会社に支給された定期券を休日に私用で使っても良いのでは

より明確にするならば、「勤務用途以外で会社から支給された定期券を使用しても良いのか」になるでしょう。

ググってみると数件の質問が見つかります。

OK Waveなどでは公務員が休日に定期券を使用する是非が問われているのですが、ベストアンサーにもあるように公務員に限った話ではありません。通勤用に購入した定期券を休日に使用するのが問題であれば、それは公務員であろうが会社員であろうが不正受給であり、横領になるでしょう。

過去に人力検索はてなやはてなダイアリーでも話題になっています。両者は種々の視点からまとめられており、これらから判断するに休日に会社から支給された定期券を使用するのはほぼ問題ないと考えられます。

以下の三つの視点から考えてみます。

  1. 交通機関の規程
  2. 「通勤」の定義
  3. 通勤手当とは

1. 交通機関の規程

定期券を発行する交通機関が休日の利用を認めていなければ使用することはできません。
定期券とは特定の区間を、一定の期間に区切って発行された乗車券です。基本的に、期間内であれば区間内は乗り放題で途中下車もできます。
一般的には休日であっても利用可能です。
土日祝日を利用不可にすると、カレンダー通りの休みでない人、つまり土日や祝日以外が休みとなっている業種が困りますし、休日出勤する場合も利用できないことになります。

また、一部のバス会社は「環境定期券」を発行し休日での利用を促進しています。「環境定期券」は本人の区間外の運賃と、家族の運賃が割引になる制度です。

以上から考えるに、交通機関は定期券の休日利用を制限してはいません。

定期乗車券 - Wikipedia によると国によっては、期間内の乗車回数や、一日に一往復しか利用できない定期券もあるそうですが、日本の場合にこれを厳密に運用するならば「回数券」の利用が考えられます。

ちなみに、あまり一般的ではないですが、片道定期もあります。例えば、長崎県営バス 定期券 など。長崎の場合は、山の上にある施設に通勤、通学しており、帰りはバスを待つよりも下った方が早い場合や、行き帰りでバスと路面電車を使うなどの用途が想定されているのでしょう。

2. 「通勤」の定義

通勤用に支給された定期を休日に使用して良いのかを論じるならば、そもそも「通勤」とは何かを定義しなければなりません。
この点は先に挙げた 公務員の通勤定期券という「役得」 にも書かれていますが、「労災」と比較すると分かりやす。
通勤中の事故に関しては 通勤途中の事故 | 法、納得!どっとこむ に簡単に解説されていますが、帰宅中に飲み屋に寄って事故に遭った場合は労災が下りないとされています。一方で、自動販売機で飲み物を購入したなど一時的な逸脱や、生活する上で必要な物をスーパーマーケットで購入した場合などは労災として認定される可能性があるともされています。

「労災」を認定する場合は、「通勤」から逸脱した行為の範囲を狭く規定すべきですが、定期券使用時における「通勤」はもう少し緩くても良いでしょう。そうでないと、会社での飲み会や、普段の生活に支障が出ます。
ただ、そうであってもかなりの事例を想定しかつ、実例を積み重ねて定期券を利用できる「通勤」か否かを定めていく必要があります。とても煩雑で手間もかかります。

そもそも、通勤用として支給された定期券を「通勤」以外に使用してはならない、という考え方はあまり一般的ではないように思われます。例えば、回数券、株主優待などフル活用 交通費削る手法は? | 日経新聞 では休日の交通費を削る方法として通勤用の定期券を使用することが挙げられています。

3. 通勤手当とは

通勤手当は「給料」にあたります。そのため、社会保険料が、通勤手当の分だけ高くなります。一方で、源泉所得税は月10万円以下ならば課税されません。ただし、一ヶ月当りの「合理的な運賃等の額」が非課税限度額となり、その最大が10万円となっています。
交通機関であれば、一ヶ月分の定期代が「合理的な運賃等の額」に相当します。通勤手当を支給する場合も、直接定期券を配布する場合も、税制上の取り扱いは同じです。この二つを区別する理由がありません。
自動車や自転車通勤の場合は、走行距離に応じて定めるのが一般的です。

