スマフォ版ドラクエ1の移動系が酷評されるべき理由

先日リリースされたスマフォ版のドラクエ1は戦闘などはドラクエの雰囲気を残しつつタッチパネルに対応するなどの工夫が見られますが、移動に関しては難ありと言わざる得ません。むしろ、戦闘などの調整具合と比較すると移動に関してはチグハグで調整が甘く、もう少し突っ込んで言うならやっつけで作ったのでは無いかとすら思えます。諸悪の根源は「半キャラ移動」にあります。

私は既に iOSとAndroid向けのドラクエ1がリリースされましたが操作性に難あり と評していますが、今ひとつ問題が共有できていない気がするのでもう一度酷評する理由を明らかにしたいと思います。事は、「慣れ」で解決すべき問題は無いのです。

なぜ酷評するのか?その理由は二つあります。先ず批判しておかないと、次回作の改善が見込めないから。この移動系で、ロンダルキアへの洞窟とか回転床を攻略したくは無いです。
次に、ファミコンやスーファミのゲームをスマフォに移植し始めた頃ならともかく、iOS版のFF1が2010年の2月にリリースされて既に3年以上経過しているのに、ドラクエという国民的なタイトルがとってつけたような移動系しか実現できないことに対して激おこなわけです。


最初の王様の部屋を抜ければ、気にするほどのではないとの意見もあります。確かに、フィールドやダンジョンでは移動の悪さが気になることはありません。しかし、最初の部屋だからこそ開発時にきちんと検証しているのかという疑問も生じます。
また、「慣れた」と言ってる人も、フィールドやダンジョンでの移動が大味操作で気にならないだけってことはありませんか?例えば、ガライの町で人に話しかけながら移動してみてください*1。
確かに、FC版のドラクエ1はかに歩きだし、イチイチ「はなす」や「とびら」や「かいだん」を選択しないといけないし、話すにしても方角を決定しないといけない点で操作系は良くないです。しかし、UIの変わらないと言われるドラクエといえどもシリーズが進むごとに操作系は簡便になっていき、最終的にボタンひとつで「はなす」や「しらべる」ができるようになっています。そして、今作のドラクエ1の移動系の悪さは、FC版ドラクエ1の操作系の悪さとは別の問題であると思います。単純に、移動系がスマフォ向けに最適化されていない、これにつきます。

今回のスマフォ版ドラクエ1は無料配布なのでユーザーの声を聞く魂胆なのかもしれません。しかし、王様の部屋で躓いた人が続編を買ってくれるとは思えません。また、今後移動系が改善されないと、プレイヤだけでなくスクエニも泣く羽目になるわけで、やはり「慣れ」の問題では無いのです。ドラクエ1が定価通りの500円だったら胸を張って他人に勧められますか?僕はできません。

半キャラ移動が絶望的に必要ない

ドラクエ1,2,3はマップデザイン上、1キャラ分をこまめに動かし微調整する必要があります。ドラクエ1ではロトの印を取るときくらいしか、こまめにキャラを動かすことはありませんが、続編の2ではラーの鏡、そして最大難所のロンダルキアへの洞窟、3では回転床など微細な操作が必要となります。それ故にタップした場所に移動する方式では不適切です。またタップした場所に移動キーが出現する方式よりも、固定移動キーをこまめにタップした方が微調整はしやすいでしょう*2。細かな操作が要求されるが故に、1タップあたりで半キャラ分移動する必要性がありません。無駄にタップする回数が多くなってしまいます。1タップで1キャラ分移動すれば良いのです。何度も書きますが、今回のドラクエ1の操作系でロンダルキアへの洞窟や回転床を攻略したいと思いません。だからこそ、声を大にして批判したいと思います。

ちなみに、半キャラ移動のせいでロトの印の場所がおかしなことになっているようです。


今回のドラクエ1の操作系でもフィールドやダンジョンならそんなに困ることはありません。それは、障害物や落とし穴がないから。一方、町の中で、人に話しかけたり、間をすり抜けようとすると俺の怒りが有頂天です。特に話しかけた後に移動しようとして、もう一度話しかけているなんてこともありました。これは、十字キーの移動を判定する部分をタップしないと、決定キーを押したものと判断されてしまうから。何を言ってるか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった。


口を酸っぱくするほど言いますが、半キャラ移動がとにかく必要ないです。ドラクエの半キャラ移動はスーファミ最初の作品である5から採用されています。半キャラ移動はストーリーの演出では映えるのですが、ゲームシステム上ではイースでもないので必要がありません*3。リメイク版のドラクエ1・2でも半キャラ移動は継承されています。今回のスマフォ版ドラクエ1のベースであるN900iにプリインストールされていた携帯電話版も恐らく半キャラ移動なのでしょう。


