チリ海軍
概要
編集2009年時点の現役兵は約22,000人で、その9割が職業軍人である[1][2]。フリゲート8隻、潜水艦4隻、ミサイル艇7隻などのほか、海軍航空隊50機と海兵隊を持つ。
歴史
編集チリの海上軍事力は、スペインからの独立戦争(1810年~1826年)中に組織された。正式な軍隊として海軍が創設されたのは、チリが独立を宣言した1818年のことである。独立戦争中、チリ海軍は数度の海戦に勝利し、スペインからの鹵獲艦によってその初期戦力を整備していった。
1830年代後半のペルー・ボリビア連合との連合戦争では、1839年1月12日のカスマの海戦(es)でペルー・ボリビア連合艦隊を撃破して制海権を確保し、チリの勝利に貢献した。1864年に起きたスペインとのチンチャ諸島戦争では、1865年11月26日のパプードの海戦で、スペイン砲艦を拿捕する勝利を収めた。
1879年に勃発した南米の太平洋戦争は、チリ海軍にとって史上最大の戦いとなった。この戦争では、制海権が重要な戦略的意義を有し、海軍の役割は重大だった。チリ艦隊は2隻の装甲艦を主力に、イキケの海戦やアンガモスの海戦などでペルー艦隊と激しく戦い、最終的にペルー艦隊を全滅させて制海権をチリのものとした。イキケの海戦で戦死したアルトゥーロ・プラット中佐はチリ海軍最大の英雄とされ、イキケ海戦の発生した5月21日は海軍記念日(Día de las Glorias Navales)に指定されてイキケ海戦記念日(イキケ戦勝記念日)と呼ばれている。また、アンガモスの海戦で鹵獲した装甲艦「ワスカル」は、記念艦として現在も保存されている。
1891年のチリ内戦では、海軍の大部分は議会派に与し、ホセ・マヌエル・バルマセーダ大統領を自殺へと追い込んだ。なお、内戦中の1891年4月23日に、大統領派の駆逐艦「リンチ(Lynch)」と「コンデル(Condell)」が、議会派のアルミランテ・コクレーン級装甲艦「ブランコ・エンカラダ」を雷撃して撃沈したのは、世界初の魚雷による実戦での軍艦撃沈例である[3]。
その後、チリが、ブラジル及びアルゼンチンと並んで南米の地域大国となる中、3カ国間で建艦競争が繰り広げられた。チリ海軍は1911年には超弩級戦艦2隻をイギリスに発注したが、第一次世界大戦の勃発でイギリスに購入された。大戦終結後にうち1隻がチリ海軍の手に戻り、「アルミランテ・ラトーレ」として就役した。第二次世界大戦後には、アメリカからブルックリン級軽巡洋艦を購入したりしている。ただし、第一次世界大戦・第二次世界大戦とも、チリは大半を中立国として過ごしたため、20世紀を通じてチリ海軍が本格的な実戦を経験することはなかった。
組織
編集海軍本部
編集- 海軍総司令官
- 海軍参謀総長
- 監査部
- 会計監査部
- 海軍官房
- 海軍情報局
- 情報電気通信部
- 海洋水路部
- 人事総局
- 海軍作戦コマンド
- 財務総局
- 軍務総局
- 海事総局
- 海軍管区
- 第1海軍管区
- 第2海軍管区
- 第3海軍管区
- 第4海軍管区
作戦部隊
編集- 水上艦部隊
- 潜水艦部隊
- 海兵隊
- 海軍航空隊
- 特殊部隊コマンド
- 水陸両用戦コマンド
- 南北ミサイルコマンド
海軍航空隊
編集人員は600名
海兵隊
編集人員は3,500名
- 第1歩兵分遣隊
- 第2歩兵分遣隊
- 第3歩兵分遣隊
- 第4歩兵分遣隊
- 第51コマンドー群
階級
編集日本語 | スペイン語 | NATO階級符号 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
士官 | ||||||
海軍大将 | Almirante | OF-9 | ||||
海軍中将 | Vicealmirante | OF-8 | ||||
海軍少将 | Contralmirente | OF-7 | ||||
海軍代将[4] | Comodoro | OF-6 | ||||
海軍大佐 | Capitán de Navio | OF-5 | ||||
海軍中佐 | Capitán de Fragata | OF-4 | ||||
海軍少佐 | Capitán de Corbeta | OF-3 | ||||
海軍大尉 | Teniente Primero | OF-2 | ||||
海軍中尉 | Teniente Segundo | OF-1 | ||||
