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2009.07.04

ビジネスにおける被害妄想問題

 自意識過剰な人が陥りがちなことに、「日本社会は出る杭を叩く。俺がやろうとしていることを出資者やクライアントや会社や上層部や先輩や同僚は理解してくれない」と周囲に責任を押し付けることがある。

 いや、それはお前が出る杭ではなく、出す提案に説得力がないからだって。

 突飛なアイデアであっても、トライすることに価値がありそうなら資金は不況でも集まるし、最低でもプレゼンする機会は与えられると思うよ。そういうチャンスが回ってこなくて、周囲の無理解を批判するのは、環境に恵まれていないからじゃなくて、聞いてもらうための環境設定に問題があるからなんだ。

 で、出た提案に説得力がなかったとしても、何度か出資者候補やクライアントと調整することによって、ブラッシュアップされたり、コンセプトがきちんと定まったり、コストの見直しで最終収益がもう少し確保されそうだったり、より良い計画になることだってある。そうなってから、再チャレンジする気力や時間が備わっているなら、何度でもトライすればいいと思う。椅子を蹴らずにきちんと繋いでいれば、一度や二度のプレゼン不発があってもお付き合いは続くわけだからさ。

 何でそういうことをいまさら備忘録のように私が書いているかというと… やっぱり不況だから資金が枯渇していて、どこも新規のことに積極的に噛もうとはしないので、二年前ぐらいだったら簡単に通っていたような企画や計画が通りづらくなっているからなんだよね。これは、あんまり業界を問わないと思う。

 でも、金が金を生むといっても、金を作るには良いアイデアに基づいた事業が投資先として必要なので、むしろ不況のときほどイノベーションが進む分野だってあるんじゃないかと思うんだ。だから、どういう内容であれ面白そうであればこっちだって話は聞く。良いと思えばお金だって出すよ。むしろ、不況だからこそ良い案件が来る可能性が高いと考えて、面白ければ無理してでも乗るんだ。

 ただし、景気が悪いと「金になりそうなこと」に人や企業が殺到しており、どうしても陳腐なアイデアに偏りがちになる。これは、コンテンツだろうが技術だろうが流通だろうがあまり変わらないと思う。IT業界だったらiPhoneやandroid、海外投資でクラウド方面に出てアメリカに安価なDCを探したいとか、そういうブームのようなものはある。だから、そういう似たようなことを考えている人がわんさかいる状況で、他人より一歩先に出るような提案をされることはあんまりないのも事実なんだよね。

 iPhoneバブルで言うなら、一昔前のセカンドライフブームと同じく、これ本当に長く続いてくれるんだろうかという疑念はやっぱり持つ。前回との違いは、いきなり潰れたり経営陣が逮捕されるような面白企業の参入が少なそうだ、というところまでだろうか。

 同じく、技術投資で言うと、webでサービスが完結するようなビジネスプランはもうほとんど通らない。タダ同然ですでに稼動している不採算サービスはたくさんもう売りに出ているから。CNETが代表的だけど。下手をすると数億あれば上場企業で微妙なところは経営権すら取れてしまう。

 こういう、相対的にリスクマネーが乏しくなっている状況ほど、出る杭になるためには何を磨かなければならないかが問われるというはっきりしてくると思うんだ。で、出る杭が思いつかなければ、それはそれでしょうがないじゃないか。歯食い縛って齧りついたって、無理なもんは無理だよ。どうしようもないさ。

 もっと気軽に逝こうぜえ。毎日せっせと頑張っていれば、そのうちいいことだってあると信じて一歩一歩歩いていけばいいんだ。


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Comments

隊長、今日は泣けるかつためになる記事ですね。梅ちゃんは悪い人ではないんですけど、ちょっと子供じみたところもある人で、梅ちゃんの日本談義、日本評価は時に氏の幼稚さが多分に反映されるんで、正直あんまり客観的な話ではないことが多いです。かといって、日本のネットの現状を肯定する気にもなれないこともまた事実ですが。

自らの内面的未熟さを棚に上げて、「日本は出る杭を叩く」みたいな、なすりつけ史観、被害妄想に走ってしまう人は、本当に驚くほど内面が幼稚なんですよね。「俺は凄いんだ、だからおまえは頭を下げろ」みたいなところまで要求できないと気が済まないというか。別の言い方をすれば、能力さえあればどんなに傲慢に振舞っても、許されるみたいな。どっかの国の、たった8年間で覇権国家としての地位と威信を一気に貶めた外交フタッフにも似たような人々がいたと記憶しますが、一言で言えば人間として、根本的な意味で絶望的に頭が悪いんですよね。人の心がわからないというか。

