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2011-01-10

沖縄ではたった96床のNICUを内地から来た「マタ旅」妊婦の早産児が奪う「マタ旅」は妊婦と家族を不幸にする第一歩(その2)日本屈指のリゾート地にして周産期医療資源が乏しい沖縄でも「マタ旅」妊婦が少なからず緊急搬送

fz1rider先生から貴重なコメントを頂いたので再掲する。


沖縄で新生児やっていると、やはり同様の症例がいます。
早産で、具合が悪く、大変です。
お母さんは数ヶ月の沖縄滞在を余儀なくされます。
病人ではないかもしれないですが、ちょっと考えてから、計画立ててほしいです。

fz1rider先生、ご教示ありがとうございます。

fz1rider先生が勤務されているのは新生児小児科で、
 沖縄の新生児医療はパンク寸前の最悪の状態
にある。そうでなくても地域住民への医療資源が枯渇している沖縄に
 「マタ旅」妊婦が緊急搬送されて、NICUの運営を圧迫
してるわけで、
 ないちゃーが沖縄の医療資源を「収奪」
しているのだ。
2010年6月11日付沖縄タイムスより。


新生児治療ピンチ 県内NICU 「パンク寸前」「早産予防 周囲も支えて」 県外離島から搬送中止

2010年6月11日 09時50分

 県内5カ所の周産期母子医療センターの新生児集中治療室(NICU)で、5月から満床状態が続いている。超早産児や重症の新生児の誕生が相次ぎ、産婦人科・小児科医などでつくる沖縄周産期ネットワーク協議会(宮城雅也会長)は「NICUはパンク寸前」と危惧。今後の受け入れが困難な状況で、妊婦の健康管理の徹底や職場・周囲の支援などを呼び掛けている。また、これまで実施していた鹿児島県の離島からの母体搬送の受け入れも今月から取りやめた。(赤嶺由紀子)

 県立南部医療センター・こども医療センターの総合周産期母子医療センターによると、今年5月の連休明けごろから、県内5カ所のNICU96床で満床状態が続いている。
 同協議会会長で同センターの宮城雅也医師は「在胎週数27週以下の超早産児や酸素が足りない状態で生まれる新生児仮死、重症度の高い新生児が生まれており、長期入院にもつながっている」と現状を説明。
 これまでにも満床近い状況はあったが、ネットワークの活用で転院するなど病床の確保はできていたという。
 宮城医師は「NICUがパンクしてからでは遅い。妊婦さんには早産とならないように、健康管理をきちんとしてもらうことが第一。また、妊婦さんに無理をさせないよう周囲の支えも必要。県民にもぜひ理解してほしい」と呼び掛けている。
 さらに、妊婦がいる職場での健康状態のチェックや、産婦人科医に対しては少しでも異常があるときには入院して様子をみた上で帰宅可能か判断するよう促している。
 厚生労働省によると、2008年の県内の低体重児出生率は11%で、全国平均(9・6%)を上回り、ワースト2位となっている。
 県内には、県立中部病院、県立南部医療センター・こども医療センターに総合周産期母子医療センターが2カ所。那覇市立病院と沖縄赤十字病院に地域周産期母子医療センター2カ所、琉球大学医学部付属病院に周産母子センター1カ所整備されている。

この記事には書かれてないが、
 5月連休明けからNICUが満床状態
というのは
 GWに沖縄へ来た内地の観光客の妊婦が緊急搬送されて、そこで生まれた早産児がNICUに入院
していることを推測させる。

厚労省が昨年9/2に発表した平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況で、
 沖縄を始めとする「産科医療崩壊地域の現状」
を見てみよう。なお、文中の用語だが、厚生統計に用いる主な比率及び用語の解説では


乳児死亡とは、生後1年未満の死亡新生児死亡とは生後4週(28日)未満の死亡早期新生児死亡とは、生後1週(7日)未満の死亡をいう。
死産とは、妊娠満12週(妊娠第4月)以後の死児の出産をいう。
周産期死亡とは、妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡をあわせたものをいう。