海軍少尉 | Subteniente | |||||
海軍士官候補生 | Guardiamarina | OF-D | ||||
准士官および下士官 | ||||||
兵曹長 | Suboficial Mayor | OR-9 | ||||
上等兵曹 | Suboficial | OR-8 | ||||
1等兵曹 | Sargento Primero | OR-6 | ||||
2等兵曹 | Sargento Segundo | OR-5 | ||||
兵卒 | ||||||
水兵長 | Cabo Primero | OR-4 | ||||
上等水兵 | Cabo Segundo | OR-3 | ||||
1等水兵 | Marinero Primero | OR-2 | ||||
2等水兵 | Marinero Segundo | OR-1 |
主要基地・施設
編集太平洋方面の海軍基地は、北から順に、イキケ、イースター島、バルパライソ、タルカウアーノ、プエルトモントである。マゼラン海峡に面したプンタ・アレーナス、ビーグル海峡に面したプエルト・ウィリアムズにも海軍基地がある。さらに、チリが領有権主張をしている南極のグリニッジ島アルトゥーロ・プラット観測基地は、チリ海軍の管理下にある。
装備
編集艦艇
編集2011年6月現在。『Jane's Fighting Ships 2011-2012』より。
過去に就役した艦艇については「チリ海軍艦艇一覧」を参照。
- スコルペヌ型×2隻
- カレッラ(22 Carrera) - 2005年
- オイギンス(23 O'Higgins) - 2006年
- 209/1400型×2隻
- トムソン(20 Thomson) - 1984年
- シンプソン(21 Simpson) - 1984年
- 旧・蘭カレル・ドールマン級×2隻
- アルミランテ・ブランコ・エンカラダ(15 Almirante Blanco Encalada) - 2006年再就役
- アルミランテ・リベロス(18 Almirante Riveros) - 2008年再就役
- 旧・蘭ヤコブ・ヴァン・ヘームスケルク級×2隻
- カピタン・プラット(11 Capitán Prat) - 2006年再就役
- アルミランテ・ラトーレ(14 Almirante Latorre) - 2006年再就役
- 旧・英23型×3隻
- アルミランテ・コクレーン(05 Almirante Cochrane) - 2006年再就役
- アルミランテ・コンデル(06 Almirante Condell) - 2008年再就役
- リンチ(07 Lynch) - 2007年再就役
- 旧・英22型×1隻
- アルミランテ・ウィリアムズ(Almirante Williams) - 2003年再就役
- 旧・イスラエルサール4型×3隻
- カズマ(LM30 Casma) - 1979年再就役
- チパナ(LM31 Chipana) - 1981年再就役
- アンガモス(LM32 Angamos) - 1997年再就役
- リケルメ(LM36 Riquelme) - 1997年再就役
- オレリャ(LM37 Orella) - 1997年再就役
- セラーノ(LM38 Serrano) - 1998年再就役
- ウリベ(LM39 Uribe) - 1998年再就役
- 哨戒艦
- ピロート・パルド級×2隻(3隻計画中)
- ピロート・パルド(PZM81 Piloto Pardo) - 2008年
- (PZM82 Comandante Toro) - 2009年
- ミカルビ級×6隻
- ミカルビ(PSG71 Micalvi) - 1993年
- オルティス(PSG72 Ortiz) - 1993年
- イザサ(PSG73 Isaza) - 1994年
- ビデラ(PMD74 Videla) - 1994年
- カブラレス(PSH77 Cabrales) - 1996年
- シバリド(PSG78 Sibbald) - 1996年
- 戦車揚陸艦(LST)
- マイポ級×2隻
- ランカグア(92 Rancagua) - 1983年
- チャカブーコ(95 Chacabuco) - 1986年
- 旧・米ニューポート級×1
- バルディビア(93 Valdivia) - 1995年再就役
- 中型揚陸艦(LSM)
