神道政治連盟
神道政治連盟(しんとうせいじれんめい)は、日本の政治団体。略称名は神政連[1]。神社界を母体として1969年11月8日に結成された神社本庁のロビー活動団体である[4][3][5]。
神道政治連盟 | |
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正式名称 | 神道政治連盟 |
英語名称 | Shinto Association of Spiritual Leadership[1] |
略称 | 神政連[1] |
所在地 |
日本 東京都渋谷区代々木1-1-2(神社本庁内)[1] 北緯35度40分46秒 東経139度42分10秒 / 北緯35.67944度 東経139.70278度座標: 北緯35度40分46秒 東経139度42分10秒 / 北緯35.67944度 東経139.70278度 |
会長 | 打田文博[2] |
目的 | 「世界に誇る日本の伝統や文化を後世に正しく伝えること」[1] |
設立年月日 | 1969年11月8日[3] |
関連組織 | 神道政治連盟国会議員懇談会 |
拠点 | 47の都道府県本部 |
ウェブサイト | https://www.sinseiren.org/ |
概要
編集神社界を中心に構成される政治団体で、「世界に誇る日本の伝統や文化を後世に正しく伝えること」「日本らしさ、日本人らしさを回復し、私達が生まれたこの国に自信と誇りを持つことが出来るよう、神道の精神に基づいて憲法改正など様々な運動に取り組んでい」くことを活動目的としている。全ての都道府県に本部を持ち、東京都渋谷区代々木の神社本庁内に中央本部を置く。
1966年に行われた神社審議会の答申の後[6]、1968年の「神道政治連盟(仮称)準備委員会規則案」では神職の議員を参議院に送り込むことが謳われたが、1970年の推薦の基準では「当分の間独自の候補を立てず、従来の神社関係議員を中心に推薦応援する」とされ、既存政党の議員や候補者を推薦する傾向にあった[6][7]。
1969年11月8日に設立。初代会長は飛騨一宮水無神社宮司から岐阜県神社庁長官を経て務めた上杉一枝[3]。設立時の規約第4条によれば、連盟は事業として綱領の実現にむけて、政治に関する諸問題の研究調査並びに啓蒙普及・機関紙及び諸印刷物の発行・講演会の開催・選挙を通じて議員を国会その他に送ることを行う[8]。会員は綱領に賛同し会費を納める満20歳以上の者及び法人から構成される。同年12月27日に行われた第32回衆議院議員総選挙で神道政治連盟は23人の候補者を推薦し、そのうち19人が当選した[3]。
1970年5月11日、神政連の趣旨に賛同する日本の国会議員からなる議員連盟として、「神道政治連盟国会議員懇談会」が結成された。
設立当時は政治団体だったが、改正政治資金規正法との兼ね合いで1995年に政治団体としては解散し、以後は任意団体として活動している[9]。
2001年7月の参議院議員選挙に際しては、有村治子、尾辻秀久、桜井新の3人の比例区候補者を支援。いずれも当選を果たした[10]。
2016年、長曽我部延昭が会長を退任。新会長に打田文博が就任した[11][12]。
2019年7月の参議院議員選挙に際しては、総務会長の藤原隆麿が神政連選対本部長を務め、4選を目指す有村を支援した[13]。
2021年10月1日発行の機関紙『神政連レポート 意』No.215に、弘前学院大学教授の楊尚眞による論評「同性愛と同性婚の真相を知る」が掲載される[14]。2022年6月13日に神道政治連盟国会議員懇談会が参院選に際し都内のホテルで開いた会合で、当該論評が掲載された冊子が配布されると[15]、同年7月4日、当事者団体の全国組織「LGBT法連合会」が抗議声明を発表し、当事者らは永田町の自民党本部前に集まり、抗議活動を行った[16]。
日本会議との関係
編集1997年5月に発足した保守主義団体「日本会議」[17][18]との密接な関係が指摘されている。下記のとおり神道政治連盟の役員の多くは日本会議の役員・幹部を兼職している。
氏名 | 職歴等 | 神道政治連盟 | 日本会議 | 【出典】 |