と定義されている。
従って、以下の統計に出てくる
 死産数
というのは、法律で許されている
 妊娠12〜21週までの中期人工妊娠中絶
を含んでいる。統計内の
 人工死産=中期人工妊娠中絶
なのだ。


全国
総人口 125820000
総出生数 1070035
周産期死亡数 4519
 妊娠満22週以後の死産 3645
 早期新生児死亡 874
死産数 27005
 自然死産 12214
 人工死産 14791
新生児死亡数 1254
乳児死亡数 2566

沖縄
人口 1375000(1.1%)
出生数 16744(1.6%)
死産数 580
 自然死産 249
 人工死産 331
周産期死亡数 80
 妊娠満22週以後の死産 69
 早期新生児死亡 11
新生児死亡数 14
乳児死亡数 41
出生数 16744(8531/8213)

死産率(出産千対)
全国 24.6
全国ワースト6
1 沖縄 33.5
2 宮崎 33.4
3 北海道 32.8
3 愛媛 32.8
5 高知 32.2
6 鹿児島 30.3

周産期死亡率(出産千対)【妊娠22週以降の死産と生後7日未満の新生児の死亡数】
全国 4.2
全国ワースト10
1 岩手 5.4
2 奈良 5.2
2 和歌山 5.2
4 千葉 5.1
4 富山 5.1
6 群馬 5.0
7 福島 4.9
8 青森 4.8
8 岐阜 4.8
8 沖縄 4.8

妊娠満22週以降の死産率
全国 3.4
周産期死亡率全国ワースト10の妊娠満22週以降の死産率
岩手 3.8
奈良 3.7
和歌山 4.2
千葉 3.9
富山 3.9
群馬 3.5
福島 4.0
青森 3.3
岐阜 4.3
沖縄 4.1

早期新生児死亡率(出産千対)【出生後7日未満の新生児の死亡率】
全国 0.8
周産期死亡率全国ワースト10の早期新生児死亡率
岩手 1.6
奈良 1.5
和歌山 0.9
千葉 1.0
富山 1.2
群馬 1.5
福島 0.9
青森 1.5
岐阜 0.5
沖縄 0.7

新生児死亡率(出生千対)【生後28日未満の新生児の死亡率】
全国 1.2
沖縄 0.8

乳児死亡率(出生千対)【生後1年未満の乳児の死亡率】
全国 2.4
沖縄 2.4

こうしてみると
 全国の人口のわずか1.1%しか住んでいない沖縄
では
 全国の出生数の1.6%が生まれている
わけなのだが、
 周産期死亡率は全国ワースト8位
である。一方で
 死産率は全国ワースト1位
だ。
周産期死亡率を細かく見ると、
 妊娠満22週以降の死産率は4.1と全国平均の3.4よりは高い
わけで、
 早産による死亡が多いのではないか
と考えられる。一方、早期新生児死亡率は
 全国平均の0.8より低い0.7
であり、やはりfz1rider先生のご指摘通り
 早流産の「マタ旅」妊婦が担ぎ込まれ、早産児はNICUに入院
しているのではないか、と推測される。しかも、上記の沖縄タイムスの記事にあるように
 沖縄全土のNICUはわずか96床
なのだ。そこへ
 観光客の妊婦が早産で緊急搬送
となると、
 あっという間に沖縄のNICUは満床
になってしまう。

まさに
 「マタ旅」妊婦が、地域医療を破壊
しているわけで、内地とは異なり、他の地域との連携が難しい沖縄の医療資源を
 内地の人間が遊びに行って、なおかつ収奪している
という、とんでもない事実が浮き彫りになる。

内地の人間は
 米軍基地問題だけでなく、周産期医療でも、沖縄に負担を掛けている
のだ。

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