12/23 「増税」ではなく「控除から給付へ」ではないか
今朝の朝刊のマスコミが税制改正について「増税」と国民からの収奪が増えるような雰囲気を漂わせて見出しを打っていることに、そういう報道の仕方でいいのかと思う。本質は「控除」「政策減税」から給付へ、という改革だろう。
税制改革について、減税であるべきという先入観が漂う見出しである。すべての納税者に増減税が一致するような税制改正はできない。税制改正は必ず損する人とトクする人がいる。税制改正はその中身が問題にされるべきだろう。
今回の特色は、増減税と財政支出とを一体にした予算編成の一環として行われる。
財政支出というと税金の無駄づかいと非難され、減税というと税金が効率的に使われているみたいな誤解がはびこっていてそれでいいのかと思う。良いか悪いかの価値判断は改めて行うが、日本経団連の御手洗会長が繰り返し国に求める輸出産業向けの細かい政策減税要求は、企業への財政支出と同種のものである。NPOへの寄附減税の要求も、NPO業界への間接的な財政支出の要求に他ならない。
税金だけを取りだして、増税、減税と言い立てるまえに、税制改正の損得と、財政支出の損得を一体的に評価すべきである。今回は、増税された以上の金額が子ども手当と農家への所得保障として、子どものいる家庭や農家に支出され、所得を潤す。したがって単純な「増税」とのレッテル貼りにとどまらないと思う。もちろん、その際、減税以上のものを手にする制度である、子ども手当と農家への所得保障制度のスタートをどう評価するかは問われなくてはならない。
また、増税がいけなくて減税がいいことのように報じるために必要な増税ができないでいる。その制約のもとで行われた今回の予算編成のように、何をするにも財源不足で、国民に不足している公共サービスやセーフティーネットの整備が中途半端な制度いじりで終わっているものが多い。
私は繰り返し書いているが、増税で国の資産を増やし、その資産を利用できる特権階級だけ肥やすというのなら論外だが、増税によってセーフティーネットを張り、さらには国民の生活保障、自立支援のための公共サービスを整備していくのなら、税収はすべて国民の所得または公共サービスの担い手の雇用拡大として返され、景気には中立または政策効果によってプラスの効果を生む。増税による国債償還については、増税によって金融業や資産家に現金を渡すことが景気や雇用にどのような影響を生むのか、その観点で、そのときどきの経済情勢に応じた評価になろう。
●日本経団連が要求し、自民党政権のもと租税特別措置などで制度化されてきたさまざまな政策減税こそ整理すべきときではないかと思う。制度が複雑すぎて、公平に利用できる制度になっているのだろうか。政策減税が複雑すぎて本当に企業が言うように高い法人税を払っているのか疑わしいし検証不可能である。減税によって政策誘導をするのは、法人税などを払える儲かっている企業をさらにのばし、法人税を払えない儲からない企業には何のインセンティブも生まない。したがって、産業のますますの集中を生み、チャレンジャーを不利に追い込む。
●しかし経済界も、法人税が高いという批判を政府になげかけていいのかと思う。長時間労働、家庭事情による欠勤などを認めない日本の企業風土のツケは、専業主婦の存在か、同居または近居する親か、公的サービスにしわ寄せを押しつけている。スウェーデンのように残業がない国であれば、多くの保育所は17時に閉められる。産学協同で、国立大学は企業のためによく働くようになった。大学教員は企業・団体に営業活動のために時間をさかなくてはならなくなった。そうしたことの負担を企業は考えずに、国の屋台骨を支えているんだから自分たちには減税しろ、減税しなければ事業所を閉鎖してやる、という態度で本当に良いのだろうか。
税金を払っても、この国で生産活動をしたい、そういう政策展開をしてもらいたい、と要求すべきなのではないか。
●大手新聞社の社員だと、所得税率が高いので、控除から給付へとなると、あまりメリットを感じないのかも知れない。しかし、年収200万円の母子家庭にとっては、所得控除など月3500円程度のメリットしかなく、給付による支援は大きな意味を持つ。そのことの実感がないのだろうか。
さらに効果的な使い方は、現金給付ではなく、現物給付なんだけどもなぁ。どんなことがあっても子どもの居場所が失われない、そんな社会にしなければ。
●子ども手当の所得制限の話で、首相が不要な人のために寄附制度を作るなどと言っているらしいが、子ども手当の支給対象は親であっても、本来は子どものために使われるべき給付金であり、子どもの合意なく親が自らのイデオロギーのために受給を返上するなどということがあってよいのかと思う。寄附制度を作るにしても、一般的な寄附ではなく、保育所を運営する法人や、地域の子ども関連の事業を展開する団体など、子どもの関連の事業に使われるところに限定すべきである。
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