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会社員の夫に先立たれたら?60歳妻の遺族年金どうなる

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 専業主婦のA美さん(60)は現在、雇用延長で働いている会社員の夫(62)と2人暮らしです。貯蓄も少しはありますが、この先、夫に先立たれた後の生活が心配だと言います。A美さんは「万一の場合、遺族年金をどのくらい受け取れるのか。生活はできるのか」と、不安を感じています。

 夫が会社員の妻の場合、遺族年金には定額の遺族基礎年金と報酬比例の遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は「生計を維持されていた子のある配偶者か子」が受給対象で、原則として子どもが18歳になる年度末まで支給されます。

 一方、遺族厚生年金は子どものいない配偶者や父母らも支給対象です。65歳以上では自分の老齢年金を補完する形で受給することができ、配偶者を亡くした人の老後の生活を保障する役割も果たしています。

遺族厚生年金の仕組み

 まず、遺族厚生年金の支給対象者を見ていきましょう。遺族厚生年金は遺族のうち、配偶者か子、父母、孫、祖父母の順で、最も優先順位の高い人が受給します。夫の死亡時に子のない30歳未満の妻は、5年間のみの有期給付となっています。

 次に遺族厚生年金の支給要件です。「短期要件」と「長期要件」がありますが、高齢期の年金としての役割が大きいのは長期要件です。

 短期要件とは、厚生年金に加入している会社員らが在職中に死亡した場合などです。長期要件は、厚生年金を受給する資格のある人や、保険料を25年以上納めた人が死亡した場合です。

 つまり現役時代に配偶者を亡くした場合は短期要件で、退職して高齢期になってから配偶者を亡くした場合は長期要件が中心となります。

 A美さんの夫は25年以上、老齢厚生年金の保険料を納めています。このため夫の老齢厚生年金は死亡後に妻の遺族厚生年金に振り替えられます。

 A美さんは自分が働いて厚生年金保険料を納めていた期間が短く、専業主婦(第3号被保険者)の期間が長いため、この制度が役立ちます。

 遺族厚生年金の額は…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。