「アメリカで自分の臼と杵を使って家族で餅つきをしたい」
さして壮大ではない、ささやかな夢が先日ついにかなった。
私は現在、家族とアメリカに住んでいる。日本に住んでいた頃は子どもの通う幼稚園で餅つき力をかなり鍛えられ、米国移住後も日本人コミュニティの餅つきリーダーとして、アメリカにいながらも餅つきをする機会に恵まれてきた。
アメリカで仲間や家族とわいわいと餅つきをするうちに、自分の臼と杵が欲しい、という希望がおさえ切れなくなってきた。幸なことに収納スペースには欠くことがない。が、どこで買って、どうやってアメリカまで臼と杵を運ぶのかが大きな問題だ。さんざんネットで調べたものの、海外在住者が日本で購入した臼と杵をアメリカまで運んできたという具体的な話は一切みつからなかった。昨年の11月から臼の製造販売店に問い合わせを開始し、半年ほどかけ、ようやくこの度、自分の臼と杵をアメリカの自宅にむかえることができた。同じ希望を持っている方もいるかもしれないので、このエントリーでは、アメリカで臼と杵を入手するための必要な手順を私の経験を元に共有したい。
臼と杵の製造販売店を探す
購入した臼を海外まで配送してくれる臼の製造販売店があるとベストなのだが、残念ながら私が7〜8店に問い合わせた限り、そういうお店を私は見つけることができなかった。そういう問い合わせが多いのか、「海外へは配送できません」、とウェブに記載しているお店も少くない。
なので、海外の顧客に対して臼と杵を販売した経験のあるお店を見つけることが第一ステップとなる。配送の手配まではしてくれなくても、配送業者のやりとりの経験があったり、海外での臼のメンテナンスの知見のあるお店が心強い。
私は、この度三喜木材店様から購入をしたが、私と同様に海外に在住しており、臼と杵を購入したいという方がいたら、三喜木材店様を強くオススメしたい。理由は、
- フランス、ドイツ、そしてアメリカに住む人に販売した実績と経験がある
- 出荷後メンテナンスができないという海外在住者の状況を考慮し、フチの部分を厚く作り、割れにくく製作するなどの配慮をしてくれる
- 問い合わせた全店の中で、対応が最も誠意があふれ、また臼と杵への愛情もあふれている
など、あげればきりがない。一連の手続きで、「こ、これはもう無理か、、、」と途方に暮れることも多かったが、三喜木材店様の誠意ある対応に何度助けられたことか。作ったものをただ売るというのではなく、海外で自分の臼と杵でもちつきをしたいという私の夢にのっかり、それを親身にサポート頂いた心意気が何よりも嬉しかった。もちろん、日本国内にお住まいの方にも強く勧めたい。
臼と杵をアメリカまで運ぶ
臼と杵を入手する上で、最大のチャレンジは輸送である。日本に住む家族に、かつお節や塩昆布を送ってもらうのとはわけが違う。総重量が100kgほどの巨大な物体をはるばる日本からアメリカまで運ぶかが、解決しなければならない最大の問題だ。私が調べた限りは主に二つのやり方がある。
- 海外に引越しをする人の、引越荷物と一緒に輸送してもらう
- 臼を海外輸送できる業者に頼む
個人的に調べた限りでは、前者のほうが一般的らしい。私の知人でも家族のアメリカへの引越にあわせて臼と杵をアメリカまで送ってもらったという方がいた。
生憎私はそういう知人もいなかったため、今回は日本通運様の国際航空輸送サービスを利用した。日本を代表する大企業にとっては取引として小さすぎたのか、対応が必ずしもよくなかったが、いざ輸送作業に入ってからは、国際便なので数日で届き、かつ通関などの諸手続きもスムーズにこなしてくれたのはさすが。作りたての臼はデリケートなので、信頼できる大手に確実に送ってもらうというのは結構大事だと思う。
今回は母に輸出者になってもらい、諸手続きは基本的には私自身が対応した。臼の製造販売店が輸出者となると関税などのややこしい問題が発生するので、家族や知人に輸出者になってもらい、その人がアメリカに臼と杵を送るという形式をとったほうが良い。
また、日通様を利用する場合は、こちら側がパレットにのせてフォークリフトで日通様の輸送車に積み込まないといけないというややこしい制約があった。当初は実家に日通様に集荷にきて頂くことを想定していたが、実家にフォークリフトなどあるわけがないので、日通様に直接三喜木材店様まで集荷にいって頂き、輸送車への積み込みの部分は三喜木材店様に対応頂いた。輸送物が巨大であるため、集荷の際の条件などを物流業者とよくよく事前につめて、その内容を見積りに反映してもらうことが必要だ。
私の場合は、三喜木材店様までの集荷、輸出規格に適した梱包作業、輸出書類作成費など、当初の見積もりに含まれていなかった想定外の費用が発生し、輸送料は当初の想定を大幅に上回るものとなってしまった。船便を使った海外引越し業者に依頼をするなどの方法のほうがより経済的である可能性は高い。
おわりに
2017年11月5日から色々実際に問い合わせを開始し、実際にわが家に到着したのは2018年4月13日。トータルで半年のビッグプロジェクトになってしまった。長くかかってしまった理由は、臼と杵の製造販売店に注文が殺到する年末に発注をしてしまったので、製造が完了するまでに時間がかかってしまったことと、発送依頼をしてから実際に発送作業に移るまで、上述したあれやこれやの追加事項について、時差をかかえて日通様と往復書簡を繰り返し、時間を要したことにある。
そんなこんなの苦労はあったものの、どうにかこうにか臼と杵を日本からアメリカに運ぶことができた。この週末、念願のマイ臼と杵を使っての餅つきを、アメリカの自宅で家族と楽しむことができて、感無量であった。このエントリーが海外に住んでいる方で、自分の臼と杵が欲しいという変わった希望を持つ方の少しでも参考になれば、嬉しさもひとしおである。
なお、わが家に到着してからも別のドラマがあったりしたわけだが、それは別のエントリーで紹介したい。