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リニアから南アルプスの自然と大井川の水を守ろうとした静岡県川勝平太知事の偉大さ

川勝知事が知事最後にあたって非常に大事なことを言われていますので、長文ですが熊森の記録に残したいと思います。

以下は、SBS静岡放送5月10日発信ニュースからです。

 

静岡県の川勝平太知事は2024年5月9日、退任会見を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知事は「4期目の最大の公約は南アルプスの自然環境の保全と水資源の確保であり、それとリニア工事を両立させること」だったとして「一つの区切りがついた」と改めて辞職の理由を語りました。

<川勝平太知事>(2017年10月) 「工事によってメリットもない。すべてデメリットしかない。この工事を静岡県下ですることに対し、断固猛省を求めたい。考え直せということです」 これまで川勝知事は強い言葉でJR東海と対峙してきました。

2027年に開業を計画していたリニア中央新幹線は、東京と名古屋をわずか40分で結ぶ国家プロジェクトです。南アルプスをトンネルで貫く静岡工区をめぐっては、大井川の水の減少などを懸念して川勝知事は工事に同意せず、手付かずのまま。

2020年には、JR東海のトップ・金子慎社長(当時)が川勝知事に直談判しましたが、議論は進展しませんでした。国の有識者会議も報告書をまとめましたが川勝知事は態度を崩さず、JR東海の丹羽俊介社長はー。

 

<JR東海 丹羽俊介社長>(2024年3月) 「残念ながら品川~名古屋間の2027年の開業は実現しない」 2027年開業の断念。リニアの開業は早くとも2034年以降になります。

この発表の数日後に川勝知事は辞意を表明。そして、5月9日の最後の会見で「トンネル工事によって南アルプスの自然環境はマイナスの悪影響を受ける。黄色信号がつく」という認識を示し、「強引に進むのか、あるいは留まるのか、まさに岐路に立った」と強調しました。

 

また、リニア工事が静岡工区以外でも遅れていることをJR東海が発表したことにも触れ「不都合な事実の公表は、くさいものに蓋をする従来のJR東海の姿勢が一新された」と皮肉にも聞こえる表現で評価しました。 一方、JR東海は「開業時期に直結するのは静岡工区」との考えに変化はありません。

<川勝平太知事> 「4期目の公約にかかわる仕事に一つの区切りがついたと判断いたしました。水資源を保全するためにも、南アルプスの自然環境は保全しなければなりません。そこに住む私たちもそれは使命ではないかと思います。県民の皆様を信頼申し上げております

<川勝平太知事> 「4期目の最大の公約は、南アルプスの自然環境の保全と水資源の確保であり、それとリニア工事を両立させることでございました。辞職の理由と重なりますので、お別れの挨拶の最後にこの件について申し述べておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南アルプスは国立公園であります。昭和39年に国立公園に認定されました。それ故、その自然環境の保全は日本政府の国策でなければなりません。また、南アルプスはユネスコのエコパークに認定されております。従いまして、南アルプスの生態系を保全することは日本政府の国際的責務であります。

国の生態系に関する、いわゆる有識者会議が昨年暮れに最終報告書をおまとめになりました。それによりますと、南アルプス山中のトンネルの上を流れる沢・渓流は、工事によって例外なく水位が下がると報告されています。水位が下がりますと、水際に生きる生物などはそこに水が来ませんので、生死に関わる厳しいマイナスの悪影響を受けます。

また、工事で出る濁った水を透明にするためには、凝固剤の使用を報告書は提案されております。凝固剤を使いますと、水質は確実に悪化いたします。 この報告書の内容を一読いたしまして、一言で言いますれば、トンネル工事によって南アルプスの自然環境はマイナスの悪影響を受けると。言いかえますと、工事によって南アルプスの自然環境には黄色の信号がつくという認識を私は持ちました。

 

それでもなお、工事を敢行するということであれば、工事による南アルプスの自然環境への悪影響をいかに小さくするかが課題であります。沢の水位が下がることで死滅しかねない生物の保全などのために、有識者会議はモニタリング会議を提案なさいました。モニタリング会議は政府主導で今年2月に発足いたしました。モニタリング会議、その第1回会合、2月29日、2カ月前のことでございますが、基本方針がそこで確認されました。

