テクノロジーの進歩とインターネットの浸透により、従来であれば大企業しか持つことのできなかった情報システムを中小企業も活用できるようになってきた。Sugar CRMのようなOpen SourceのCRMツールもあれば、Salesforce.comのようなSaaSのCRMツールもあり、ともにSiebelのようなパッケージツールよりはるかに安価で活用が可能だ。
では、中小企業にとっては、Open Sourceを活用し、自らシステムを構築するのと、外部の会社からSaaSという形で提供してもらうのとではどちらがよいのだろうか?"Open source vs. SaaS - what SMBs should know”というエントリーがよくまとまっており参考になるので、そこでの論点を紹介してみたい。
コスト
小規模の企業が短期間でシステムを導入しようとすれば、コスト面ではSaaSに軍配があがる。一方で、複数のアプリケーションを20名以上で使用するのであれば、Open Sourceのソフトウェアを自社に導入してしまった方が安くあがる。ただ、Open Sourceのソフトウェアの自社導入には、サーバーやその設置場所だけではなく、メンテナンスのために1システムあたり年間300万程度の人件費がかかることに注意が必要だ。
導入期間
導入期間について言えば、圧倒的にSaaSのほうが短い。複数のアプリケーションであっても、ものの数日で利用可能になるし、一旦使用してみたサービスを他のサービスにきりかえるのにもそれ程時間はかからない。
中には、SaaS版で使い始め、後からOpen Source版に切り替えるというソリューションが提供されているソフトウェアもある。
カスタマイズの容易さ
カスタマイズの容易さについて言えば、圧倒的にOpen Sourceに軍配があがる。高スキルの開発者を確保し、自分で開発することもできるし、ソフトウェアライブラリーを活用することも可能である。
一方でSaaSの方もプロフェッショナルサービスやオフショア開発などを活用することができるので、カスタマイズの敷居は徐々に下がってきてはいる。
可用性
可用性について言えば、自社で大きなデータセンターを保持するケースなど殆どない中小企業にとっては、SaaSは非常に魅力である。時として使用不可能になることもあるものの、自社での運用と比較すると圧倒的に高い可用性をSaaSは提供してくれる。
データの機密性とシステムが無くなる可能性
データの所有者の考え方は基幹システムについて言えば、殆どの場合は使用ユーザになるため、Open SourceもSaaSも差はないが、自社の機密データが外部の会社の目にさらされることを嫌う企業ではSaaSの使用は難しい。
また、Open Sourceであれば一度導入してしまえば、ソフトウェアそのものがなくなることはないし、某かの形でコミュニティの活動も継続されていくので、システムがある日急に使用できなくなるということはない。一方でSaaSの場合は、そのサービスを提供している会社がある日倒産してしまったら、データも含めて急に使用できなくなってしまうという危険性が存在するため注意が必要だ。
鋭い方から突っ込まれそうなので、最後に言っておくと、タイトルにつけておきながらなんだが、"Open Source vs SaaS"対比は適切ではない。Open Sourceというのはソフトウェアの開発手法であり、SaaSというのはビジネスモデルであるからだ。もちろん、Open SourceソフトウェアをSaaSの形で提供することは可能だ。
というようなつっこみどころはあるが、半歩先を行っているアメリカでは"Open Source vs SaaS"というテーマでかなり盛り上がっている。個人、中小企業のエンパワーメントでみると両方とも大事なテーマ。今後も注目してみていきたい。