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研究不正

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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独自研究:この記事や節の内容は独自研究であるとする見方もあるようですが、ここアンサイクロペディアで笑いを取るためには自分のアイデアを記事に注ぎ込む事が不可欠です自己言及的なページにならない程度に我が道を突き進んでみてください。

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研究不正(けんきゅうふせい)とは、科学研究において不正行為を行う技術を競うエクストリームスポーツである。

概要[編集]

――富・名声・力。

この世のすべてを手に入れた男、アルフレッド・ノーベル

彼の死に際に放った一言は、人々を研究の道へ駆り立てた。

「おれの遺産か?欲しけりゃくれてやる。この世の真理を解き明かして人類に貢献してみせろ!」

研究者達は、ストックホルムを目指し、あの手この手を駆使して業績を上げようとする。

世はまさに、大“研究不正”時代!

現代科学の歴史は、まさに研究不正と表裏一体の関係にある。富や名声を得るため、研究資金やポストを得るため、NatureやScienceに論文を通すため、など理由は様々だが、多くの研究者が研究不正競技に参戦し、長い歴史の中で技術を磨き上げてきた。

研究不正は、リスクを恐れない勇気、バレないように巧妙に嘘をつく技術力、他者を信じ込ませる表現力、ウソを貫き通す持久力など、人類のありとあらゆる知的能力を駆使して行われるスポーツであり、近代五種競技の異名になぞらえて、キング・オブ・エクストリームスポーツとも呼ばれている。

ルール[編集]

基本ルール[編集]

競技期間
研究不正は生涯にわたってポイントを稼いでいく競技である。初めて研究不正を行った瞬間に競技スタートとなり、その人の人生が終わるまで競技は続く。ただし、研究不正がバレて研究者人生が終了となった場合は、その時点で競技終了となり、過去の論文等をチェックしてポイントの集計を開始する。
論文執筆点
なんらかの研究不正を行って論文を執筆し、それが受理されて論文誌に掲載された場合、その論文誌のその時点でのインパクトファクターが論文執筆点として加算される。ただ論文原稿を書いただけだったり、論文がリジェクトされた場合には、得点は入らない。インパクトファクターが高い論文誌であればあるほど、世間からの注目度も高く研究不正も難しくなるので、そのぶん得点が高くなるよう設定されている。
継続点
不正論文が掲載されてから1か月経過しても研究不正がバレなかった場合、1点が加算される。以後、バレない期間が1か月伸びるごとに1点が加算され続ける。
悪質点
論文の中に不正箇所が2~9か所ある場合、論文執筆点は1.5倍になる。論文の中に不正箇所が10か所以上ある、もしくは、論文の内容が全部捏造の場合、論文執筆点は2倍、かつ、継続点も2倍となる。ただし、これらの加算は盗用・粗製乱造種目の場合は適用されない。
特別点
不正の方法がこれまでにない画期的な方法であった場合、第三者委員会などが協議して特別点を付加する場合がある。
得点計算に関する批判
この計算方法では論文誌以外で行われる不正については採点ができないという批判がある。例えば、卒業論文博士論文プレスリリース、学会発表、書籍などで行われる研究不正については、採点ができないという問題点がある。

参加資格[編集]

この競技への参加資格を得るためには、研究不正を行っているという自覚がなければならない。その点が疑似科学などの類似種目とは異なる。

単なるミスや書き間違いの場合には研究不正とは見なさない。ただし、本人が認めなくても、「どう考えても故意に不正してるやろ」と分かる場合は、競技に参加していると見なされる場合がある。

研究者が固定観念に囚われていて視野が狭くなっている場合には、話がややこしくなる。その状態になると人は見たいものしか見えず、不都合な事実は全て「これは例外」「ただの操作ミス」「コンタミしただけ」などと自分に言い聞かせてなかったことにしてしまう傾向がある。第三者から見たらどう考えても改竄にしか見えないようなことをやっていても、「いや、そんなことしていない」と本気で信じ込んでしまうケースが結構ある。そのため、何をもって研究不正競技者と見なすか、その線引きは意外と難しいのだ。