 

そして、第2回会合が3月29日のことでございまして、その会合で丹羽氏を新社長とするJR東海は、南アルプストンネル静岡工区の事業計画について、これまで知られていなかったデータを公表をされました。世間はあっと驚きました。私も同様であります。いわく、高速長尺先進ボーリングに3カ月から6カ月、工事ヤードの整備に3カ月、トンネル掘削に10年、ガイドウェイ設置に2年という事実の公表でございます。

その数日後に、いわく、岐阜県は恵那市のトンネル工事に40カ月、すなわち3年と6カ月、長野県は飯田市の高架橋の工事に70カ月、すなわち5年と10カ月、山梨県は駅の工事に80カ月、6年と8カ月がかかるという公表をなさいました。

昨年までのJR東海の前の社長の体制の下では、一貫して静岡県の工事の遅れだけが繰り返し強調されていました。そのことからいたしますと、隔世の感がございます。今回の2度にわたる事実の公表で、静岡県のみならず、岐阜県、長野県、山梨県でも工事が遅れていることがはっきりといたしました。これらはいわば不都合な事実というべきものであります。くさいものに蓋をするといった感のある従来のJR東海の姿勢が一新したというふうに思われます。

不都合な真実とはいえ、正直に事実を有り体に公表された現在のJR東海の丹羽社長の姿勢には、感じ入っております。正直に勝る徳目はありません。正直な丹羽社長に対しまして、敬意を表するものであります。

 

さて、南アルプストンネル工事について、工事に要する年数を単純に足しますと、12年から13年ということになります。重なるということになると、11年というふうになっているようでありますが、しかも、しかしながら、それをモニタリングをしながら、言いかえますと、順応的管理で工事を進めるということです。順応的管理、すなわち工事中に何か問題が生じますと、もう一回その工事がよかったかどうかフィードバックして考え直して計画を立て直すということでありますが、こういうやり方が順応的管理というものであります。したがって、こういうモニタリングをしながらの工事となるとすれば、ここで挙げられている工事年数を超えることが十分に予想されます。それは何を意味するんでしょうか。南アルプストンネル工事自体に黄色信号が灯ったことを意味すると思います。工事をすれば南アルプスの自然環境に黄色信号がつくというのが有識者会議の最終報告書の内容だというふうに私は認識しております。

 

そしてまた、今回、工事自体にも最低10年以上かかるということでございますので、これも青から黄色に信号の色が変わったというふうに捉えております。信号が黄色になれば、道路交通法に従いますれば進んではいけませんけれども、中には強引に突っ込む方もいらっしゃいます。強引に進むのか、あるいはとどまるのか、まさに岐路に立ったということでございます。それをどうするかについては、モニタリング委員会の御見識次第であります。

 

 

私は以上のことをもちまして、4期目の公約にかかわる仕事に一つの区切りがついたと判断いたしました。これまでJR東海さんに対しまして、かなり厳しいことも言ったことに対しましては、改めて申し訳なく存じますけれども、同時に丹羽社長の正直な姿勢に改めて敬意を表する次第でございます。ご立派でした。

なお、2018年6月、今から6年前ですが、JRさんと静岡市との間で締結なさいました、いわゆる用宗・落合線の5キロのトンネル工事は6年、丸6年経ちました。現在、掘削すら始まっておりません。丹羽社長はぜひこの約束は、約束通り実行してくださるようにお願いをいたします。

 

富士山と南アルプスは、いわば父と母のような存在であります。この霊峰と赤石山脈とは、命の水を供給することで、静岡県民を、またそこに息づく生きとし生けるもの全てを何世代にもわたって養ってまいりました。水資源を保全するためにも、南アルプスの自然環境は保全しなければなりません。そこに住む私たちもそれは使命ではないかと思います。

県民の皆様を信頼申し上げております。私はこれをもちまして、ふじのくに、愛するふじのくにを後にすることになります。ありがとうございました。皆様方の御多幸をお祈り申し上げます」

 

 

 

 

コロナでリモートワークが広がり、リニアによる東京―大阪間の時間短縮の利便性を訴えておられた方々の主張が通らなくなりました。私たちはこれは南アルプスに穴を開けてはならぬという天の声だと感じました。

