西日本地域は光回線のシェアで他の事業者との激しい競争がある。今後どう対抗していくのか。
単に光回線だけで見ると,その上に情報が流れるだけに過ぎない。速度は他社サービスを追い越したり追い越されたりということはあるが,それほど差異化できるものではなくなっている。これからは外部の企業とうまく連携して,ユーザーに様々な使い方をいかに提案できるかがカギになる。
特にテレビやゲーム機をインターネットにつなぐ用途の広がりに期待している。パソコンを使わないユーザー向けにこれら端末を使ったエンターテインメント系のサービスを開発し,光回線に対する需要の起爆剤にしたい。
関西には,最先端の液晶パネルやプラズマパネルを作る工場を持っている大手家電メーカーがいくつかある。これらメーカーと話をすると,将来は60型,80型,100型といった大画面テレビが個人の手にも届く価格になっていくという。大画面のテレビをインターネットにつないでショッピングをする際は,高精細なテレビ画面に実物大の商品が映し出されるようになる。その現実感はこれまでとはずいぶん違ったものになるだろう。
こうなると,画面に並ぶコンテンツのレイアウトや,端末を操作する簡便性といった,サービスすべてに,次のステップが求められる。我々はこうした要望に応えていこうと考えている。
企業向けサービスで言えば,NGNを提供できるようになったことで,強固なセキュリティが要求される医療系,金融系サービスといった分野で,新しいユーザー層を開拓できるだろう。
NGNの需要を開拓するアプリケーションの一つにトリプルプレイが挙がるが,目新しさに乏しいのではないか。
言われるとおり,基本的に設備投資さえすれば実現するサービスでは違いを出しにくい。NGNが備える品質保証付きのマルチキャストも,他社でもやろうと思えば同じようにできると考えられる。
勝負はその上で流すコンテンツの質や,サービスの使いやすさなどになってくる。早くからノウハウを蓄積して,ユーザーに選ばれるものを提供することが重要だ。
NTT西日本は独自の中期経営戦略を作成し,2012年度までに2000億円の増収を目標に掲げている。どう実現するのか。

増収にはしっかり力を入れていく。従来とは違う分野でのビジネスを開拓することと,従来型のビジネスを伸ばすことの二つが収益拡大の柱だ。
従来型ではないビジネスへの取り組みは,NGNの上で可能になるプラットフォーム運用と,各家庭のネットワークを含めた設定や故障対応を行う宅内サポートの二つを進める。
プラットフォーム・ビジネスは主に企業向けで,料金の課金や徴収代行,その他様々なアプリケーションの仕組みを我々が外部の企業に提供し,NGN上でビジネスを展開してもらうというものがある。
例えば,我々のグループ会社のNTTネオメイトはデジタル地図を作成している。これはNTTグループが実際の業務に使っているものだが,これをSaaS(software as a services)的に外部の企業に提供するといったことを考えている。すべての地図を購入するのではなく,必要な部分だけその時々でネットワーク経由で入手して,加工して使えるようになる。中小規模の不動産会社や公的機関などにニーズが高いと見ている。
新規事業の一つである宅内サポート事業について,具体的な取り組みを聞かせてほしい。
NTT西日本-ホームテクノという企業グループを六つの地方ブロックに設立し,7月に営業を始めた。この組織がユーザー宅まで情報機器の保守や,通信設備の設定,設置などに赴く。
この場合,パソコンの遠隔操作によるリモート対応だけでなく,実際にユーザー宅に訪問しトラブルの解消にあたる。NTT西日本のサービス関連機器だけでなく,他社の製品でも故障対応にあたるのが特徴だ。
今後ユーザーの家の中には,IP放送に対応したテレビなどが光回線につながる。テレビ1台だけでなく,様々な機器が2台,3台と増えていく。量販店で買ってきた機器もあるだろう。
こうした機器が故障したときに,わざわざ買ったところにそれぞれ修理を申し込まなくても済むように,ワンストップで対応することでユーザーの利便性を向上させる。サービスそのものがこれまでない取り組みで,新たな収益源として非常に期待している。
>>後編
大竹 伸一(おおたけ・しんいち)氏
(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年7月25日)