« 「耳と目が悪い一人暮らしの母が施設に入るのでNHKを解約しようとしたら、耳の悪い母を電話に出せ、などと無理難題続きで大変でした」 | トップページ | さよならPerforma575&漢字Talk7 »

2010-01-16

ハイチ大地震 日本の救援出遅れの原因はたった一人、それも災害に関しては素人の担当者に決定を迫る外務省のシステムの問題か

ハイチ大地震で起きた被害は、想像できるような範囲を超えている。
西半球の最貧国と呼ばれるハイチは、政情が不安定で、国力は弱い。国家としての足元がしっかりしていない国で壊滅的な地震が起こってしまった。

国際的な援助の手を伸ばそうと救援に飛行機を飛ばしても、空港の設備の問題で帰りの給油がおぼつかないなどのトラブルが発生したことも報じられている。

東アジアでは、中国がいち早く救援隊を派遣、出発の時も、到着の時も、ニュースで映像が流れた。こうした素早い対応を世界に映像で見せつけることが
 国際貢献にいかに本気であるかの対外宣伝
になることを中国はよく知っている。

一方、日本の対応は歯がゆいほどゆっくりしている。
岡田外相は、昨日、こんなコメントを出さなければならなかったほどだ。NHKより。


政府 ハイチに医療チーム派遣
1月15日 18時6分

政府は、地震で大きな被害が出ているハイチで被災者への医療活動に貢献するため、日本から医療チームを派遣することを決めました。早ければ現地時間の17日にも現地入りする方向で、現在、調整を進めています。
これは岡田外務大臣が記者会見で発表したものです。それによりますと、派遣する医療チームは、医療関係者のほか、JICA=国際協力機構や外務省の職員あわせて20人余りです。医療チームは16日、成田空港を出発してアメリカ南部のマイアミに立ち寄り、訓練のためアメリカに派遣されている自衛隊のC130輸送機で、早ければ現地時間の17日にも現地入りする方向で、現在、調整を進めています。岡田外務大臣は記者会見で「医療チームには、現地での治安状況や安全確保対策など、先行して入る緊急調査チームの情報を基に、被災者への医療活動にあたってもらう」と述べました。また、記者団が、各国の救助隊がすでに現地で活動を始めるなか、日本の対応が遅いのではないかと質問したのに対し、岡田外務大臣は「現地は非常に混乱しているし、連絡も取りにくい状況だ。何が求められているか、しっかり見極めたうえで行動することは、まちがったやり方ではない」と述べました。

マイアミに自衛隊のC130輸送機がたまたま派遣されていたのは幸いだったが、いかにも対応が遅い。

この原因は
 外務省の中南米局カリブ室の一人しかいない担当者の資質の問題によるところが大きいのではないか
というのが、直接外務省の担当者に取材した浅井久仁臣氏の見解である。この件についてはataruさん経由。
詳しくは、浅井久仁臣氏のblog「浅井久仁臣 グラフィティ」の1/15付の記事
 私の視点 ハイチ地震 国際緊急援助隊は宝の持ち腐れか
をご一読下さい。浅井氏は上記記事で、