また、科学的に間違ったことを言ってるからといって、それが研究不正だとは限らない。逆に、科学的に正しいことを言っていたとしても、それを言う過程で不正行為をやらかしていたなら、それは研究不正となる。

種目[編集]

捏造・改竄・盗用が、研究不正の三大種目として知られている。この他に、画像加工・統計処理・粗製乱造・ハラスメント・誇張・団体戦などの種目が存在する。誇張と団体戦については、採点が難しいため参考種目となる。

捏造[編集]

捏造とは、在りもしない実験やデータをでっち上げ、それを何食わぬ顔して公表する技術を競う種目であり、研究不正の中でも最もポピュラーな種目である。捏造種目の選手は主に、ゴッドハンドストーリーテラーに大別される。

ゴッドハンド型は、この世に存在しない物をでっち上げる能力に長けた選手であり、巧妙な偽物を作る高い技術力が必要とされる。ピルトダウン人の化石を捏造したマーティン・ヒントン選手や、旧石器時代の遺物を地面に埋めた藤村新一選手、STAP細胞を作り上げた小保方晴子選手などが有名である。

ストリーテラー型は、まるで小説を書くかのように、頭の中で自分にとって都合のいい実験結果を作り上げ、それを論文等で発表することに長けた選手である。物語を作り出す並外れた想像力、そして何より、その物語を人々に信じ込ませる巧みな文章力・表現力を必要とする。ストリーテラー型の選手として最も有名なのは、頭の中だけで膨大な数の麻酔の臨床試験を行い180報以上の論文を書いた藤井善隆選手であろう。ちなみに、藤井選手は撤回論文数の世界ランキングでも長らく1位となっていたが、2023年に2位に陥落している。

改竄[編集]

改竄とは、実験データなどを自分にとって都合がいいように書き換える競技である。捏造が成形手術によって顔を完全に変えてしまうことだとしたら、改竄は見た目をよくするために「お化粧」をするようなものである。しかし、たとえお化粧であってもそれを何度も繰り返すと成形手術レベルにまで発展していくので、捏造と改竄の境界線は曖昧である。

ウソは泥棒の始まりという言葉があるが、研究不正もまた、最初は小さな改竄からスタートし、それが徐々にエスカレートして大規模な捏造に至る、というのが有史以来お決まりのパターンとなっている。

盗用[編集]

盗用は、他人が考えたアイディアや、すでに他人が発表した研究内容を、さも自分が最初に思いついたかのように偽って発表する技術を競う種目である。

こちらもかなり古くから実施されている種目であり、ロバート・ミリカン選手のように盗用した業績によって後にノーベル賞を受賞した選手もいる。また、チャールズ・ダーウィンジェームズ・ワトソンのような著名な研究者も、盗用とは言い切れないものの結構グレーなことをやってると指摘されることがある。

近年の盗用種目で一番有名なのはエリアス・アルサブティ選手で、元上司の論文原稿やら査読で回ってくる他人の論文やらを使って、60報もの盗用論文を作成したことで知られている。

画像加工[編集]

研究不正によって撤回されたとある論文(A. Smithies, et al. 2014)から抜粋してきた電気泳動の画像。3レーンの一番上のバンドが別の論文からコピペされた部分。よ~く目を凝らしてみると不自然な線が…

画像加工は、捏造・改竄のうち、論文で使われる画像を加工する技術に特化した種目である。かつては競技人口はそれほど多くなかったが、フォトショップなどの画像編集ソフトが普及したことにより一気に急増。黄禹錫小保方晴子のようなスター選手も現れ、世界的な人気種目となった。

