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2008年1月18日 (金)

自主規制のお話。

 ネットをぼんやり見ていたら、こんなニュースが目にとまりました。

「ブラジャーが透けるほど汗をかいた最後っていつだろう?」――日本コカ・コーラの飲料「からだ巡茶」のテレビCMのなかで女優・広末涼子さんが述べるセリフが、一部の消費者から「不快」との指摘を受けて、急きょ変更されていた。同社によれば、CMの評判はおおむね良かったらしいのだが、「多くの方に受け入れられるように改良した」と説明している。
J-CASTニュース:広末の「ブラジャーが…」CM 消費者から「不快」指摘で変更

 なんか、「ブラジャーが透けるほど汗をかいた最後っていつだろう?」というコピーのCMが消費者からの苦情で変更になったみたいですね。まあ、よくあることなので、そんなに感想はないのですが、そういえば、広告をつくるとき、自分の中に「これはやらない」みたいな自主規制はどんなふうなのかな、ということを考えました。

 この「からだ巡り茶」のCM、私はわりと好きでしたけどね。広末さんがきれいだなあ、なんて見ていました。ディレクターさんがうまいなあと思いますし、別にいいのになあと思います。こういう表現は私の中では「これはやらない」ではありませんね。このCMシリーズは、少しエッチなんですよね。そのことは伊集院光さんもラジオで触れていました。まあ、それは、ああいうエッチをさりげなく暗示している広告について、「あれ、そういう意味でしょって聞くと、えっそんなことありませんよ、そう聞こえましたか、おかかしいなあ、あなた考え過ぎじゃないですか、と返されるような広告のつくりはずるいよね、もっとエッチをやるなら、堂々とやったらいいのに」みたいなことでしたけど。

 私が広告制作において自主規制しているのは、エッチ分野で言えば、いわゆる劣情系ですね。これはぜったいにやらないでおこうと決めています。自分のつくったコロナビールの広告で、ビジュアルがラブホテルのベッド。そこにコロナビールとライム色のコンドームがさりげなく置いてあって、「お願い、つけて。」というコピー。それはまったく問題なし、という感じです。その広告は、掲載するのに媒体とは一悶着ありましたが、私としては、そういうメッセージは社会的に何の問題もないでしょ、という感じです。

 でも、これが例えば、コンドームつけないでやるのがいい、みたいなことを暗示させたりした広告なら、それが薄い暗示でも、私の中ではNGです。例えば、生がいい、みたいなコピーは私の中では、それが伊集院光さんがからかう感じの薄い暗示でも広告がやっちゃいけないことだと考えています。

 広告はお利口さんである必要はまったくないと思うのですが、やっぱり、所詮は広告、社会のお邪魔虫という視点は忘れないようにしなきゃな、と思うんですね。だから、広告では劣情は描かないし、モチーフにしないと、わりと厳しく考えています。前に、消費者金融の広告についてのエントリを書きましたが、そのことに似ているかもしれません。たかがチワワを買うために借金をする、なんて気持ちを肯定的に描くことには、やはり抵抗があります。純粋に表現アイデアは優れているとは思いますが、その前に社会性があるとは思うんです。所詮は広告だから。

 これは人によって違うんでしょうね。ある人は、エッチな表現を自主規制している人もあるでしょうし。私はわりとそのへんはおおらかで、メンソールが強烈なガムの広告で「こんな快感は久しぶりです。若かったあの日を思い出しました。○○○○64歳」なんて広告を出して、消費者から苦情のお手紙をいただいたこともありましたし。

 このへんの考え方は、ベネトンの広告が認められるかどうかがひとつの指標でしょうね。私は、ベネトンの広告は好きです。あれは、世界中で掲載拒否とかされているセンセーショナルな広告ですが、あの中に劣情はまったく含まれていないですよね。

 逆にきわめてお利口に戦略的につくられた広告でも、なんかいやな気分になる広告もあって、例えばその商品を持っていない人がまったく駄目な人間に描かれていたり、よくあるでしょ、そういうの。ああいうのは劣情の一種だと思うんですよね。実務では、そういう表現を求められることがあるし、やっちゃいそうになるんですが、徹底的に抵抗して、なんとかそれは禁じ手にしようと踏みとどまっています。で、出てきたアイデアがエッチ系。相手にする方は、なんじゃそりゃ、あの表現は拒んでたのに、これはいいんかい、みたいな。でも、それは、それなりに理由はあるんです。

 で、例のお茶の広告。変更になったコピーが「こんなに汗をかいた最後っていつだろう?」になったそうです。コピーライターがんばったなあ。いい感じじゃないですか。まあ、本人にとってもクライアントにとっても残念だったでしょうけど。「ブラジャーが透けるほど汗をかいた最後っていつだろう?」というコピーは、とってもいいですものね。なんか、高校生の頃の健全なエロティシズムがあって、好きですけどね。ちょっと男目線かもですが、女性だってきっと、わかるわかる、ってなると思うんですけどねえ、どうなんでしょ。

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コメント

mb101boldさん、こんにちわわ(^^)

>「ブラジャーが透けるほど汗をかいた最後っていつだろう?」

これ↑私的にはびみょーです。
ブラジャーが透けるほど汗をかくのは、スポーツのときであって、つまり体育の時間で、(高校生なら)そして高校の体育の時間は基本的にたいそう服を着ていたはずで、たいそう服はブラジャー透けたりしませんから、ブラジャーが透けちゃうのは登校時なんかに走ったりしてびしょびしょになって、ブラジャー透けちゃってるなぁ・・どうしよう・・みたいなときなので、つまり運動して汗かいてお茶飲んで悪いものデトックスしよう的なメッセージにそれって・・?と、なるわけなのです。

ただ、不快というほどのものではないんですけどね。

ヒロスエさんの臍だしもキレイだし、エッチの部分はおけ。だと思いますけど・・・

投稿: ggg123 | 2008年1月18日 (金) 11:08

ggg123さん、どもどもも(^^)

なるほどなあ。私は、高校は男子校だからなあ。あのCMでは「もっと出したい」は、さすがにあざといかなあ、なんて思ったりしましたが。なんか制作者の計算がちょっと見えるかな。

でも、あの広告はウェブもいいし、写真と演出、がんばっているなあと思います。

投稿: mb101bold | 2008年1月18日 (金) 12:02

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