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2011.03.26

赤ちゃんの顔を見ながら、仕事と家庭の両立について思う(雑感)

 今日、家内が赤ちゃん向けのペットボトルを貰って来いというので、仕事の帰り際に区役所の赤坂地区総合支所なるところに寄って、母子手帳を出してお水を貰ってきた。500ml入りが12本。私はそんな対策を打たれていたことを知らなかったのだが、何でもこのところ降った雨で貯水場に放射性物質が流れ込み、幼児には影響のある濃度になってしまったことに対する措置らしい。でも、あまり周知されていなかったのか、係員の女性が言うには130人程度しか取りに来ている区民がいないのだそうだ。

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 本来なら私も海外に仕事で出る予定だったのだが、地震もあって国内の仕事が一部滞り、東京に結局ずっといる。ところが、周辺のセレブなご家庭が続々と東京からどこぞへ疎開していく。人によっては「山本さんは幼子が二人もいらっしゃるのに、どうして東京においでになるの」と訊いてくる。や、仕事があるからに決まってるじゃねーか。

 とはいえ、ふと思う。本当に仕事があるから東京にいるんだろうか。不安がないといえば嘘になるけど、ひょっとして、理由をつけて東京にいたいだけなんじゃないか。今回の大災害、それも3万人に迫ろうかというような犠牲者を出す事態を、東京がどう吸収し、どう変化するのかを現場で見届けたいという野次馬根性なんだろうか。

 とにかく、赤坂からは本当に住民が居なくなった。土日はゴーストタウンか被災地かと思うぐらい、人通りが少なくなる通りがあって、豪華な看板のネオンですら侘しく見えてしまう。こちらは、出産明け早々の家内と赤ちゃん二人である以上、焼肉屋や鍋屋やバーやラーメン屋などにファミリーで入るのは気が引けるから、普段足を向けないファミレス程度しか外食ができなくなった。

 思い切って、ベビーカーを2台仕立てて焼肉屋に入ってみた。客なのに、客が悲しくなるぐらいガラガラな店内に、店員の元気な声が響いてとても残念になる。普段はそれなりに繁盛している店だ。

 東京はこのまま駄目になってしまうんだろうか。結構、本気でそういうことを考えるようになった。いや、まあ復興が進めば解決するんだろうと楽観的に思う気持ちもある一方で、地震からそれなりの日数が経っているのに妙な余震は続いているし、原発は相変わらず煙っていて、毎日汚染情報についての情報が入ってくる。頭ではいずれどうにかなるだろうし、なるようになるのだと思って自分を説得しようと思っても、なんか良くなる感じがしない。どちらかといえば普段は前向きな私ですら、鬱々とした気分になるのだから、落ち込んでいる人も多いんじゃないだろうか。

 何が出来るんだろうか。自分に何が出来るかを考えると、せいぜい貯め込んだ金を寄付にぶち込むぐらいしか直接の貢献はできない。みんな「経済止めるな」と騒ぐけど、繁華街に人はいないし、地下鉄はなんか暗いし、何かみずほ銀行は止まってる。みずほは地震と関係ないか。でも、勇ましい掛け声と裏腹に、入ってくる情報も街角の肌感覚も現状はあまりいいもんじゃない。

 結局、思考は堂々巡りになって、いま立ち向かっている危機を解決するには、自分が精一杯生きていくしかないという結論に達する。地震とは関係なしに一生懸命働き、頑張って稼いで、人を雇って、あれこれ開発して、モノを海外から入れて海外に出して、試行錯誤していくしかない。自分ひとりじゃ生きていけないのだから、仕事と家庭のバランスを保って… という話にどうしてもなってしまう。

 なんだ、地震とか全然関係ないじゃないか。どうやって環境に適応していったらいいのか、変化に対応するのかを突き詰めていくと、最終的にはいまある自分の立場や役割をきっちりと認識して、より良い仕事人や家庭人になるしかない。
 地震があろうがなかろうが、生き残った人間ができることは頑張って生きていくこと以外にないのだな。でも、たぶん家内と結婚して家庭を持ち子供が出来て、こんな幸せを味わうことがなかったら、そういう考えを持つこと自体がなかったのかもしれない。さっき、一歳半の長男が、生まれたての次男用のペットボトルを積み木がわりにてこてこ組んだり並べたりしているのを見て、家族というのはこんなにもかけがえのないものなのかと改めて知った。

 そういう多くの貴重なものを失ってしまった人たちに、私らは何を手向ければいいのだろう。
 被災者や犠牲者の方々には、言葉に尽くせないぐらいに、お悔やみを申し上げます。