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服部貞弘 | 岩津天満宮名誉宮司 | 会長 | 日本会議顧問 | [19][20] |
宮崎義敬 | 忌宮神社宮司 | 会長 | 日本会議代表委員 | [20] |
長曽我部延昭 | 伊豫豆比古命神社名誉宮司 | 会長 | 日本会議代表委員 | [11] |
打田文博 | 小國神社宮司 | 会長 | 日本会議代表委員 | [21] |
服部憲明 | 岩津天満宮宮司 | 副会長 | 日本会議愛知県本部代表委員 | [22][23] |
徳川康久 | 靖国神社宮司 | 事務局長 | 日本会議代表委員 | [24] |
大原康男 | 宗教学者 | 政策委員 | 日本会議政策委員 | [25] |
百地章 | 法学者 | 政策委員 | 日本会議政策委員 | [26] |
伊藤哲夫 | 政治活動家 | 政策委員 | 日本会議政策委員 | [13] |
星野和彦 | 戸隠神社宮司 | 新潟県本部長 | 日本会議新潟県本部事務局長 | [27][28] |
田中恆清 | 神社本庁総長 | 京都府本部長 | 日本会議副会長 | [29][21] |
衞藤恭 | 片山神社宮司 | 大阪府本部長 | 日本会議大阪運営委員長 | [30] |
柳澤忠麿 | 大阪護國神社宮司 | 大阪府本部長 | 日本会議大阪運営委員長 | [31] |
本名孝至 | 伊弉諾神宮宮司 | 兵庫県本部長 | 日本会議兵庫運営委員長 | [32] |
竹間宗麿 | 高良大社宮司 | 福岡県本部長 | 日本会議福岡参与 | [33][34] |
川上親昌 | 鹿児島神宮宮司 | 鹿児島県本部長 | 日本会議鹿児島会長 | [35] |
このほか、神政連・日本会議の双方に議員連盟があり、「神道政治連盟国会議員懇談会」と「日本会議国会議員懇談会」の参加議員の重複も多い[36]。神政連も日本会議も目指す国家像は重複し、復古的・右翼的な主張を繰り返す[37]。ただし、神政連が“選挙応援団体”に留まっているのに対し、日本会議は明確な右翼イデオロギーを掲げた“国民運動団体”であるとする意見もある[38]。
主張・活動
編集現在の主張・活動
編集「日本に誇りと自信を取り戻すためさまざまな問題に取り組んでいます」という言葉を公式サイトに掲げ、以下の主張と活動を行う[1]。
- 新憲法の制定[39]。「戦後日本の歪められた精神を一刻も早く回復するため」悲願である憲法改正の運動に神政連は尽力してきたと述べる[40]。
- 靖国神社に祀られる英霊に対する国家儀礼の確立[1]。
- 天皇男系維持[39]。
- 女性宮家創設に反対[39]。2011年11月25日に藤村修官房長官が女性宮家創設の検討に言及した際[41]、藤村を「無知」と批判した[42]。
- 東京裁判の否定[39]。
- 日本の過去の戦争を侵略戦争ではなく「アジア解放の戦争」と位置付ける[43]。
- 戦後の日本は「物質的に豊かになったが、思い遣りやいたわりの心を欠く個人主義的な傾向が強まった」社会であると主張[44]。
- 夫婦別姓制度の危険性を主張[45]。
- 北方領土や竹島、尖閣諸島などを自身で守れる社会をめざす[1]。
- 教育勅語を「普遍的な徳目が凝縮されている」と賛美し、普及活動に務める[46]。会員大会では開会時に教育勅語を朗読する[47]。
設立時の綱領
編集設立時(1969年)の綱領は以下の5項目[6]。
選挙応援
編集神政連は、国政選挙(主に参議院議員通常選挙)においてこれまで複数の候補者を推薦・応援してきた。
2005年(平成17年)の推薦者の基準として以下を挙げた[6][48]。
- 皇室の伝統を尊重する者。
- 改憲論議を推進する者。
- 教育基本法の改正を含む教育改革に取り組む者。
- 安全保障体制の確立・領土問題の解決に取り組む者。
- 戦没者追悼のための新施設構想に反対する者。
- 夫婦別姓や男女共同参画社会の推進に反対する者。
下記の候補者を国会議員選挙で推薦・応援した。
- 1971(昭和46)年参院選:青木一男、黒住忠行、町村金五、藤原岩市(落選)、玉置和郎、平泉渉[49]
- 1974(昭和49)年参院選:源田実[49]
- 1977(昭和52)年参院選:堀江正夫、西村尚治、玉置和郎、黒住忠行(落選)[49]
