Intelは米国時間3月17日、未来のグラフィックチップに関する追加の情報を公開したが、同社の未開拓分野への進出をめぐるいくつかの質問はまだ答えられないままだ。
2009年または2010年に発売が予定されている「メニーコア」のグラフィックプロセッサ「Larrabee」では設計の一部にまったく新しいベクトル処理命令のセットが搭載されると、Intelのデジタルエンタープライズグループのシニアバイスプレジデント兼共同ゼネラルマネージャーであるPat Gelsingerは述べた。ベクトル処理命令はグラフィックスやビデオアプリケーションのパフォーマンスを向上させるために使用される。読者は「SSE4」など、従来のベクトル処理命令の実装品について聞いたことがあるかもしれない。
これらの新しい命令とLarrabeeが持つx86命令セットとの互換性によって、ソフトウェア開発者はさらに仕事がやりやすくなるだろうとGelsinger氏は言う。現在、NvidiaやAdvanced Micro Devices(AMD)が支配している通常のグラフィックスのタスクに加えて、IntelではLarrabeeにさまざまなタスクを実行させたい意向だ。
これはPCチップ開発に新しく登場した領域であり、パフォーマンス向上のためにグラフィックチップの最も性能の良い部分を利用したPCチップを設計するというものである。このようなチップはいくつかの名前で呼ばれているが、おそらく最も一般的な名称は「GPGPU(General-Purpose Graphics Processing Unit)」だろう。
高性能なグラフィックチップは通常、1つの仕事を高速に実行するように設計されており、PCチップが日々処理しているような幅広い作業負荷を扱うようには設計されていない。しかし、個々のチップにより多くのコアを搭載することが可能になってきていることから、Intel、AMD、Nvidiaの各社は、幅広い作業負荷に対応できるデベロッパーフレンドリーなグラフィックチップを製造する方法を模索している。
問題は「デベロッパーフレンドリー」という部分だ。現在のGPGPUに対する一部のアプローチでは、そのチップにしか通用しない特化されたプログラミング技法を学習する必要があり、そうしたテクニックの多くはx86命令セットで培われてきた30年余の経験と比べると非常に新しいものである。
「新しいプログラマブルアーキテクチャを開発する試みは、時間のかかる大仕事であり、ほとんどは失敗している」とGelsinger氏は述べる。そして同氏が知っておくべきなのは、Intelが「Itanium」プロセッサのEPIC命令セットで新しいプログラマブルアーキテクチャを作成しようとした最後の試みは、Intelが元来達成しようとした内容とはほど遠かったことだ。Itaniumチップは今でも購入されているし開発も継続しているので完全な失敗ではないが、Itaniumはコンピューティングの主流ではなく、今後も主流にならないことはきわめて明白である。
そこでIntelの売り口上は次のようなものだ。Intelはグラフィックス/マルチメディアゲームの分野に進出したいと考えている。なぜならPCの作業負荷がますますその方向に進むと期待されるからだ、と。しかし、IntelはLarrabeeを新しい「Core 2 Duo」プロセッサと同じような方法でリリースしたいと考えている。つまり2007年に「Penryn」チップとともに導入された新しいSSE4命令について学習する必要があったのと同じように、新しいパフォーマンスを引き出すためには新しいベクトル命令セットについても使用方法を学習する必要が出てくることになる。しかし、だからといってわざわざ1からやり直す必要はない。Larrabeeは、DirectXやOpenGLのような慣れ親しんだAPIもサポートする予定だと、Gelsinger氏は念を押した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