日本好きの日本人及び、日本好きの外国人と、日本嫌いの日本人の一番の違いは内面における成熟だと強く思う今日この頃です。

old mac user としては、iphone のアプリって HyperCard の Toolbook というオーサリングツールを思い出す。よーするにハイパーテキストのオーサリングツールだけど。
書籍にくらべ、CD焼いて紙ジャケに放り込むのは只みたいなものだから、アイディアさえあれば誰でも、ってのは似てる。
結局、ゴールドラッシュでもうけたのは誰か、という話になるのかな。

なんだかんだで普通が一番。
でも普通に暮らすのすらリスクっぽい社会になりつつあるのであるが。
あと、本当に凄いこと、特別なことが出来るのってほんの一握りだってことを
解らなくさせるのもネットの副作用だと思う。

北方領土法案

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009070302000235.html

日ロ首脳会談の前に採決とは剛毅ですなあ・・・

北方領土法案

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009070302000235.html

日ロ首脳会談の前に採決とは剛毅ですなあ・・・

フランス人と中国人を部下につかえるぐらいの人物でないと、なんも変わらんでしょ。ようは、人間の使い方、下手なんだよ。


あと、素直すぎるというか、演技が下手。これが致命的。いま、最高の演技をしているのが、オバマ。隊長のいいところは、演技力があるところ。ただ、使い方がぶれているとは思うけど。あの、政治の討論会だって、演技力だよな。ネットだって、演技力。ただ、ネットの演技力って、今は、グーグルとかブックマークとかの衣装の威力がありすぎ。

ま、結局、映画を作るみたいなところが、欠けているんだよ。総合的にすると、まるで力がないのだもの。なんか、ネットを社会の中に組み込む話とかあるけど、ネットをどーしたいか、それが見えてこない。これって、観念が優れているだけでは無理だよ。ネットの本質さえ見えているかわからないし、もっとも人間の本質を知らなかったりするわけ。人間の本質については、奥さんまかせであったり、他人まかせ。こういったタイプの天才には、実現能力はない。

単純に、自分の気持ちよさにストレートでいいだけなんだよな。どうも気持ちよくやっていないで、常に、誰かというか別の思想がないと、単純に、自分自身の本質をみつめていない。ネットでは、孤独になれないからだろうけど、だってさ、自分以外、みな敵になってもやるつもりはないわけだろ。わかる人にはわかるってだけだろ。

この点、外国人は、自分の気持ちに素直だから、嫌なことは嫌だと主張もするけど、どんな嫌なことでも、自分の気持ち良さにつながることが実感できると、そっちにつっぱしていく。これは凄いよ。オレの弟子が、今回は、やたらオレの言うことを聞くようになっていて、驚きだよ。オレが違うと思って黙っていることでも、弟子が、それは違うとか言い出すし。

自分自身の快感を見ようとせず、不快を強くおそれて観念で解決してしまい、この観念ばかりが優れてしまう。これを知性化ともいうけど、これじゃ、人を動かす原動力にはならんということだ。強い快楽がないから。

ま、それでも、思想を残すことができれば、それを経典にして布教しはじめるカリスマとかでるかもしれないけど、でも、こっちは詐欺師的だしな。

だから、日本のネットは、ボロボロに規制されてしまえばいいんだよ。ま一番、あるのは、ネットも、一般道路みたいに、人が集まるなら届出をしなければならなくなるってこと。個人の責任者名をださないと、検挙されるんだろうな。外国にサーバーがあっても同じだよ。日本人が集まっているなら。日本人の代表者を出せってことになって、出さないなら、調査してもみつからないなら、日本のプロバイダーはそこへのアクセスを遮断するように通知されるってことだろうね。それと、もう一つは、広告も規制されるんじゃないか。これで、怪しいコミュニティは全部淘汰してしまうだろうね。で、これに反発する運動とか起これば、公務執行妨害だろ。

ま、オレは、外国のネットで日本語でやっていても、充分楽しいので、日本が規制されても、別に困らないから、もー、いいけど。そのうち、英語も使えるようになるかもしれないけど、絶対に英語を使わないと思うし。下手に使うと、カリスマ性がなくなる。宇宙人みたいな存在の方が、外人にとっても都合がいいみたいだし。弟子の実力がつけばつくほど、弟子のもとには人が集まってくるのは確かだしな。


ところで、アロマは、ハゲに効くのかぁ?