- 1980(昭和55)年参院選:源田実、板垣正(日本遺族会事務局長)、村上正邦(生長の家政治連合国民運動本部長)[49]
- 1983(昭和58)年参院選:堀江正夫、柳川覚治[10]
- 1986(昭和61)年参院選:村上正邦、板垣正、永野茂門[10]
- 1989(平成元)年参院選:柳川覚治、田村秀昭[10]
- 1995(平成7)年参院選:小山孝雄[10]
- 1998(平成10)年参院選:村上正邦[10]
- 2001(平成13)年参院選:有村治子、尾辻秀久、桜井新[10]
- 2004(平成16)年参院選:水落敏栄、鈴木正孝、山谷えり子[10]
- 2007(平成19)年参院選:有村治子[50]
- 2010(平成22)年参院選:山谷えり子[49]
- 2013(平成25)年参院選:有村治子[49]
- 2016(平成28)年参院選:山谷えり子[51]
- 2019(令和元)年参院選:有村治子[13]
議員連盟
編集脚注
編集- ^ a b c d e f g h “各項目参照”. 神道政治連盟. 2020年12月20日閲覧。
- ^ “安倍応援団の「神道政治連盟」幹部が自殺、身に迫っていた刑事告訴の動き”. DIAMOND online (2020年6月12日). 2020年12月20日閲覧。
- ^ a b c d “『やくわえ』創刊号(1970年3月27日発行)”. 東京都神道青年会. 2024年1月9日閲覧。
- ^ “関係団体一覧”. 神社本庁. 2020年12月20日閲覧。
- ^ 神道政治連盟 1984, pp. 15–16.
- ^ a b c d 塚田穂高 2015, pp. 36–49.
- ^ 塚田穂高, 2015, pp.36-49 によれば 神道政治連盟『神政連十年史』神道政治連盟、昭和54年、130ページ、4-5ページ、131-132ページ に記載
- ^ 神道政治連盟 1984, pp. 153–154.
- ^ (3)パイプを駆使し「政治活動」朝日新聞2021年4月14日夕刊「現場へ!:神社本庁を考える」
- ^ a b c d e f g h 塚田穂高 2015, pp. 68–69.
- ^ a b “役員名簿(平成28年2月20日現在)”. 日本会議. 2016年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月10日閲覧。
- ^ “役員名簿(平成28年7月1日現在)”. 日本会議. 2016年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月10日閲覧。
- ^ a b c 『神政連レポート 意』No.208、神道政治連盟、2019年4月15日。
- ^ 『神政連レポート 意』No.215、神道政治連盟、2021年10月1日。
- ^ “「同性愛は精神障害か依存症」自民会合で差別的文書配布 「性的少数者の正当化は家庭と社会を壊す」”. 東京新聞. (2022年6月30日) 2022年6月30日閲覧。
- ^ 奥野斐 (2022年7月4日). “LGBTQ当事者らが自民党本部前で抗議「差別やめろ」「平等な権利を」 党議員参加会合での差別文書配布で”. 東京新聞 2022年7月5日閲覧。
- ^ Mesmer, Philippe (2016年8月3日). “A Tokyo, une nationaliste nommée à la défense”. Le Monde 2021年1月19日閲覧。
- ^ Steger, Isabella (14 March 2018). “"Falsify" might already be the winner for Japan's word of the year in 2018”. Quartz. 8 July 2020閲覧。 “Abe and Aso's names were nixed from an explanatory section about the school's ties with the powerful far-right lobbying group Nippon Kaigi.”
