沖縄の原野に家を建てる...。

土地の造成が終わったら、とりあえずコンテナを置こうと思っていた。
家造りの工具や、いろいろな備品を置くためだ。

コンテナには、いくつか種類があるけど、海上輸送用コンテナが一般的。（他にトラックの荷台用とかもある）
海上輸送用コンテナを改造して、店舗にしている例は結構多く、沖縄の北谷町などでは、ネオンを付けたコンテナとか、いくつもコンテナを繋て、かわいい洋服を売っているお店が何件もある。
幅は2.438m　高さは2.591m　長さは20フィートで6.058m（2.3t）、40フィートで12.192m（4t）。
積み重ねて使用するので、世界共通規格で、少なくともジョイント部の位置は同一だ。
（20歳くらいの頃、一時コンテナ修理工をやっていた。当時、日払い1万円）

コンテナの素材はアルミか鉄。鉄は当然、錆びの心配がある。
（海上で使うことを前提にしているので、通常の鉄製品に比べると錆びにくいという人もいる）
アルミは錆びないようで、電蝕で白い粉を吹いてボロボロになる事もあるので、どっちもどっちかなぁ。

価格は鉄の方が圧倒的に安いので、僕は最初から鉄製コンテナを購入する予定だった。

値段は、サラリーマン時代に倉庫用に取った見積もり（1998年頃）と比べると、倍くらい高くなっているようだ。中国の特需で、全般的に鉄の値段が上がっているので、しょうがないのかな。


最近はネットでもコンテナを探せるので、その中から４件の見積もりを取った。
タイプは、鉄製の中古の20フィートコンテナ（全長６m）。

ヤフオク業者　19万円。那覇港までの輸送費：9万円。
神戸の業者　　16万円。那覇港までの輸送費：4.5万円
大阪の業者　　17万円。那覇港までの輸送費：1万円（大阪港までの輸送費。大阪→沖縄は通常貨物用として荷を入れるのでタダでいい）
沖縄の業者　　23万円。

那覇から本部町までの輸送費は、いくつかあたったけど、だいたい3～3.5万円程度。
状況によって、6トンのユニック車（クレーン付きトラック）だけで大丈夫な場合もあるし、クレーン車が別途必要な場合もある。これは現場を下見しないと判らないようだ。
だいたい、トータルで20万円以上はかかる見込みだ。

大阪の業者は安くしようという心意気も嬉しく、対応も良かったのだけど、一応、土木工事をお願いした職人にも相談してみた。
｢あーっ。それだったらHさんのところが安いはず。電話してみよう。｣
すぐに携帯をかけて、少し話をして僕に代わると、なんと現場までの運賃こみで17万円。紹介だから原価でいいよ。との事。

こういう事があると、つくづく思う。田舎ほど個人間のネットワークが健在だ。


コンテナをどこに置くかは、急だったので考えてなかった。

道路の造成を中止したので、今後ユニック車は入れない。
頼みの綱のユンボも、予定では今日で作業を終えて撤収する予定なので、今日中に場所を決めて指示をしないといけない。
えいやっと、北側の端に決めてしまった。


作業は、地面の水平出しから始まる。

海上輸送用コンテナは、底辺と上面に、それぞれ4カ所のジョイントがある。
船上や港で固定する時も、クレーンでつり上げる時も、この4カ所だけしか使わない。
今回は、この4カ所があたる部分のみにコンクリートの土台を据え付けることにした。


地面からはできるだけ離したい。地面からの湿気で、コンテナの錆が進行するのが怖いからだ。最低でも20センチは欲しい。
以前、職人のヤードに遊びに行ったときに、ちょうどいいコンクリートの固まりがあった。駐車場のタイヤ止め用コンクリートだ。お願いして運んでもらい、今回はそれを土台にした。


まず、基準となる場所を決めて、土地の水平を見る。僕の土地は、山側からふもと側に向かって水勾配を付けてあるので、高低差は40センチほどあった。

ユンボで高い場所を削って、位置を合わせていく。
ところが、2個の土台を設置したところで、はたと困ってしまった。3個目の位置をどうやって出したらいいのか、2個の土台から直角の位置を計算する方法を誰も知らないんだ。

職人さんたちは、土木工事専門で、コンテナの設置は初めて。｢うちの測量係がいれば、電卓で一瞬で計算するが、飲み過ぎで今日は倒れた｣
僕も紙とペンを手に取ってみたはいいけど、直角3角形の斜辺の長さを出す計算式がどうしても思い出せない。巨大な直角定規でもあればいいのだけど。