正社員であれば、通勤日毎に運賃を精算する場合と、定期券を購入した場合では前者の方が高くなるでしょう。つまり、定期券を購入した方が「合理的な運賃等の額」と判断されるケースが殆どでしょう。
ただし、バスの通勤定期券は年間2万円も損?カラクリをバス会社さんに聞いてみた | ビジネスジャーナル のような例外もありますが。

ちなみに、出張などに伴う旅費は給料ではありません。旅費の計算方法として、定期を利用できる区間を除外することもあります。
旅 費 関 係 質疑応答集 - 青森県 によりますと、出張する場合に定期券を利用できる場合は、その区間内の料金を差し引いた交通費が支給されるとあります。これは日程が休日であっても変わりません。休日に利用できる定期券を利用した方が「旅費」も安くなり合理的であります。

「通勤手当」で問題になるのは何か

元のエントリーにも書かれていますが、源泉所得税の「脱税」になるからでしょう。先に述べたように、どのような通勤形態であれ「合理的な運賃等の額」を超過する場合は課税対象となるためです。
自転車通勤だからと言って、全く支払われないってのも合理的ではないでしょう。天候によっては公共の交通機関を使うこともあるわけで、その辺は会社などの規定の問題ですが。

キセルはそもそも犯罪です。この質問の回答において、月毎に定期券代が支給され、交通機関が一ヶ月、三ヶ月、六ヶ月定期を発行しており、長期間の定期券を購入した方がお得である場合に、六ヶ月定期を購入しても問題なのかが書かれています。弁護士は、法律や社内規程に違反するわけではないし、悪質な行為であるとも言えないとする見解を残しています。
むしろ、六ヶ月分の定期代を購入した場合は、差額を返金してもらうように規程を変更すべきだとしています。

自動車通勤者に対して、公共交通機関で通勤した場合に相当する通勤手当を支給しいるが、「合理的な運賃等の額」を自動車通勤として計算すると、非課税限度額を超過している場合。
労務管理事務所の所長は厳密には「脱税」であるとしています。とは言うものの、通勤手当の額が急に変わることになるため、業務員に説明し納得してもらって規程を変えるようにともアドバイスされています。

休日に定期券を使用しても問題ない

「脱税」であるかは、どちらかというと通勤手当を支給する会社側が規程をしっかり取り決め、従業員に説明すべき問題です。

社員の休日にまで通勤手当を払いたくなければ、定期券ではなく回数券支給する方法があります。
年休取得の日を通勤費不支給とできるか で論じられるように通勤した費に応じて通勤手当が支給されるのであれば、そもそも休日分の交通費を受け取ることができません。
定期券を支給する場合は、一ヶ月分を手当とします。つまり出勤日によって金額は変動しません。出勤してない日の交通費を会社に返納せよと命じることもできませんし、命じたところでその差額を計算することはできません。

一般的に、正社員であれば回数券よりも定期券を購入した方が割安になるでしょう。この際に、社員が勤務外に定期券を利用しても、会社に不利益が生じるわけではありません。交通機関も休日での利用を禁止してはいません。むしろ推奨している場合もあります。
また、なにもって定期券を利用できる「通勤」とするのかは非常に曖昧で、それをわざわざ個別のケース毎に規程する方が合理性に欠けます。さらに、休日が一定でない場合もあります。もちろん、この場合は回数券を利用する方法もありますが、正社員や常勤で働いている場合は処理が煩雑になるでしょう。
以上から、休日に定期券を利用しても問題が無いと考えます。

ちなみに、はてなブックマーク - Harnoncourtのブックマーク - 2015年7月14日 は厳密には脱税とコメントされていますが、その場合はどのように計算すべきなんでしょうか。そもそもどこまでが「私的」にあたるのかの解釈が難しですし、厳密には「脱税」にあたるが、やはりほぼ問題ないと考えて良いのかなと。そうでないと、先のバス会社の環境定期券は脱税を幇助してることになりますからね、