見たら書いてんな
見逃してたわ
>>138
>>90
うおホンマや
いちおつ
マジキチネタかと思いきやなんか引き込まれてた
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 20:02:45.87:N8wdE/vb0>>90
うおホンマや
いちおつ
マジキチネタかと思いきやなんか引き込まれてた
>>141
乙
面白かった
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/21(水) 20:13:54.14:JPKfs96w0乙
面白かった
ショートショートとして完成度高いな、特に最後
乙でした
乙でした
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書き間違いかと思ってた