コンピューターの機能は大きく3つに分かれる。数値計算や文字列処理など、データを加工する「コンピュート(演算)」、他のコンピューターとデータを交換する「ネットワーク(通信)」、そしてデータを保存する「ストレージ(記憶)」である。
コストパフォーマンスの良いコンピューターは3つの要素のバランスが重要だが、研究にも流行がある。1960年代から80年代まではCPU(つまりコンピュート)の研究が盛んだったが、1990年頃にCISC対RISC論争が収束するに伴い、CPUそのもの研究は下火になった。
1970年代後半から本格化したネットワークの研究は、1990年代のインターネット商用利用解禁でTCP/IPが勝利し、TCP/IP以外のプロトコルはほとんど消えた。そして研究者がTCP/IPに集中することでプロトコルの改善も急速に進んだ。「TCP/IPは音声や映像配信などに向かない」と言われていたのがウソのようである。そして現在、TCP/IPの研究は依然として行なわれているが、ブームと呼ばれるような状況ではなくなった。
ストレージについては、他の要素に比べると立ち上がりが遅く、RAIDの概念が初めて論文になったのが1988年、ファイバーチャネルの実用化が1990年代半ばである。しかし、ストレージの重要性は年々高まり、しばらくは目が離せない状況にある。特に、最近はサーバー機能にストレージシステムを統合するのが流行しており、ストレージの設計や市場が大きく変わる可能性がある。
Windows Serverも、Windows Server 2012から多くの機能が追加されたが、以前からあるのに知られていない機能や、効果的に使われていない機能も多い。そこで、今回から4回にわたってWindows Serverのストレージ機能について広く解説する。
サーバー用ストレージに求められる5つの要素
Windows Serverのストレージ機能について紹介する前に、サーバー用ストレージに対して求められる5つの要素についておさらいしておこう。
- 速度:転送速度やアクセス速度が速いこと
- 信頼性:故障しない、故障しても代替機能が自動的に働くこと
- 拡張性:大容量で多数の記憶装置が使えること
- 柔軟性:サーバー動作中にディスクの追加や交換ができること
- セキュリティ:必要な人に、必要な情報を、完全な形で提供すること