「アストラエアの白き永遠」体験版感想
2014-07-06
お久しぶりです。本当にお久しぶりです…。何か書こう何か書こうと重いつつも気づけば半年以上が経過。月日は早いものです。今回は「FAVORITE」さんから6月27日発売予定の作品「アストラエアの白き永遠」の体験版を書いていこうと思います。私がここの作品をプレイするのは前作「いろとりどりのセカイ」及び「いろとりどりのヒカリ」に続いて二度目(三度目?)になります。星空のメモリアを始めとした過去作品も遊びたいのですが…積みゲーが…。
あ、どうでもいいですがアストラエアと言えばデモンズソウルの腐れ谷を思い出しますね。パリィの練習をしては叩き潰され、沼に入っては疫病と袋叩きに遭い。ゲームシステムだけでなく、シチュエーションもキャッチコピーにあった「世界とは悲劇なのか」を体現していました。懐かしい。
まずは全体的な内容を。
舞台は「月ヶ咲」という、雪がここ二年間も降り続ける事を始めとして異常気象が相次いでいる街。ここにとある組織から特殊能力者の主人公と仲間が派遣され、姉妹の護衛として日常生活を送りながらも段々と陰謀渦巻く騒動に巻き込まれ…という作品になるかと思われます。体験版の中身は最初の一週間を使った簡単なキャラ・舞台紹介といったところ。当然の事とはいえヒロイン達への理解も表層的なものが大部分ですね。
ちなみに「能力(ルーン)」や「能力者(エルフィン)」など一見すると超能力バトル要素もある気がしますが、きっと味付け程度でメインにはならないでしょう。個人的には残念ですが、ラーメン屋でカレーを注文するようなものなので仕方ありませんね。
お次はヒロインについて。
・「雪々(ゆうき)」 CV.桃園 にな
幼少の主人公が冬の月ヶ咲で遊んでいた女の子。主人公の帰還により再会する。
当時は冬しか会えない、現在でも姿が変わっていないなど不思議な人物。
・「橘 落葉(たちばな おちば)」 CV.小鳥居 夕花
主人公の護衛対象の片割れにして、下宿先の家主。月ヶ咲学園の二年生。
主人公に護衛任務を言い渡した組織の局長の娘。育児放棄されているとも取られかねないレベルに父と連絡が取れない(母親は詳細不明)ため、学生で生徒会に所属する身でありながら家事と妹の面倒の一切を取り仕切っている。
そんな父が事前の連絡も無しに派遣した主人公を若干警戒しながらも下宿を受け入れるなど、なんだかんだでお人よし。妹の葉月にとっては姉であって母親のような存在。家庭の事情からか、若干一人で抱えすぎる部分があるようにも見える。
一般人であり父の職務内容や能力者の事は知らない。
・「夕凪 一夏(ゆうなぎ いちか)」 CV.桐谷 華
落葉(と主人公)のクラスメイトにして友人。初対面でもフレンドリーに接してくる明るく元気な運動少女であり、逆に勉強が苦手。
一般人であるがヴァルハラ研究所なる場所で働く姉がおり、研究の事を聞き出していたりもする。月ヶ咲で暮らし始めたのは数年前に姉がヴァルハラ研究所に転属した折である。
・「螢 りんね(ほたる りんね)」 CV.卯衣
主人公と同じ組織のチームメイトで幼馴染。他のキャラに比べると感情表現が薄いものの、クールという訳ではない。落葉の妹である葉月を護衛するため、彼女が通う遊園地に手伝いとして通う。
背格好からか子供に間違われる事が多く、そういった都合の悪い言葉は「空耳が聞こえました」と回避することも。
かつては主人公と共に月ヶ咲の児童養護施設で暮らしており、任務で久々に訪れる事となる。
能力者。「接触感応能力(サイコメトリー)」などが得意なサポートタイプ。
・「コロナ」 CV.鈴谷 まな
主人公が通う事となった月ヶ咲学園の一年生。見た目は人間ながら、ヴァルハラ研究所によって造られたロボット。惑星探査用の試作機だと言うが…。水素や酸素をエネルギーに変換する燃料電池が搭載されている。