画像加工種目において、最もよく使われるのは電気泳動実験の画像を加工する手法である。電気泳動では、アガロースやポリアクリルアミドのようなゲルに電圧をかけて、核酸タンパク質のような高分子を流す。ゲルというのは障害物競走の網みたいなもので、小さい分子は早く通過できるが、大きい分子は網に引っかかってなかなか進めない。この移動速度の差を上手いこと利用して様々な生物学の実験に利用できるようにしたのが電気泳動というやつなのだが、それによって得られる画像が右のような感じで、実にシンプル、素人でも簡単に加工できてしまう代物なのである。なので、電気泳動は今や研究不正の温床となってしまっている。

この分野の先駆者はアメリカのマーク・スペクター選手と言われており、当時はパソコンなどもあまり普及してなかったためゲルに直接細工をしていたという。その後、フォトショップの普及とともに使用者が急増し、誰もが使える基礎的な技法となっていった。

統計処理[編集]

和歌山市出身の著名人の身長データ(ウィキペディアに記事がある著名人のうち、身長が分かる人のみのデータ)。調査Aは、男性6名、女性5名の身長データを使ってp値を算出した。調査Bは、調査Aのデータのうち、男性6を除外してp値を算出した。

統計処理とは、実験データの統計処理をする際に行われる捏造・改竄の技術を競う種目である。近年の研究では、膨大なデータをコンピュータで解析することが増えたため、それに伴って統計処理種目の競技人口も増えている。

この種目において広く使われているのが、p値ハッキングという戦法である。p値とは、実験データを検定した時に出てくる値の一つで、教科書などには「2つの標本間の差が偶然によるものだと仮定した場合に、実験結果と同じかそれ以上に大きい差が観測される確率」などと長ったらしく説明されているが、p値の正しい定義については正直誰も気にしてない。分かりやすく言えば「p値が小さければ小さいほど、両者の差が大きいですよ~」という大ざっぱな指標みたいなものである。そして、多くの科学分野で「p値が0.05未満なら、まあ差があると言っていいんじゃねーの?」という暗黙の了解がある。そのため、世界中の研究者が、

  • テキトーな理由をでっち上げて不都合なデータを除外する
  • たまたま良い結果が得られるまで実験を繰り返す
  • 得られたデータを捏ね繰り回して良い感じに整える

みたいなことを繰り返して、なんとかp値を0.05未満に持っていこうと悪戦苦闘しているのである。文章で言ってもよく分からないと思うので簡単な例を出そう。

あなたは「日本人の男性と女性の平均身長には差がある」という仮説を検証したいと思った。そこで、ウィキペディアの和歌山市のページに載っている和歌山市出身の著名人の身長を調べてみたが、p値は0.087だった(図の調査A)。困った…どうしたものか…。いや、ちょっと待てよ。今回調べた和歌山市出身の男性の中に、一人だけ、やけに身長が低い奴がいたぞ。この調査ではあくまでも「平均的な男女」で身長を比較したいので、極端に身長が高い人や、極端に身長が低い人は除外して考えるべきだ。そう考えたあなたは実験データの中から極端に身長が低い男1名を除外することにした。すると、p値は無事に0.05未満となり、最初の仮説は正しいと示された(図の調査B)。めでたし、めでたし。

この種目の一番の売りは、なんといってもその手軽さである。捏造や改竄のようなあからさまな研究不正をやることに抵抗がある人でも、p値ハッキングは比較的簡単に参加することができる。また、全く存在しない実験結果をバレないように捏造することはかなりの技術を要するが、p値ハッキングなら元々あるデータをちょっと「お料理」するだけなので、初心者でも簡単に始められる。そのため、完全に無自覚な状態でp値ハッキングをやっている者も少なくないと言われている。

p値ハッキングは、心理学者や経済学者がよく使う手法であり、特に行動経済学の分野で多用されている。ここでは詳しくは述べないが、近年報告された「マクベス効果」「パワーポージング効果」「プライミング効果」などに関する研究についてもp値ハッキングが横行しているという。そのため、これらの効果について追試をやっても、大半は再現性が無いか、あったとしてもハナクソみたいに微々たる効果しかないということが今日では分かっている。

粗製乱造[編集]

