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時折マンガの話をします。

『映画大好きポンポさん』をもっと愉しめるようになる映画を3つ挙げる

先日、『映画大好きポンポさん』の書籍版が発売されました。

 

 

この作品は、最初は pixiv で公開された作品です。

www.pixiv.net

これが非常に話題となり、気がつけば書籍化という流れ。

現在も無料で全編読めますので、気になった方はまずこちらを読んでみるのも良いかと思います。因みに書籍版との違いは、6つのチャプターに分けられている点・CHAPTER.1〜5の末尾にコラムが合計7つ収録されている点・巻末描き下ろしマンガといったところです。何れも(実在の)映画に関する内容となっています。こちらも読物として面白い内容となっていますので、興味のある方は是非手にして欲しいと思います。

 

 

ポンポさんは映画のプロデューサー。数多くのヒット作を送り出した伝説的プロデューサー、J・D・ペーターゼンの孫であり、そのコネクションと共に映画人としての才能も引き継いだ、銀幕の申し子と呼ばれる存在です(しかしながら、ポンポさんが製作する映画はB級娯楽作品が中心)。

彼女のアシスタントとして働くジーン・フィニは、映画以外の居場所がないような青年です。学生の頃はカースト最下層に位置し、そこから逃げるように映画だけを観続けていた、そして映画監督になることを唯一の夢としてペーターゼンフィルム社に飛び込んでいった、そんな青年です。

ある日、ポンポさんの次の企画のオーディションに、未だ女優志望という段階の少女、ナタリー・ウッドワードが参加します。そしてそこから物語は大きく動き始めます。

 

あとは実際に読んで戴くとして、この作品のキモはやはり、妥協や打算を極限まで排除して創作に興じる狂気にも似た情熱・それがもたらす愉悦と快楽を描いている点にあるのだろうと思う訳です。それ故に、それを知っている人・或いはそれに憧憬を抱く人の感情を揺さぶるのだろうと。

 

 

そして作中やコラム類で言及される(実際の)映画の数々。これもまた非常に魅力的なのです。作者の杉谷庄吾さんの映画愛・映画に対しての持論・価値観が行間からにじみ出てくるといいますか。

映画が好きなら、更に読んでいて愉しくなるのではないかと思います。この作品のキャラクターが登場する際、プロフィールと共にそのキャラクターが好きな映画が3つずつ挙げられるのですが、自分が観たことのある作品タイトルがあるとニヤリとしてしまいますよね。

 

 

ということで、ちょっと映画の話をします。

タイトルにも挙げたように、『映画大好きポンポさん』をもっと愉しめるようになる、と個人的に考える作品です。以下、内容にも少なからず触れるので未読の方はとりあえず pixiv のほうを読んでおくのが良いかと思います。

 

この作品中に、「マイスター」という映画が出てきます。

ポンポさんが脚本を書いた作品で、大雑把に内容をまとめると「天才指揮者が老いや焦りから失態を演じてしまい音楽への情熱も失ってしまうが、休養で訪れたアルプスで出会った少女との交流から次第に情熱を取り戻し復活を遂げる」というものです。

 

この「マイスター」に影響を与えているのではないか、と勝手に推測する3作品を挙げてみよう、という訳です。まぁ、あくまで自分が勝手に予想しているだけなので全然関係ないのかもしれないのですが、的外れなこと言っているよと嗤って戴ければと。

 

 

1:『サウンド・オブ・ミュージック』

 

アルプスと言えばこれだろう!ということでまずは1本目、『サウンド・オブ・ミュージック』です。アカデミー賞も受賞している名作なので、詳細は省きます。ミュージカルは苦手で...という方もいるかもしれませんが、これは観て損はないと思います。雄大なアルプスの描写に目を奪われますよ。パッケージとかだとイメージが付きにくいかもしれませんが、第二次世界大戦直前、ナチスが台頭してきた時期のオーストリアを舞台にした、実話を基にした重厚な歴史ドラマでもあるのですよね。

まぁ、上映時間が3時間近いので、ポンポさん好みではないかもしれませんが。

(^ω^)

 

2:『殺人幻想曲』

殺人幻想曲 [DVD]

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指揮者が主役ならこれかな、と。不穏なタイトルですがコメディ映画です。

監督のプレストン・スタージェスは1940年代に活躍した映画監督・脚本家です。スクリューボール・コメディと呼ばれる、一癖ある男女がぶつかりあいながら最後は結ばれるような作品を主に手掛けています。この作品は公開当時は不評でしたが、現在は(たぶん)代表作のひとつに挙げられているのではないかな、と。

 

高名な指揮者が妻の不貞を疑うようになり、いろいろ報告を受けるうちにそれを確信するようになるのですね。そして妻の殺害方法とかを妄想しながら指揮棒を振ったりするのですが、その精神状況が如実に指揮に影響する様子が可笑しいのですな。妄想で殺害を企てて昂りまくっているときに鬼気迫る指揮をして絶賛の嵐を受けたり、とか。

 

3:『ブルグ劇場』

ブルグ劇場 [DVD]

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あくまで個人的な予想ですが、この作品は「マイスター」の骨格となっている。

1936年の作品となります。

主役となるのは舞台の老名優です。ある時、この俳優は「若さがなくなった」という批評を受け、そのショックが元で舞台を休むようになるのですね。そして休業中に街で見掛けた若い女性に一目惚れしてしまい、彼女が勤める店に足繁く通い始めるのですが、彼女には駆け出しの舞台俳優である恋人がいて...という筋立て。

そして幾人もの登場人物の思惑・感情が錯綜していく訳ですが、最後に老優は舞台への情熱を取り戻し復帰を果たすのです。

職業の違いはあれど、「マイスター」と『ブルグ劇場』、構成が非常に近いのが判るかと思います。

 

そしてこの「マイスター」についてジーンが言及するくだり、

冒頭とラストにある

オーケストラの

演奏シーン

 

ダルベールの

心の有り様で

同じ曲が

全く別物になるよう

工夫された演出......

 

うまい!

 

としか

言いようが無い

 

(杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』87ページ。)

 

『ブルグ劇場』もほぼ同じ演出なのですよ。

『ブルグ劇場』では舞台俳優なので演奏ではなく戯曲になります。冒頭とラストで、『ファウスト』が演じられるのですね。共に同じ場面。しかしながら演出と演技の妙で、まったくの別物に見えてしまう。観たのはずいぶん前ですが、非常に驚いたことを記憶しています。 たぶん、「マイスター」の脚本を読んだときのジーンに近い感情だったと思う。

 

 

と、3作品挙げてみました。

実際に影響があったのかどうかはともかく、何れの作品も名作だと思いますので、ご興味のある方は一度ご覧になってみるのも悪くないのでは、と思います。

 

といったところで、本日はこのあたりにて。