小動物系の素直で健気な性格ながら非常に謙虚であり、自分が悪くなくともすぐ謝るのが玉に傷。独自の判断で動く事を疑似体験するため学園に通っており、本人も「人間に近づきたい」と思っている。出自からか学園では浮いており、本人の謙虚さも相まって友人はほとんどいない。
・「水ノ瀬 琴里(みずのせ ことり)」 CV.桃山 いおん
月ヶ咲学園の二年生であり、主人公達とは別のクラスながら、落葉とは生徒会仲間。クールそうに見えるものの、なんだかんだで知人には優しく話も出来る。
能力者。能力、目的等は不明。
体験版は序盤もいいところで日常シーンがほとんどだったのですが、既に伏線になりそうな描写が散りばめてあって設定好きとしては先が気になる作品ですね。研究所だの惑星探査だの超能力だのはロマン。
ヒロインの方も可愛いキャラが揃っていて、サブキャラも幼稚園児が濃いけどなかなか良い感じ。個人的にはりんねかコロナかな…。体験版の段階なのでなんとも言えませんが。
あとはムービーも含めると全体的に「人と人とのすれ違い」について扱うような描写がちらほらと見えます。家族のすれ違い。友人知人とのすれ違い。他人とのすれ違い。そして、過去と現在とのすれ違い。ありふれたテーマ…と言うと聞こえが悪くなりますが、それをどう料理していくのか楽しみです。
何を書いているのかよくわからなくなってきたのでここまで。ここから彼女達の関係はどう変化していくのか?それぞれの思惑とは?兎にも角にも体験版の先が楽しみです。同じヒロインでも待遇が大きく違いそうなのと、メインヒロインを一番好きになれない身としては物語として雪々が全てを掻っ攫っていきそうで心配ではありますが…。
以上で長いようで短いかった「アストラエアの白き永遠」体験版の紹介と感想を終わります。下の方ではOPのセリフや体験版の中身から考察という体を装った妄言をちょろっと書いてみました。
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Shadow in the dark
2013-09-20
こんにちは。LoLに加えてファイナルファンタジーⅩⅣを始めたおかげでエロゲが全く進まない案内屋見習いです。早いもので前回の更新より一ヶ月が経ち、またしても広告が出現しました。更新しなきゃ。
今回の更新は、月刊ドラゴンエイジにて原作:鋼屋ジンさん/作画:空十雲さんで連載の「D.Y.N.FREAKS(ダイン・フリークス)」がデモンベインを始めとして大量のネタを抱えているという事で、私の知る限りで作中に散りばめられたネタを紹介していこうという趣旨のものです。発売してから一ヵ月半くらい経ってるのに今更かよと我ながら思うのですが、まあ気にせずに。ちなみにクトゥルーとかそういう初歩の初歩的なものは除外しています。そこまでやっちゃうとキリがないので。あとは一応ネタバレになるかもしれないので追記に格納。
ちなみに森瀬繚さんが鋼屋さんの呟きをまとめておられるので、そちらもどうぞ。それではまた。むげんちゃんかわいい。
ダイン・フリークス D.Y.N.FREAKS 1 (ドラゴンコミックスエイジ そ 1-1-1) (2013/08/08) 不明 商品詳細を見る |
例題です
2013-08-06
どうも。長文を書く気力が無くなっており、ネタはあるもののブログの更新をだいぶサボっていた案内屋根見習いです。遂にシャイニングナイト発売の8月となり、PVも公開されました!という事で本記事は「黄雷のガクトゥーン シャイニングナイト -N'gha-Kthun:Shining Night-」について事前に考察した軽いメモ帳のようなものになっております。あくまで個人的なメモ帳ではありますが、憤怒王など同人ネタなどもありそうなのでブログ記事とする事にしました。シリーズにより深く触れてみたいという方・もしくはこれからそうなっていかれる方のお手伝いになれれば幸いです。