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Comments

本日の記事、山本さんの家族への愛をすごく感じました。
東京は引き続き息を潜めていますが、このタイミングだから生まれるムーブメント(義援金など震災と直結するものでなく)がある気がします。

>>最終的にはいまある自分の立場や役割をきっちりと認識して、より良い仕事人や家庭人になるしかない。

私もこの2週間堂々巡りだったのですが、この一文で考えがまとまりました。
ありがとうございます。

がんばってますね。
私もがんばってます。

なんだよ隊長。どうしたんだよ隊長。
目からおしっこが出てきた。

いつもの斜め見じゃなくて、珍しくまっすぐですね。
さすがに弱気になったんですか?
子供にかかわる話だと、切り込み隊長も真面目になるw

こんにちは
はじめまして
余計なコメントをさせて頂きます。

切込み隊長氏ができる事(義援金等)をするのは素敵な事と思います。
でも御子さんと共に東京に居られるのはそれとは別の事だと思います(ご自身が仰ってるように)

東京を離れるのも勇気がいる事だと思いませんか(子供達に選択はできないですし)・・・・ましてや被災者を天秤にかけられても・・・すいません愚問でした・・・・

日本が、次世代が、明るく素敵な生活ができる様頑張っていきましょう。


日本が大好きなJapaneseより

いつもの隊長口調じゃないな…

さて、歩こうかいのw

水はね、その高レベルの水を毎日、長期的に飲み続けたら健康に障害が出るかも…って話ですからw

市役所のホームページが充実してる。たぶん、そっちも。おいらの住むところの商業施設は活気があるね。シネコンも人が集まってるけど、自粛閉店しすぎ。面白いのは人目がつく商店は、照明の節電がすすんでいく様子。計画停電で不快に感じてれば、そういう目で見るから、客商売のところは、節電していくよね。ダメなのは、人目のつかない事業所。もてる力を全部使ってるから、沈んだ気分にならないのだと思うよ。隊長の場合は、金があるのだから、家族のために使えばいいんだよ。遊びにいく旅行をすればいいんじゃないか。あと、人々がヒステリックになるのはしょうがないこと。個人ができるのは、堂々としてることだけ。自分の感情に素直になるだけだな。ま、今回のことで一番よくわかるのは、心がある人と、心を売った人の違い。

そうそう、話は違うけど、グーグル様がすごいことしたね。常時1000アクセス毎日あって、おおいときは5000超えたのが、いっきに10アクセスみたいな。検索内容がよくなってるかといえば、そうではないような。それに、気になるのは、SEOをしていたところには、広告も充実していたはずなんだけど、広告表示総数が減ったりしないのだろうか。

おいら個人では、レセプションが中止になったな。皇族が主賓なんだけど、関係者だけでするそうだ。偉い人だけで集まってもしょうがないのにな。

あと、津波を受けた地域の復興は無理だと思う。トラウマ背負っていきいきながら、過酷な風土はかわいそうだ。疎開先に根付いてもらうのだろうね。もともと、ミチノクで、人が少なかった。増えることができない土地に、高度成長の恩恵で発展していけたわけで、日本全体の成長が鈍化していて、無理でしょ。

それと、事業所の電力は無駄が多すぎる。照明は異常にあかるいし、これがメンヘラの誘因になってるし、エスカレータも多すぎる。エアコンもありすぎる。なんで、OLが夏場、長袖きて寒いの。電気をあまり使わない遊びはどんどんした方がいい。ドーム球場は野球場ではない。野原でしているみたいなところがいい。昔の後楽園も神宮も、ナイターが暗かった。ボールが真っ白なのは、ボールを見え易くするためだろうね。だから、汚れたボールはさっさか交換してた。電気に対する感覚がかわれば、大丈夫。

原発は、もっと危険になれば、外国が黙っていないから、そこでなんとか落ち着くんじゃないかな。ギリギリセーフにはなるとおもう。被害は拡散するだろうけど。今時点、人材不足。

たまには真面目なことかくじぇ

なんだか、ですよねーと素直に感じましたん(ω)何をするかわかっていればあとはスルスル流れていくんじゃないかと思いますん(ω)るっ

「ばーかばーか」がないと隊長らしくない(笑)

泣きましたよ

何かみずほ銀行は止まってる。みずほは地震と関係ないか。

ここ面白い!

