フランスで「潜在テロリスト1万人以上」っていうけど、その基準だと日本には30万以上いるんだよなあ(修正あり)
一部報道でしょっぱい内容が出ていて、マジかよ的は反応も多数あったようですけど…。
仏、1万人超が潜在的テロ容疑者リストに
http://www.afpbb.com/articles/-/3066934
このあたり、国情や国民の気質などでも随分違うわけですけど、少し前(2010年ちょい前)ぐらいに聞いた内容が正確ならば、フランスがいう「潜在的テロ容疑者」として情報機関が把握する「閾値」が低く設定されていて、これをそのまま日本に適用すると暴力団構成員約38,500名や、フランスのいう特定カルト信者15万名あまりも「潜在的テロ容疑者」になってしまい、日本だけで30万人以上のテロ実行犯候補がいるという話になってしまうわけです。
もちろん、国内で帰化された方や特定永住者のほとんどは穏やかに日本社会に溶け込んで肩を並べて生活しているわけで、ある種の「何か事件のあるたびに、突然不寛容になってしまう過剰なショック対応」というのは有害以外の何者でもないのではないかと思う次第。
一方で、ヨーロッパからすると日本は情報部門が弱体で要員も少なく持っている情報が少ないと指摘されることになるわけですが、彼らが日本を「スパイ天国」と揶揄する割に、サイバー攻撃を除くインシデントが欧州に比べて日本は極端に少ないのはいわゆる社会の「末梢神経の強さ」だと思っております。フランスみたいに誰だか分からない人がパリ中心部で堂々とアパートを借りて、資金源が良く分からないという状態は日本ではそこまで多くないわけです。
良く海外の人たちから、日本は官邸周辺が危ないと何度も言われます。簡単な話、官邸のある溜池山王からわずか外堀通りを一本挟んだ赤坂は日本人や韓国人のひしめく歓楽街であって、指定暴力団の事務所があり、赤坂プチエンジェル事件から裏カジノまで違法行為が横行しているとかねてから問題視されている地区です。これがアメリカやフランスのハザードマップに照らし合わせれば、そこからちょっとした迫撃砲を官邸や議員会館に直接打ち込める、ダークレッドエリアであることは言うまでもありません。
でも、日本の当局は「お前ら朝鮮人だから」とか「ビルオーナーが怪しいから接収」というようなことはしません。朝鮮総連の建物ひとつどうにかするのに、情報機関の元トップが暗躍し損ねて訴えられるとか、程よいレベルを通り越した微妙な感じを醸し出しているのが日本社会なのです。
そういう状況であるにもかかわらず世界にも類を見ない一般社会のダントツの安全性と、たまに起きる襲撃や不審死と隠蔽ってあたりは日本社会の特徴であって、たぶん、この社会に慣れすぎているとフランスやロシア、シリア、レバノン、南スーダンあたりで起きているテロや事件をありのまま把握し解釈する能力など持ち得ないのは当たり前のことだろうと思うわけです。平和ボケ云々というより、日本が文化的に特殊であり、逆に危機慣れしているのでありまして。
私は、火山や地震、台風、高潮・津波といった、他の国ではちょっとお目にかかれないぐらい頻繁な自然災害と、あれだけの東日本大震災が来てあれだけ結束だ絆だと騒いでも3年もすれば忘れるような社会的な強さ(あるいは鈍感さ)が他の国で起きていることに対する感受性を歪めているのかもしれないと思うわけです。ぶっちゃけ、もしもフランスで東日本大震災があって原発が飛んだら革命でも起きて政府が体制ごと崩壊してるんじゃないかとまで感じるんですよ。もちろんテロの被害にあったことに対して同情もするし、非道なテロについては屈服するべきではないと思うんですけど、リアクションとしてもう少しやりようは無かったのかと思ってしまうぐらいのことです。
なので、日本人にはもっと海外を見たほうが良いという論評が出るのは良いと思います。日本って、本当に特殊だと感じるからです。いろんな国もいろんな国なりの特徴や良し悪しはあると思うんですけれども、戦前も戦後も日本人の凄さや特殊性って外から日本を見れば嫌と言うほど感じます。
仏パリで犠牲者120名以上に祈りを寄せる日本人、レバノン、ロシアなどにも祈ってあげてください
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20151116-00051524/
昨日、この論考を投げて、多くのご共感をいただきましたが、幾つか頂戴した批判の多数は「日本の神風は神聖であって、相手の軍事施設しか攻撃していない。ISIS(イスラム国)のテロはソフトターゲットであって、あれはkamikazeではない」とか平気で言ってくるわけです。
簡単な話、相手がハードターゲットであれソフトターゲットであれ、若い兵士を死なせる目的で敵を傷つけようとするメンタリティ自体が自爆攻撃と同様の嫌悪感を持って「kamikaze」という単語で欧米では一般化しているわけで、日本の神風は神聖で、ISISのkamikazeはクソだという議論を平気でできちゃうあたりが凄いんですよ。
こういうのを見ていると、日本は日本国内での議論と、外向け、海外での議論とが別れてしまっていて、日本では通用する議論が海外では理解されないという点では従軍慰安婦を含む戦後補償がいまなお燻るのも分かる気がします。それは、日本の主張を海外に理解されるよう正しく翻訳する必要があるという意味であって、日本人の言い分がうまく海外に伝わらないことで随分日本にとって不利なことがたくさんあるぞと思うんです。
中国みたいに、国際社会全体から「お前が言うな」と言われるような感じで国内の都合を海外向けに出すのもどうかと思うんですが、一方で日本のやり方や考え方が妥当なのだともう少し理解してもらえるような方法は無いものなんでしょうか。
(修正 16:09)
一部文章内で私の事実誤認がありました。内容を修正しました。ご指摘ありがとうございました。
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