なお、本記事は「黄雷のガクトゥーン -What a shining braves-」をプレイ済みである事を前提に書かれており、更にシリーズ作品・同人等のネタバレも含みますのでご注意ください。内容は以下の折りたたんである場所からどうぞ。
黄雷のガクトゥーン:シャイニングナイト -N'gha-Kthun:Shining Night- (2013/08/23) Windows 商品詳細を見る |
──汝、魔を断つ輝きとなれ
2013-05-23
どうもこんにちは。最近League of Legendsというネトゲを始めてみました。案内屋見習いです。もたもたしている間にFDの情報が出てきてしまいましたが、今回もまたライアーソフトよりスチームパンクシリーズ「黄雷のガクトゥーン ~What a shining braves~」の感想を書いていきたいと思います。今までが今までだけに「What a beautiful braves」と誤表記されますが、shiningです。記事タイトルはニトロプラスより「斬魔大聖デモンベイン」のキャッチコピー「──汝、魔を断つ剣となれ」。
あとは三度目になるのですが、このシリーズは同じ世界観を共有していても物語としては独立しています。過去作をやっていなければわからない設定などが一部存在しますが、用語集などもありますのでどうしても気になるという方以外は「そういうものだ」とスルーしていただければ大丈夫かと思います。今回は特に。ただしシリーズを通して文章が独特なので、先に体験版をお勧めします。
さて。軽い説明を。我々の世界とは違い、「カダス」という異邦の発見・技術提携により蒸気機関技術が異常発達を遂げた世界。人類は繁栄と引き換えに青空を永遠の灰色雲へと変え、海は通常船舶が航行できないほど濁り、それでも発展をやめない世界。
そんな1909年、西享(地球)のフランス王国マルセイユ…正確にはマルセイユの海に作られた人工島「マルセイユ洋上学園」が舞台です。先端技術を導入して作られ、統治会なる6人の生徒とその裏に潜む秘密結社《西インド会社》によって支配・運営されるが故に政府すら口出しをできない場所。「異能(アート)」なる超常現象を行使する者を含んだ10万人の学生が青春を謳歌する学園島。そこに史上初の転校生が現れたところから物語が動き出します。
「ニコラ・テスラ。72歳。転校生だ。マルセイユ洋上学園都市10万の学生諸君。運命に呪われたお前達、全員。──私が、この手で、救ってやる」
そして、絢爛たる鐘の音が…。
登場人物紹介
・「ニコラ・テスラ」 CV.古河 徹人
1年生。学園初の転校生にして、転校早々に前述の衝撃告白をした人物。外見年齢は20代前半であるのに72歳を名乗る(誰にも信じてもらえないが)。「思弁的探偵部」を設立し、統治会への反抗を表明する。「無限の正義を行う」と言いながら「世界の敵」を名乗る。
性格は傲岸不遜。かと言って冷血漢ではなく、その言動には彼なりの優しさが垣間見える。銀貨30枚で「買った」助手ネオンに対しては特に。ただし空気が読めず、また自称72歳の通り価値観やものの捉え方が他の学生と違っている場合がある。特に女性に対してはセクハラまがいの言葉を自然な褒め言葉として使う。
戦闘時には白い異国の服(とある小国のものを想起させる)と長いマフラーを纏い、機械式の手袋とベルトを装着し、迸る雷電を自在に操る。学園由来の異能ではない模様。
(備考。ニコラ・テスラと言えばかつて《雷電公》ベンジャミン・フランクリンに師事した後、この蒸気技術至上主義の世界において「電気学」なるものを興そうとして世界中から反感を買った碩学(学者)。称号は《電気公》または《電気王》(雷電王とも)。他の技術で多大な貢献をした事から碩学史に残ってしまったものの、その経緯故一般にはあまり知られていない。《西インド会社》の一員であったとも対立していたとも言われているが真偽は不明。少なくともここ数年は全く音沙汰無く、この学生が本人であるのか、そうだとすれば何故今更学生などやっているのか、等々あらゆる事情が不明)
