キューバワニ
キューバワニ | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[2] | |||||||||||||||||||||||||||
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Crocodylus rhombifer Cuvier, 1807 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Cuban crocodile Pearly crocodile | |||||||||||||||||||||||||||
分布
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キューバワニ[4](玖瑪鰐、Crocodylus rhombifer)はクロコダイル属に分類されるワニの一種。キューバの固有種であり、通常全長は2.1-2.3m、体重は70-80kgである。大型の雄は全長3.5m、体重215kgに達する。クロコダイルの中で最も縄張り意識が強く、人間にとって潜在的に危険である。
その身体的特徴と行動から、生物学者の関心を集めている。長くて強い脚を持ち、クロコダイルの中で最も陸生傾向が強い。マングローブ林の湿地、沿岸のラグーン、河口、沼地、氾濫原、三角州など、淡水および汽水環境に生息する。成体は魚、カメ、小型哺乳類を、幼体は無脊椎動物や小魚を捕食する。交尾は5月から7月の間に行われる。飼育下個体は協力して狩猟を行い、芸を覚えることもあるため、知能は高いと考えられている。
国際自然保護連合のレッドリストでは近絶滅種に指定されている。かつてはカリブ海全域に分布していたが、人間の狩猟により、現在の分布域はサパタ湿地とフベントゥド島のみとなっている。個体数の回復のため、飼育下繁殖が実施されている。化石記録によるとかつては広く分布しており、バハマ諸島[5]、イスパニョーラ島のドミニカ共和国側、ケイマン諸島[6]から化石が発見されている。
分類と系統
[編集]クロコダイル属内では原始的な形態を残した種とされる[7]。種小名は「菱形を持つ」を意味し、鱗または上顎の形状を指すとされる[4]。クロコダイル属はおそらくアフリカを起源とし、東南アジアやアメリカ大陸へと広がったが[8]、オーストラリアとアジアを起源とする説もある[9]。クロコダイル属は近縁種である絶滅したマダガスカルのヴォアイから、約2500万年前の漸新世と中新世の境界付近で分岐した[8]。
以下は2018年の年代測定に基づく系統樹である。形態学的、分子学的、地層学的データが同時に使用されている[10]。また2021年のヴォアイから抽出したDNAを使用したゲノム研究も参考とした[8]。
クロコダイル亜科 |
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分布と生息地
[編集]現在はキューバのサパタ湿地とフベントゥド島でのみ見られる[11]。かつてはカリブ海の他の地域にも生息しており、化石がケイマン諸島[12]、バハマ諸島[13][14]、イスパニョーラ島のドミニカ共和国から発見されている[15]。沼地、湿地、川などの淡水を好み、汽水域に進出することは珍しい[16]。
形態
[編集]一般的に全長は2.1-2.73m、体重は70-120kgである[17][18]。大型の雄では全長3.5m、体重215kgに達することもある[7][11][19]。雌は小型で、全長2.1mを超すことは珍しい[4]。全長1.87-2.46m、体重30-65kgの3個体の咬合力は1,392-3,127Nであった[20]。口吻は細長く、上顎に厚みがある。口吻の基部は菱形状に盛りあがる。下顎第1歯によって上顎の吻端に穴が空かない。眼後部から耳蓋上部には隆起が発達する。頚部に並ぶ鱗(頸鱗板)は4枚で、背鱗板とは離れている。背鱗板は6列で、規則的に並ぶ[7]。体色は幼体では黄褐色からオリーブ色で、黒褐色の斑紋が散らばる。成体では茶褐色から黒褐色で、側面や尾には斑紋が残る傾向にある[4]。虹彩は暗緑褐色[7]。四肢は長く頑強であり、陸上での移動も俊敏である[4]。
生態と行動