 確かに、これがいつも私が問題にしている欠陥で、緊急援助隊を派遣するか否かの判断は外務省に多くが任されているのだ。それでも、外務省内に災害対策室なり専門職の人間がいればまだしも、被災国を担当する部署がその役を担うのだから災害対策にはシロート同然の人間に任せるようなもので、この時点で的確な判断が下されないことになる。
 今回その任を担ったのが、中南米局のカリブ室だ。それも担当者は一人だと言う。だから午前10時くらいから電話をかけ続けてようやくつかまえたのが4時間半後であった。
 担当者はマスコミ対応に慣れていないのだろう。端から居丈高で、「昨夜の官房長官の会見以上のものはありませんよ。次の会見を待ってください」と突き放そうとする。彼に言わせれば、電話取材などとんでもないということのようだ。
 冗談ではない。記者から電話取材の権利を取り上げるのは報道の自由を奪うのと同然だ。その辺りの話をして、私は彼に喰らいついた。
 ところが、私の「消防救助隊の派遣をなぜ検討しなかったのか」「現地との連絡は取れているのか?」等の質問にも「当然検討している」「詳細を言う必要はないでしょう」と答えにもならない言い方をして、挙句の果ては、「やらなければならないことが転がっているのであなたとお話している時間はありません。これで電話を切らせて頂きます」と、慇懃無礼な言い方で電話を切った。
 こういう無礼な官僚は少数派だが、霞ヶ関に生息していることは事実だ。ジャーナリストに対してきちんとした対応をしなければならないのは当然の話だ。また、役人はたとえ市民の質問にでも誠意をもって答える義務があることを忘れてはならない。
 彼の無礼な態度の裏には、事実上何もしていなかったことを指摘された後ろめたさがあったと私は思っている
 昨年9月30日に発生したスマトラ大地震の際は、珍しく速やかに出動した消防救助隊だが、あれはやはりその時の担当者の決断が的確だったというだけの話で、システム的に改善されたわけではなかった
(以下略)

と、
 中南米局カリブ室ハイチ担当者はたった一人しかいない上に、災害については専門的知識を持ち合わせていない素人が下した国際的援助が必要な危難への決断の不的確さが、今回の救援の遅れの原因ではないか
と推測しておられる。

折しも、関西では
 阪神淡路大震災から15年
を迎えようとしている時期だ。地震国日本からの援助は過去の貴重な経験から得たノウハウが詰まっている。こうした時にこそ、日本の援助隊の力は早急に発揮されてしかるべきなのだが、
 担当者が一人しかいない外務省のシステム
が、
 その一人の決断が遅ければ、すべてのスケジュールが遅れる原因
になった可能性は高いだろう。外務省の担当者の頭の中にあったのは、少なくとも
 過去地震による被害を受け続けた国の国民としての被災国ハイチへの同情
ではなかったのは確かなようだ。

|

« 「耳と目が悪い一人暮らしの母が施設に入るのでNHKを解約しようとしたら、耳の悪い母を電話に出せ、などと無理難題続きで大変でした」 | トップページ | さよならPerforma575&漢字Talk7 »

コメント

居丈高な対応になったのも、一人で切り盛りして疲れていたからじゃないですかね?そう考えないんでしょうか?
似たような質問をしてくる”ジャーナリスト”も多かったのかもしれませんねえ。
質問する方は初めてでも、回答する方はもしかすると100回目かも。
こんなハイチみたいな普段は頭の片隅にもない貧困国の問題をこのタイミングで電話取材しているのは俺だけだろうと思ってますか?

一人しかいないリソースを浅井さんの”報道の自由”のために独占しようとする。たいしたもんです。浅井さんの持つ報道の自由とは。
浅井という人には、丁寧に、優先して、しかも浅井さんの意に沿う形で対応しないと、「報道の自由」を御旗に、何を言われるか分からないですね。ああ怖い。

緊急援助隊の派遣が外務省担当のスキルに左右されるのであれば、それは「システム」とは呼べないでしょう。
政治主導の民主党政権はこの問題をどうするのでしょうか?
岡田外相は、システムの不具合を放置して派遣が遅れてしまった責任をどのような形でとるつもりなんでしょうか?

それにしても、官僚主導と言われた自民党政権下ではこのような事態になると、メディアからは政権の責任を問われ、政治主導を掲げる民主党政権下では、官僚が非難される。どうなってるんですかねえ?

