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KDDIら5社、町田のグランベリーモールで“O2O”の実証実験
(2013/5/13 18:38)
KDDI、大日本印刷(DNP)、三井物産、東急モールズデベロップメント(東急MD)、イッツ・コミュニケーションズの5社は、東急MDが運営する東京都町田市のショッピングモール「グランベリーモール」でスマートフォンを使った「O2O」(Online to Offline)サービスの実証実験を行うと発表した。期間は5月13日~6月27日で、一般のユーザー・買い物客は無料のアプリをダウンロードすることで参加できる。
今回の実証実験は、スマートフォンアプリとWi-Fiを利用し、グランベリーモールを訪れたユーザーの買物を便利にしたり、クーポンでお得にしたりできるという内容。モール内のユーザーに対し配信する内容やタイミング、ユーザー属性に合わせた情報の絞り込み方など、さまざまな点で分析が行われる。また、アプリやユーザーの動向、実際の購買行動へのつながりなどはクラウド上にデータとして蓄積され、分析される。
iOSおよびAndroidの各アプリストアで配信されるのは、各ショップが発信する旬の情報とクーポンをまとめて見られる「すなっぴん」と、モール内の現在地付近で利用できるクーポンがプッシュで配信される「くーぴん」の2種類。KDDI以外のスマートフォンでも利用できる。
取得できるクーポンはどちらのアプリでも同じ内容。ユーザーが自分で情報を探すプル型の「すなっぴん」と、プッシュ配信される「くーぴん」それぞれの利用傾向も分析される。アプリが2種類なのは最終的な判断ではなく、実証実験の検証内容を反映させた形になっている。
通常の店舗とアウトレット店を含めて約100店があるグランベリーモールにおいて、実証実験には約60店が参加する予定。参加店のうち7割はアウトレット店になる。
13日には記者向けに説明会が開催された。KDDI ライフデザインサービス企画部長の松原理氏は、“O2O”市場がEコマースを含めて大きく成長していくとする予測を示した上で、現実的な課題として、店舗の雰囲気を伝える手段の少なさや、チラシの効果の減少、リアルタイムな情報提供の難しさなどを指摘。スマートフォンとO2Oの仕組みを活用することで、「いつも新しい出会いがあり、また来たくなるようなサイクルを作りたい」と、意気込みを語った。また、グランベリーモールについては「郊外型と都市型の双方の特徴を備えており、さまざまなユーザーの分析が可能」とした。
東急モールズデベロップメント グランベリーモール総支配人の佐藤和弘氏は、今回の実験に参加した経緯として、安売りや在庫処分など小売店の販売手法の変化によるアウトレット店舗の魅力が相対的に減少している点や、郊外型の大型アウトレット・ショッピングモールが首都圏から専用バスで送客を強化している点、情報誌など雑誌が発行数を減らし情報を届けにくくなっている点などを危機感とともに指摘する。
また、Eコマースの伸長とともにスマートフォンの位置付けが重要になっていることや、利用客の年齢が上がっていることで時間消費の場としての位置付けが高まっていることなどを挙げたほか、若年層へのアプローチも重要になっていると分析する。
佐藤氏は、実験に参加することで、「一歩先行く提案でファンを増やしていきたい」としたほか、店舗のスタッフが自ら発信できる機会の提供や、スマートフォンの広告メディアとしての検証も行っていくとした。また、KDDIが参加することで、比較的若い年齢層に向け認知度の向上を図りたいという考えも明らかにしている。
なお、実験で提供されるクーポンはアプリの画面に表示されるもので、清算時に店員に画面を見せることで利用できる。POSシステムとは連動していない形だが、今後はこうした連携も検討される。また、NFCを利用してアプリのダウンロードを補助する取り組みが今回の実証実験でも導入されているが、KDDIによれば、今後は決済での利用も視野に入っているようだ。
実験に参加しているある店のオーナーは、「多くの店舗が参加するなら効果があるのではないか」と話していたほか、周囲には住宅街が広がっている関係で、平日でも近隣住民の日常的な行動範囲の中にモールが組み込まれている様子を語り、「特別な目的を持たずに訪れる人にも情報を配信できれば」と語っていた。