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2013.07.29

コアマガジンの摘発と欧米事例

 あんまこっち方面は詳しくないのだが、どうもゲーム方面にも影響を及ぼす可能性が高くなってきたので備忘録を兼ねて書く。

「売り上げ伸びない」モザイク極端に薄く 「コアマガジン」部長ら逮捕
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130725/cpb1307251257000-n1.htm

 この問題は、当局の恣意性というよりは、業界が「これであれば摘発されないであろう」という慣習に依存しすぎて事情の変化に気づかず摘発されてしまったというところに本質があるんだろうなーと思うわけです。つまり、「カリクリ結合」さえモザイクかければ摘発はない、という業界の自主ルールは別に当局の墨付きでもなんでもなかった、という話なんですね。

わいせつ雑誌書店に配布容疑で3人逮捕 警視庁
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2501Z_V20C13A7CC0000/

[引用] 太田容疑者は「わいせつ図画に該当しない程度に編集していた」と容疑を否認している。

 もちろん、コアマガジン、ひいては白夜書房という会社に対する当局の見方という補助線もあるようなんですが、それは脇に置くとしても、ビデ倫摘発事件に例を見るまでもなく当局としては業界団体に天下りがいようとも潰すべきものは潰そうという考え方です。逆に言えば、当局としては過去摘発してこなかった暗黙の諒解というものは存在してない。「状況の変化」ゆえに、過去の担当者ではOKであったものが、現在は違うよっていうのは実写ポルノだろうが違法クラブだろうが同じってことです。

 今後はネットに対してや、同人活動にも介入が出てくるかもしれませんし、いわゆる青年誌の性描写も含めて街角にポルノ紛いが氾濫している現状を考えるにまあもうこれは仕方がないということで諦めるしかないんじゃないかと思うんですよね。

 興味深い論考としてはこの辺もあります。

We’ve always been at war with genitalia
http://dankanemitsu.wordpress.com/2013/07/28/weve-always-been-at-war-with-genitalia/

 ご存知の通りアメリカでは「猥褻」(obscene)と「下品」(indecent)を峻別しており、2003年のNBC の生放送番組ゴールデングローブ表彰式で、男性歌手のボノが受賞のインタビューで"This is really really fucking brilliant"と発言。このf-word問題では意見書が飛び交う事案となりました。最終的にFCC は、ボノの発言を1464条で規制の対象としている profane(下品で冒涜的)な発言であると認定するに至るわけです。

 現状で観て、我が国の当局が恣意的に猥褻物陳列事案を可変ストライクゾーンのごとく運用している、という批判は確かに存在するものの、アメリカを例に取るまでもなく未成年者が自由に出入りができ購買ができる状態で(たとえビニール止めで中身が閲覧・立ち読みできないとしても)猥褻物が陳列されていた場合、そもそもアウトなのであって、いままでの警察対応が諸外国に比べて事業者側に譲歩しすぎていたと考えても良いのではないかと思います。

 モザイクが濃いの薄いのという話ではなく、きちんとゾーニングしてやってくれと。
 成人が成人向けポルノを愉しむことが禁止されているわけではなく、成人ではない少年らに手の届くところに頒布する可能性があってはならないというものも含むわけですね。

 文中では「つまりやろうと思えばちょっとでもHな表現あらなんでもしょっ引けるというチート法規」とありますが、欧米の事例でもあんまり明確に「これはセーフでこれはアウト」というもんは策定されていません。最近のReno/ACLU事件最高裁判決でも、この事件で争点となったニューヨーク州法では「未成年者に有害なマテリアル」の定義として未成年者にとって補い合うような公共的重要性の欠落を盛り込んでいて、通信品位法だけでなく書籍や写真・画像やケーブルテレビでの放送、ラジオ番組、インターネット放送も含めて含意は個別判断的に感じます。

1911年にTheodore Schroederで「言論の自由は実害のない限り保障され、実害のない猥褻表現を規制する連邦郵便法や州法は、合衆国憲法修正第一条や州憲法に違反し無効」とされつつも、実際の州法などでの運用においても青少年への悪影響は実害と認定され放送、出版では望ましくないコンテンツの制限はある程度(といっても日本以上に厳格にゾーニングされ)実施されていると考えるべきなのかなあと思うわけです。

 翻って、インターネットポルノや児童ポルノについては、これも今後は強力に摘発を推進していくことになるんでしょうが、例によって海外事業者や海外鯖の問題やらプラットフォーム業者責任論などまだまだカオスな状態なので、とりあえずFC2でも槍玉に挙げてあれこれ研究しつつ数年かけて方針を固めていくのかな、といったところでしょうか。

 まあ「日本の知識人はなんでそんなにエロに寛容なの?」みたいな話は良く出るんですけどねw



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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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