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2008年3月 9日 (日)

大学の特許戦略

 
 
ちょっと古い記事だけど、大学の特許の技術移転は「落第」、だそうである。
2月28日の日経産業にでていた。
 
要約は以下のとおり、
・ 日本の大学の特許出願件数は順調に伸びている
・ 大学知財部の実力不足のため外国出願が少ない
・ 特許の質より件数を追う傾向あり
・ ライセンス収入は日本の全大学を合わせても米国の主要一大学に及ばない
 
特許出願件数は上位から、
1. 京都大  552件
2. 東北大  544件
3. 東京大  457件
4. 大阪大  388件
5. 東京工大 307件
6. 北海道大 269件
と、つづく。
 
それに対して、特許実施料収入は、
1. 名古屋大 1億6400万
2. 東京大  1億6000万
3. 慶応大    7000万
4. 日本大    4000万
5. 東京工大   2800万
6. 金沢大    2100万
と、つづく。
 
 
いやはや、大学関係者としてお恥ずかしい限りだ。
  
特に、
 
恥ずかしくないのか、東京大。
日本の公的研究資金の半分以上を使いながら、出願件数で3位、収入でも名古屋大に負けている。
コストパフォーマンスが低過ぎるネ。
ノーベル賞の数でも京大に負けてるし。
 
 
 
ところで、
    
出願件数の割に、収入が少ないというのは、何を意味するのか。
 
たとえば、国内出願でかかる費用を一件あたり、安く見積もって平均30万円とすると、京大では552件の出願費用は1億6560万円となる。
それに対して、収入は1600万円。
だから、ざくっと、1億5000万円の赤字。
しかも、知財部の人件費が大ざっぱに見て5000万かかるとすると、知財ビジネスで約2億円の赤字である。
実際には、これよりずっと大きいだろう。
 
東京大でも、支出1億4910万円に対して、収入が1億6000万円である。
ここでも、知財部の固定費を考慮すると赤字だ。
 
企業だったら、こんな事業部はお取りつぶしじゃないのか。
 
 
 
もともと、国立大学の知財部は文部科学省の方針で、各大学が数年前に設置した。知財を機関帰属(大学に帰属ね)にし、特許ビジネスで稼げと言うことだ。補助金の切れた今、お荷物部門となり大学経営の足を引っ張っている。
 
こんなこと現場では最初からわかってたんだけど、補助金欲しさの浅ましい大学がほとんどで、知財部を設立し専門家を雇った。
どこもアップアップの状態で、知財部とTLOを統合した大学も多いと聞く。
 
 
 
だから、山形大学では、知的財産は個人帰属(教員に帰属ね)だし、大学が教員から特許を召し上げて金を稼ぐなんてセコイことはしない。
教員が自由に研究活動し、ビジネスできてこそ、研究が活発になるし、優秀な人材も集る。
結果的に、外部資金獲得額が増えて管理費などの収入が増えるのだ。
 
こういう、まともな考え方すらできない日本の大学に、知財で稼ぐなんて高等なことが出来る訳がない。
 
 
なんて考えていると、
 
山形大学客員教授の米国在住でダウコーニング社にお勤めのToshio Suzuki教授から3月1日号のメールマガジンEnglish Tips (米国編その156)が届いた。
関連のある部分を一部引用させていただく。
 
 
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小生の仕事は、大学の先生と会社を結ぶことだが、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology, MIT)の先生との付き合いは多い。その理由として、MITに優秀な人材が集まっているのは当然のことだが、MITのDNAとして、「産業の役に立たない学問はしない」があるというのも大きく作用している。企業との共同研究に生きがいを感じるのがMITなのだ。まれにMITのFaculty Club(教員用の食堂)で食事をするチャンスがあるが、You can see a Nobel Laureate or two at the Faculty Club on any given day.(どの日に行っても、ファカルティクラブでは、一人や二人のノーベル賞学者に会える)と言われたことがある。これはとりもなおさず、72人ものノーベル賞受賞者を輩出した大学だからこそ言えることであろう。我らが利根川進先生もMITで研究している(会ったことはないけど)。
 
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産学連携の盛んな米国で、そのトップをひた走るMITと言う大学はこういう所なのだ。
 
だいたい、教員が「産業の役に立たない学問はしない」と言う点で、日本の大学とは大きく異なる。
重箱の隅をつつく様な研究をしても「発明」は生まれるし、特許を出願できるのだから、特許出願件数なんて意味がない。
日本の大学特許の近年の増加分なんて、所詮は「産業の役に立たない」ばかりなのだろう。
  
それに対して、
 
MITでは、ノーベル賞受賞者を72人も出し、ファカルティクラブで必ずノーベル賞に出会えるくらい教員の質は高い。
こんなレベルの高い科学者達が、産業に役立つ研究をして、特許を出願するからこそビジネスとして成り立つのだ。
 
 
結局は、
 
「知財で儲けろ」という文部科学省の方針は、単に大学の経営を圧迫し、教員の負担を増やすだけ、と言う結果に終わっている。
 
大学に理想を追求させたいのはわかるけど、今すぐMITのように変身しろというのは無理がある。
「ゆとり教育」と同じように、そろそろ方針転換したらいかがなものか。
 
 
 
マスコミも、もっと鋭く突っ込めよ。
 
 
 
 
 
 
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