[編集]群れで狩りをする行動が観察されており、メガロニクス科などの巨大なナマケモノやナンベイリクガメ属など、先史時代の大型動物を群れで狙っていた可能性がある。この行動は通常単独で飼育されるこの種に対し、大きな関心を引き起こした[21]。クロコダイルの中で最も陸生傾向が強く、後趾の間の水かきは小さく、前肢には水かきが無い。クロコダイルとしては珍しく、非常に知的な行動を示す[22]。
食性
[編集]若い個体は小魚、節足動物、甲殻類を、成体は主に小型哺乳類、魚、カメを捕食する。後方の歯は幅広くなっており、カメの甲羅を砕く際に役立つ。アメリカアリゲーターなど他のワニにも見られるように、強力な尾によって推進力を生み出し、水から飛び出して枝の上の小動物を捕らえることもある[23]。陸上での狩りも行い、リクガメ、イグアナ、フチアなどを捕食することが知られている[4]。
繁殖と成長
[編集]5-7月にかけて交尾を行い[24]、これは降雨量や気温など環境の変化に関連していると考えられている[25]。沼地などに穴を掘って産卵し、卵を有機物で覆う[25]。飼育下では塚状の巣を作る。産卵数は30-40個で、58-70日で孵化する[24]。卵は長径7.8cm、短径5.2cm[11]。8月下旬から9月上旬に孵化するが、人間の影響、アライグマなどの動物の捕食により、多くの卵は孵化しない。生まれたばかりの幼体は全長5-7cm、体重110gである[25]。他のワニと同様に、性別は巣の温度によって決まる。飼育下では雄が生まれるように、卵を32℃に保つインキュベーターで保管する[25]。攻撃的な種であり、共食いを行うこともある。そのため幼体の生存率は低い。2012年にはスミソニアン国立動物園で25年ぶりの孵化に成功した[26]。雌は10歳、雄は13-15歳で性成熟し、寿命は50年と推定される[4]。
人間との関係
[編集]特に大きな種では無いものの、新世界のクロコダイルでは最も攻撃的な種と見なされることが多く[27]、分布が重なる地域では、より大きなアメリカワニよりも行動的に優位である[28]。人間への攻撃に関するデータは限られているが、分布域が非常に狭く、人間の居住地から離れているため、その被害は非常に少ないと考えられる。野外においては、1995年に釣りをしていた高齢男性が襲われて死亡した例が唯一である[29][30]。
ワシントン条約付属書Iに掲載されており、その生息地は非常に狭い。人間の狩猟によって、絶滅寸前となっている。現在の野生個体群については、さらに多くの研究が必要である。ヨーロッパ、アメリカ合衆国[31][32]、インドの動物園で飼育されており[33][34][35]、繁殖が行われている。
アメリカワニとの交雑も大きな脅威となっている[23][36]。遺伝子汚染は深刻であり、遺伝子解析により、野生のキューバワニの49.1%、飼育下のキューバワニの16.1%が、アメリカワニとの交雑種であることが判明した[37]。遺伝子汚染を防ぐため、サパタ湿地内に別の囲いを設け、純粋なキューバワニを隔離して保護している[11]。
スウェーデンのスカンセンの水族館には、有名なキューバワニが2匹飼育されている。カストロとヒラリーと名付けられたペアは、かつてはキューバの指導者であるフィデル・カストロが飼育していたが、1978年に宇宙飛行士のウラジーミル・シャタロフに譲渡された。シャタロフにワニの世話ができなくなったため、モスクワ動物園に譲渡され、1981年にモスクワ動物園からスカンセン水族館に寄贈された。このペアは1984年以来、数多くの子供を産んでいる[38][39]。2019年にはザリガニ・パーティー中に囲いの上に腕をかざした男性をワニが襲い、男性は一命を取り留めたものの、重傷を負い腕を切断することとなった[38][40]。
サパタ湿地のワニ飼育場は世界最大規模のキューバワニの飼育施設である[41]。農場を管理する2人の生物学者の調査によると、2022年にこの農場で飼育されていた生後4ヶ月のワニ145匹が野良猫に殺された[42]。フベントゥド島のラニエル沼では人為的に移入されたメガネカイマンによる幼体の捕食が問題になっている[7][11]。
出典
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