日経メディカルのロゴ画像

シリーズ◎2016診療報酬改定
在宅医療に重症度に応じた報酬体系を導入へ
“同一建物減算”については診療患者数による評価の細分化を検討

 中央社会保険医療協議会中医協)は11月11日の総会で、2016年度診療報酬改定における在宅医療のあり方について議論した。在宅患者に対する管理料として月1回算定できる「在宅時医学総合管理料在医総管)」「特定施設入居時等医学総合管理料特医総管)」について、患者の重症度や処置に応じた評価を導入することなどを検討した。

 在医総管・特医総管は、在宅で療養を行う患者に対するかかりつけ医機能を評価した点数。患者個々に療養の計画を立て、月2回以上の定期的な訪問診療を行い、総合的な医学管理を実施した場合に月1回算定できる。現在、血圧測定や健康相談のみの患者から人工呼吸器管理が必要な患者まで、幅広い患者を対象に在宅医療が行われているが、在医総管・特医総管の点数は患者の重症度によらず同じ点数が設定されている。だが実際は、患者の状態や行う処置によって診療時間や入院頻度、1カ月当たりの訪問診療の回数などは異なる。

 そこで、厚生労働省は診療時間が長かったり、入院頻度の高い「長期にわたって医学管理の必要性が高い患者」を考慮し、疾患や状態などに応じて評価することを提示。具体的には、「在宅患者訪問診療料」を週4回以上算定することが認められている「別表7」に挙げられた疾患・処置や、「退院時共同指導料」を算定する際に特別な管理を要する状態にあるとして「特別管理指導加算」の算定が認められている「別表8」に挙げられた疾患・処置に該当する患者を評価することを提案した。別表7では多発性硬化症や重症筋無力症、パーキンソン病関連疾患、別表8では中心静脈栄養、人工呼吸、気管切開、酸素療法などが挙げられている。

 この提案に対して反対の意見は特になく、方向性はおおむね了承された。診療側委員である全日本病院協会副会長の猪口雄二氏は、「重症度の高い患者が長期にわたって管理が必要な患者とは限らず、短期の患者への医学管理も評価する必要があるのでは」と指摘した。支払い側委員からは、重症度の高い患者への評価を手厚くすることによるコスト増を懸念する意見もあり、「自立や要支援で通院可能な患者への評価のあり方についても併せて検討すべきでは」(健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏)との声が上がった。

 また、現在は月2回以上の訪問診療が算定要件となっている在医総管・特医総管について、月1回の訪問診療でも算定できる点数を新たに設けることについても検討された。これは、1カ月の訪問診療の回数は月2回が最も多い一方で、入院頻度や往診の必要な患者の割合は訪問診療が月1回と2回でおおむね同等なこと、訪問診療の時間が短い患者はむしろ月2回の患者に多かったことなどによる。

 月1回の訪問診療で算定できる在医総管・特医総管の新設について、「実際に月1回の訪問でも十分なケースもある」として、診療側委員からは賛成の意見が相次いだ。全日病の猪口氏は、「訪問回数が月1回から2回になっても、手間が半分になるわけではないので、点数も単純に半分にするというのはやめてほしい」とくぎを刺した。

この記事を読んでいる人におすすめ