- エリクラ級×2隻
- エリクラ(90 Elicura) - 1968年
- オロンペロ(94 Orompello) - 1964年
- (BRS63 George Slight Marshall) - 1978年
- 旧・加艦×1隻
- (AP46 Conte-Almirante Oscar Viel Toro) - 1995年再就役
- (AGS61 Cabo de Hornos) - 2012年就役予定
- 練習帆船
- エスメラルダ(BE43 Esmeralda) - 1954年
- アルミランテ・メリノ(42 Almirante Merino) - 1971年
- 浮ドック
- 各型×4隻
- (131 Ingeniero Mery) - 1973年再就役
- (132 Mutilla) - 1960年再就役
- (133 Talcauano) - 1999年再就役
- (Marinero Gutierrez) - 1991年
- アラウカノ(AO53 Araucano) - 2010年再就役
- 旧・米ヘンリー・J・カイザー級×1隻
- アルミランテ・モント(AO52 Almirante Montt) - 2009年再就役
- アキレス(AP41 Aquiles) - 1988年
- 港内輸送艇
- Meteoro級×2隻
- (YFB110 Meteoro) - 1968年
- (YFB111 Grumete Perez) - 1975年
- Veritas級×2隻
- (ATF66 Galvarino) - 1974年
- (ATF67 Lautaro) - 1973年
航空機
編集2011年6月現在。『Jane's Fighting Ships 2011-2012』より。
- 固定翼機
- ロッキード P-3ACH哨戒機 × 3機
- EADS CASA C-295 パースエイダー哨戒機 × 3機
- CASA 212/300 輸送機 × 2機
- ボーイング707 × 1機[6]
- エンブラエルEMB-111 バンデイランテ小型輸送機 × 4機
- セスナ O-2A スカイマスター輸送・連絡機 × 8機
- PC-7 ターボトレーナー練習機 × 7機
- 回転翼機
- アエロスパシアル NAS332C クーガー対潜ヘリコプター × 5機
- アエロスパシアル ドーファン AS-365N2捜索救難ヘリコプター × 8機
- MBB BBO105C捜索救難ヘリコプター × 4機
- ベル 206B ジェットレンジャー汎用ヘリコプター × 4機
陸戦兵器
編集- スコーピオン軽戦車 × 12輌
- モワグ・ローランド搭載型装輪装甲車 × 25台
- KH-178 105mm榴弾砲 × 16門
- G5 155mm榴弾砲 × 28門
- 81mm迫撃砲 × 50門
- M40 106mm無反動砲 × 30門
- ブローパイプ携行式地対空ミサイル
その他
編集- 記念艦
- RH ワスカル(Húascar)
ギャラリー
編集-
国旗・軍艦旗
-
海軍用国籍旗
-
草創期のチリ艦隊。
-
アルトゥーロ・プラット中佐。
-
装甲巡洋艦「オイギンス」
-
戦艦「アルミランテ・ラトーレ」(イギリス艦時代)
-
フリゲート「アルミランテ・リベロス」
-
アメリカ艦に給油中の補給艦「アラウカノ」
-
記念艦「ワスカル」
脚注
編集- ^ The Navy’s most valuable asset: its people Archived 2009年1月1日, at the Wayback Machine.(2009年7月23日閲覧)。基準時は不明。
- ^ 英語版(en)によれば海兵隊5,200人を含めて25,000人。
- ^ Hundimiento del blindado "Blanco" en Caldera
- ^ 佐官扱いであり、古参の大佐の名誉階級。
- ^ 仏「ラ・コンバタントII型」のドイツ海軍仕様。他に2隻
- ^ AEW任務用。
参考文献
編集- Christopher Langton, Military Balance 2007, Routledge
- Jane's Fighting Ships 2011-2012
関連項目
編集外部リンク
編集- Armada de Chile - チリ海軍公式
- Chilean Navy - チリ海軍公式