会田薫「梅鴬撩乱」(1)
世の中つまらねぇなら
おめぇが面白くすりゃあいい
自分次第でいくらだって変わるんだって
■長州の天才革命児・高杉晋作には、おうのという愛し人がいた。色町「堺屋」に身を寄せるおうのは、ドジで間抜けでとにかく賢くない。けれども琴三弦においては、並々ならぬ才能があり、芸妓たちの間でも一目置かれている。そんなおうのの才能と魂に惹かれゆく晋作と、彼を取り巻く山県狂介、赤根武人、久坂玄瑞たち…。やんちゃな猛者どもの、軽快で可笑しみに満ちた幕末ロックな日々とは…?
こちらもITANでの新連載となります。作者の会田薫先生って、全く存じていなかったのですが、過去にコミックスを1冊発刊していらっしゃるだけ。系列的にはBLになるのでしょうか。ITANはBL出身の方々がメインを構成していらっしゃいますが、BL作家の創作力には驚かされるばかり。本作の「梅鴬撩乱」も非常に面白い作品となっておりました。描かれるのは、幕末に活躍した偉人である高杉晋作と、その愛人であった“おうの”の物語。どちらも実在した人物であるのですが、その二人の関係をベースに幕末の世を軽妙洒脱にロックにアレンジして描き出します。
ロック要素は三味線。破天荒なキャラクターが、陽気に豪快に世を動かす。
物語の視点は愛人であるうのと、先輩芸妓の琴乃が中心。親に捨てられ色町「堺屋」にて芸妓として生活しているうのは、芸達者でありながら間抜けでドジ。それに対して、琴乃は芸オンチですが器量良しという、うのとは正反対の性質の持ち主でした。歳が近く、また手がかかるということからうのの面倒をよく見ていた琴乃が、うのと仲良くなるにはそれほど時間を要することはありませんでした。今となっては姉妹とでも言えるような仲の良さで、置かれている環境なりに楽しく生活しています。そんな中、堺屋にやってきたのが高杉晋作。ザンバラ頭に着崩しただらしのない格好、見るからにわかる変わり者っぷりの彼が、うのの三味線に聞き惚れる所から物語は始まります。
過去に何度も書いているとおり私は歴史に明るくないので、高杉晋作が幕末の世に於いて具体的にどのような働きをしたかということは知りません!(胸はって言うことじゃない)。うのについては、ネットで調べるとそれなりに情報が出てくるのですが、マンガで描かれている素直さであるとかおおらかさは史実に乗っ取っているみたいですね。ちょっとおバカすぎる気もしますが、高杉晋作を人一倍変わり者として描いているため、そんな彼と釣り合うはじけっぷり(三味線で発揮)を内包させるためにこのような描き方になっているのかもしれません。
物語は直接本筋に関係ない人物達も描く。二人の関係を中心に、庶民や幕末志士たちへと徐々に広がりを見せていく。そしてその誰もが、かっこいい。
物語は単純にうのと高杉晋作の物語で完結する感じではありません。二人の関係をベースとして、描き出そうとしているのは幕末の世。だからこそ、うのと琴乃のダブルヒロインという形をとっているのでしょうし、歴史背景を説明する描写が多いのです。この後どのような形で物語が閉じるのかはわかりませんが、多分激動なんでしょう。それでこそ、「ロック」です。
うののキャラクターは愛嬌があって素敵なのですが、それ以上に魅力的に映るのは、先輩芸妓の琴乃。うのは感情の起伏があまりなく、また不思議ちゃんであるために感情移入が難しい所があるのですが、逆に琴乃は恋もするし夢も見るしである意味で非常に普通の女性。幕末の激動を、芸妓の目を通して見るというこの物語において、普通の視点・普通の感覚を持った彼女の存在は非常に重要な意味を持ってきます。基本的に色町に生きる人々の生活であるとか将来というのは、暗い面を多く抱えているのですが、その辺の切なさもしっかりと併せ持っており、本当に味わい深いキャラだなぁ、と。
【男性へのガイド】
→このノリは男女共に楽しめるはず。ちょっと書き込み細かいところや、絵柄で敬遠というパターンもあるかもしれませんが、それが気にならないのであれば。
【感想まとめ】
→ITANの連載作の中でも上位の期待感。こういう感じで幕末を描くこともできるのか、とちょっとびっくりしました。面白かったです。オススメ。
作品DATA
■著者:会田薫
■出版社:講談社
■レーベル:ITAN
■掲載誌:ITAN(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税
■購入する→Amazon
世の中つまらねぇなら
おめぇが面白くすりゃあいい
自分次第でいくらだって変わるんだって
■長州の天才革命児・高杉晋作には、おうのという愛し人がいた。色町「堺屋」に身を寄せるおうのは、ドジで間抜けでとにかく賢くない。けれども琴三弦においては、並々ならぬ才能があり、芸妓たちの間でも一目置かれている。そんなおうのの才能と魂に惹かれゆく晋作と、彼を取り巻く山県狂介、赤根武人、久坂玄瑞たち…。やんちゃな猛者どもの、軽快で可笑しみに満ちた幕末ロックな日々とは…?