半キャラ移動により一番難易度が高くなってしまったのが、チュートリアルたる王様の部屋。ここで投げ出した人も多いようです。半キャラ移動のため、3つ並んだ宝箱を思うように開けられない。宝箱を開け外に出ようにも衛兵の間をすり抜けられない。そして、難所をすり抜けた後に広がるのはランダムウォークしているNPCがはびこる狭い通路のラダトーム城の一階・・・。そりゃ投げ出したくもなりますよ。
例えば、最初の3つ並んだ宝箱にしても、2つの間に立ったならば空いてない方の宝箱を優先して開けるなどの処理をしても良かったのでは?ドラクエ1ならば、ミミックは存在しないわけですし。
また、障害物に当たった場合は、壁にずれるようにして進める補正があるのですが、それはNPCには適応されません。NPCのこの補正を適応すると、話しかけるのが難しくなるからでしょう。
固定十字キーにしても、大きさや位置を変更できるのですが、それならばなぜもっと自由に位置を調整できないのか。移動系のUIに工夫は見られるものの、どうにも中途半端です。そもそもデザインからして他のアイコンと調和してない気がして、本当に「どうしてこうなった」という思いがつきまといつつクリアしましたよ。

移動系を除けば割と良いできだと思うので、それだけに残念だと感じます。

どんな移動系があるの?

バーチャルパッドによる操作はドラクエ1でぽっとでたわけではありません。バーチャルパッドは各社で独自開発し共有されてはいませんし決定稿があるわけではありません。しかし、現在は各社かなり工夫したものをリリースしています。ドラクエ1はそれらと比較するとどうしても見劣りします。

スマフォにおけるRPGの操作系に関しては、上記のリンクがまとまっています。

スマフォにおけるRPGの移動は以下の3つにまとめることができます。

  1. タップした場所に移動
  2. 固移動字キー
  3. タップした場所に移動キーが出現
タップした場所に移動

「タップした場所に移動」はDSなどでも採用されています。ドラクエなら9でも可能です。この移動系でUIを設計する場合、すべてをタッチで操作できるようにした方が良いです。中途半端に十字キーや決定ボタンなを配置するとどっちつかずになるからです。DSの夢幻の砂時計などは、完全にタッチのみで操作できるようになっています。
DSの場合は、スタイラスがあるのでキャラが手で隠れる比率が少ないのですが、スマフォの場合は指でタッチするので指により画面が見えなくなる事が多いです。RPGであはりませんが、R-TYPEや斑鳩をプレイした際に敵が見えなくなることが多々あったので、アクションにはあまり向いていないと感じています。ただ、タップした場所に移動する方式の場合、実機では不可能であった高速移動が可能なので全く別の攻略法が生まれる可能性があるとも言えます。

マシンナイトなどのケムコのRPGでは、パッド操作とタップした場所に移動する形式が選べます。ドラクエ1,2,3の場合は細かな操作が必要なので向かない移動系ですが、3DになったDS版の4,5,6や7や8には適しているでしょう。

固定移動キー

今回のドラクエ1などの形式。FF1、2もこの形式ですがあまり評判は良くありませんでした。

横持ちにすると、PSPなどの操作系に近くなりますが手で画面が隠れます。移動キーを透過にする、手で隠れた部分でゲームの視認性が損なわれないようにするなどの工夫がなされています。移植作品の場合は画面を小さくして黒帯に移動キーなどを配置するなどした方が見やすいんじゃ無いかなぁと思います。画面比を考えると、元のゲームも4:3が多く、昨今のスマフォはワイドが多いので黒帯にした方が移植の手間は少ないように思えます。
ドラクエ1の場合は縦持ちなので、手で画面が隠れて困ることはありません。ただ、Androidは機種によって画面上部が消えてしまう不具合があるようです。

これまでプレイした固定移動キーのゲームで操作しやすかったのは、ストリートファイター4です。スト4はドラクエなんかより遙かにこまやかな操作が必要ですが、移動キーがそれなりに機能しています。リリース当時にiPhoneなど触ったこと無い人にプレイさせてみたら、特に不満を感じること無くプレイしていたのでタッチパッドの完成度は非常に高いと思います。
また、移動キーや各ボタンの位置を自由に調整できるのも良いです。ドラクエ1でも可能ですが、大きさと位置がそれぞれ3つずつにすぎません。手の大きさや端末の大きさもそれぞれ違うので、固定移動キーで位置や透過度を微調整できます。ドラクエ1もこれくらい設定できても良いと思います。
また、スト4では初心者向けにもオートガードやワンタッチで必殺技を出せるボタンも用意されています。