ちょっとわからんかも。
きっと、あんまり自分が大事じゃないんだろうなあ俺は・・・

本当に家族はかけがえのないものです☆自分の5才の娘と3才の息子は大人の事情に関係なく走りまくり、騒ぎまくり、遊びまくっています。こういう時、子供の無邪気から大きな勇気と元気をもらっています!

んー。でも妻子は疎開させたほうがいーんでない。

子供には積み木の玩具くらい買ってあげたほうがいいということですねわかります。

家族があって子供がいると、人生変わるよね。
こんな時だと尚更。
独り身まっしぐらな自分にはまこと縁遠い話でありまた、羨ましくもあり・・・・

とりあえずは普段寄りつかない近所のラーメン屋にでも行ってこようかと。
ご家族益々のご健勝をお祈りしております。

隊長が気付いたとおり、直接被災していないのであれば、可能な限り日常を保ってほしいです。

暇な人がいたらボランティアって手もあるけど、一社会人として一企業人として日夜業務に邁進されてるなら、そっちをいつも通りに回してもらった方が何ぼでもいいです。

いつも通り起きて飯食ってゴミ出して会社行って仕事して帰りがけに買い物して家族のもとへ戻り人肌を感じつつ眠る。

被災地の状況が分れば分るほど、その日常がとてつもなくかけがえの無いものだと感じられるようになります。てか、ました。

隊長も東京でがんばってくだされ。

以上、岩手在住より。

はっ?
おセンチなお気持はわかりますが、
放射能被曝の危険性とそれは別なんでは。

なんか隊長が弱気だと寂しいなぁ

切り込み隊長の刃も錆びついたちまったなぁ・・・。
ま、決して悪いことではないさ。

隊長、素敵なメッセージをありがとう!

最後の一段落は、隊長が尊敬されている日垣隆さんを想起しました。

ツイッターから参りました。50才目前のオヤジです。
私はリストラからやっと東京に仕事を見つけ、田舎から単身赴任する身です。
切り込み隊長さんの「赤ちゃんの顔を見ながら、仕事と家庭の両立について思う(雑感)」を読ませていただき、省みて自分も「どうやって環境に適応していったらいいのか、変化に対応するのかを突き詰めていくと、最終的にはいまある自分の立場や役割をきっちりと認識して、より良い仕事人や家庭人になるしかない。」と気づかされました。ありがとうございました。

仕事がことごとくキャンセルになって,計画停電もあるものだから,さっさと仕事を切り上げて早々に帰宅する.

仕事に追い回されていたこの10年だが,家族と日常的にふれあう時間が急増して,子供達も楽しそうだし,以外とこれはありかもしれない.

震災を機に,個人の価値観が変化して,社会構造まで変化してしまえば,それはそれでいいことなのかもね.

地震という天災と、原発事故という人災。
その2つが引き起こす様々な問題で、
妙な緊張感が漂っている町、東京。

個人レベルでは経営者、公務員以外は、
雇用がこの先も安定するのかどうか、
不安にさせる社会情勢。

今回の天災と人災は、
今後の人生について考えるきっかけになっている、
そんな人が多いと思います。

うちも、東京で1歳半の子どもがいます。親としての気持ち、共感しました。

いろいろな情報が飛びかっており、今回、やはり、子どもにとってはどうすることが良いか?どんな判断をする自分であったらいいか?ということをいつもより余計に、そして真剣に考えています。

ひとつは、今の都心では他の地域に比べ何も起こっていない。
という感覚を結論にした上で、
さかのぼって、10年前に、自分が今住んでいる街を選んだ。
東京のとある街での、つながり を選んだ。ということを
大事にしていきたい自分が居ることにも気がつきました。

戸外に洗濯物が干されている家もあるのを見て、
ここはある意味自分の心の故郷(用事よっては本当の故郷をしのぐ場所)なんだな〜
というのを改めて実感しました。
(他の地域の方が読んだら、なにそれ何のこと?と思われるかもしれませんが、
東京のなんともいえぬ人口の圧力というのは、強いものがあります。)

とはいえ、買い占めしなくても出来るような安全対策は
ぬかりなくやるべきかなと、親として心をただしているところです。

ぶっちゃけ、Before 人の親と、After 人の親で、世界観がいろいろ変わりますよね。

自分は、お涙頂戴の安っぽいTV番組でも泣けるようになってきました。
若い頃は、なんでうちの母親はあんな(レベルの低い)番組みて泣けるのか不思議だったのですが、いつの間にか自分も泣けるようになっていてビックリします。

