黄色い卵がチキンライスの上にふわっとのっている。口に入れるとトロッとした舌触り。これが本当の卵じゃない? 東京・渋谷のレストラン「2foods(トゥーフーズ)」のオムライスだ。卵や肉を使わず、植物由来の材料で作った食品「プラントベースフード」が急増している。人気の秘密とは?
200社が600種類を販売
このオムライスは、ベンチャー企業TWO(トゥー、東京都渋谷区)と食品大手のカゴメが共同開発し、今年3月に発売した。卵はニンジンと白インゲン豆をベースに作った。チキンライスの肉は大豆製の「大豆ミート」。ソースはオニオンソテーなどでできている。植物由来の商品とは気付かず、満足して帰る客も多いという。
プラントベースフードはこの1、2年で急速に広がった。NPO法人「ベジプロジェクトジャパン」(東京都台東区)によれば、卵や肉のほか蜂蜜なども使わない「ビーガン」の認証マークを交付した企業は既に約200社に上る。
カゴメやニップンなど積極的な企業は多く、ギョーザやカレールー、冷凍パスタ、プリンなど品目は約600種類。大半がスーパーなどで購入できる。
普及のきっかけは五輪
外食業界の動きも活発で、ハインツ日本(台東区)は3月、赤ワインや野菜だしなどで作ったデミグラスソースを飲食店など業務用に発売。プレナス(福岡市)の定食チェーン「やよい軒」は6月から大豆ミートの野菜炒め定食などを提供し始めた。
同NPOの川野陽子代表理事によれば、普及のきっかけは東京オリンピックだった。欧米ではベジタリアンが多く、企業は2018年末ごろから商品開発を加速。コロナ禍で外国人はほぼ来日せず「プラントベースフードの機運もしぼんでしまうかと思った」(川野さん)が、企業からの相談は逆に増えた。「若者を中心としたサステナブル(持続可能)なものへの高い関心が企業の背中を押しているようだ」
TWOの東義和・最高経営責任者(CEO)も「コロナ禍やウクライナ戦争を目の当たりにし、多くの人が今、生きること自体を考えさせられている。最も代表的なライフラインである『食』は価値観も含めて大きく変わろうとしている」と述べ、植物由来食品に注目が集まる状況にあるという。
食料問題の解決にも
そもそも植物由来の食品は、環境や食料問題に重要な意味を持つ。牛などの家畜を育てるには広大な土地が必要で、アマゾンなど熱帯雨林の破壊につながっている。また牛肉1キロを作るには、餌として11キロの穀物が必要とされ、人間が直接穀物を食べた方が…
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