・「ネオン・スカラ・スミリヤ」 CV.一色 ヒカル
1年生。テスラに銀貨30枚でその存在を買われた女学生。元は2級学生という半ば不法侵入として入学した存在であり、昼はともかく夜は寝る間も惜しんで奴隷のような生活をさせられていた。
本来は明るく優しく友達思いで、相手が主人であっても言う時は言う性格。両目が後天的な黄金瞳。
現在はテスラが部長を勤める「思弁的探偵部」唯一の一般部員にして彼の助手となっている。この状況に多少の文句があるものの、前の境遇から考えれば彼は恩人という認識も持っており現状を嫌がってはいない様子。
・「ヴァルター・リッツ」 CV.ますおか ゆうじ
3年生。統治会、男子のみで構成される《フラタニティ》の一員。左目が後天的な黄金瞳。
普段はそれなりに静かだが、ランナーズハイになると饒舌になる。何よりも速度を重視しており、「(行動・決断などから栄養摂取に至るまで)遅い人生は無駄」と考えている。
自身と触れた無生物を超音速にまで加速させる異能を持ち、ローラーブーツのようなものを履いて戦う。
・「ベルタ・モリ・ヴィーゲルト」 CV.杉原 茉莉
2年生。統治会、男子のみで構成される《フラタニティ》の一員。右目が後天的な黄金瞳。
普段は物静かなものの、たまに感情が暴走して激昂する場合がある。冷徹。
極東、特にサムライに執着している。信奉と言ってもいいかもしれない。
人型の機械を操る異能を持ち、特殊な改造を施した日本刀で戦う。
・「ウィルヘルム・ライヒ」 CV.山本 兼平
5年生。統治会、男子のみで構成される《フラタニティ》の主宰であり、実質的に統治会の長。左目が後天的な黄金瞳。
涼やかに見えるものの策略家で、密かに統治会の仲間すら騙して利用する。《西インド会社》通称《結社》との繋がりもあり、学園都市の裏の顔を知っている。
剣状のものを握ると超人的な身体能力を得る異能を持ち、サーベルや日本刀などを武器に戦う。
・「エミリー・デュ・シャトレ」 CV.かわしま りの
3年生。統治会、女子のみで構成される《ソロリティ》の一員。右目が後天的な黄金瞳。
若くしてフランス貴族シャトレ家の現当主。ノブリス・オブリージュという生き方に強く執着していて、高圧的だが一般学生の事をしっかり考えている。親衛隊がいる。
非常に高度な計算を行う異能を持ち、自ら設計した大弓「アルテミス1」を使用した精密射撃で戦う。
・「ジョセフィン・マーチ(ジョウ)」 CV.野月 まひる
2年生。統治会、女子のみで構成される《ソロリティ》の一員。右目が後天的な黄金瞳。
明るく活発で親しみやすく、知らされていなければとても統治する者には見えない。4姉妹の2番目で、1年生に妹がいる。
相手や自分の肉体を自在に操作する(姿形や性質の変化ではなく、動きの操作)異能を持つが戦闘時は自分にしか使わず、鍛えた体と異能で巨大な機械斧を振るって戦う。
・「フロレンス・アメギノ・ナイチンゲール」 CV.桜川 未央
4年生。統治会、女子のみで構成される《ソロリティ》の主宰。右目が後天的な黄金瞳。
フランス語読みでフロランス。非常に穏やかな言動や思考を持ち、統治会一の穏健派。既に博物学の碩学位を持つ天才でもあり、その人柄から「御前の女神」とも呼ばれる。テスラに対しても転校生特権を与えるなど寛容で、ネオンに対しては統治会としてではなく個人的に接するなど何かと気にかけている。
「諸神」なる伝説上の存在達に呼びかける事で様々な超常現象を起こす異能を持つ。滅多に使わない。
はいお次は個人的な感想。