うちも港区で就学前の子供がいるのですが、もう赤ちゃんではないのでペットボトルもらえませんでした。

> いま立ち向かっている危機を解決するには、
> 自分が精一杯生きていくしかないという結論

答えはでないから、思考停止してしまおうと読めてしまった。

私の周りでは津波による被害で、多くの人が亡くなりました。知り合いや近所の子供達。内科医・歯科医。空手の先生。同僚の息子。分かっただけで20人を超えました。
自分の子供達と妻は、本当に奇跡的に助かりました。小四の娘は避難所になっている体育館で2メートルを超える波にのまれながら、助かりました。でもそこでは、保育園児やお年寄りなどたくさんの死者が出ました。
生きているのが奇跡です。普通に生活出来る事が、どれだけ幸せか。いまそれを噛み締めております。
最後に、全国からの支援に心より感謝し、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。

隊長の視点を「斜め」だと思う時点でNHKレベルだよなあ。普通に論理的でまっすぐなこと言ってるだけじゃん。

曲がってるのは木っ端役人とその取り巻き、マスコミでしょ。NHKレベルの人は受信料でも払ってればいいかと。

ときおり拝読していましたが、ご近所さんだったのですね。
うちもオムツ、おしりふき、水など、乳飲み子を前にして凹んで暮らしていました。

隊長さんは秋葉原には、よく行かれますか?
ワイズマートに行ったところ、三歳児以下の母子手帳+ワイズカート持参に限り「水2L/日」優先販売とのことでした。これで、ひとまず水の手配はできます。

順調に汚染濃度が下がっているのが救いです。
(理系出身としては「20Bq/L以下は不検出」とするより、 せめて1Bq/Lオーダーで計測値をだしてもらい、自分で理解できる限りのリスクを取って摂取したいものなのですが…)

いやぁ、まぢで広尾のナショナルと一ノ橋の日進ですら、外人が週末におらんのですよ。本気で連中、少なくとも東京からは脱出してる。

で、原発に罪は無いが原発を維持する人間に問題あり過ぎなので、たぶん東京は灯が減ると思う。
まぁ東京でなくても仕事できる、という地方に産業分散するにはちょうどいいタイミングだとは思うわけよ。たぶん取りまとめ役の隊長が一番忙しくなると思うけど、イヒヒ。

隊長でもおセンチになってしまう。夜の六本木は完全にゴーストタウン化、リッチ層の避難の影響???銀座もましてや池袋もダメみたいです。ただ、新宿だけは別??コアの遊び人はこんな時代も元気らしい。でも全体的にはジリジリと悪いスパイラルに巻き込まれていく。引き潮が経済でも怖い。衝撃があってすでに2週間を経過、これから半月を迎える。月末、想像しただけで怖い。

愛しの池田信夫チャンを信じなさ~い

おっしゃる通りです。
義援金とかも大切ですが、最後は皆各自が自分の強みを活かしながら力強く生きていくしかないですね。
CMを自粛する民間企業などこの辺がまったくわかってない。付加価値の高い製品を宣伝して買ってもらうことで経済活動が止まらないようにすること、そして利益を生んで雇用を確保することが民間企業の役割なのに。

被曝云々いう人が居るが、それは、東京の街中が常時10μS/hくらいになれば考えればよい。少なくとも今の東京は心配する放射能レベルではない。せいぜい50nS/h。

全体的に暗く人出が少ないのは、何時電車が止まるか判らない恐怖もあるのだと思う。
かなり本数減らしてる路線もあるみたいだし、それでは繁華街に行くのもリスクあるしね。
でも、この前の土日はアキバもまだ普段通りとはいかないまでも、人出はそれなりに戻ってるよ。
中野のさくら水産は、元気に中国人ねえちゃんが注文取ってた。親が心配してないかと聞いてみると、毎日のように携帯で帰ってこいと言われるけど、まだ働けるしお客さん居ると、答えてくれた。

自分も、「各員持ち場を守り、現状維持に最善を尽くせ。」という自分への命令モードです。

関西在住だけれども、同じこと考えて同じ結論に到ったよ。
阪神では被災を免れたけど、当時は学生だったからこんなこと考えなかったよ。
しかし実際に何か起きたら、下の子1歳半は障害児だから
避難所では生き延びられないだろうなあ。

500ml*12本は6キロですがどうやって持って帰ったのだろう。ちびちゃんは大きくなったね。賢そうです。関西に逃げても「もんじゅ」がやばそうなので所詮日本人には逃げるところはありません。。。

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    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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