増える相続放棄(2)
相続放棄は、故人の債務を負いたくない場合にやむなく選択するのが基本だが、状況によっては、相続人の争いとなる「争族」を避けたり、将来の相続を円滑に進めたりするなどの手段ともなる。その活用方法を考えよう。
「遺産分割協議は苦痛」のケース
法律上の相続放棄を選ぶ人が増えている。2022年は約26万件と1995年の約4.2倍になった。
親が多額の借金を抱え、債務を子が回避するパターンが基本だが、近年増えた背景には空き家問題の深刻化がある。親の家が空き家となって管理や税の負担がのしかかることを避け、相続放棄するケースが増えている。
法的な対応も進んでいる。相続放棄した場合、不動産の管理義務がどうなるかはあいまいだったが、23年4月施行の民法改正で明確になった。
前回はこうした点を解説した。
ただし、資産や債務の継承以外でも、相続放棄が活用できるケースもある。今回はそうした点を取り上げたい。
活用法の一つには、まず、相続人が遺産をめぐって争う「争族」を避ける目的から、相続放棄を選ぶことがある。これには主に二つのパターンがあるようだ。
一つ目は、遺産分割協議に参加したくない場合だ。
人が亡くなり相続が始まると、相続人は遺産分割協議を行い、被相続人(亡くなった人)の財産を誰がどう引き継ぐかを決める。
この遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならない。相続人に未成年者がいる場合は代理人が必要になる。相続人が1人でも欠ければ、協議の結果は無効となる。
だが、相続人同士の関係が悪い場合は、一緒に話し合いをするのも苦痛となることがある。例えば、被相続人に離婚経験があり、…
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