でも、これって高校入試レベルだよなぁ。…もっと勉強しておけば良かった。（大人になってからそう思うのは、今回で何回目だろうか）

そうこうしているうちに、コンテナが届いたので、現物合わせで行く事になった。
ユンボでトラックから持ち上げて、設置場所まで持って行く。
4人がかりで2.2トンのコンテナを誘導して、2個の土台と位置を合わせ、残りの2カ所はスプレーペイントで地面にマーキング。そのマーキングの通りに残りの土台の位置と水平を合わせて、コンテナを設置完了。

作業中、アマカイ！　トーッ！　と方言が飛び交っていた。
僕と話す時の職人たちは標準語だけど、普段はほとんど方言で話すので理解できない。いつか僕も沖縄の言葉を覚えられるのだろうか…。  

コンテナが台風で飛ばないように、トンブロックを設置した。
（手前右側のコンクリートと、向こう側の計2個）

コンテナの自重は2.3tもあるのだけど、沖縄の台風はとんでもないからね。
飛ばないにしても、横転くらいは十分あり得る。

トンブロックは邪魔にならないよう、地面に埋めてもらった。中央にU字の鉄筋が埋め込まれているので、これとコンテナを、後からワイヤーで縛る予定。

ところで、何人かと話をすると、2個では足りないと言う人もいる。
普通は4隅に置くようだ。

自分でも、実はそう思った。
それと、土台のコンクリートは小さすぎるなぁ。

このへんの判断ができなかったのは、経験の無い素人の弱みだ。

台風の季節までは、まだ少し時間があるので、今後対処し直す予定。  

紹介してもらったビル解体業者から、現場で取り外した窓を２枚入手。
高さ２メートルくらいの大型のガラスだ。2枚で1万円。

ホームセンターとかで、アルミサッシを見ると、小さな窓でも数万円するのでため息をついていたけど、これならなんとかなる。
元はタダと思うと悔しいけど、しゃーない。解体屋の友人なんて、そうそういるもんじゃないしね…。

それと、曲がったアルミのドアをタダで貰った。


ガラスは、コンテナの両サイドに、ウイング状に付けようと思う。
かなり重たいので、何かいい物がないかと考えて、車のリヤゲートのダンパーを思いついた。

仕事中に通りかかった恩納村の自動車解体屋で聞いてみると、2本で3,000円。
いくつかあった内の、RVR用と、ワンボックスカー用のダンパーを2セット買った。

ガラスは土地の下まで車で運んで貰って、後は担いで上まで登ったけど、心臓が死ぬかと思った。

後で書くけど、ちょっと思うところがあって、途中で道の造成を止めたんだ。
そのため、車が入れず、こういう事になった次第。

人間って非力だなぁ。  

沖縄は早くも台風の季節。
予報では、明日４号が来るらしい。

コンテナが風で転倒しないか心配なので、台風対策をする事にした。

用事のついでに、うるま市の丸中商会まで材料を買いに出かける。
ここは職人と主婦の店。職人向けには工具から水道管までなんでも売ってて、並のホームセンターじゃ、かなわない品揃え。家庭用品も格安なので、作業服姿の職人、ヤンママやおばちゃんがたむろする不思議なお店だ。

店員さんに、コンテナの台風対策用のワイヤーはどんなのがいいか聞いてみる。
｢8mmと9mmの鉄ワイヤーが同じぐらい人気ですね。あと、もっと細めのステンレスワイヤーを買う人もいます。ステンレスでも沖縄では錆びる事もありますね｣との事。
（別のホームセンターで聞いたら、｢9mmでも大丈夫だけど、もっと太い方が安心です｣だった。丸中の方が現場を知ってそうなので、言うとおりにする）

