8/22 井戸端会議のネタ提供の意味しかない保育料滞納率の全国調査
またまた保育園の保護者バッシングのにおいがする、保育料滞納90億円のニュース。
アンケートでは、親のモラルの低下が原因という回答を60%の自治体が行っている。そういう面もあるし、そういう保護者というのは印象深い存在なのだろう。
でも記事にしても、自治体の回答にしても、どこか提供者側に楯突く保護者は問題親と決めつける共通理解からスタートしているように感じる。
私が問題に思うのは、こうした滞納が大きくなるまでなぜ放置されるのか、それから、取り立てを始めたところで、その業務を臨時職員に押しつけたり、外注にして、自ら足を運ばない、自治体の福祉行政の担当者だ。実際に不払いの家庭に足を運んでみれば、そこの家庭が払えるか払えないのか、払えないならその背景にある家庭問題は何か、ということが見えてくる。親のモラルが低下したという回答を安直に選ぶ前に、いろいろ見えるものがあるはずだと思う。滞納が深刻になるまで放置しているというのは、多くの自治体の福祉行政の職員が、問題のある仮定を訪問したりしていないということで、よっぽど音を上げて市役所にやってくる重度者か、役所の福祉サービスを上手に利用する元気な市民しか相手にしていない証拠である。
そして、年金のときにも問題になったが、厚生労働省は、払えない人に減免を利用させよう、という指導である。厚生年金の保険料をピンハネしていた企業に対する指導と同じである。
結局、ペナルティーも科すことができない制度なのに、厚生労働省がそれをことさら問題にして調査する意味があるのだろうか。地方分権で保育は自治事務になったはず。したがって、保育料の滞納と回収は、自治体間競争と財政の住民自治で解決すべき問題であり、厚生労働省が出てきて問題だ、と指摘するものではない。
また、保育料の徴収率が落ちていることが、厚生労働省に何の迷惑がかかるのだろうか。厚生労働省は補助要綱にしたがって画一的に保育所運営費を払っているだけで、滞納分まで負担しているわけではない。
と考えていくと、こんな調査、厚生労働省がやる意味は何だろうか。親のモラルが低下している、ということを喧伝して、高橋史朗あたりが目論む「親学」なるイデオロギー教育をするための土壌を耕しているのだろうか。少なくとも効果としては「保育園に預けている保護者」に対する偏見をさらに強めるだけの調査のように思える。
それと年金を政治家のために何兆円も公共事業に流用した厚生労働省にそんなこと言われたくないように思う。もちろん私は銀行引落しで滞納したことないし、無認可保育所なので厚生労働省の補助金など受け取ってはいない。むしろ地方交付税の児童福祉費を自治体にピンハネされているぐらいだ。
保育料滞納:保護者の3.7%、総額約90億円…厚労省
全国の認可保育所に子供を預けている保護者の約3.7%が、昨年度に総額約89億7000万円の保育料を滞納していることが、厚生労働省の調査で分かった。徴収を担当する市区町村の6割近くが「滞納が過去5年で増えた」と感じていると回答。厚労省は22日、正当な理由がない場合は財産の差し押さえも含めた厳格な対応をするよう、自治体担当者に通知した。
保育料滞納の調査は初めて。約8万6000人の保護者に、1人平均で年間約10万4000円の滞納があった。過去5年で「滞納額が増えた」と回答した自治体は57%。増加の理由として66%が「モラルの問題」を挙げ、「収入の減少」の19%を大きく上回った。
滞納者率が高かったのは、都道府県で静岡県(8.8%)▽宮崎県(8.0%)▽大阪府・佐賀県(6.7%)。政令市・中核市では北海道旭川市(13.4%)▽同函館市(11.5%)▽東大阪市(10.4%)。8割以上の自治体が督促状を送るなど法的措置を取っており、差し押さえも全国で634件あった。
厚労省は通知の中で「債権回収専門の課がある自治体などでは効率的な徴収ができている」と不公平解消のための対応強化を促している。一方で「滞納を理由として、子供を強制退所させたり、弟妹の入所を拒否することは法令上できない」と指摘し、経済的理由の場合は保育料の減免制度などを活用するよう求めた。【清水健二】
毎日新聞 2007年8月22日 19時56分 (最終更新時間 8月22日 21時22分)
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