こちらもITANでの新連載となります。作者の会田薫先生って、全く存じていなかったのですが、過去にコミックスを1冊発刊していらっしゃるだけ。系列的にはBLになるのでしょうか。ITANはBL出身の方々がメインを構成していらっしゃいますが、BL作家の創作力には驚かされるばかり。本作の「梅鴬撩乱」も非常に面白い作品となっておりました。描かれるのは、幕末に活躍した偉人である高杉晋作と、その愛人であった“おうの”の物語。どちらも実在した人物であるのですが、その二人の関係をベースに幕末の世を軽妙洒脱にロックにアレンジして描き出します。
ロック要素は三味線。破天荒なキャラクターが、陽気に豪快に世を動かす。
物語の視点は愛人であるうのと、先輩芸妓の琴乃が中心。親に捨てられ色町「堺屋」にて芸妓として生活しているうのは、芸達者でありながら間抜けでドジ。それに対して、琴乃は芸オンチですが器量良しという、うのとは正反対の性質の持ち主でした。歳が近く、また手がかかるということからうのの面倒をよく見ていた琴乃が、うのと仲良くなるにはそれほど時間を要することはありませんでした。今となっては姉妹とでも言えるような仲の良さで、置かれている環境なりに楽しく生活しています。そんな中、堺屋にやってきたのが高杉晋作。ザンバラ頭に着崩しただらしのない格好、見るからにわかる変わり者っぷりの彼が、うのの三味線に聞き惚れる所から物語は始まります。
過去に何度も書いているとおり私は歴史に明るくないので、高杉晋作が幕末の世に於いて具体的にどのような働きをしたかということは知りません!(胸はって言うことじゃない)。うのについては、ネットで調べるとそれなりに情報が出てくるのですが、マンガで描かれている素直さであるとかおおらかさは史実に乗っ取っているみたいですね。ちょっとおバカすぎる気もしますが、高杉晋作を人一倍変わり者として描いているため、そんな彼と釣り合うはじけっぷり(三味線で発揮)を内包させるためにこのような描き方になっているのかもしれません。
物語は直接本筋に関係ない人物達も描く。二人の関係を中心に、庶民や幕末志士たちへと徐々に広がりを見せていく。そしてその誰もが、かっこいい。
物語は単純にうのと高杉晋作の物語で完結する感じではありません。二人の関係をベースとして、描き出そうとしているのは幕末の世。だからこそ、うのと琴乃のダブルヒロインという形をとっているのでしょうし、歴史背景を説明する描写が多いのです。この後どのような形で物語が閉じるのかはわかりませんが、多分激動なんでしょう。それでこそ、「ロック」です。
うののキャラクターは愛嬌があって素敵なのですが、それ以上に魅力的に映るのは、先輩芸妓の琴乃。うのは感情の起伏があまりなく、また不思議ちゃんであるために感情移入が難しい所があるのですが、逆に琴乃は恋もするし夢も見るしである意味で非常に普通の女性。幕末の激動を、芸妓の目を通して見るというこの物語において、普通の視点・普通の感覚を持った彼女の存在は非常に重要な意味を持ってきます。基本的に色町に生きる人々の生活であるとか将来というのは、暗い面を多く抱えているのですが、その辺の切なさもしっかりと併せ持っており、本当に味わい深いキャラだなぁ、と。
【男性へのガイド】
→このノリは男女共に楽しめるはず。ちょっと書き込み細かいところや、絵柄で敬遠というパターンもあるかもしれませんが、それが気にならないのであれば。
【感想まとめ】
→ITANの連載作の中でも上位の期待感。こういう感じで幕末を描くこともできるのか、とちょっとびっくりしました。面白かったです。オススメ。
作品DATA
■著者:会田薫
■出版社:講談社
■レーベル:ITAN
■掲載誌:ITAN(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税
■購入する→Amazon