 

いったん走り出すと止められないというのは人間の悪いくせですが、南アルプスの自然や水を犠牲にしてまで造らねばならないものなど、この世にないはずです。いったん壊してしまった生態系は、もう二度と元に戻せませんから、リニア推進者の皆さんには、何とか目を覚ましていただきたいです。

 

川勝知事はいろいろと言われてきましたが、南アルプスと水を守ろうとして誰に何と言われようと頑張ってこられたことに関しては、誠に偉大な知事であり、後の世で必ず最大限に評価されるだろうと思います。

 

川勝知事に、心からお礼申し上げます。

 

静岡県で「クマ止め林」づくり!

熊森の会員がボランティアで頑張ってくださっています

 先日、「クマ止め林」を作ろう!という記事を公開しましたが(10月18日)、実際に静岡県の山でクマ止め林づくりに取り組んで下さっている会員の山路淳さんをご紹介いたします。 

静岡県の天竜川上流で広葉樹林化をめざす

(公財)奥山保全トラストの静岡県佐久間トラスト地での広葉樹林再生活動。衛星写真で茶色く見える部分は人工林を部分的に伐採したところ。

現場は、静岡県浜松市の公益財団法人奥山保全トラスト地が所有する佐久間トラスト地です。

(公財)奥山保全トラストは、熊森の自然保護活動から生まれたナショナル・トラスト運動を進める自然保護団体で、市民のみなさんからいただいた寄付で、生物多様性豊かな水源の森を開発されないように買取って保全する活動をしています。現在、全国に19か所、2346haの水源地の森を買取り、保全しています。

スギ・ヒノキの人工林率77%と山のほとんどをスギ・ヒノキにしてしまった浜松市では、野生動物の棲める生息環境はわずかにしか残っておらず、放置人工林の荒廃も深刻です。人工林地帯である静岡県では、ツキノワグマは絶滅危惧種に指定されています。

奥山保全トラストが所有する294haの佐久間トラスト地も3分の1がスギ・ヒノキの人工林です。ここでは、地元森林組合や日本熊森協会のボランティアに協力いただきながら、クマをはじめとする野生動物の生息地の回復や、保水力ある災害に強い森をめざして、スギ・ヒノキを伐採し、広葉樹林再生活動を積極的に行っています。

 

くまもり会員によるクマ止め林づくり

佐久間トラスト地の一角で、熊森協会の会員の方による動物のえさ場となる森づくりが進められています。

十数年に亘り、ご夫婦でボランティアでご協力くださっているSさんご夫妻の熱意に触れて参加されるようになったのが山路さんです。

山路さんにクマ止め林づくりにかける思いをインタビューしました。

(山路さんが伐採しているスギ・ヒノキの林。伐採したことで光が入るようになりました。)
 

くまもり活動にかける思い 

茨城大学 理学部卒業後、静岡県西部で、高校の理科非常勤講師をしながら、ゴミ拾いや耕作放棄地の草刈りなどの環境活動に取り組んできました。

7年前に林業に転職。現在、中田島砂丘の海岸林整備、春野町、愛知県新城市の里山再生、広葉樹林化。竹林再生プロジェクトで、浜松市天竜区、中区の竹林整備を進めています。 海から山まで、総合的な環境保全の必要を考え、研究活動を行なっています。

 

熊森との関わりは、Sさんご夫妻のお宅の竹藪を整備して、沢沿いの眺め良くしつつ、孟宗竹の伐採技術の開発をしたことがきっかけで、熊森協会の存在を知り6年。奥山保全の重要さを改めて再確認して、入会しました。

人口減社会で、林業を続けるのが困難な場所を広葉樹林に戻していくことは、野生動物の保護だけでなく林業の今後の発展にも必要だと思い、活動に参加しています。

現在、ツキノワグマなど市街地の出没で騒動の中にいる人たちに、奥山の重要性について少しでも知ってもらいたいと思っています。

野生動物の聖域として保全しているトラスト地に立つ看板。Sさんご夫妻の思いのこもった動物たちのポスター。とてもキュートですね。

 