FIFA14も良い操作系だと思います。こちらは、旧来のゲーム機のようなバーチャルパッド形式と、タッチパネル向けに特化された操作系の二つが選択できます。共に、細かな設定ができるようになっています。

スト4とFIFA14から比較しても、ドラクエ1の移動系は見劣りして残念だなと感じます。

タップした場所に移動キーが出現

タップした場所に移動キーが出現するのはスマフォ版のFF3からある移動系で、元々はDSでタッチした方向で移動するの亜種でしょう。
画面のどこかをタップすれば移動キーがでるので、どのような持ち方でもプレイできます。FF3以降では、FF4, 5に聖剣伝説2やクロノトリガーでも採用されています。プレイしてみると分かりますが、ドラクエ1に比べると遙かに快適です。

クロノトリガーでは死の山のイベントがつらかったですが、これは物理キーでもそれなりにきつかった覚えがあるので、元々のゲームデザインが悪い部分が多分にあるかなと。それ故に、移植する際に一工夫が欲しかったところではありますが。

iOS版の聖剣伝説2の開発者さんが、twitterで バーチャルパッドの話 - Togetter をしていましたが、ドラクエ1などにおいてこの辺の技術がどうにも上手く共有されていないなぁと感じます。同じ会社ではありますが、部署も違いますし開発している下請けが違うから技術が共有されないのも仕方ないのかもしれませんが、それにしたってドラクエ1は昨今のバーチャルパッド事情に疎い人が開発したのでは?と思えてなりません。

一キャラ分を細かく動かすドラクエ1,2,3では、タップした場所に十字キーが出現する方式よりも固定十字キーの方が良さそうだなと思えます。ただし、タップした場所に十字キーが出現する方式でも、スライドやフリックにより細かな移動はできるので、固定移動キーが最適解とも思えません。

iOSとAndroidへドラクエ8がリリースされますが・・・

12月12日にドラクエ8が配信予定だそうです。お値段は2800円で、PS2作品の移植なのでまぁ妥当かなぁと思いますが、ドラクエ1の操作系を見ると躊躇します。ドラクエ8は、細かな微調整が必要が無い3Dのゲームなのでタップした場所に移動キーが出現する方式が操作しやすいと思います。あるいは、ドラクエ9のようにタッチした場所に移動でも問題はないでしょう。ゲームによっては、両方の操作系を選択できるものもあります。

タップした場所に移動キーが出現する、あるいはタッチした方向に移動する形式はDS版の4,5,6や、PSで3Dとなった7も同様に操作しやすいでしょう。
一方、一キャラ分を細かく動かす必要のあるドラクエ1,2,3は固定式が良いと考えます。しかし、やっぱり半キャラ移動はいらないので2や3では改善されるのを望みます。最後にもう一度書きますが、この移動系でロンダルキアへの洞窟や回転床を歩きたくありません。操作系に関しては、操作しやすい方が良いに決まっているので「慣れ」で解決すべき問題ではないのです。

と、ここまで怒りにまかせて書きましたが、恐らくスマフォ版のドラクエ2も、SFC版のようにぬるくなっているだろうなと。
先ず、一回落ちた落とし穴は穴が空いたままで落ちない仕様になると考えられます。マッピングしろ派にしてみれば改悪ですが、個人的にはこれくらいの方が良い難易度かなと思います。
半キャラ移動が残ったままになると、恐らくSFC版と同様に半キャラの場所を歩けば落とし穴に落ちることは無くなります。これは、本来半キャラ移動の無かったマップに半キャラ移動できることで生じた裏技みたいなもので、本来の仕様とは異なる結果になっています。本来の仕様とは異なる理由で簡単になっているため、半キャラ移動は無くした方がよいのではないかなぁと。

*1:一部NPCが特定の方向へ歩くと表示が消えるバグがありますね

*2:ただしこれも人それぞれで、タップした場所に移動キーが出現する方式でもフリックで微調整は可能。故に、やはり選択肢式が望ましい

*3:最後に述べますが、半キャラ移動により落とし穴を回避できるので、プレイヤが移動させる際の半キャラ移動は取っ払ってしまった方が良いです