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2009.11.07

実務能力というのは段取りのうまさなんだと思うんだ

 取りまとめなど一人でやる仕事って、土曜日が一番はかどる。連絡をすることもされることもなく、考えることに没頭できるから。

 仕事を進める上で、とりわけ多くの人が関わる事案というのは、仕切る際に結構進め方にコツのようなものがある。これが分からないと厳しいと思うのだが、実際にはあまりそういうのに無頓着で、ただ単に金が儲かればいいとか、サービスが期日どおりリリースできればいいと考えるマネージャーも多くて困る。自分のことを棚に上げていうけどさ。

 でも、立場も役割も機能も違う人たちを集めて、何がしかの結果を出さなければならない仕事というのは実に多い。取りまとめる際に、利害は対立するし、共通の認識は違うし、問題に対する考え方も違う。これはしょうがないのだけれども、そこにプロジェクトがあって、人が集うからには方法論をある程度ノウハウ化しておかないと話を進められないと思うんだけどね。

 ちなみに、私がそういう事案に直面した際に心がけていることというのがあって、だいたいが「自分の役割が契約上決まったら、それに関わる自分の意志や希望はとりあえず置いといて、結果が最適であれば良い」というやり方をする。無私に徹したときに、どっちかというと成功しやすいんだと思う。それが、たとえ関係者が物欲の塊であったとしても。

 段取りとか。

・ 起きている問題の全容を把握する
・ 問題解決のための方針を決める
・ 方針に基づいて、何が重要で、どう物事に優先順位をつけるかを決める
・ 関係者個別に告知する
・ 協力を取り付ける or 協力しなかった場合、その方面に何が起きるかを示唆する
・ 関係者を一同会わせて衆知する

 物事の解決で、方針が決まらないことほどグダグダになることはない。どうであれ結論を出しましょうという流れになるのは、放っておいて時間が解決しない場合である。だから、どういう結論を出すべきなのかという方針が決まらないと、立場の違う人たちの意識を全体の利益に繋がるように導くことが出来ない。

 方針が決まれば、何を優先するべきかの順番が決まる。ここで関係者が文句を言いそうだったらやり直さざるを得ない場合もある。でも、方針に反対することは、その関係者は解決にコミットしない立場、すなわち敵性認定をするのだから、逆に誰が味方であり、誰を説得するべきかが明確に分かる場合がある。

 おおっぴらに方針を伝えても、責任が分散してしまい、仕事をきちんとやり遂げないリスクも発生しうる。取りまとめ役が中心になって、個別具体的にレクして理解してもらう過程というのはどうしても必要。そのときに立場の違いや利得や意志が明確に伝わってきて、個別に「握る」ことだってありえる。味方のはずが敵だった、ということもここで何となく分かり始める。

 だから、協力を取り付ける過程というのはコミットを宣言させることを意味し、相手の考えが固まっているのか、どこまで履行してもらえそうかというのは取りまとめ役の重要な目利きになってくる。ここが狂うと目的を達成するためのパーツが揃わないとかザラに起きる。そうすると全体が困る。だから、協力をしてもらうための動機やコストや意志といったものの最終的な確認作業もここでやらないと後で揉める。

 最後に、全体での取りまとめをして、方針が策定されたことを全員で合意しコミットが確定する。ここで破ったら、恥をかくのはその関係者だ… といいたいところだけど、一番恥ずかしいのは中心になって取りまとめた人。お前、そこで握れてなかったの、という話になって信頼を失うこともある。一番つらいところだけど、これが要なのだから仕方がない。こういうことをしっかりやっておかないと、横から来た人に話を持っていかれることにもなりうる。

 結構大事なのは、関係者が、個別に直面している問題を、こう行動したら、こう解決するのだ、という完成図のイメージをしっかり伝えることなんだろうと思う。私たちと一緒にこういうコミットをすれば、貴方たちにこういうメリットがありますよ、または、私たちの話に乗らなければ基本的にこういうリスクが貴方がたにありますよと、そういう話を、どこまで相手方の立場に立ってイメージできているかという、そういう部分。

