実に1年ぶりの更新になりました．
　万年筆のカスタマイズについてメディアで取り上げていただき，たくさんの反響をいただきました．特に染色の体験やメーカー様からの試作品のご依頼などがあります．しかし，新型コロナがはびこる事態となり，私の仕事もそれに伴い激務化とその責任を全うする立場により，体験はすべて中止とし，状況を注視していました．
　この度，状況の改善の見通しに一定の目途が立ち始めたことから，染色体験の開催を計画いたしました．
　記念すべき第1回目は，私の地元である静岡県富士市の老舗文具店「ペンネジューク」さん．社長の内海さんのご厚意によって開催となります．今回は染色体験と改造王子へのオーダー染色も承ります．当日は私が集めた100年前の万年筆の試筆ができたりして( ´∀｀ )

　ペンネジュークさんは，私が13歳の時に初めて万年筆を購入したお店です．現在の社長さんのお母さまに万年筆のいろはを教わり，納得のいくまで試筆をさせていただきました．初めて購入した万年筆は，パイロット・カスタム74（EF）です．

と　き
　令和4年1月23日（日）　染色体験10：00～15：00　　オーダー15：00～
　【体験時間】（令和3年12月15日現在）
　　①10：00～10：30　　②10：30～11：00　　③11：00～11：30
　　④11：30～12：00　　
　　⑤13：00～13：30　　⑥13：30～14：00　　⑦14：00～14：30
　　⑧14：30～15：00
　　※30分単位　各時間定員2名
　　※取消線は満員

ところ
　ペンネジューク　マルウチ　（2F）
　〒417-0051　静岡県富士市吉原3-4-5

体験費用
　　おとな　　　　￥2,000-.
　　こども・学生　￥1,500-.
　　学生は、小・中・高・高専・短大・大学・大学院・専門学校・大学校含みます。

【染色体験方法】
　事前予約制　
　　ペンネジューク　さんへメール・お問合せフォームからご予約をお願いいたします．
　　
　　下記の必要事項をご記入の上，ご予約ください．
　　　・お名前　
　　　・ご連絡先
　　　・ご希望時間　（下記の①～⑧，候補3程度）
　　　・体験者数　●人/おとな・●人/こども・学生
　　　・ペン先のサイズ（EF・F・M）
　　　・前日のご連絡の有無

　　E-mail；[email protected]
　　↓ペンネジュークさん公式お問合せフォーム↓

【体験で可能な染色】
　染色体験では，キャップと胴軸の2つになります．首軸は難易度が高いため，染色できません．また，持ち込みによる染色はご遠慮ください．

　　染色体験で体験可能な染色法の一例です．
　　単色，複数色の染め分け，複数色（4色程度まで）のグラデーションは可能です．
　　
　　体験が難しい染色
　　　マーブル染色法（写真の一番上の黄色キャップ）

【染色オーダー】
　　改造王子による染色のオーダー．写真や図などをお持ちください．
　　当日先着受付順　5名　来店受付10：00～
　　※当初7名でしたが，5名に変更となります．
　　なお，オーダーの製作は15：00～です．

　【オーダー費用】
　　材料費+技術料（2000円～）
　　最低価格は3000円～になります．
　　トラブル防止のため，持ち込みによる染色は実施いたしません．
　　なお、染色に関するお問合せは，本ホームページのお問合せフォームをご活用ください．

感染症対策のご協力のお願い
　新型コロナ感染症対策にご協力ください．また，県内や国内の感染状況によっては，直前のイベント延期もございます．ご了承ください．

文具に関する評論家の方・取材の方へのお願い
　評論家の皆様のご来訪，取材もお持ちしております．お声掛けください．
　ただし，一般の方が多くご参加されます．許可のない体験の撮影はご遠慮ください．

【はじめに】
　ご無沙汰しています．今年はあまりの多忙で執筆も新作も染色方法の研究も進みませんでした。シリーズを楽しみにされていた皆様にはお詫び申し上げます．

　さて，改造王子の染色ではあまり「黒色染料」を使用しませんでした．というよりも避けていました．
避けた理由
　①他の色を殺す（グラデーションが難しい）
　②染まる時間が早い
　③気分的に乗る気じゃない
　④めんどくさい
　⑤アイデアが浮かばない

　黒色の染料は単色染色でそのまま使えばなんとなく黒です．
ベタ塗りならぬベタ染め（単色で恋色を染めること）すれば黒くなります．

もう一度書きます．
そもまま使えば，なんとなく黒です．

1.黒色染料の正体
　普段使用しているSDNさんの黒色染料ですが，薄めた染色液をよく観察すると複数の色の混合のように見えます．たぶん．
　つまり，単色で黒ではなく，ブレンドではないかと見立てを立てたのです．

SDN「黒色」染料をグラデーション染色（単色グラデーション法）すると，こんな感じ．

写真1.SDN黒色染料を用いたグラデーション

　黒に近いブルーブラックのような灰色のような色をしています。
　なるほど．

　この黒色染料は青系の色が強く，そのほかに数種類の染料をブレンドしているのですね．

　染物の黒，特に礼服の黒はよく見ると紫だったり，赤が強かったりしますよね．また，モンブランの14Xシリーズの樹脂は，光にかざすとボルドーのように見えます．
　日常の黒いものは，基本となる色にいくつかの色をブレンドして黒くしているのです．その結果，さまざまな「黒」が存在していることに改めて気づかされました．
　逆に黒って単体，カーボンブラックとか？

2.黒染料の応用
　SDNの黒色染料は，青系が強いということがわかりました．ということは，青系のグラデーションの上に「黒色染料」を乗せたらいいのでは？と考えたのです．
　そこで，今回は夕暮れをイメージして染色をしてみました。

写真2　夕暮れ（静岡県某所　2020年10月20日頃　撮影）

　写真は，若干の加工（インチキ）をしていますが，10月20日頃静岡県某所の丘陵地から撮影したものです．
　水平線から下（丘陵地）は影なので黒
　水平線より上（空）は赤系～オレンジ～黄色　水色～青～ブルーブラック・・・という感じで胴軸を染色します．
　空を染めるポイントは，また今度．

　写真3　秋の穏やかな夕暮れ

　胴軸をSDNの空色，青色でグラデーション染色をした後，ほんの少しだけ黒を乗せてみました．すると，尾栓側付近が紺色に変化し，青いグラデーションにより深みが加わり，落ち着いた印象になりました．

　つまり，SDNの黒色染料は青色系との組み合わせがとても相性がよく，深い表現の可能性を秘めていたのです．

3.今回の実験で分かったこと
　SDNの黒色染料は青が強い
　黒のベース色と同色系統でグラデーション染色すると，色に深みが出る．

4.今後の課題
　では反対に赤との組み合わせは？
　赤と青の混色は紫．この紫を踏み台にするとうまくいくのではないかと見立てました．
つまり，赤～紫のグラデーション．その紫の上に乗せる作戦であります．
次回は赤と黒
お楽しみに!(^^)!

※グラデーション染色法
　樹脂染色法　ー②グラデーション編ー - 筆記具大学　万年筆研究科