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2015.05.05

すでに深圳(シンセン)から撤退した弊社が雑記を書きますよ

 なんか懐かしい気分になったので。

アジア最強のクリエティブ・シティ「深圳(シンセン)」は、東京と何が違うのか
http://yutakatokushima.com/?p=303

 私のいた会社、正確には父親が経営していた富士化学工業という会社の中国子会社が深圳にあったのですが、2004年に製造・開発部門は撤退・移転、2006年に不動産の返却、2007年に資産・ファンド部門はアメリカの資産管理会社と合併後に某都市経由で撤退しましたので、もう8年前になります。

 2002年から2005年ぐらいまでは、深圳がアジアの製造業の中心になるだろうと見込んで、いろんな日本企業やベンチャー、産学の皆さんが深圳へやってきて、香港やその他地域への玄関口として盛んに投資をしてきました。活気もあったし、個人的には楽しかったわけですけれども、ハードウェアスタートアップの拠点としては、バンコクやホーチミン、ダナンのほうが、フィナンシャルの仕事としてはシンガポールや香港、台北のほうが(当たり前ですが)深圳より魅力的であるということで、かなり早い時期に見切って撤退をしました。

 確かに、そこまで大規模な量産ではないハードウェアベンチャーにとって、深圳は面白い場所だと思いますし、どんどんかの地へ出て行ったらいいと思います。ただし、この記事にもあるとおり世界中から製造業的な注目を浴びているのは間違いないんですが、上手くいく会社はやっぱり技術を盗まれます。

 個人的に、かの地がハードウェアベンチャーに優しいのは、だいたいにおいて「うまくいっていない」のと「お金を持ってきてくれる」からです。深圳においてよそ者である日本人や日系資本の歯車が狂いだすのは、ベンチャー企業として上手くいったと周辺から見做されだしたときです。あれだけ熱心に手配してくれ、現地で仕事ができるよう取り計らってくれた「親切な現地人」から手のひらを返されたり、近くの日系企業が撤退したので周辺の日本人が補償するべきだと役人を連れて工場に資金の提供を求めにきたことを聞いた際は、さすがに往生しました。いまではそんなことはない、と思いたいのですが、やはり当時一緒にやっていた人たちがいまなお深圳で仕事をしているのを愚痴るときは、上手くいくほど、吸い取られるビジネス風土に対する不信感だったりもします。

 その意味では、とくしまさんやその周辺が幸せなのは、まだ成長段階から成熟して利益が出る団塊に至ってないから爪を出されていないからかもしれないし、周辺の中国人に良い人が揃っていて、上手い具合にいっているからなのかもしれません。ただ、その後多少なりとも資源ビジネスに首を突っ込んだ私としては、似たような体験を中国の他の地域でもたくさんしましたし、そういう経験値があった分、良い形で切り抜けたり、危ないディールに乗らないで過ごすことができました。

 個人的に思うのは、いま中国は一生懸命、カモを探しているところです。カモとは二種類いて、善意でやってくる日本人と、お金や技術を持ってくる日本人です。もちろん、中国に根ざしてうまくやっている日本人もたくさんいます。そういう人たちは尊敬しますが、私は中国に暮らして骨を埋める気などさらさらなかったので、そこまで溶け込むことはできませんでしたし、しませんでした。逆に言えば、そこまでの覚悟が無い限り、日本でちやほやされて、秋葉原より大きな電気街があるよ凄いよねという話で中国に渡ってしまうような無警戒な人は、いろいろと勉強料を払ってしまうことになるかもしれません。

 別に中国に限った話じゃなく、どこの地域でも仕事をする、ビジネスにするということはリスクを伴います。当然ながら、かの地は日本ではありません。

[引用]

日本にはこういう、敷居は低いが面白いイノベーショナルなプロダクトを市場に出すチャンネルはほとんどありません。

--

 だいたい日本人が中国で仕事を始めるとき、同じようなことをみな仰るんですが、ソフトウェアでもハードでも理不尽な商慣行に音を上げて撤退するか、中国で家庭もって一生そこで暮らす覚悟の人が成功するかって感じなんですよね。

 むしろ、楽しそうにやっている彼らが10年後どのくらい生き残っているのか興味あります。







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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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