 投資運用でもコンテンツ開発でも事業プロジェクトでも、基本はそれほど変わらない。というか、どうやら変わらないようだ。考える際に重要なのは、全ての要素はトレードオフである、ということ。予算を守ろうと思ったら品質を犠牲にしなければならないとか、ある会社の権益を守らなければならないのなら別の関係者の利益は喪失する可能性がある、ということ。当然、win-winの関係になるのがベストではあるけれども、調整ごとというのは必ずしもそう単純な図式では回らない。誰かに泣いてもらわなければならない、それどころか、関係者全員が泣く話だって起き得る。

 その場合にどうしても必要なのは、方針であり、方針に基づいた大義名分と、それに対する相手のコミットであって、そのための手段はたくさんある。交渉なのか紛争なのか、それはあまり重要なことじゃない。大事なのは、問題が解決すれば、こういうメリットが加担した人たちに与えられるのだ、というところまで、しっかり結論を出すということだ。

 とりわけ、敗戦処理とか修羅場というものは、方針が決まってしまえば誰を泣かせるか、その人を泣かせるためにほかの人がいかに結託するか、という図式に持ち込めればスムーズに話が進むこともまた多いのである。その場合、相手がコワモテだからとか、何をするか分からない人たちだからというのはあまり制限にならない。それを上回る面倒くささをこちらが兼ね備えていればいいからだ。

 私自身が年齢の割りに変な経験をたくさんしてきたからかもしれないけど、それなりに功成り名を遂げた人なのに、何かを捨てるたり片付けたりということが向いてなくて問題をこじらせる人がたくさんいるのは残念なことだと思う。ここで大将が撤退しても悪く言う人はいないから。あんた良く頑張ったよ。ということも多いんだけどねえ。

 だから、違法でない限り、リストラだ縮小だは嫌だ、相手の軍門に下るのはよしとしない、あいつの助けは借りずに自力で再起する、というのは、まあ人間として自然であるし、そうであるのはベストだと思うけれども、無理なものは無理なんだから、捨てるものは捨てて、またやり直して成功すればいいじゃないかと私なんかは思う。プライドが高くたって、人様からの信頼を全てを失ったら可能性も資金も本当に何もなくなるじゃないか。

 頭がいいとか悪いとかじゃなく、事実を見据えて調整を進めて方針に基づいて進んでいく、これだけが「自分だけでは何も出来ない人」の生き方だと私は思っております。いや、私一人で何かできるわけじゃないですから。


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Comments

バランスですかね。

ビット財布のことですかわかりません><

隊長の次回出版作品に?

「俺様流敗戦処理  (副題)筏の出し方 (帯)おまえら、その前にハロワに往け」

なんて、読みたい。

頭がいいはずの人が段取りが悪くて、肉体労働のジイさんたちの方がはるかに段取りが良かったりするんだよね。

いったいこれは、なんだと思うぞ。


プログラムならアルゴリズムだろ、将棋なら手筋だろ。


ま、たぶん、本の読みすぎで、本の通りに納得できなくなると、もう動けなくなるんだろうな。実際、戦争やら大地震がきたら、本を読んでいるやつが、一番、役にたたない上に、デマを流すんだよ。


それと、方向転換がきかないというのは、病気のひとつだと思うぞ、とある保険屋のオエライさんちにいってだな、ま、奥さんに呼ばれたんだけど、なぜか、オエライさん、家の掃除を始めだしたら、止められないのだよ。こっちが、こんちわーと挨拶しても、聞こえないみたいだし、別に、急ぐ家事でもなさそうなのにな。藁。


ま、たぶん、重役として部下の段取りを考えさせたら超一流だったんだろうけど、それは、アクシデントが起きないという大前提があってだろ。つまり、想定通りにすすまなければならい。ここが問題なんだよ。