鉄ワイヤーの9mmを選んで量り売りして貰う（70円／m）。
50cm単位だ。

測ってきた寸法分＋50cmでお願いした。
あと、ターンバックル（180円）とワイヤーを止める金具（31円）も必要個数を入手。

家に帰って、ベランダでワイヤーの端を輪っかにして編み込む。（ワイヤーロープの輪っか作り）



現場へ、ワイヤーロープと工具を持って行き、作業開始。
工事が終わって、ようやく道ができたので、車が入れてとっても楽だ。

まずはトンブロックにターンバックルを引っかけて、そこにワイヤーの輪っかを繋ぐ。
（ターンバックルは最初は緩めておく事）

ワイヤーの反対側はコンテナへ。



コンテナ側は上部のジョイント部にワイヤーを回して、留め具２個でしっかり締め付け。


後はターンバックルにスパナを差し込んで締め付けて完了。力加減が判らなかったけど、ワイヤーロープをスパナで叩くと、コンっと金属音が鳴る程度にしておいた。


とりあえず、これで台風が来ても安心。…でも、できれば沖縄本島は避けて欲しい！  

久しぶりに本部の土地に行ってみた。
頼んでいた工事が終わって、電気と水道が使えるようになっている。
これで、いろんな作業ができる。


当初は、すぐにコンクリートブロックの家造りに取りかかる予定だったのだけど、少し変更することにした。

最近、少し考えるところがある。

沖縄に来て、いつのまにか17年。…仕事や、友人関係は、ほとんど沖縄の中部に集中している。
本部町に約2年住んでみたけど、やはり地元で仕事を見つけないと人間関係は広がりにくいようだ。
今、ここに家を建てて住んでも、交通費がかさむばかりで、あまりメリットが無い気がする。しかも、家造りには、全財産をつぎ込む事になるハズだし、今の状況では不安要素の方が大きい。

それより、アジト（秘密基地）として、いろいろな遊びの拠点にしたほうが面白そうだ。その後で、時期を見て移り住むのもいいかもしれない。

実は、沖縄市に引っ越したとき、知り合いからこんな事を言われた。
「中部に帰ってきてくれて、良かった！　実は心配していたんだ。何も無いところで、一人でいると、人間おかしくなってしまうから。知り合いの旦那も、ヤンバルで農業すると言って、家族も気がつかないうちに精神を病んでしまった。話し相手がいないと、ダメだよ」
沖縄の人は、やさしい。
もう一人、別の知り合いも同じような事を言っていたっけ…。

僕は石垣島の米原キャンプ場のいちばん奥とか、西表島のボラ浜、北海道の美瑛・富良野、道東の標津、インドやネパール。その他もろもろ、旅人の世界のかなり濃い場所で、たくさんの友達を作ってきた。知らない土地に馴染むのには自信がある。
でも、平和な田舎にとけ込むのは、難しい…。というか、長い年月が必用な気がする。

昔読んだ本に、「やぶれナイチャー」という言葉があった。
沖縄に憧れて移住してきて、結局は馴染めずに内地に帰っていく人々を指す言葉だ。
素敵な沖縄も、生活しようと思ったら、ただ楽天の土地ではない…。



さて、水道の話。
水道工事は、本部町あたりではメートル1万円が相場という。（公道のアスファルトを掘って、水道管を埋めて、元通りにする工事。名護では3万とか…）
しかも、公道か自分の敷地にしか、水道管を通すことは許されない。隣の家から、僕の土地まで約７０メートル。そこから敷地内を50メートル
ざっと、100万円コースだ。

同時に、下水についても考える必要がある。役場への申請は、両方同時だ。
僕の土地には下水管が来ていないから、合併浄化槽を埋める必要がある。これも最低50万円以上。
ついでに、浄化槽から道路の側溝まで、排水溝を作る必要もある。
なんだかんだで、合計200万円…。

これから土地を求める人は、要注意だ。安いからといって、不便な土地を購入すると、整備に相当お金がかかる。
逆に、区画整理された土地は、高いけど整備は不要。
でも、景色とか、場所柄とか、最終的には好みだろうね。

今回は、現場作業用の仮設水道という事で役場に話しを通してもらった。
田舎の場合、だいたい人間関係がどこかで繋がっている。
水道で困ってると何人かに相談した中で、役場に知り合いがいるからと電話をかけて交渉してくれた人がいる。


まあ、間違いなく現場作業用に水道が必要なワケで、仮設で十分だ。
その条件で特別に、他人の土地の敷地を通って水道を引ける事になった。
これなら、ほとんどお金はかからない。
（地形的に、水道管から僕の土地までは最短距離で20m。道路を経由すると120m）

蛇口も、コンテナにとりあえず付けてもらった。
シンクとかは、後で自分で作ろう。


電気は沖縄電力に申請すれば、近くまで電柱を立ててくれる。（地主との調整、工事費は沖縄電力側で負担）
もちろん、自分の敷地内の工事は自費だ。
今回は、隣の家から2本の電柱を経由して、僕の土地へ。僕の土地の中に、自費で一本電柱を立てて、コンテナまで引いた。

工事は、地元の設備屋さんにお願い。申請とかも全部やってもらった。
依頼してから申請、工事完了まで、約3ヶ月。


▲敷地内の電柱にメーター。　　　　　　　　▲ブレーカーはコンテナの中。

※コンテナの屋根には、いくつか錆で穴があいてしまった。とりあえず、手持ちのアクリル板とコーキングで処置済み。

■11／07追記。工事費用
水道工事一式： 60,618円
電気設備工事：144,583円（100V＆200V　照明取り付け、電柱一本含む）
調整済請求額：200,000円