- ^ “役員名簿(平成22年8月1日現在)”. 日本会議. 2010年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月10日閲覧。
- ^ a b 『前衛』2007年7月号、日本共産党中央委員会、53-66頁、「〝靖国〟派団体の関係資料」。
- ^ a b “役員名簿(令和4年7月1日現在)”. 日本会議. 2022年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月10日閲覧。
- ^ 『神政連レポート 意』No.218、神道政治連盟、2022年9月1日。
- ^ “日本の未来を見据えて 岩津天満宮宮司 服部憲明” (PDF). 岩津天満宮. 2021年1月11日閲覧。
- ^ 時任兼作 (2019年10月16日). “靖国神社、激震おさまらぬ「内紛状態」の全内幕(2/4ページ)”. 現代ビジネス. 2024年2月1日閲覧。
- ^ 『神政連レポート 意』No.203、神道政治連盟、2017年10月10日。
- ^ 『神政連レポート 意』No.206、神道政治連盟、2018年9月1日。
- ^ “緊急事態に関する国会審議を求める請願”. 柏崎市 (2022年8月30日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ “2日、日本会議の燕支部発足を記念して桂福若師匠落語会「憲法改正を落語で語る」”. ケンオー・ドットコム (2014年11月1日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ “『清政』第29号(創立三十周年記念特集号)”. 神道政治連盟京都府本部 (2000年11月27日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ “【報告】地方議会が日本再生を発信することを誓った議員懇談会 平成24年度合同総会”. 日本会議大阪 (2012年4月1日). 2024年2月27日閲覧。
- ^ “『清政』35号”. 神道政治連盟京都府本部 (2003年12月16日). 2024年3月4日閲覧。
- ^ “第100回特別勉強会 講師 本名孝至氏”. 日本を知る会. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “神道政治連盟福岡県本部 第6回情報交換会”. 参議院議員 大家さとし (2019年12月21日). 2024年2月8日閲覧。
- ^ “役員紹介”. 日本会議福岡. 2024年1月18日閲覧。
- ^ “憲法改正の早期実現を! 鹿児島県民の集い”. 鹿児島県護国神社. 2024年2月2日閲覧。
- ^ “安倍内閣の閣僚20人中19人がメンバー 神道政治連盟とは?(ページ2)”. iRONNA. 2020年12月20日閲覧。
- ^ “現代日本政治ナショナリズムの特色及び普遍性――「日本会議」における宗教系組織” (PDF). 科学研究費助成事業データベース. 2021年1月11日閲覧。
- ^ 高野孟 (2015年7月14日). “安倍内閣をウラで操る「日本会議」「神道政治連盟」の目的とは?(ページ2)”. MONEY VOICE. 2020年12月20日閲覧。
- ^ a b c d “安倍内閣の閣僚20人中19人がメンバー 神道政治連盟とは?(ページ1)”. iRONNA. 2020年12月20日閲覧。
- ^ “神道政治連盟愛知県本部結成45周年記念総会開催” (PDF). 愛知県神社庁. 2021年1月11日閲覧。
- ^ “女性宮家創設、議論これから 皇室典範改正が必要”. 日本経済新聞. (2011年11月26日) 2021年1月11日閲覧。
- ^ “『清政』第54号” (PDF). 神道政治連盟京都府本部 (2013年6月19日). 2021年1月11日閲覧。
- ^ 初野渉「日本の戦争責任に対する歴史認識 謝罪と拒絶の繰り返しの要因と影響」『創価大学大学院紀要』第39号、創価大学大学院、2019年3月、43-60頁、ISSN 0388-3035、NAID 120006650659、2021年7月20日閲覧。
- ^ “神道政治連盟 京都府本部”. 京都府神社庁. 2021年1月11日閲覧。
- ^ 夫婦別姓
- ^ “教育勅語渙発130年にあたり、新しいリーフレットを作成しました!”. 神道政治連盟 (2020年10月30日). 2021年1月11日閲覧。
- ^ “『清政』第65号” (PDF). 神道政治連盟京都府本部 (2018年11月). 2021年1月11日閲覧。
- ^ 塚田穂高, 2015, pp.36-49 によれば「第20回参議院通常選挙における候補者の推薦について」神道政治連盟編『神政連三十五年史』、2005年、153ページ に記載
- ^ a b c d e f 塚田穂高 2015, pp. 44–49.
- ^ 2007年8月15日付朝日新聞
- ^ 「(日本会議研究)参院選編:上 神社界、改憲に向け奔走」、朝日新聞、2016年8月5日。(2016年8月5日閲覧)
参考文献
編集- 『神政連十五年史』神道政治連盟中央本部、1984年11月8日。
- 塚田穂高『宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学』花伝社、2015年3月25日。ISBN 978-4763407313。
- 小林正弥『神社と政治』 角川新書、2016年。ISBN 978-4040820958
- 島田裕巳『日本の宗教と政治 ふたつの「国体」をめぐって』千倉書房、2021年11月5日。ISBN 978-4-8051-1239-7。