今回はいわゆるヒーローもののエンターテイメント作品として上手にまとまっていると感じました。今回は全体的に明るく悲壮感もだいぶ少なく、文章は(今までと比べれば比較的)サクサク読み進められ、心理描写も今までと変わらず深く深く。シリーズ初の「完全学園もの」といった直球王道設定から「スチームパンクなのに電気」、「自称72の主人公」などといった
更に今回は今まではほぼ章限定だったキャラも別の章で登場するなどの進化もあります。学園という小さな世界で友人なのですからある意味当然ではあるのですが、嬉しかったです。
つまり文章の独特さを除けば武装錬金に初代ゾイド、エロゲならデモンベインあたりが好きな人には楽しんでもらえるのではないでしょうか(仮面ライダーやウルトラマンとか言いたいけど見てたぶんもよく覚えていなければ昔のは見てすらいないです…)。
そしてロボォォォォォォォ!電気騎士(ナイト・オブ・サンダー)なるロボが登場します。
そして引っかかった部分を軽く。
ディスク容量の都合上なのか、だいぶ省略されている部分がある事。今回はDVD1枚分のほぼ全てを使う過去最大のボリュームだったのですが、それでもまだ「あれ?このキャラだいぶ省略された?」という部分が。PVに出てきたセリフも全て出ているわけではないですし。かと言ってディスク2枚組みにしても大きく余りそうですし…。難しいところです。せめて使って欲しかったPVのセリフがちらほら。
あとはバグ。クリアする前からイベントCGが見れるのですが、まだ見ていない終盤のCGが何枚か見れてしまうんですね。修正パッチは来ましたし見ないよう注意すればいいのですが、ついつい…。ええ。
なんだか他に書くような事があった気もしますが、とりあえずまとめ。
個人的には大満足でした。シリーズで二番目に好きになるくらいには。テスラの事もヒーローと感じる事ができましたし、女性キャラも可愛かったし。発売時はソナーニルの途中だったのですぐに遊べなかったのですが、もっと早くやっていれば…と思います。
とにかくガクトゥーンに興味を持っていただけた方には(まずOPを見て体験版から)遊んで欲しいですし、これを機にシリーズへ興味をもっていただければ嬉しいです。雷の剣の如きこの腕伸ばし僕は呼ぼう君を呼ぼう。
それではまた。以下はネタバレを含む考察になります。
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たいせつな人に遺したいメモリーはありますか?
2013-05-15
今回はヴァルーシアと同じくライアーソフトさんよりスチームパンクシリーズ5作目「紫影のソナーニル -What a beautiful memories-」の感想を。記事タイトルは、ALcotシトラスより「死神の接吻は別離の味」キャッチコピーである「たいせつな人に遺したいものはありますか?」。ちなみに初めてこのブログを見てくださった方がいた時のために今後も毎回書いていくつもりですが、このシリーズは同じ世界観を共有していても作品として独立しております。ですので用語や小ネタなどを含む完璧な理解を試みないのであれば、どこから始めても構わないと思います。ヴァルーシアと書籍作品から入るのはあまりお勧めしませんが。全てを理解したいという方はセレナリアから発売順にやりましょう。それでも会報やファンブック限定の情報もありますが…。
世界観は今までと同じくカダスたる異邦との交流によって蒸気機関技術が異常発達し、空も海も灰色に染まった世界。舞台は1907年の西享(地球)、合衆国(このシリーズではアメリカと呼ばない)の「旧」重機関都市ニューヨーク。
かつては世界最大級の都市として人々で賑わい排煙を撒き散らしていたニューヨークですが、1902年に「何か」があってその地にいた300万人全員が一夜にして消失する大事件が発生。政府の封鎖によって詳細不明となりながらも後に《大消失》と呼ばれるようになったその事件より5年後、《大消失》によって恋人を失った女性が未だ封鎖中のニューヨーク跡地に足を踏み入れるところから物語は始まります。彼女は歩き続けるのです。恋人と出会ったハイスクール時代の記憶を思い出しながら、ニューヨークに住んでいた人々の思いに触れながら。マンハッタンにあるトレヴァータワー、正式名称エンパイアステートビルⅡを目指して。
