【告知】日本原子力学会の学会誌『ATOMOΣ』12月号に寄稿しました
日本原子力学会の学会誌『ATOMOΣ』に寄稿させていただきました。もうすぐ掲載誌が発送されるようです。
日本原子力学会
http://www.aesj.or.jp/
日本原子力学会誌『ATOMOΣ』
http://www.aesj.or.jp/atomos/atomos.html
時論『信頼回復のためにも、技術の未来を語ろう』という演題でありますが、原発事故を原子力工学の問題と捉えて学問全体の未来を閉ざしてしまうのではなく、リスクと社会へのベネフィットをしっかりと語っていくことの大切さを論じた内容になっております。
というのも、もちろん福島第一原発事故というのは忌むべき事件でしたが、事故やそれを発生させたメカニズムをしっかりと追求し、反省をしたうえでどうするのかというのは別の問題であって、原発を支えた学問が萎縮することは原子力工学の未来をも否定することになるからです。しかも、学問の果実というのは原子力発電という一概念だけでなく、医療分野や、宇宙工学にも密接に関係し、将来的には核融合炉その他のブレークスルーが期待される領域にも手がかかっているのも現実です。
原子力発電所への賛否や問題を提起する声は当面の原子力工学にとって逆風であり、この分野の門を叩く研究者が減ってしまう恐れがあるのは間違いありません。一方で、問題が解決されるために学問が担うべき部分は確実にあり、また同様に課題を乗り越える研究や技術が新たな文明の水平線を描き出す可能性は大きく残されています。
そういう未来を考えるために必要なことは、神話を築くことではなく、問題を問題と捉え、リスクをしっかりと把握し説明する透明性と、未来を拓く為に原子力がどのような役割を担う可能性があるのかを説明する将来性とが両輪になると考えます。これがうまく回らなければ、原子力を使った未来技術はことごとくアメリカやロシア、中国、フランスなどに奪われてしまうことも意味し、日本人の未来は他国の技術に依存することになるでしょう。
そして、日本では不運な事故が起きましたが、日本の周辺にはリスクある建造物がひしめいています。福島の放射線汚染を恐れて九州に逃げた人は、韓国のあまりきちんと管理されていないかもしれない日本人の手に及ばない原発のより近くにわざわざ住みに行ったことになるわけです。
考えるべきことは事故の原因と再発を防ぐための方針、そして起きた被害からの回復であって、学問領域全体を頭ごなしに否定するものであってはならない、と考えております。たとえ、それが科学的根拠の乏しい不安を国民に惹起させるものであったとしても、いま求められていることはそういう人たちとの対話だと言えましょう。
この話には特にオチはありません。お読みいただきまして、ありがとうございました。
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