共生の場をつくりたい
 

かつてくまもりが植樹した場所。すっかり植物に覆われ地面が見えない。苗木も順調に育っている(2019年11月撮影)。

 現在、佐久間トラスト地でスギ・ヒノキの伐採や広葉樹の保護、生育調査を行っています。今後は、トラスト地全体の調査と適切な生態系保全に向けての簡易土工の実施をしていきたいです。

尾根伝いのスーパー林道の傍(最初の写真)は随分と明るくなりました。
栗の木が生えているので、それを避けて伐採を進めるのは難儀ではありますけど、広葉樹とスギ・ヒノキが混交する森を、作ること。
そのための高度の伐採技術を、地元の人々に見せていきたいです。
熊止めの森。人間と野生動物の共生の場を作っていくこと。そこは死ぬ気でやらざるを得ません。

 

山路さん、Sさんご夫妻、いつもありがとうございます。 奥山保全トラストや日本熊森協会の活動は野生動物との共存を願うたくさんのボランティアのみなさんに支えられています。

浜松市のクリハラリスたちの命を守ってやりたいのです

本部に以下のような相談が寄せられましたので、みなさんと共有したいと思います。

わたしは静岡県浜松市のくまもり会員です。

浜松市では、公園や緑地などでクリハラリス(通称タイワンリス)が放し飼いにされており、すっかり野生化しています。私もその一人ですが、その姿や仕草に心癒やされている市民も多くいて、すっかり地域の風物詩になっています。今やクリハラリスはアイドル的存在です。

浜松城公園で撮影したクリハラリス(尻尾を入れて30~40~センチ)

このリスたちは野生化してすでに半世紀近く経っています。浜松市はこれを観光資源として利用してきました。

その数、推定1万5千頭(浜松市のみ)だそうです。

しかし、今年度5000万円の予算が組まれ、このリスたちが、浜松市によって根絶殺害(=ゼロになるまで殺し尽くすこと)されようとしています。

理由は、

・外来種だから。
・家庭菜園の果物を食べるから。
・家の戸袋をかじるから。
・在来種のニホンリスを脅かすかもしれないから。
だそうです。

自分たちの楽しみのために海外から連れてきて利用しておいて、都合が悪くなったらいきなり全部殺す。私は、とてもではありませんが、はいそうですかと賛同はできません。あまりにも人間勝手ではないかと感じております。

賛同できない理由を、以下の6点にまとめました。

①コロナ禍にある今、やるべきことなのでしょうか

5千万円もの予算があるなら、今大変なことになっている人命を救うべきです。

②大きな哺乳類を大量に殺すことに対する市民感情を考えてください

リスはかわいい哺乳動物です。捕獲作業に当たる人間も、目の前で捕獲されていくリスを見ることになる市民も、その心的負担は相当なものになるはずです。子どもたちは間違いなく胸を痛めるでしょう。

③クリハラリスを根絶しても問題は解決されない

家庭菜園のミカンやビワを食べたり、家の戸袋をかじったりする。林業に影響が出るかもしれない。ある程度はそうだろうと思われます。

しかし、それは、ニホンリスをはじめ、他の野生動物たちもすることです。ミカンやビワなどは、カラスもスズメもネズミも食べています。全部殺さねばならなくなります。法的には許されないでしょう。

緑地近郊で暮らしたり、農業を業とするには、ある程度は避けて通れないリスクの一つではないでしょうか。


④在来種のニホンリスと本当に競合するのですか

クリハラリスのほうが体が大きいから、ニホンリスを駆逐するのではないか、ニホンリスを守るためにクリハラリスを根絶しなければならないと言われます。しかし、クリハラリスは南国出身であり、基本的には寒さが苦手です。浜松市北部の山中へ進出して先住民であるニホンリスを駆逐するとは限りません。したとしても、ある程度は限定的なものになる可能性も考えられます。

大陸から来たコウベモグラはアズマモグラより体が大きいが、競合することなく、自然環境の違いに合わせてうまく棲み分けています。種類の多いコウモリなども、実に、環境の違いによってうまく棲み分けています。

⑤第一、根絶などできないです

クリハラリスは静岡県だけでなく、すでに12都府県で生息しています。小さな島や半島の先ならいざ知らず、広い大地で自然環境を残したままの根絶殺害は不可能ではないでしょうか。根絶殺害を施したつもりでも少しは見逃しが出るはずです。その結果、気が付くと再び元の数に戻ってしまっている、この繰り返しになると思われます。このようなことのために、多額の税金を投入することは、費用対効果の面からも問題です。