…そして同刻。リリィ・ザ・ストレンジャーは目覚めます。リリィという名前と、果てにある「紫影の塔」を目指さねばならないという目的の記憶のみを持って。
そこは地下。歪みながらも空があり、ニューヨークの町並みがあり、消失したはずの人々がいます。地上に存在しない、人々を襲って鉄に変える《御使い》なるものも。そして彼女は記憶の通りに果てを目指します。自分に従うと言う青年「A」と共に、1輌だけの地下鉄に乗って。それに意味があるのかすらわからないまま。
軽いあらすじのつもりが長く…。とりあえず人物紹介へ。
・「エリシア・ウェントワース」 CV.野月 まひる(現代)、桜川 未央(過去)
主人公その1。地上の主人公。左目が黄金瞳。
自身の開発した多脚式歩行鞄「ジョン」と共に廃墟を歩く女性。恋人「アラン・エイクリィ」を《大消失》で亡くしており、彼の足跡を辿るために立ち入り禁止のニューヨーク跡地へ入り込む。
アランと出会った6年前は純粋で引っ込み思案な性格だったが、彼の死後は女としての人生を捨てるかのように勉強へ打ち込むようになった。地の優しい部分が変わっていないとはいえ、いかに彼の死が影響を及ぼしたかは想像に難くない。ちなみに過去の彼女は章が終わるときの過去話で見ることができます。とても可愛い。
・「アラン・エイクリィ」 CV.????
エリシアの恋人。比較的親しい学友「セルヴァン」の先輩であり、6年ほど前に彼の紹介でエリシアの家庭教師となる。
名門と名高いイェール機関大学の学生であり、碩学(学者)。エリシアらと友好な関係を築くも、エジソン卿に引き抜かれてニューヨークへ移住。トレヴァータワーで彼の極秘実験に携わる事に。その後も電信通信で連絡を取り合うなど交流は続いていたが、《大消失》で死亡したものと思われる。
・「リリィ(リリィ・ザ・ストレンジャー)」 CV.かわしまりの
主人公その2。地下の主人公。異形の地下世界を旅するストレンジャー。
ニューヨークの《地下世界》、アンダーグラウンド・ニューヨークで目覚めた少女。一章においては男装している。
どこから来たのか、ここがどうなっているのかを始めとする記憶のほとんどが欠如している。覚えているのは「果てにある紫影の塔を目指さなければいけない」というもののみ。とはいえ日常生活に支障は無く、常識も身についている。
性格は小さな男の子のような意地っ張りが混ざった女の子。正体不明ながら自分に付きまとうAに対しては厳しく当たるものの、嫌ってはいない。
…わけあって、自分で服を脱げない。
・「A」 CV.古河 徹人
浅黒い肌に赫い目をした素性不明の青年。常に車掌服姿。リリィに付き従うと宣言し、1輌だけの地下鉄と共に彼女をサポートする。自身を人間ではないと称する。
何においてもリリィを優先し、身の回りの世話も(彼女に嫌がられながら)率先して行う。リリィの知らない知識を有するものの妙なところで常識に疎く、着替えの時に平然とリリィを脱がせようとしたり入浴時に体を洗ったりしようとする。日常生活だけでコント。彼曰く「リリィは自分にとって仔猫のようなものであり、仔猫に欲情する人間はいない」とのこと。
では全体的な感想を。
今回のソナーニルは女性主人公という事もあってか、だいぶ少女漫画(ほとんど読んだ事が無いのでイメージ)といいますか童話チックな作品だと思います。同じ女性主人公でもセレナリアやシャルノスとは違った毛色。地下の主人公はお姫様とその騎士のようなイメージであり、人々との触れ合いと襲ってくる怪物との戦い。地上では恋人を亡くした女性主人公ひとりが人々の遺した想いに触れつつ、自身の失った人の事を想いながら誰もいない廃墟を歩く。まあ、本質的にはそう違いがありませんけどね。表現の仕方と言いますかなんと言いますか…。
