1990年代の後半から2000年代の初めにかけて、あらゆる規模の企業においてIT化が進み、生産性の大きな向上が達成された。その結果、IT要員は貴重な存在と見なされるようになった。しかし、テクノロジの世界は未だに絶え間ない変化にさらされ続けている。そして、こういった変化が業界を席巻し続けることで、これからの10年間はIT要員ではなく、開発者にスポットライトが当たるようになるはずだ。
ビジネスコミュニケーションやビジネスにおける効率化がこれほどまでに進んできたのは、われわれがもはや当たり前のものとして捉えているイノベーションの存在があったからこそである。筆者がここで言わんとしているイノベーションとは、今ではどの机の上にも置かれているPCや、ファイルやプリンタの共有を可能にするコンピュータネットワーク、電子メール、カレンダーの共有といったもののことであり、その究極としてウェブ技術が存在している。こういったイノベーションのおかげで、既存企業の生産性が大きく向上しただけではなく、さまざまな業界において数多くの新興企業が先行企業よりも大きな成功を収めたのであった。
1990年代のこういったイノベーションにより、ほぼすべての企業がこれらのテクノロジに大きく依存するようになった。その結果、これらの企業はトラブルシューティングを行ったり、新たなデジタルツールの使用方法を従業員に教えたり、「業務を円滑に遂行させる」ためにこぞってIT要員を雇ったのだった。
しかしそういった変革の時代は終わった。テクノロジは行き渡ったのだ。ユーザーは訓練されている。データセンターも構築されている。10年前に企業ネットワークや、電子メールを利用したグループウェア、ウェブといったものの在り方を変え、ビジネスに変革をもたらしたようなIT関連のイノベーションは最近登場していない。現在のIT部門が行っているほぼすべてのことは、既存テクノロジの焼き直しや拡張でしかないというわけだ。
さらに悪いことに、最近のITトレンドはしばしば、従来のIT部門が対応できるよりも速いスピードで変化や進化を遂げている。例として、ウェブアプリケーションやスマートフォンを考えてみてほしい。新製品が次々と登場し、アップグレードのサイクルもあまりに短いため、IT業界で長い年月を経て培われてきた手順(テストによって盤石なものにした後で配備する)に従うと、従業員への配備が承認される頃にはもはや旧式化しているということになる。
これこそが、従業員が自らのノートPCやスマートフォン、ウェブアプリケーションを(時にはこっそり)使用して仕事を行うようになっている理由であり、多くの企業がIT部門を縮小してきている理由でもある。またIT部門の縮小傾向については、『クラウド化する世界』の著者であるNicholas Carr氏のように、IT部門がなくなるとまで予想している人もいる。
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