日本オラクルは4月9日、PaaS「Oracle Cloud Platform」に関する取り組みを強化、クラウド事業をさらに加速させる考えを示した。
取締役で代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の杉原博茂氏は、「PaaSを包括的に日本でも提供することなる。SaaS、PaaS、IaaSを総合的に提供できるのがオラクルの強み。クラウドといえばオラクルと言われるようになることを目指す。全営業担当者がPaaSを売っていく。中途半端なことはやらない」と姿勢を明確にした。
あわせて、日本に年内にデータセンターを設置する一方で、引き続き、パートナーとのエコシステムにおけるデータセンター活用も強化する姿勢を改めて示した。データセンターの設置場所については「関東」という表現にとどめた。「パートナーとは、競合ではなく協業強化を行っていく」という。
同社では昨秋以降、日本でのおけるクラウド事業を本格化。これまでに200社以上にSaaSを提供しているほか、同社が掲げるVISION2020の中で2020年に「No.1 Cloud Company」を目指す姿勢を明らかにしている。
日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏
同社では、クラウド事業の加速でPaaSへの取り組みを重視。サービスを拡充するほか、今後、PaaSに特化した組織を発足。エンジニア向けのワークショップの展開で国内1万人のエンジニアを対象に技術トレーニングを提供し、クラウド時代のエンジニアを育成するほか、約1800社のオラクル製品の既存パートナーとの協業強化に乗り出すという。「日本では、PaaSを展開してから、SaaSを展開していくのが最適であると判断している」(杉原氏)
オンプレミスと同じアーキテクチャ
提供するのは、「Oracle Database」をクラウドサービスとして提供する「Oracle Database Cloud Service」、アプリケーション実行基盤「Oracle WebLogic Server」をクラウドサービスにした「Oracle Java Cloud Service」、Java EEアプリケーションのチーム開発を支援するツール群をJava Cloud Serviceの付属サービスとして提供する「Oracle Developer Cloud Service」、エンドユーザーによるセルフサービス型の操作と簡易な運用、堅牢なセキュリティ環境を実現するというビジネスインテリジェンス(BI)「Oracle BI Cloud Service」、企業向けファイル共有「Oracle Documents Cloud Service」の5つのサービス。
杉原氏は「国内だけで2万8000社のユーザー数を持つシェアナンバーワンのOracle Database、すべてのブルーレイレコーダーや1億3000万台のテレビ上で動作し、開発者900万人以上という最大規模の開発者コミュニティを誇るJavaがパブリッククラウドとして利用できるようになる」とした。
日本オラクル 副社長 執行役員 データベース事業統括 三澤智光氏
データベース事業統括の副社長執行役員である三澤智光氏は「他社のクラウドと異なるのは、オンプレミスとパブリッククラウドが同じアーキテクチャ、同じ製品、同じ知識とノウハウで提供できるという点。既存の資産を生かしながら未来のクラウドへと移行できる。JavaとSQLという最も開発者が多い技術をパブリッククラウド環境に活用できる点も強みになる」とメリットを強調した。
三澤氏は「オラクルのクラウドでは、汎用インフラに加えて、Exadataのような高性能なインフラを選択できる柔軟性も持っている。そして、SaaSと同一基盤を利用したシームレスなアプリケーション拡張を可能にした唯一のサービスを提供できる点も特徴だ。SaaSの差別化にもつながるものになる。すべてがモバイルにも対応したPaaSになっている」と特徴を示し、「近い将来には、ビッグデータやIoTなどもPaaSとして提供する予定であり、今後は数多くのPaaSを用意していくことになる」と述べた。Database Cloud Serviceを導入することで、オンプレミスに比べてコストを35%削減できるという。
クラウド技術者1万人を育成
日本オラクル 執行役員 CEOオフィス クラウド事業戦略室 高橋正登氏
執行役員でCEOオフィス クラウド事業戦略室の高橋正登氏は、「国内24万人のOracle Masterの資格保有者を中心にトレーニングを提供する。今後半年で1万人のクラウド技術者を育成する。Cloud Platformの技術者認定制度を開始し、それにあわせて、教育コンテンツを提供していくことになる」と語った。
従来のJavaとOracle Databaseのオラクル・ユニバーシティ・コンテンツに加えて、クラウド運用トレーニングメニューを追加。総時間で20時間を超えるクラウドスキル習得のためのオンラインコンテンツを提供していくという。Oracle Solution Centerで「Oracle Public Cloud」とプライベートクウラドのハイブリッドクラウド検証環境を提供。パートナーとユーザー企業が活用できるようにする。
パートナープログラムとして、既存の再販プログラムやリファーラル(紹介)ブログラムに加えて、独立ソフトウェアベンダー(ISV)向けの新たな契約を用意。オンライン動画コンテンツとともにオンラインでのコミュニケーションフォーラム「Oracle Cloud Connection」も提供する。イベントやセミナー開催、資格制度を導入する一方で、Cloud Platform上で開発されたアプリケーションやSaaS向けアドオン製品をまとめたオンラインカタログとして「Oracle Cloud Market Place」を提供するという。
米本社では、2015年度のクラウドの売上高が2400億円を超える見込みであり、2015年末には新規クラウドの売上高が1200億円を超えると予測している。
2015年度第3四半期にはSaaSでの新規顧客数800社に到達。同四半期のクラウド全体の売上高は約600億円に達しているという。同四半期には、PaaSの新規顧客数が400社に達し、ERPクラウドの顧客数は1000社を突破し、クラウドの中では最大のERPビジネスの規模を誇っていると説明する。「ERPはオンプレミスでは数年がかりで構築するものだったが、クラウドによって短期間で導入するといった動きが出ている」(杉原氏)