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関西私鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

関西私鉄(かんさいしてつ)とは、近畿地方のうち、関西2府4県(大阪府京都府兵庫県奈良県滋賀県和歌山県)を走る私鉄のこと。その中には、大手私鉄5社と準大手私鉄4社が含まれる。 特に大阪を発着する関西大手私鉄5社は各社が沿線開発や流通、レジャーなどの関連事業に注力し、俗に「私鉄王国」と言われる強力な地盤を作り上げてきたことでも知られる[1]

これに対して東京近郊(首都圏)の私鉄のことを関東私鉄と称する。

鉄道会社

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大手私鉄

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このうち、近畿日本鉄道は東海地方の一部(三重県愛知県)にも路線網を持つ[注釈 1]

準大手私鉄

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中小私鉄

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ここに挙げる会社のうち、関西大手私鉄との資本関係がない会社は、水間鉄道和歌山電鐵近江鉄道紀州鉄道北条鉄道京都丹後鉄道信楽高原鐵道である。また、近畿地方かつ東海地方に属する三重県伊賀市名張市などの伊賀地方は奈良県などに隣接するため、関西地方として扱われることがある[注釈 2])の鉄道は除外する。また、JR西日本グループである嵯峨野観光鉄道も除外する。なお、大阪市営地下鉄が民営化した大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は規模的に大手私鉄に匹敵しているが、大手私鉄および準大手私鉄の認定条件である日本民営鉄道協会に加盟しておらず、国土交通省の「鉄軌道事業者一覧」においては、中小民鉄(中小私鉄)に区分されている。

かつて存在した私鉄

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ここでは1960年代以降に全線廃止または他社へ吸収合併された鉄道を列挙する。

  • 大和鉄道(近鉄グループ、1918年 - 1961年
    • 1961年(昭和36年)に同じ近鉄グループの信貴生駒電鉄に吸収合併された。その後1964年には信貴生駒電鉄が近鉄に吸収合併されたことにより、旧大和鉄道の路線は近鉄田原本線となった。
  • 江若鉄道(京阪グループ、1921年 - 1969年
    • 国鉄湖西線(現・JR湖西線)を建設するにあたり、湖西線と路線が重複するため、代替の形で湖西線が建設され、江若鉄道は廃止となった。事業者としての江若鉄道は江若交通に社名を変え、現在も京阪グループの一員として滋賀県内でバスの運営にあたっている。
  • 奈良電気鉄道1925年 - 1963年
    • 京阪電鉄と大阪電気軌道(略して大軌、のちの近鉄)が出資し、奈良電鉄幹部には京阪側と大軌側の人物が充てられていた。1963年(昭和38年)には近鉄に合併し、奈良電鉄は近鉄京都線となった。また、丹波橋駅を介して京阪と奈良電鉄との間で相互乗り入れが行われていた。なお、近鉄合併後も京阪と相互乗り入れは継続され、近鉄側が架線電圧を変更することを機に1968年(昭和43年)に相互乗り入れは終了した。
  • 信貴生駒電鉄(近鉄グループ、1926年 - 1964年
    • 大和鉄道を吸収したのち、1964年(昭和39年)に近鉄に吸収合併された。自社が開業した路線は近鉄生駒線となり、旧大和鉄道の路線は近鉄田原本線となった。
  • 三木鉄道(旧・国鉄路線を継承、1984年 - 2008年
    • 国鉄三木線を承継した第三セクター鉄道。2008年廃止。
  • 北神急行電鉄(阪急阪神東宝グループ、1988年 - 2020年

特徴

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呼称

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関西においては大手私鉄やその路線のことを「◯◯電車」と呼ぶことが一般的になっており[2]、阪急電鉄は「阪急電車」、阪神電気鉄道は「阪神電車」、京阪電気鉄道は「京阪電車」、南海電気鉄道は「南海電車」というように呼称され、実際の駅の案内板や各社のホームページ、車内放送の案内においてもそのような表記や呼び方をされている[2][3]。準大手私鉄や中小私鉄に関しては山陽電気鉄道は「山陽電車」[4]、阪堺電気軌道は「阪堺電車」[5]、叡山電鉄は「叡山電車(叡電)」[6]などと呼称される。