外来種問題は、まず、外来種の輸入を止めること。すでに国内で大量に繁殖してしまっている外来種は、もう、新たな可能性として受け入れるしかないというのが世界的な流れになってきています。現在、在来種とされている動物でも、元をただせば外来種であったものがとても多いのです。

⑥対策の提案

諸外国でも外来リスが問題となっているところがあるようですが、アメリカなどは数の低減をめざして避妊ワクチンや生殖力減衰エサなどで対応している例もすでにあります。
浜松市もこうした動物福祉に沿った先進的な手法で問題解決をめざせないでしょうか。こちらの方が、圧倒的に市民からの賛同も得られやすいでしょう。


このコロナ禍の中、多くの国民が声をあげたことで、チャーター機が無料化されるなど、国が姿勢を変える場面を何度か見ました。クリハラリスの問題も国民が声を上げれば、変わるのかもしれないと知るいい機会でした。
リスのこと、クマのこと、自然のこと、私たちが声を上げることによって、今や罠や銃の前で完全弱者である地球のなかまたちを助けてやれないでしょうか。命を大切にする文明を取り戻せないでしょうか。何とかかれらとの共存をめざしたいと思います。

ご賛同いただける方は、浜松市に柵や網で果樹被害を低減させたり、海外のように避妊去勢策をとったりして、クリハラリスの命を奪わない対処法をとってほしいと一緒にお願いしていただけないでしょうか。他にもいいアイディアがあれば、ぜひ、浜松市にお伝え願います。

(要望先)

・浜松市役所 鈴木康友市長 〒430-8652 浜松市中区元城町103-2

市長へのご意見箱 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/cgi-bin/simple_faq/form.cgi

広聴広報課電話番号:053-457-2021ファクス番号:053-457-2028

熊森注:担当部署には決定権がないので、要望先から外しました。

・環境省 自然環境局  野生生物課 外来生物対策室
電話03-3581-3351(代)

 

 

 

 

 

 

浜松城公園の森を臨む

 

 

 

 

クリハラリスの生存を支える浜松城公園内の自然豊かな森の中

・クリハラリス根絶殺害の開始を伝える新聞記事

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200327-00010013-satvv-l22

熊森から

今回のクリハラリス根絶殺害は、浜松市が考えたことではなく、日本哺乳類学会(茨城県つくば市にある国立研究開発法人森林総合研究所内に事務所)に属する一部の外来種根絶派の研究者たちの脅しともいえる要望書に、行政が屈して実施するものだと思われます。

 

<クリハラリスの根絶殺害を要望する日本哺乳類学会からの要望書>

2019年11月15日 熊本県知事・宇土市長・宇城市長宛て

2019年11月15日 神奈川県知事宛て

2017年12月12日 環境大臣・農林水産大臣宛て

2016年11月29日 静岡県知事・浜松市長宛て

2010年1月4日 熊本県知事・環境大臣・農林水産大臣宛て

 

確かに、大学の偉い先生方に、いますぐ外来種を根絶殺害しなければ大変なことになると専門用語を使って脅されたら、行政は人間として、そんな無茶なそんなかわいそうなと本能的に思うものの、専門知識もなく他に情報源もないため、震えあがってしまうのも無理のないことだと思います。

 

大人たちは思っていても口には出しません。まさに、裸の王様です。「外来種を皆殺しにするなんてまちがってるよ」という子供の声が、今こそ日本社会に必要です。

 

歴史は、専門家の判断が時には間違うこともあることを示しています。外来種根絶思想は、専門家たちが専門性を高めるために小さな穴の中にどんどん潜って行ったことによって、全体や他生物の命の貴さが見えなくなってしまったことで生じた誤判断ではないでしょうか。

 