気軽に逝こうぜはいいですなあ
リスクが低そうならとりあえずやってみる、なんか馬鹿馬鹿しいけど少し洗練すればなんとかなるかも、とか、いい考え方だと思うんですよね。
でも、何だかんだいって起案者というのは責任を持たされてしまうふいんきがあるし、それがわかっているからごちゃごちゃ文句言う側には回ったとしても代表にはなりたがらない人が多いでそ。ブログ主とコメンターも然り。
隊長は偉いわあ

理解されなければ、理解できない相手が悪い…

いわゆるオコサマですな。バカ向けネットにもビジネスの世界にも、時と場所を選ばすそういうのがわんさかいる、ということで。

で、隊長の目的はバカ向けの啓蒙ですか、愚痴ですか、注意喚起ですか?啓蒙なら多分効果ないように思うので、それ以外なのかな。

理解されなければ、理解できない相手が悪い…

いわゆるオコサマですな。バカ向けネットにもビジネスの世界にも、時と場所を選ばすそういうのがわんさかいる、ということで。

で、隊長の目的はバカ向けの啓蒙ですか、愚痴ですか、注意喚起ですか?啓蒙なら多分効果ないように思うので、それ以外なのかな。

mixiは無法地帯で、創業関連の人々は既に隠居みたいなサービスを立ち上げようとしているということをこの前知人から教えてもらって知りましたが、偽善とはいわないけどmixiをなんとかしてからやってほしかったなあというか。
まあ、どうでもいいけど。

http://anond.hatelabo.jp/20090704075035

こっちも読めよ。

隊長のブログはまともなコメントとそうでないコメントの差が激しすぐる

ドラッガーかなんかの本で、これからの時代は資本が知識に従属するとか何とか書いていたような気がする。

資金出すから提案してこい、っていっても、資金いらないんだもん・・・ってな感じになってきてはいないんでしょか?あの、この不況とか抜きにして大局的な感じで。

まぁ庶民なんでそこらへんのドラさんはああいってるけど実際どうなのよ?ってのは気になりんす。

ネットは独り善がりな人を極端に独り善がりにするというところがあるのは間違いないみたい。隊長みたいにバランス良い人間出来た大人が使う分には良いんだけど、何の根拠もなく思い込むタイプの人はネットやり過ぎると、ね・・・

まあそうだよね

あいやー、このブログを読んで初めて感動した。とても参考になりました!

ただ単に投資をする外国の人たちが今までみたいにアメリカの何も考えてない(もしくはお金がまわることだけしか考えてないバブルビジネス)ような人たちだけじゃなくなってきていて、きちんとモノをよく見て試して厳選されるようなそれがきちんと利用される(利用する人たちに豊かな暮らしをもたらすかどうか)に値するかどうか?で判断される人たちになってきていて・・・。

ただ、”投資をする側がITとかバブルっぽいビジネスに拘る人でなくなっていて”、すごく実益に本気でマジメな人たちに代わってきただけなのかなという気がする。

その時代の変化を感じてないと数年で人生誤る感じするよ。

日本には映画作れないとかオバマは演技とかどんな根拠が・・・

グーグルがVCに門前払い食いまくった話をこのエントリー見て思い出したw

能力がある人は長期的には成功するよ。詐欺師は長期的には痛い目見るけど。それが世の中。

まー、あれですよね、うちなんか結構規模小さいですけど
借金ないし、お客さん来るし、仕入れ先にもちゃんとしてるし、
あと、でかい口も陰口もしないんで、自然と色々話し来ますよ。
銀行も金貸したるていうてくるし、コラボっぽいこととか
フィーチャリング的な話とか、取材の話とか。どうこう言う前に
やること責任持ってやるとこには誰も文句言ってこないし、
相手もちゃんと話聞いてくれるっつーことですよね?

なんかすげーポジティブじゃん。元気でたよ。

なんかすげーポジティブじゃん。元気でたよ。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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