線路幅

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日本で利用されている主な軌間。関西においては赤の「標準軌」と青の「狭軌」が採用されている。

関東私鉄では線路幅はJRと同じ狭軌が多数採用されている一方、関西私鉄では本項で挙げた全21社の内、12社が標準軌新幹線と同様の幅)を採用しており、関西大手私鉄においては標準軌が主流となっている。これは、阪神電鉄など多くの鉄道が元々、路面電車という形で申請・建設されたことが由来となっている。また、標準軌を採用している鉄道会社の内、近鉄・京阪の鋼索線ケーブルカー)については狭軌となっており、近鉄の南大阪線系統についても狭軌となっている。なお、公営の大阪市営地下鉄を民営化して設立された大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)、地方公営企業である京都市交通局京都市営地下鉄)と神戸市交通局神戸市営地下鉄)の3つの地下鉄はいずれも標準軌を採用している。

ターミナル駅

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関東大手私鉄のターミナル駅はJR山手線に接続する駅(渋谷新宿池袋など)に存在し、環状路線である山手線より内側、つまり千代田区中央区などの東京都心には私鉄のターミナル駅は存在しない。これは山手線の各駅に接続することにより、各私鉄が自力で都心延伸するよりもターミナルに百貨店などの自社の商業施設を集中した方が利益になると判断したからである。こうして、関東大手私鉄のターミナル駅を中心としたにある副都心渋谷新宿池袋はその交通利便性から今日のような巨大繁華街へと発展を遂げた。

一方、関西大手私鉄は山手線と同じ環状路線のJR大阪環状線と接続する大阪梅田駅大阪駅)、大阪阿部野橋駅天王寺駅)に加え、天満橋駅なんば駅大阪上本町駅といった大阪環状線よりも内側にある大阪都心側(北区中央区天王寺区)に独自のターミナル駅を形成してきた。大阪の鉄道における大動脈は大阪環状線ではなくOsaka Metro御堂筋線となっており、開業後は同線と接続する駅として京阪淀屋橋駅に、近鉄(難波線[7])・阪神(阪神なんば線)は大阪難波駅に延伸し、さらに都心部への乗り入れを果たした。地下鉄御堂筋線は東海道・山陽新幹線との乗り換え駅である新大阪駅キタの中心の梅田ミナミ難波心斎橋天王寺といった大阪の重要拠点を結んでおり、各私鉄が御堂筋線に接続することにより各所への移動が容易となっている。 また、近鉄が難波に延伸したことにより、東京とは違い、大阪におけるターミナル駅がある程度集約されたことになる。また、関東私鉄ほど直通運転が積極的に行われていないことから、ターミナル駅では全ての列車を折り返す必要があり、巨大な頭端式ホームへと発展した。日本最大の頭端式ターミナル駅の阪急梅田駅(現・大阪梅田駅)を筆頭に、南海難波駅、上本町駅(現・大阪上本町駅)、阿部野橋駅(現・大阪阿部野橋駅)など昭和初期からのターミナル駅は関東大手私鉄の起点駅と比較して規模がかなり大きいことが特筆される。

なお、大阪に限らず関西では、接続駅において鉄道会社ごとに駅名が異なる場合が多い。例えば梅田では、駅の立地の微妙な違いなどにより駅名が異なっている。

乗り入れ(直通運転)