まちがい1 倫理上完全にアウト

外来種が入ってきて在来生態系のバランスが変化するのを好まない研究者たちの気持ちはわかります。しかし、現在の外来種根絶政策は、そのような外来動物を輸入してもうけようとした人、輸入を許可した国、売った人、買った人、逃がした人、これら人間の責任を一切追及することなく、無理やり日本に連れて来られた哀れな被害者である外来種に全責任を負わせ、彼らの命を奪って終わろうとしています。これは、倫理上、完全にアウトです。恐ろしい思想だと思います。予算の5000万円(うち1200万円は環境省からの交付金)は、捕殺業者にわたすお金だそうです。

 

自然保護団体などの輸入を止めろという声で、現在やっと、植物も含めて148種の特定外来生物の輸入が止まりました。しかし、一方で、2000種以上の外来生物の生体輸入が今も続いていると聞きます。

 

昨年度、動物実験を廃止する会(JAVA)が取り上げたエキゾチックアニマル展示販売会問題に熊森も賛同し、環境省にこのような販売会を禁止するよう申し入れました。しかし、環境省は、職業は自由であり、特定外来生物種のリストに入っていない種の販売は違法ではないとして動きませんでした。今売られている外来種が、いずれ野に出て繁殖し増えて特定外来生物種になることは十分に考えられます。環境省は、蛇口をまず止めないとだめです。

 

 

まちがい2 外来種の根絶は不可能で、無用の殺生となるだけ

私たちも、在来生態系を守りたいと思っています。しかし、いったん野で繁殖してしまった外来種を根絶することはもはや不可能なのです。取り返しのつかない問題です。北海道では平成11年からアライグマ根絶事業が始まっていますが、北海道の気候がアライグマに合うのでしょう。殺しても殺しても生息域は拡大の一歩。あれから20年以上たちますが、頭数的に増えたか減ったかさえつかめないということです。これまで全国で殺してきたおびただしい数のアライグマの死体の山を想像すると、ぞっとします。根絶殺害は一体何だったのでしょうか。自然界をコントロールしようという人間たちのおごりがもたらした残虐行為ではないでしょうか。

 

大量に殺害しても、しばらくすると再び増えて環境収容力に合わせた元の数に戻ってしまうため、それまでの殺害が無用の殺生となります。行政はもういい加減に気づいてほしいです。

 

早稲田大学の池田清彦名誉教授のように、専門家でありながら、外来種根絶政策を無意味と批判しておられる方もいます。現在、外来種根絶派の研究者たちと環境省がつながっているので、こんな漫画のような理不尽で残酷な政策が全国でまかり通ってしまっているのです。

 

当協会がドイツの自然保護団体を訪れたとき、ドイツでは50年以上野で暮らす外来種は在来種とみなすということでした。ドイツのアライグマは50年以上たっているため、アライグマを組み込んだ生態系がドイツの新生態系とみなされるのです。合理的だと思いました。

 

日本哺乳類学会からの要望書が来ても乗らず、手間がかかっても、殺生しない解決法をめざす毅然とした命に優しい地元行政であってほしいです。

 

尚、浜松市の会員さんは、クリハラリスに関して膨大な資料や専門的な文献を集めておられます。今後、避妊ワクチン導入などの代替案を早急に出していかなければなりません。一人では大変なので何人かの方につながっていただきたいです。(完)

取り返しのつかないリニア 過去のトンネル工事による水涸れ情報続々掲載 静岡新聞に大拍手 

山にトンネルを掘ると、高い圧力下に封じ込められていた水が噴き出すのは、多くの人が知っていると思います。

その結果、トンネル工事によって取り返しのつかない国土環境破壊が引き起こされるのですが、これまでは、経済や便利さが優先され、ほとんど無視されてきました。

 

以下、静岡新聞9月1日が取り上げた、過去のトンネル工事による様々な水枯れ例から、2つを紹介します。

 

(1)100年前の東海道線丹那トンネル工事に伴う水涸れ

 

トンネル工事を巡る補償問題は全国各地で発生し、被害を受けた住民が対応に苦慮した事例は多い。県内では約100年前の東海道線丹那トンネル工事に伴う水枯れが有名だ。

 

函南町誌や鉄道省(現在の国土交通省やJR)の資料によると、トンネル真上の丹那盆地(函南町)はワサビを栽培できるほど水が豊富だったが、工事の進行とともに地下水脈が変化し、盆地内に水枯れが広がった。

 