投稿: アーガイルの靴下 | 2010-01-16 09:18

上の意見は、一見妥当なようでやはり失当だと思います。
問い合わせが殺到するのは子供でも分かるのだから、広報担当を臨時に置けば良いだけの話。
一人しかいない担当者に広報までできるわけがないのだから、
そこは組織の問題ですよ。

投稿: マグナカルタ | 2010-01-16 10:32

そう。
組織の問題。

だけど、浅井さんは組織を主な批判の対象としつつ、
>無礼な態度の裏には、事実上何もしていなかったことを指摘された後ろめたさがあったと私は思っている
と個人を批判していますね。

もちろん、ほんとにただの無礼な役人である可能性もありますが。

投稿: とおりすがり | 2010-01-16 11:22

私はアーガイルの靴下さんに同意です。担当者が一人しかいないならば、最優先は現地災害の対応をすることで、日本の記者の電話取材の対応は二の次です。

臨時に広報担当置くのが良いシステムですが、広報担当がいないならば、優先順位の低い日本の記者の電話取材に割く時間がもったいないです。私の感覚では、担当者が一人しかいないのを承知の上で、救急対応が必要なタイミングに、電話取材をかけることに疑問を感じます。電話の相手をさせることが、救急対応の障害になることに気づかないのでしょうか。たった一人で救急対応に忙殺されているときの、優先順位の低い日本の記者の電話であれば、対応が冷たいのは当然だと思います。

システムとして広報担当がいないのが悪いのは同意です。もう一つ、元記事の「災害対応の判断を素人にさせるのは問題だ」の趣旨にも同感です。

投稿: ナナト | 2010-01-16 12:28

>私の感覚では、担当者が一人しかいないのを承知の上で、救急対応が必要なタイミングに、
>電話取材をかけることに疑問を感じます。
>電話の相手をさせることが、救急対応の障害になることに気づかないのでしょうか。
>たった一人で救急対応に忙殺されているときの、優先順位の低い日本の記者の電話であれば、>対応が冷たいのは当然だと思います。

中越地震のときのNHKの傲慢なサル(通称マンドリル)のことを思い出しました・・・。
県庁か役所だったかガンガン他の電話鳴り響いて出られないのに電話口で担当者を
延々拘束プレイでorz

投稿: おばQ | 2010-01-16 19:03

ハイチって近年も深刻な暴動が頻発している政情不安国でしょ。日本人もほとんどいない。
そんなところに普段人員割いてられないだろーし。
担当者が少ないことを責めてもな。
おまけに、そういう危険な国にマトモな軍隊でない自衛隊をいきなり送り込めるか?
「役人が悪い」って言えば満足なんだろーね。アタマの悪い人たちだね。

投稿: nikitan | 2010-01-16 23:54

おばQ氏のコメント見て思い出した
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/06/6nhk6_6715.html

投稿: ひだりきき | 2010-02-05 15:26

長年、政権を担ってきた自民党から、この不況下にやっと政権奪取したばかりの民主党に責任があるなら、自民党の責任はもっと重いはずだ。
氏の言わんとするところは、普段一人体制であっても、緊急時に発足すべきチームをシステム的に造るべきだという事だろう。
普段から仕事の無い所にまで、人を置くのは役人の常套手段だが、そんな事で税金の無駄遣いをされてはたまらない。
しかし、緊急時に何が必要かは、普段から考えておくべき事であり、事が外交に関する部門であれば、極当然の事だ。
政治主導で今後変わってゆくだろうが、今の時点で、過去の教訓を生かすシステム作りに外務省が対応してこなかったのは事実だ。
単にハイチの問題ではない。その事に役人が気付いていない事こそが問題であり、逆に民主党は、かつて田中真紀子をして『伏魔伝』と言わしめた外務省を切り崩す格好の端緒と見るべきだろう。

投稿: デジコム | 2010-02-19 01:32

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ハイチ大地震 日本の救援出遅れの原因はたった一人、それも災害に関しては素人の担当者に決定を迫る外務省のシステムの問題か:

« 「耳と目が悪い一人暮らしの母が施設に入るのでNHKを解約しようとしたら、耳の悪い母を電話に出せ、などと無理難題続きで大変でした」 | トップページ | さよならPerforma575&漢字Talk7 »