粗製乱造は、科学的価値のほとんどない雑魚論文を大量に投稿する技術を競う種目である。近年、大学などの研究機関では、研究者の雇用や学生の単位認定に際して一定の論文数をノルマとして設定することが多くなっている。それに伴い競技人口は増大しており、世界中の研究者が論文の内容をまるで金箔のごとく極限まで薄くする技術を日夜競い合っている。

この競技は主にハゲタカジャーナルという粗製乱造専門の論文誌を使って行われる。通常の論文誌では、査読によって投稿内容が厳しくチェックされ、本当に価値があると判断されたものだけが掲載される。しかし、ハゲタカジャーナルでは査読が大幅に省略されており、掲載料を払えばいくらでも論文を投稿することができるため、本種目を実施する上で欠かせない存在となっている。

粗製乱造種目の中で特によく知られた戦法が二重投稿と呼ばれるもので、タイトルだけ変えた全く同じ研究結果を、別々の論文誌に投稿することで論文執筆数を稼ぐという戦法である。ただ単に論文をコピペするだけではすぐバレてしまうため、巧妙に文面を変えたり、元々英語の論文を日本語に翻訳し投稿するなどの工夫をして芸術点を稼ぐやり方が一般的である。

また、二重投稿までは行かなくとも、本来なら一つの論文で発表すべき内容を何分割にも分けて、デアゴスティーニのように少しずつ投稿するという方法も広く行われている。このような論文のことを欧米では、薄くスライスしたサラミに見立てて、サラミ論文と言ったりもする。近年では、ChatGPTなどのAIを活用して論文を書く手法が広まったこともあり、今後ますます発展していく種目だと言われている。

ハラスメント[編集]

ハラスメントは、部下や学生などにプレッシャーをかけて研究不正を行うように仕向けたり、科学コミュニティ等に圧力をかけて自分とは異なる意見を握りつぶそうとしたりする種目である。

地動説進化論を否定したキリスト教勢力や、ユダヤ系研究者が提唱した理論(相対性理論など)を否定したドイツ国粋主義の研究者など、古くから様々な分野に競技者が存在していた。他の種目と比べてより年配の研究者が活躍することの方が多いのも本種目の特徴である。若い頃は優れた研究者として注目されていたのに、次第に時代についていけなくなって老害化し、ハラスメント種目に転向した者も多い。若い頃の業績が大きければ大きいほど、世間に与える影響力が大きいため、ハラスメント種目でも活躍できる可能性が高いとされる。

また、ハラスメント種目では、研究不正がバレた後も首謀者が罪に問われないこともある。例えば、アンドリュー・スミシーズ選手は自分の研究室の学生にパワハラを行い、自分の仮説にあったデータを出すよう強要した。追い詰められた学生は前述したゲル電気泳動の画像の加工などを繰り返し行った。そのような不正が10年以上繰り返されたのち外部からの指摘によって不正が発覚したが、スミシーズは知らなかったと言い訳して国外逃亡した。

誇張[編集]

誇張とは、本当は大したことない研究成果なのに、あたかもそれが物凄い価値のある大発見であるかのように信じ込ませる種目である。この種目の参加者の多くが、国や投資家などから研究資金をかき集めることが目的だと言われている。NASAのような国家機関から、村木風海選手のような民間企業の研究者まで、幅広い分野から研究者が参加している。

誇張種目は、科学論文の中だけでなくプレスリリースや株主総会といった場所でも実施されることが多い。その際、プレゼン資料の片隅に蟻より小さい文字で「※動物実験での結果です」「※効果には個人差があります」「※当社比」といった便利な言葉を載せておくのが常套手段となっている。そこでは、あくまでも嘘はつかないということが重要となる(嘘をついてしまったらそれは捏造・改竄になってしまうため)。捏造・改竄・盗用などがバレたら即レッドカードなのに対して、誇張はイエローカードになるかどうかのギリギリを攻める絶妙な力加減が求められる種目であると言えよう。