飲料水に支障が生じるほどで、住民は鉄道省にたびたび救済を訴えたが、同省は当初、関東大震災の地下変動や降雨量減少のせいだとして本格調査に応じなかった。約10年で多額の補償を得たが、配分を巡って集落間で対立し、住民の襲撃事件にも発展した。同町の資料には「覆水盆に返らず」と記されている。

 

 

(2)20年前の新東名高速道粟ケ岳トンネル工事に伴う水涸れ

 

新東名高速道建設中の1999年、掛川市の粟ケ岳トンネル工事中に出水が発生した。間もなく周辺の倉真地区で農業用水を採る沢が枯れ、東山地区では地下水を源とする簡易水道が断水した。

「切れたことのない沢が突然、2キロくらいの範囲で干上がった。驚いたし困ったよ」

粟ケ岳北麓で沢の水を使って茶園を営んでいた60代の男性は、当時のショックを振り返る。

 

着工前、日本道路公団(現中日本高速道路)の説明会が開かれたが「水枯れの可能性の話はなかった」と男性。断水後、地区の要望を受けた公団は、トンネル内の止水工事に加えて別の川から茶園へ約2キロの引水管路と中継ポンプを設ける補償的措置で応じた。

 

ただ、完成した管路は水が出ず、男性は不具合を訴えたが結局1度も使えなかったという。止水の効果も限定的で、男性は水を確保する負担と茶価安から生産を断念。金銭補償を求めて5年ほどたった昨年、中日本高速道路とようやく補償が成立した。

 

熊森から

 

静岡新聞さま、リニアのどうしようもない負の面を伝えて下さってありがとうございます。大拍手です。こんな新聞なら購読したいです。

 

南アルプスの貴重な生態系を守るため、静岡新聞だけではなく、全国のメディアが、リニア工事の不都合な真実を伝えてください!マスコミが真実を伝えさえすれば、多くの国民は、リニアなんていらないと言い出すと思います。

 

トンネルを掘れば、水脈が失われたり変わったりするのは当たり前です。人間は声を挙げられますが、自然界は声を挙げられません。全国各地で道路や新幹線のトンネル工事が続く今、地元の人たちや自然界、他生物が泣いていることを、全国民が知らねばならないと思います。

 

水源の森を干からびさせてまで、また、多くの野生生物を死に追いやってまで、今以上、便利になる必要はあるのでしょうか。もう十分便利です。これ以上の便利さを追い求め、国土を開発し続けるなら、自らを生かしてくれている大地を失うことになります。あまりにも愚かです。

 

今からでも遅くない。南アルプスにトンネルを貫通させるなど、クレージーの一言です。

リニアに賛成の方は、クマをはじめとする南アルプスの動植物をどこに移住させるのか、教えてください。移住先などどこにもないはずです。

 

リニア大井川問題、全量回復を事実上撤回 JR「約束ではない」

以下、静岡新聞2019.8.30より

 

リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川流量減少問題で、JR東海の新美憲一中央新幹線推進本部副本部長は29日、昨年10月に同社が表明したトンネル湧水の全量を大井川に戻す方針に関し「約束ではない」との認識を示した。全量回復とした当初の方針は「工事完了後との認識だった」と釈明し、工事中を含むトンネル湧水の全てを大井川に戻すとする方針を事実上撤回した。

 

静岡県庁で開かれた利水関係者との意見交換会後に記者団の取材に答えた。新美副本部長は「その時点(昨年10月)で工事中、工事完了後など、細かいところまで詰めて話をしていなかった」と説明。全量回復の具体策について「私の頭には浮かんでいない。これ以上はノーアイデアだ」と述べた。一方でトンネル湧水の県外への流出量を減らす努力は、引き続き検討する考えを示した。

 

流域市町や利水団体は「全量」には、工事中に発生する湧水も含まれるという認識で「約束が守られていない」(大井川土地改良区の内田幸男理事長)と不信感を募らせている。利水関係者とJRとの今後の協議に影響する可能性もある。

 

JRは昨年10月、利水団体との基本協定案で「原則として静岡県内に湧出するトンネル湧水の全量を大井川に流す措置を実施する」と明記。金子慎社長は昨年11月の記者会見で協定案の「原則として」の削除も可能との認識を示したが、29日の都内の記者会見では「(意見交換会で)技術者が丁寧に説明しているので(私の)説明は控えたい」とした。