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関西私鉄は競争が激しく、かつては乗り入れも少なかったが、現在は大手私鉄同士となる阪神・近鉄でも行われている。また、阪神は山陽(準大手私鉄)にも乗り入れており、近鉄の直通により、線路だけで見ると山陽姫路駅から阪神を介して近鉄名古屋駅までつながったことになる(ただし、近鉄と山陽は乗り入れを行っていない)。また、関西大手私鉄では京阪のみが他の私鉄と乗り入れを行っていない(かつては近鉄京都線と相互乗り入れを行っていた)。一方で、地下鉄を介して他の大手私鉄やJR線との相互直通運転が盛んな関東大手私鉄と比較すると、大阪市の市営モンロー主義政策が過去にあった影響で、地下鉄は第三軌条方式のような郊外私鉄路線が直通できない規格が採用され、その数は少ない(都営地下鉄浅草線東京メトロ副都心線など首都圏では地下鉄を介した3社局以上の直通運転も頻繁に見られる)。

関西の鉄道の乗り入れ

その他

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プロ野球

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関西大手私鉄5社のうち、京阪電気鉄道以外の4社はプロ野球球団を保有していた時期があった。

民放テレビ局

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大阪を本社とする民放テレビ局(在阪テレビ局)のうち、日本テレビ系列読売テレビ以外は関西私鉄5社の資本が入っている。関西テレビ放送阪急阪神HD朝日放送(現・朝日放送グループホールディングス)は近鉄GHD・阪神、毎日放送(現・MBSメディアホールディングス)は南海京阪HD・近鉄が資本参加。テレビ大阪も近鉄が資本参加していた時期がある。特に阪急阪神ホールディングスは関西テレビの大株主であり、阪急阪神東宝グループに属している。なお、読売テレビとテレビ大阪はJR西日本・京阪線の京橋駅近くにあるが、JR西日本や京阪の資本は入っていない。

脚注

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注釈

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  1. ^ 2017年12月までは養老鉄道養老線第三種鉄道事業者として岐阜県にも路線を有していた。
  2. ^ 伊賀市を通っているJR関西本線亀山以西)と草津線はいずれもJR西日本の管内
  3. ^ 2018年(平成30年)3月31日までは大阪市交通局大阪市営地下鉄)。
  4. ^ 2004年平成16年)までは準大手私鉄
  5. ^ 2020年(令和2年)5月31日までの社名は「大阪高速鉄道」。
  6. ^ 株主には大阪府などの他に京阪(京阪ホールディングス)、阪急、近鉄(近鉄グループホールディングス)を中心に関西大手私鉄が名を連ねている。なお、大阪モノレールに接続している大手私鉄は京阪と阪急のみである。
  7. ^ 岡山電気軌道系。和歌山電鐵はかつて南海の路線だった貴志川線を分離独立して発足した。なお、近畿圏では分離独立した路線は独立前の鉄道会社の子会社となる例(伊賀鉄道や阪堺電軌など)が多いが和歌山電鐵は南海グループとは資本関係がない。
  8. ^ 2025年の泉北高速鉄道の吸収合併により、南海の路線となる予定。

出典

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  1. ^ “阪急、京阪…開業100年「私鉄王国」復活へ”. 読売新聞オンライン. (2010年3月10日). オリジナルの2010年3月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100315054009/http://www.yomiuri.co.jp/tabi/domestic/railway/20100310-OYT8T00874.htm 2023年9月6日閲覧。 
  2. ^ a b 私鉄の呼称 関西なぜ「○○電車」(とことんサーチ)”. 日本経済新聞 (2015年10月31日). 2022年7月21日閲覧。
  3. ^ ただし近畿日本鉄道(近鉄)においては他の鉄道事業者と比較して「近鉄電車」と呼ばれることは少なく、関東私鉄と同様に単に近鉄や近鉄線と呼ばれることも多い。
  4. ^ シーサイドエクスプレス山陽電車”. シーサイドエクスプレス山陽電車. 2024年3月4日閲覧。
  5. ^ 阪堺電車|暮らしがある。未来がある。ずっと息づく軌道がある。”. www.hankai.co.jp. 2024年3月4日閲覧。
  6. ^ 叡山電車”. eizandensha.co.jp. 2024年3月4日閲覧。
  7. ^ 奈良線の電車と大多数の特急が乗り入れ。

関連項目

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外部リンク

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