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フランスはデモで「ゴーン事件」どころではない

渡邊啓貴・帝京大学法学部教授
デモ隊に封鎖されたパリのシャンゼリゼ大通り(2018年11月24日=幾島健太郎撮影)
デモ隊に封鎖されたパリのシャンゼリゼ大通り(2018年11月24日=幾島健太郎撮影)

 筆者は10年ほど前、日産・ルノーが主催する国際的な学生ビジネスコンペでカルロス・ゴーン氏と話したことがある。当時は、このような企画はまだ革新的なもので、ゴーン氏の相手を見るまなざしの強さに驚いた。進取の気性と目力でその地位まで駆け上った剛腕の経営者、という評判どおりの印象だった。

 今回の「ゴーン事件」はフランスでも当然ながら大きな関心が持たれている。筆者はこの原稿執筆時にちょうどパリに滞在していたので、フランスのビジネスマン、外交関係者、さらには一般の人たちにも感想を聞いてみた。

 ただ、反応はあまり明確なものではなかった。私が日本人なので、面と向かって日産および日本の検察のやり方の批判は避けたのかもしれないが、この事件をどう考えるか戸惑っていたことは確かだ。

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帝京大学法学部教授

1954年生まれ。東京外国語大学卒業、パリ第一大学大学院博士課程修了。99年東京外国語大学助教授、99年同教授。シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、『外交』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使などを歴任。2019年から現職。著書に「ミッテラン時代のフランス」「フランス現代史」「ポスト帝国」「米欧同盟の協調と対立」「ヨーロッパ国際関係史」「シャルル・ドゴール」「現代フランス」「アメリカとヨーロッパ」など多数。