三国大洋のスクラップブック

アルゴリズムとセンサと--グーグルのNest買収をめぐって

三国大洋

2014-01-17 13:11

 米国時間1月13日に発表された米GoogleによるNest Labs買収のニュースは、32億ドルという買収額や2014 International CES明けというタイミングのせいもあり、とても大きな反響を呼んでいたようだ(Techmeme経由でみる各媒体の報道ぶりはこんな感じ。)。

 今回の買収は、金額面で言うとGoogleにとっても過去2番目くらいに大きなもの。これまでで一番大きいのは、周知の通り約125億ドルを支払ったMotolora Mobilityの買収で、その次が2007年のDoubleClickの31億ドルだ。他にめぼしいところでは、2006年のYouTube(16億5000万ドル)、2013年6月のWaze(9億6600万ドル弱)などがパッと思い浮かぶところ。「しょっちゅう大きな買い物をしている」ような印象もあるGoogleだが、10億ドルを超えるものとなると、やはりほんの少ししかない(wikipediaの項目をみると、そのことがわかる)。

 またGoogleの手持ち資金(現金)565億ドルからみても、ざっと5.6%ということで、これがなかなかのお買い物であることはほぼ間違いない。

 先に書いておくと、GoogleにとってNestの買収は、YouTubeを買った時と共通点のあるお買い物という感じがする。つまり、かなり面白いアイデア(またはビジョン)があり、勢いも増してきている会社だから、「早めに自分たちの影響下に置いておこう」(潜在的競合の芽を摘むといった意味合いも含めて)といったものであり、同時に「5年とか10年とかの長い時間をかけてじっくり育てる(その間にきちんとした事業モデルを見つけ出す)ことができればいい」といった思いがGoogle側にありそうと想像されるものでもある。

 また、かなりスケールの大きいビジョンを持ち、それを実現できそうなスキルセットや実績のある起業家のチームに力を貸すという点では、Andy RubinのAndroidを買った時とも似ているかもしれない。いずれにしても、通常の分かりやすい物差し――何年か先までの収益見通しとか、その時の株価収益率(P/E)などはほとんど意味をなさない取引という感じがする。

 そんなNestの買収を取り上げた記事の中には、発表をほぼそのまま伝えたもののほかに、Googleの思惑を推測したもの(これが一番目立った印象)や、「なぜAppleではなくGoogleに?」という疑問をめぐるもの、「だれがいくら得をしたか」といったもの(どちらも少数派)、さらにNestの共同創業者でスター経営者のTony Fadellが手配したと思われる主要媒体とのインタビュー記事などが見受けられた。

 そうした中から、今回は特に気になった話を紹介する。なお、この件については過去にiPodに関する本(『iPodは何を変えたのか?』)やGoogleに関する本(『グーグル ネット覇者の真実』)をまとめ、Nestについても新製品・新サービス発表の度にがっつりとした取材記事を書いてきているSteven Levyの見解をいちばん知りたいところだが、残念ながら原稿執筆時点ではまだ見つからない。

Steven Levyが書いたNest関連の記事

 また、The Vergeではサーモスタットと煙探知機の発表時にそれぞれ撮影していた動画が公開されている。それぞれの感じをつかみたい方には参考になるかもしれない。

  • Nest Learning Thermostat [ iPod inventor Tony Fadell explains his high-tech, smartphone-inspired thermostat ]
  • Nest Protect [ Nest Protect: a Wi-Fi smoke detector from the father of the iPod ]

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