 

全量回復の方針に関しては、愛知県の大村秀章知事が「JRは全量返すから影響ないと言っている。次に何があるのか」と発言し、本県の対応を批判する根拠にもなっていた。

 

 

熊森から

 

工事中を含むトンネル湧水の全てを大井川に戻すことなどできないとJRが正直に言ったのですから、南アルプスにトンネルを掘る計画はこれでもうおしまいです。

 

リニア工事は取り返しのつかない国土大破壊です。何度考えてみても、この工事は日本国が滅びることを願っている人たちの策略としか思えません。

 

南アルプスに穴をあけて新しく人工水脈をつくってはならないのは、健康なじぶんのお腹に穴をあけて人工血管を取り付けてはいけないのと同じです。

 

とんでもないことをしてしまったと後で気づいても、もう元の体には2度と戻せません。

国民は、リニア中央新幹線と南アルプスの森と動植物の生存、どっちを取るのか 第15回口頭弁論

熊森は、毎回上京して、ストップ・リニア訴訟の口頭弁論を傍聴し続けています。

 

<7月19日第15回口頭弁論>

 

(1)原告適格についての陳述(関島弁護士)

ストップ・リニア訴訟では、800名ほどが原告として登録しているが、行政訴訟で、原告として認められるためには、リニア建設によって直接的な不利益を被ること示す必要がある。

 

しかし、被告である国交省とと参考人であるJR東海は、詳細の工事計画(ルートや建造物、残土置き場の地図)を提出しないため、いまだ原告適格を定めることができない。リニアがどこを走るのか、2500分の1の縮尺の地図を次回、提出するよう求める。

 

(2)環境影響評価アセスメントについての陳述(横山弁護士)

いまだにJR東海が、どこにどのような建造物を造るのか、残土はどこにどう置くのか、確定できていないものが多々ある。国は一体JR東海が行ったリニア環境アセスのどこを見て妥当と認可したのか。

 

東京地裁前第15回集会

 

(3)口頭弁論後、衆議院第2議員会館でシンポジウム

 

県民の水源である南アルプスを守るため、JR東海との議論を重ねている静岡県から

リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク共同代表の林克氏

南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク共同代表の松谷清氏が報告

 

静岡県は、JR東海の無謀で不誠実な計画に対抗し、2014年より中央新幹線環境保全連絡会議を設置。

難波静岡県副知事が国土交通省出身ということもあり、JR東海が行っている環境影響評価の問題点を指摘し、徹底した評価と対策を求めている。

大井川の流量減少問題で、静岡県と流域の8市2町11の利水団体が2018年に「大井川利水関係協議会」を発足させ、川勝平太静岡県知事に大井川の流量確保と水質保全対策の徹底をJR東海に働きかけるよう要望書を提出。

これが、静岡県がリニア問題に力を入れるきっかけになった。

 

ストップ・リニア訴訟の橋本事務局長のことば

リニア工事により各地で水枯れが起きている。JR東海は、南アルプスに生息する希少生物は“移植する”から大丈夫といっている。

リニア問題は、南アルプスを守ることを目的として活動を進めていくことが重要である。

 

シンポジウム会場

 

熊森から

 

南アルプスは、太平洋側で唯一まとまって残された最後の原生林であるため、クマをはじめ多種多様な生物たちが生息しており、わたしたち人類の生存と全産業を支える水源の森です。

 

リニア大深度トンネル工事による谷川の水涸れ状況の報告を聞いて、私たちは子供たちに南アルプスとリニアのどちらを残すのか、もう決断しなければならない時だと思いました。

 

日本熊森協会としては、南アルプスの貴重な野生動物であるクマが、森の乾燥化によって南アルプスで生きられなくなった場合、JR東海はどこに移住させてくれるのか、公開質問状を出して、言質をしっかりととっておきたいと思います。

日本に、野生動植物を移住させられる生物空白地帯など、どこにもないのは明らかですが。

 

今回のシンポジウムに韓国からの留学生が出席。リニア問題のドキュメンタリーを制作するとのこと。「私は日本の自然が大好きです。それがリニアによって失われるのがとても悲しい。」と言っていました。

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