人間をコンピューターウイルスに感染させる初の実験、英研究者が自身の体で


 人間をコンピュータウイルスに感染させる初の実験が行われ、その研究結果が学会で発表されることになった。

 この研究を行ったのは、英University of ReadingのシニアリサーチフェローのMark Gasson氏。6月にオーストラリアで開催される「IEEE International Symposium on Technology and Society」で研究結果を発表する。

 Gasson氏の左手には昨年、ハイエンドのRFIDチップがインプラントされた。このチップを使ってGasson氏は、大学の建物や携帯電話に接続できる。また、チップの情報を用いてGasson氏を追跡したり、認識することも可能だ。

 こうしたチップは、実質的にはコンピューターであるため、コンピューターウイルスに感染させることが可能だ。実際、このチップをコンピューターウイルスに感染させたところ、接続先のメーンシステムに異常が生じ、通信ができなくなったという。もし、システムに他のデバイスが接続されていたならば、ウイルスが感染を広げることも可能だったかもしれないとしている。

 Gasson氏は「私自身のインプラントをコンピューターウイルスに感染させることによって、我々はこれらのテクノロジーがどれほど高度なものになっているのかをデモすることができ、明日の問題が垣間見えたと言えるだろう」とコメントしている。

 チップを人体に埋め込むインプラント技術は、心臓のペースメーカーや内耳インプラントだけでなく、人体の能力を向上させるための研究も行われており、発展段階にある分野だ。

 感染した気分についてGasson氏は、「医療上のインプラントを受けた多くの人々と同様、インプラントを受けて1年が経ち、それが私の体の一部であるように感じるようになった。このような形でコンピューターウイルスに感染する初めての人間になったことは、エキサイティングなことであるとはいえ、同時に驚くほど傷つく体験ともなった。なぜなら、このインプラントはあまりにも密接に私と結び付いているのに、この状況を私は全く制御できない状況にあるからだ」と説明する。

 そして、こうしたインプラント技術が人体の能力を向上させることに用いられることがあるとしても、「我々は、新たなステップが持ち込むかもしれない新種の脅威のことを心に留めておかなければならない」と警告している。


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(青木 大我 [email protected])

2010/5/27 12:42