そして地上と地上がリンクしているんですよね。体験版をやってもらえればわかるのですが、リリィが出会った人たちが地上に遺してきた物にエリシアが触れるといった形です。これでニューヨークの人々が何かを大切にしていた事、しかしそんな彼らがもう地上に存在しない事が強調されています。副題である「What a beautiful memories」そのものです。
ああ、エリシアと言えばやはり一人旅は独白と心理描写の多い作風とよく合っていますね。たったひとりでも声が極端に少なくなるなんて常識は通じません。独白の多いこと多いこと。
そしてリリィとA。日常生活だけでコントです。主にAのせいで。知識はAの方があるのですが、どうにも常識に欠けていて。そんな彼に振り回されるリリィが可愛いです。けれども振り回されるだけでなく旅をしていくうちに確固とした自分など精神的な意味での強さを身につけていって…。
ついでにこのシリーズ全体のものとして、表に出る出ないは別として設定がすごいんです。作中はもちろんコラムのほんの一文、果てはファンアート企画のコメントまでが実は設定だったり。セレナリアの時点でザ・ガイドが設定集の面を持っていましたが、時間を重ねるごとにどんどん増えています。こうした設定を見るだけで色々と楽しめる私としては、なんとも素晴らしいものとなっています。願わくば、更なる設定収集と物語のためにも絶版状態のソナーニルノベルブックが再販されて欲しいのですが…。
そして毎度毎度ながら個人的に引っかかった部分を。
まずはシリーズ恒例の人を選ぶだろうとか各章限定のキャラがもったいないだの以下略。
次にシリーズとして見てるとですが、どうしても設定の似通ったインガノックと比べてしまう事。具体的には「繁栄から急に絶望の閉鎖空間へ」「そこに現れるまともな手段では手出しできない敵」などなど。あちらと違いソナーニルには記憶退行が伴うことによって「悲劇」としての要素が薄れていますけれど。私にとってインガノックが今のところシリーズで最高に素晴らしかったせいで(おかげで?)、どうしてもソナーニルがいくらか霞んでしまうような…。
あとは完全な主観であって好きな方には申し訳ないのですが、王族や貴族など…とにかくひたすら一人を(今回の場合は女主人を)持ち上げる系の話が苦手な人にはあまり合わないと思います。なんと言いますか、Aのリリィに対する姿勢がどうも男視点で見ると気障ったらしい部分があるのです。うまく説明できないのですが女性に受ける作品でよくあるようなものといいますか。こういうところがシリーズで一番女性に人気と言われる由縁なのでしょうか。とにかく非常に曖昧なものとなってしまいましたが、ええ。まあそのような。私の場合、普通のエロゲ等でも姫様や女貴族キャラがそれほど好きではない事もあるのでしょうね。ああ、とはいえ男尊女卑とかそういう意味ではなくそもそも普通のエロゲは女性から見ると…どうでもいいですね。はい。
なんだか最後にわけのわからない事になってしまいましたが、とにかく今回はここまで。色々書きましたが、今回も面白いと感じさせてくれる作品でした。ありがとうございます。
思えばこの作品の発表・発売は私が本格的にツイッターを始めてしばらく経った頃でしたか。壁紙やアイコンで見かけたのを覚えています。当時はほとんど知らなかったのでスルーしてしまいましたが。なんだか懐かしいです。それではまた。以下はネタバレを含む考察なんぞを。
紫影のソナーニル -What a beautiful memories- (2010/11/26) Windows 商品詳細を見る |
たいせつな人に遺したいメモリーはありますか? の続き、読みます?