とはいえ、誇張を何度も繰り返していくと、どんどん説明に無理が生じていき、やがて捏造・改竄にも手を染める羽目になるのがお決まりのパターンとなっている。

団体戦[編集]

上で挙げた種目はどれも基本的には研究者個人が行うものであるが、研究不正には団体戦も存在する。それは、研究者だけでなく、論文誌の編集者、査読者、マスコミ、政府機関、政治家などが協力して行われる競技である。

例えば、ある化学物質がガンに効くかどうかを何人もの研究者が調査してるとする。最初はネガティブなデータしか出てこないが、何割かの研究者が捏造なりp値ハッキングなりをやって良さげなデータを出してくる。それらの結果は一早く論文として世に出て、マスコミもそれを大々的に報じ、研究者は世間からチヤホヤされる。一方、ネガティブなデータについては、研究者もそれを論文として公表しようとはあまり思わないし、論文を書いたところで査読者から「つまらん」と一蹴される可能性が高いので、世間からは完全になかったことにされる。それを分かりやすくまとめたのが下の図である。

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この図で示す通り、最初のうちはネガティブなデータしかなかったものが、研究を進めて発表していくうちに段々とポジティブなデータ(つまり「〇〇はガンに効く!」みたいなセンセーショナルな結果)の割合が多くなり、最終的にはまるでそれが真実であるかのように世間で広まってしまうのである。

私達がトイレでウンコをした場合、それは下水道などを通るうちに薄まり、最後には下水処理施設で浄化されてから海に流れていく。しかし、研究不正団体戦の場合には、ウンコは下流に行けば行くほど濃縮され、海に着くころにはもうウンコしかないという摩訶不思議なことが起こるのだ。

驚くべきことに、編集者、査読者、マスコミ等の、このプロセスに関わるほとんどの人は、自らが研究不正をやっているという自覚すらない。彼らは「みんなが驚くような論文を掲載したい」「査読めんどくせ~な~」「視聴率をとりたい」という己の欲求に従っているだけであるにもかかわらず、あたかも自然淘汰によって生存に有利な生物種だけが生き残るように、間違ったデータだけが選抜され世間に拡散される。

この手の大規模な団体戦は、薬学疫学栄養学などの分野で行われることが多い。例えば、新型コロナやガンなどの病気に効く特効薬を探索する研究論文は世界中で出版されているが、それらの論文をかき集めて深く解析し、より大規模かつ正確なデータを得ようとする研究もなされている(そのような研究をメタアナリシスという)。しかし、上記のウンコ濃縮の図からも分かるとおり、ネガティブな実験結果はそもそも論文として公表されてない場合が多い。そのため、一生懸命メタアナリシスを行っても、集めた論文が高濃度のウンコで汚染されていた場合には、全く実態を反映していない結論が導かれることがある。

その他の研究不正[編集]

批判[編集]

研究不正競技に対しては「科学を愚弄し、科学の信頼性を貶める行為だ」という批判が昔からされている。また、「研究不正はいつか必ずバレるのだから、やる意味がない」という声も大きい。

例えばあなたが研究不正を行って論文を書き上げ、アクセプトされて無事掲載されたとしよう。アラン・ソーカルならそれで目的達成かもしれないが、研究不正競技はここからが本番である。あなたは、その論文の中に書かれた嘘がバレないように、ずっと細心の注意を払いながら生きていかなければならない。しかもそれは死ぬまで続く。

論文は世界中に公開され、多くの研究者によって再現性を確かめるための追試がなされる。この論文に書かれた内容の再現ができないという声が出てきて、世界中の研究者から「あれれ~おかしいぞ~」という疑惑の目が向けられる。あなたはそのような声に反論し、必死に言い訳を考えなければならない。

しかも、研究というものは、論文に書かれてある内容をもとにしてより発展した内容の論文を書く、という作業の積み重ねである。だから、一度ウソを書いたら、その次も、またその次も、とウソを重ねていくことになる。こんな自転車操業みたいなことをやって芋づる式にウソが積み重なっていけば、不正はますますバレやすくなるし、それを隠し通すために膨大な時間と労力がかかることになる。そんなことやっていては研究が成り立たなくなるのは時間の問題である。

そして、その時がやってくる。ついにウソがばれ、あなたの論文は撤回され、あなたは解雇される。他の研究機関に移籍したいと思っても、もちろんそんなことはできない。研究不正という「前科」は一生付いて回るので、もうアカデミアの世界にあなたの居場所はない。

研究不正やめますか?

