ユーザーと開発者は、本来は同じ目的を達成するために一緒に働くパートナーだ。中には「お客様は神様だ」と言わんばかりに一方的に威張り散らすユーザーや、モラルのかけらもない悪徳開発ベンダーもいるが、それらはここでは論外とする。
通常は、ユーザーも開発者も一般常識を備えたビジネスパーソンで、プロジェクトの開始時点では「互いに仲良くやっていこう」と考えているはずだ。ところが、いざプロジェクトが始まると、両者の思惑にブレが生じ、ある時点でそれが明確なギャップとなる。
ギャップとは、TQC(時間、品質、コスト)上の利害の相反である。これらが蓄積すると、やがて感情的なシコリとなる。感情的なところまでギャップが進行すると修復は容易ではない。担当者の交代にとどまらず、プロジェクトの中止やサービスの打ち切りまで、エスカレートする場合もある。
ギャップの萌芽はなぜ発生するのか―。理由はケースバイケースで要因もさまざまだが、どのケースにも共通しているのは「遠慮」と「甘え」ではないだろうか。
開発者から見れば、ユーザーはお客様だ。社内SEと社内ユーザーの関係でも、同様である。相手がお客さんだと、どうしても「遠慮」してしまうのが人情だろう。
開発者は、ユーザーの要求説明が曖昧でも「おっしゃっている内容がよく分からないので、きちんと説明してほしい」とは言いにくい。ユーザーが今日までに完了するはずの作業に対し「少し待って」とせがんできても、なかなか文句は言えない。一方で「ユーザーの言う通りやっていればいいだろう」と提案を出すことなく御用聞きモードで仕事してしまう「甘え」の誘惑に陥ってしまいがちだ。