隊長は、単純に、想定できない環境に身をおいていたからだろ。達観できているのは。


とにかく、日本は、想定する訓練をしすぎだよね。で、本は想定するためには、スゲーー役立つことはオレだってしっているけど、でもさ、攻略本を読んでPCゲームしているだけみたいな人生のどこが面白いのかね。どうせ読むだった、仕事にも金にも人生にもぜんぜん関係な本を読んだほうが、いざというときに役立つと思うけどさ。


ま、想定力を競い合うって、面白いのもわかるけど、ただの妄想だよ。結婚まで、想定訓練になるとか、嫌になっちゃうわぁ、やめて、いやらしい、あっはーーん。それに、本を読むと未来がわかるらしい、キモイ。ついでに、黄色いウンコばかりしている人は、鉄分不足、さっさと鉄を食え、それをしらずに、メンヘルだな、生肉はあぶないなど、トンチンカンは、よせ。


あと、統計的感覚というのは、想定しないってことだよね。サイコロをふって、六が多くでることがわかったら、なぜ6がでるか想定したりしない。で、想定バカな連中というのは、六がでる理由をみつけてだな、別のサイコロでも同じになると思い込んでしまう。別のサイコロをふってテストするならともかく、同じサイコロだから同じ結果になるはずだと。答えは、違うサイコロだったというだけ。この点、アメリカ人は、なにもかも調べるからね。こちらも、変な想定するわけでないから、結果はいいし、より確実だろうけどね。そうそう、そういうことで、想定バカは、せっかちだったりするんだよ。すぐ答えが欲しい。ま、だから、本が必要になるんだろうな。

あーー、また、長くなってしまった。

うん、本当バランスだよね。
金儲けも政治も人生も全部。

バランスだな。

同感です。
原理・原則というか非常に参考になりました。

改めて細かく言われると意識していない点がちらほらあって頭をたれる次第であります

いやー、根回しって言の葉もあったし、叩き台の作りが上手いとかさ、昔も今も変わらんよ。

まあバランスなんだけど、場の空気を読んで自分の中の線引きを前後させられる感覚も重要
これが固定化してて全く妥協しない奴が複数現れると、大体場がこじれる

何よりも大事なのは、まず
「問題の全容把握」
ですね。これが出来れば後は自ずと進路が決まることが多いと個人的には思います。
結果がWin-Winなのか、Win-Loseなのか、Lose-Loseなのかも含めてですね。
また、問題が把握できると言うことは、方針もある程度は固まってることでしょう。
後、問題は極力具体的にかつなるべく定量化して、現実に起きてる事象とセットで提示すると、みな目を背けることができなくなります。
ただ、それでも
「見たくないモノは見たくない。」
という反応が、関係者のそれも上層部から帰ってきたときは、自分は逃げます。

プロジェクト事に泣き笑いがあるのは当然なんだけど
総体でwin-winの関係を築ける会社が少ないんじゃないかなぁ。
 
自社に都合のいいカードが出るまで
あっちこっち引きまくる営業とか。
 
結局、仕事の上での信頼関係を築けないの
最後は契約書ではこうなっています的なゴリ押し
んで二度と仕事は来ない、当然だけど。
 
 
俺が世話になってる所だけの話かもしれないけどさ。

バランスは関係ねいな

まぁ、皆なんというか、、、もう少し旅しろw

理屈の面では隊長が正しい。しかし一般に日常ではそうそう修羅場に出会う事もない。あったとしても気がつきゃ別の現場に回されて、責任があいまいになったり。

降りかかる全てにコミットする体験をするなら旅が一番。

あ、でも、旅行と旅の違いのわからん半端な奴は旅したらだめだよ。
そういう手合いは金持ち父さんでも読んでオナニーしてるのがお似合いw

正に、「立場も役割も機能も違う人たちを集めて、何がしかの結果を出」すのって大変ですね。メンバーの合意の上です進めてきたハズが、一部の人が腹落ちしてなかった為に段取りが崩れそうになってあたふた。後になって方針レベルの話しを持ち出されても・・・なんてこともあって段取りの悪さに反省しきりですわ。

旅ってw
自分一人のコミットで済むなら苦労はない。オナニーと同じだ。

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    やまもといちろう

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    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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