日本IBMは3月6日、Lenovoに売却したx86サーバ事業関連の戦略を明らかにした。IBMは今後6年間、x86サーバの保守を継続するとともに、Lenovoはx86関連のストレージやソフトウェアなどのIBM製品を販売する。両社は相互補完の連携関係を築き、IBMはLenovoの強い調達力を、Lenovoは依然として規模が大きいx86サーバ市場での成長を目指す。
x86サーバ保守はIBMが継続
Lenovoは1月にIBMのx86サーバ事業買収を発表。System xやBladeCenter、Flex Systemのブレードサーバとスイッチ、Flex Systems Integrated Systems、NeXtScale、iDataPlexなどをLenovoは約23億ドルで買収する。IBMはSystem zやPower Systems、Storage Systems、PowerベースのFlexサーバ、PureApplication、PureDataなどハイエンド向けの製品群の事業に専念する意向を示していた。
だが、実際にx86サーバ事業がLenovoに移管された後、どのような方向に進むのかに注目が集まっていた。
日本IBM 代表取締役社長 Martin Jetter氏
米IBM System xSystem xゼネラルマネージャー Adalio Sanchez氏
今回、IBMはx86サーバについて現行のサポート体制に変動がないことを強調した。日本IBM代表取締役社長のMartin Jetter氏は「当社は、引き続き国内でx86サーバの保守サービスを提供する。今後5年、保証期間1年を含め6年間はサポートを継続する。これも戦略の一つだ。既存の顧客に迷惑はかけない」と話す。
Lenovoに移籍し、同社でサーバ事業を率いることになる米IBMのSystem x事業責任者であるAdalio Sanchez氏も「x86サーバは保守業務はIBMが担い、それ以外の領域は従来と同じチームがLenovoで活躍することとなり、これまでと変わりはない。当然、スキルのレベルも同様だ」と語り、x86サーバ事業がLenovoに移行した後も、既存のユーザー環境は不変であると主張する。
もう一つ、両社の提携関係で重要なのは「Lenovoは、IBMのx86サーバ関連分野の独占的サプライヤーになる」(Sanchez氏)ということだ。
今後Lenovoは、Storwizeエントリ、ミッドレンジのディスクストレージ、テープストレージ、General Parallel File System(GPFS)ソフトウェア、SmarterCloud EntryなどをLenovoは販売することになる。Flex Systemsのストレージやソフトウェアの一部も再販する。POWERプロセッサベースのPureFlexは、IBMがこれまで通り販売する。ここでは、PureFlexのシャーシやスイッチをLenovoがIBMに供給する。
調達力とサプライチェーン能力の相乗効果
Lenovoは今や、四半期に1500万台のPCを出荷するベンダーに成長した。部材調達での強い発言力、高いサプライチェーンの能力を持つに至った。Sanchez氏は「x86サーバ市場は大きく拡大しており、規模の経済(スケールメリット)が重要になる」と語る。両社は提携することで、IBMはLenovoの調達力を、LenovoはIBMの技術力とサポート能力を相互利用し合えるようになる。
「IBMとLenovoは、互いの長所が融合することで、新しい価値を生み、競争が激化する市場で勝てる解をみつけることができる」(Sanchez氏)
Lenovoは、PCでは世界最大規模となったものの、サーバではシェアは数%の水準だ。今回の提携で、同社はサーバ市場でも伸長を図る意向だ。Sanchez氏は「Lenovoは、これまでに何度もサーバ市場への参入を考えたが成功はしていない。中国でのシェアは8%しかない。ローエンドに偏っていたが、(今回の提携で)IBMのポートフォリオで補完できる。“1+1”が2ではなく、3になる方程式だ」と述べ、中国でのサーバ事業拡大が念頭にあることを示唆した。
x86サーバはコモディティ化したといわれており、IBMがこの領域の事業を売却したのも、それが理由だろう。だが、IBMは1月にx86サーバの第6世代技術を発表しており、x86サーバでメインフレーム並みの性能を実現できるとしている。これも、Lenovoのサーバ強化戦略に大きく貢献できるだろう。