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2012.09.30

【告知】『リーダーを目指す人の心得』(コリン=パウエル・著)(訂正あり)

 安全保障への意識が高まりつつある日本において、ちょうどイラク戦争の際の国務長官であり、軍人あがりでありながら国務長官として戦争には最後まで反対し、そして湾岸戦争の端緒となったイラクの大量殺戮兵器については「誤報だった。人生最大の恥」とまで語った元軍人の人生訓であります。

 細やかなニュアンスにおいて、原著と若干の乖離が感じられる部分がありまして、英文を読みこなすのに難のない方は原著もどうぞ。

 コンパス的には共和党穏健派であり、叩き上げの軍人でありながら軍事力の行使に慎重であったパウエル元長官ですが、自叙伝でもありますとおり、本書は人生訓であるにも関わらず、猛烈に怒っております。物事に直面したときに「まず怒れ!」そんで「その怒りを乗り越えろ!」とか、普通の人には無理やがなと感じるエッセンスが盛り込まれているあたりが特徴的です。

 非常に楽観的に対処する反面、一歩を踏み出すにあたっては彼の経験やその後の経緯からしてどうしても慎重にならざるを得ないジレンマを常に内包していて、精神的にやはり緊張感が拭い去れないのでありましょう。とても「心が太い人だな」という心境になります。まあ、そうでなければ軍人を率いるトップとして、個人的には納得できない開戦が強いられていたにもかかわらず、組織人として異が通らねば自分を曲げて戦地に軍隊を送り込んでいるわけです。そのぐらいの人間でなければ精神が崩壊してしまうのかもしれないのですが、そのぐらい、人間としての「心の容積」が大きいように感じるのです。

 日本人がパウエルさんの人生訓を読んで「一から百まで参考にしろ」というのはなかなか難しいところがあります。もし、私が経営している会社で部下に結構な難題をお願いせざるを得なくなって呼び出したら、目の前で烈火の如く怒り出すパウエル読者だとするとやはり困りますので… でも、与えられた指令に対して無批判に従順であるべきではない、というのは至言だと思うのですよ。

 なぜか上下巻に分かれてるんですが、パウエルさんの自叙伝、『マイ・アメリカン・ジャーニー』は面白いです。心象風景としては、ドラえもんに出てくるジャイアンが、映画で出てくるヒーローモードのまま、ベトナム戦争にいって負傷しつつもリーダーシップを磨き上げて帰ってくる感じです。

 ちなみに、超党派の政策論争において、日本のポジションや日米同盟のあり方についてもう少し詳しく書いて欲しいという要望が多かったので、メルマガに書いておきました。一部がプレタポルテに転載され無料公開されておりますので、興味のある方はご一読を。

アーミテージ報告書の件で「kwsk」とのメールを多数戴いたので
http://yakan-hiko.com/w/2012/09/24/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%81%AE%E4%BB%B6%E3%81%A7%E3%80%8Ckwsk%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%92%E5%A4%9A/

 個人的には、政権がどうなるかは分かりませんが、高い値段払ってでも国家戦略の検討をする部門にパウエルさん呼んで顧問として継続的に意見を聞くとか、そういう動きがあると嬉しいんですけどね。戦争を率いた経験のある将軍が、10億円で呼べるのなら安い… とか思ってしまう私は軍事脳でありましょうか。

(訂正 4日 03:51)

 パウエル元国務長官の経歴を一部間違えておりまして、内容について一部修正をしました。ご指摘をしてくださった方々、ありがとうございました。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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