それとも研究者やめますか?

こうして考えてみれば、やはり研究不正などやっても何も良いことないと分かる。待っているのは破滅だけだ。

批判への反論[編集]

にもかかわらず、いまだに多くの研究者が研究不正に参戦しているという現実がある。ある調査によれば、約2%の研究者が研究不正をやったことがあると答え、約14%が他人が研究不正をやっているのを見聞きしたと答えている。なぜ、これほどまでに研究不正は人気なのだろう。

その理由は明らかである。研究不正のほとんどは発見されずにスルーされているのだ。実は、藤村新一選手や小保方選手のように見つかってしまうケースの方が圧倒的に少数派なのである。

「いやいや、世界中の研究者によって再現性の確認が行われてるじゃないか」と反論があるかもしれないが、はっきり言って、この世にある論文の大部分は再現性の確認など一度もされてないのだ。今日の研究はかなり細分化が進んでいるし、実験も大規模でお金がかかるので、おいそれと再現実験をするわけにもいかない。再現実験は成功しようが失敗しようが研究者にとってほとんどメリットが無いので、研究者はみな、そんなものに時間を費やすよりも、自分の研究の方に注力したいと思う。再現性という網の目は「天網恢恢、疎にしてダダ漏れ」であるため、余程やり方が下手クソであるか、余程運が悪いかでない限り、研究不正がバレることは無いのである。

もちろん、NatureとかScienceみたいな一流紙で捏造をやったり、常識的に考えてあまりにもおかしな事を言ってたりしたら、さすがにバレる可能性が高くなる。ゴッドハンドやSTAP細胞はさすがに度が過ぎた。しかし、ちょっとだけ話を盛ってみたり、ちょっとだけ画像にお化粧してみたり、ちょっとだけスプレッドシートの数値を修正したりしても、それらはほとんど気づかれない。そうして、ちょっとだけ嘘を混ぜた論文は、ちょっとだけ見栄えが良くなり、ちょっとだけインパクトファクターの高い論文誌に、ちょっとだけ掲載されやすくなる。その誘惑に抗えずに、多くの研究者が研究不正に手を染めるのだ。

もちろん研究不正は、世間一般に詐欺師とかサイコパスとか呼ばれている人達も多く参戦しているし、常日頃から嘘ばっかり書き連ねているアンサイクロペディアンにおあつらえ向きの競技であることも確かである。しかし、そのような異常者でなくとも、ごく一般の研究者も気楽に参加することができる競技でもあるのだ。そして、競技を続けるためにまるで修行僧のような決死の覚悟をする必要もない。

だからこそ、研究不正はこれほどまでに広まっているし、これからも無くなることはないであろう。

日本の研究不正[編集]

研究不正がどの程度行われているかを表す指標として論文撤回数ランキングがある。その2023年版ランキングにおいて、ベスト(ワースト?)30に日本人研究者は7名もランクインしており(日本人最上位は藤井善隆選手で2位)、研究不正は日本のお家芸となっている。世間で有名な小保方選手などはランキング外であり、研究不正のプロからしたらアマチュアもいいところだということが分かる。

なお、このランキングは単なるミスによる論文撤回も含まれるため、厳密には論文撤回数=研究不正とは言い切れないのだが、ここで上位にランクインしてるような人達は皆、何十報もの論文を撤回している猛者たちで、確実にやってる人達なので、論文撤回数=研究不正と見なしてよい。

関連項目[編集]

銅
流行記事大賞 銅賞受賞記事

この記事は2024年流行記事大賞にて銅賞を受賞しました。
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